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騎士兎の章 第一幕

騎士の遺産


騎士の功績
西風大聖堂前の広場では、間もなく行われる授勲式のために騎士たちが忙しそうにしている…
モンド城へ向かう
パイモン:
ん?お祭りの日が近いってわけじゃないよな?なんでこんなに賑やかなんだ?
ガイア:
…装飾用の旗をもっと準備してくれ。それと、祝賀用の酒も忘れずにな。いや…やっぱり俺が確認しよう。
ガイア:
なにせ、遠征軍が凱旋して初めての叙勲式だからな。盛大であればあるほどいいだろう。
レイモンド:
我々にお任せください!ガイア隊長!
旅人:
叙勲式?
ガイア:
おや?栄誉騎士にパイモンじゃないか。ハハッ、どうやらお前たちを招待する手間が省けたみたいだな。
ガイア:
これほどの有名人がゲストとなると、遠征軍のやつらも喜んでくれるだろう。
パイモン:
叙勲にゲストって…さっきからなんのことだ?
ガイア:
ほら、騎士団には自分だけの「称号」を持った騎士が、たくさんいるだろう?
ガイア:
大団長の「北風」や、エウルア隊長の「波花」みたいにな…伝承に由来するものもあれば、特殊な経緯を持つものもあるんだ。
ガイア:
そしてそういった称号は大抵、その騎士の品行や功績を称えるために授与される。
旅人:
俺の「栄誉」みたいに?
ガイア:
ん…そう言えばそうだな。あの時はトワリンの侵蝕問題を解決するのに忙しくて、お前のための式典を開いてやれなかった…よし、いっそ今回、その埋め合わせもするっていうのはどうだ?
旅人:
ずっと前のことだし、気にしないで。
パイモン:
今回の叙勲式は、遠征から帰ってきた騎士のためのものだろ?みんなの晴れ舞台を邪魔するわけにはいかないぜ!
パイモン:
それに、式典で受章するより、ゲストとして招待されるほうがカッコいいからな!ほら、なんだか偉大な先輩みたいだろ!
旅人:
言われてみれば、確かに…
ガイア:
ほう?なら、その偉大な先輩が式でどんな振る舞いをするのか、楽しみにさせてもらおうか。
パイモン:
ところで、「称号」をもらう騎士って誰なんだ?
ガイア:
遠征で特に貢献した騎士に授与される予定だ。ヴィンフリート、ライフヘルム、そして——
ガイア:
第5小隊の副隊長、ローエン。
パイモン:
ローエン?あいつ、まだ称号を持ってなかったのか?
ガイア:
ああ…実力的には、遠征に出る前から称号を持っていてもおかしくはないんだがな。
ガイア:
あいつは入団してまだ日が浅く、個人的な事情もあって、今まで先延ばしにされていたってわけだ。
ガイア:
なんでも、今回の式典で称号を得るだけじゃなく、正式に第5小隊の隊長に就任する予定だって噂でな…
ガイア:
フッ、誰かさんが残した記録を破ることになりそうだ。
ガイア:
「西風騎士団の最年少隊長」——現時点での記録保持者は、元騎兵隊長のディルックだ。
ガイア:
フフ…その時が来たら、「元隊長」がどんな顔をするか、見ものだな。
旅人:
顔色ひとつ変えないんじゃない?
ガイア:
そうとも限らないぜ?少なくともあいつがその記録を取った時は、実に晴れやかに笑っていたからな…
パイモン:
ディルックの旦那の晴れやかな笑顔…想像できないぞ…
ガイア:
ま、それはさておき——今回の叙勲式でローエンがどんな「称号」を授与されるか、当ててみないか?
パイモン:
へへっ!オイラに任せとけ!ローエンだよな…ローエンといえば…「短剣騎士」?「冷笑騎士」?うーん…「頑丈騎士」はどうだ!
旅人:
腕が落ちたね…パイモン。
パイモン:
オイラの腕が落ちたわけじゃないぞ!あいつを一言で表すのが難しすぎるんだ…で、結局なんなんだ?
ガイア:
ああ、今のオッズは…いやいや、可能性が一番高い「称号」は——
ガイア:
「仁愛騎士」だ。
パイモン:
…仁…愛…?
パイモン:
…って、あいつと1ミリも関係ないじゃんか!
ガイア:
ハハッ、それについては話せば長くなるな。残念だが、誰かがお前たちを探しに来たみたいだぜ。
ポルト:
栄誉騎士!栄誉騎士ー!よかった、ここにいたのか。
旅人:
俺に何か用?
ポルト:
ああ…大団長が、騎士団本部で君と話がしたいと仰っていてな。なんでも、重要な相談があるとのことだ。
パイモン:
ファルカが?オイラたちに重要な相談って、なんだろうな?
パイモン:
それはないとは言い切れないな…でも、ホントに大事な用事かもしれないぜ?あいつだって、真面目になる時がないわけじゃないし…
ガイア:
ああ、またな——叙勲式にはぜひ参加してくれよ。
騎士団本部へ向かう
ファルカ:
…叙勲式の段取りについて、何か質問はあるか?というか…俺の話を聞いてるか?
ローエン:
ん、ああ…異論はねぇよ。
ファルカ:
…ゴホン!ローエン!
ローエン:
あ…もう行っていいのか?ありがとな、大団長!
ファルカ:
あっ——おい、戻ってこい!
ファルカ:
はぁ…最近の若いやつはどうなってんだ?俺が称号をもらった時なんて、一晩中興奮しっぱなしで眠れないほどだったってのに…
ローエン:
へぇ?で、その夜は樽何本分の酒を飲んだんだ?
ファルカ:
…重要なのはそこじゃないだろ!
ファルカ:
ったく…まぁいい。お前が騎士の称号や隊長の座にあまり興味がないってことは、俺もよく分かってるよ。
ファルカ:
だが、お前に「仁愛騎士」を継がせたい…それが、アドルノが正式に引退する前の最後の願いなんだ。
ローエン:
……
ファルカ:
お前、モンドに戻ってしばらく経つだろ?それに普段からドーンマンポートに駐屯してるんだし…会いに行こうとは思わないのか?
ローエン:
…帰ってきてからずっと、報告書の山に追われてるんだ。そんな暇ねぇよ。
ファルカ:
ほう?俺の目には、お前の報告書はギュンターの筆跡で書かれてるように見えたがな。
ローエン:
チッ…あの程度の「書類仕事」すらこなせねぇとは…あいつもまだまだだな。
ファルカ:
とにかく…一度、アドルノとしっかり話し合ってくれ。「仁愛騎士」と、隊長の任をスムーズに引き継げるようにな。
ファルカ:
これは大団長命令だ。これ以上、仕事を言い訳にするのは認めないぞ。
ローエン:
はぁ…
ファルカ:
そんなに浮かない顔するなって。お前たちが「遠征」前に交わした約束のことは、大体分かってる。もしフォローが必要なら…
ファルカ:
…コホン。アドルノは状況が特殊だからな…今回だけは、例外として俺が付き合ってやってもいい。
ローエン:
…いや、やめとく。お前らは長いこと一緒に戦ってきたんだろ。嘘で取り繕ったところで、じじいには一瞬でバレるさ。
ファルカ:
ああ…それもそうだな。俺も今はそこまで余裕があるわけでもないんだが…俺の他に、お前に同行できそうなやつがどこにいる?
ファルカ:
説得力があって、アドルノと親しすぎないやつ…そんな騎士いるか?
ローエン:
フッ、そういう「騎士」なら…ちょうどモンドに来てるみたいだぜ。
ローエン:
さっきは、本当に困ってたんだ。だが、お前らが窓の外を通りかかるのが見えてな——これぞ「風神様のお導き」ってやつだろ?
パイモン:
ぜんぜん思わないぞ!オイラたちに嘘をつく手伝いをさせたいだけだろ!まぁ、まだ状況はよくわかってないけど…
ローエン:
誠実さは騎士の基本的な美徳だろ。俺はただ、栄誉騎士に「ダチ」を「演じて」もらいたいだけだ。
ローエン:
…ついでに、遠征中の出来事の裏付けもな。安心しろ、俺が一つ嘘をつくたびに…一発殴っていい。
パイモン:
それでもまだ、問題だらけじゃないか?オイラたちがファルカと合流したのは、遠征の最後のほうだったし…おまえに会ったのだってナド・クライじゃなかったよな…
ローエン:
おっと、忘れるところだった…「ダチ」になるためには、決まりがあるんだろ?
ローエン:
——ほら、これが「友達料」ってやつだ。
パイモン:
…す、すごい量だぞ!
ローエン:
全部、特別任務の手当だ。いつの間にやらこんなに貯まってたが、俺には使い道がない。なら、ダチにやったほうがいいだろ?
パイモン:
なぁ、旅人…友達が一人増えるのも…悪くないんじゃないか?
旅人:
さっき言ってた問題は!?
パイモン:
も、問題は解決するためにあるんだぞ!と…友達のためだからな…!
ローエン:
…「仁愛騎士」アドルノ。第5小隊の隊長で、俺の直属の上司だ。
パイモン:
「仁愛騎士」だって!?それって、ガイアが言ってた…
ローエン:
俺がもうすぐ継承することになる称号、か?騎士団の外でも噂が広がってんのか…実は、前にじじいと約束したことがあってな。
ローエン:
俺を遠征隊に推薦する条件として、言われたんだ。どうすればまともな騎士になれるか、遠征中によく考えろ…って。
ローエン:
で、帰ってきたらじじいから「仁愛騎士」の称号と…隊長の座を継ぐことになってるんだよ。
パイモン:
ん?ちょっと待てよ。それって、つまり…そいつに認められる自信がないから、オイラたちに芝居に付き合ってほしいってことか?
ローエン:
勘違いすんなよ。俺は称号だとか役職なんかにゃ興味はねぇ。ただ…説教を聞きたくないだけだ。
旅人:
…その人は遠征に参加してないの?
ローエン:
本人はその気だったんだがな。今までだって、何度も大団長の遠征についてったんだ。こんなにデカい遠征の機を逃すわけにはいかないだろ?
ローエン:
でも残念ながら、歳も身体も自分の意志だけじゃどうにもならない。「仁愛」の称号に相応しい後継者を見つける…それが、じじいの最後の願いなのかもな。
パイモン:
そっか…じゃあオイラたち…
旅人:
…わかった、付き合うよ。
ローエン:
やっぱ、お前らにはこの手が効くと思ったんだ。さ、ドーンマンポートへ行こう。
パイモン:
おい!どの言葉が本心なんだよ!本当に、本っ当に、嘘をつきにいくんじゃないだろうな…?
ローエンとともにその場を離れた。その後、ファルカはとある手紙を前にして思い悩んでいるようだった…
ファルカ:
以上がスメールで起きた出来事…ドットーレがモンドに残した毒を、排除する時が来た…
ファルカ:
やれやれ…イロックにウルサ、か…久しぶりにその名を聞くと、本当に頭が痛くなるな…
ドーンマンポートに行く
ローエン:
よう、じじい!まだ生きてやがったのか?
アドルノ:
ふん、遠征中にくたばったんじゃなかったのか?しばらく顔を見ていなかったからな、どこかの墓に埋まっているのかと思ったぞ。
ローエン:
そいつは心配しすぎだな。むしろ俺が墓穴を掘って、敵を埋めてやってたんだぜ。
旅人:
…独特な挨拶だね…
アドルノ:
この二人は?
ローエン:
俺のダチ——「栄誉騎士」と、そのガイドのパイモンだ。
アドルノ:
「栄誉騎士」…以前、風魔龍事件を解決した、あの「栄誉騎士」か?
ローエン:
風魔龍だけじゃないさ。遠征でも世話になった…ワイルドハント、「博士」、アンドリアス…全部こいつが関わってる。
アドルノ:
ほう?俺もドーンマンポートの騎士たちに、遠征について聞いたことがある。
アドルノ:
だが、どういうわけか、誰も最後まで話を聞かせてくれなくてな…まるで、誰かが口止めさせているみたいだったぞ。
パイモン:
(ローエン…まさかおまえの仕業じゃないよな?)
アドルノ:
そういうわけだからな、じっくり聞かせてもらうとするか。こんなに偉大な騎士が、どうしてお前みたいなやつと親しくなったんだ?
ローエン:
ま、俺らにはモラみたいに輝く「騎士道精神」があるからだろ。だよな、パイモン?
パイモン:
確かに…モラみたいに輝いてるな、あはは…
ローエン:
俺はちゃーんと、じじいとの約束を守ってたんだぞ?例えば…
ローエン:
「ダチ」と固い信頼関係を築くために、毎週騎士たちに声をかけて合同訓練をやってるんだ…
アドルノ:
ああ、俺が教えた「連携強化」だな。仲間との信頼や絆を育むには、もってこいの手法だ。
ローエンは詳細に——しかし曖昧な言い回しで、自身が実施した「合同訓練」について語った…
ローエン:
「ダチ」の絶対的な安全を確保するために、俺は毎晩拠点の周辺に潜む危険を排除してるってわけだ…
アドルノ:
そうだな…警戒や偵察、確かにそれも隊長として心がけておくべきことだ…
ローエンは詳細に——しかし曖昧な言い回しで、「警戒体制」について語った…
ローエンの遠征での活躍を証言する
ローエン:
ハッ…「ダチ」の安眠のためなら、その程度の仕事は大したことじゃねぇさ。
ローエン:
もちろん、遠征軍の情報収集のためにも、常に「人脈」を保つ…で、「ダチ」と真心から交流することも欠かせないよな…
アドルノ:
はは、お前も遠征を経て、ずいぶんと物分かりがよくなったもんだ…
ローエンは詳細に——しかし曖昧な言い回しで、情報収集のやり方について語った…
ローエン:
どうだ、旅人、パイモン?嘘はついてねぇだろ?
旅人:
嘘…ではないね…
ローエン:
そういうことだ、じじい。お前は安心して、その…「仁愛騎士」とやらを俺に託して、ゆっくり休んでな。
アドルノ:
おい、まだ話は終わっていないだろ?ナド・クライで強敵と戦ったって聞いたぞ?
アドルノ:
確か…「月の狩人」だったか?
ローエン:
……!
パイモン:
そんなことがあったのか!初耳だぞ!?
ローエン:
…フン、話すほどのことじゃねぇし、話す必要もねぇだろ…
ローエン:
…俺も大団長についてって、あいつを待ち伏せしたが…役に立つどころか、逆にボコられたんだ。
ローエン:
それからは拠点で何日も寝込んでてな。ようやくベッドから出られるようになった頃…大団長がお前らと手を組んで、あいつを追放したって話を聞いた。
パイモン:
そうだったのか…だから、あの時おまえはいなかったんだな…戦うのが大好きなのに…
旅人:
パイモン…
パイモン:
あっ!ごめん…
ローエン:
謝んなって、お前の言う通りだ。俺が弱かったから…
ローエンは「過去」を思い出した…
ローエン:
鈍く、弱く、脆い…凡人だ。
ファルカ:
ローエン!おい、ローエン!…チッ、お前たちはあいつを連れて先に撤退しろ!
パイモン:
そうだぞ!オイラたちだって、最後はあいつ自身の力を利用して、なんとか追放できたんだ…おまえもあんまり気にしすぎるなよ!
ローエン:
…だが、あいつだって元は一介の凡人だった…だろ?
旅人:
……
アドルノ:
コホン、ちょっといいか?その「月の狩人」ってのを直接見たことはないが…「騎士」の強さってのは、単純な力だけで決まるものじゃないと俺は思っている。
アドルノ:
俺はこれから重要な仕事をしに行く。ローエン、お前たちもついてこい。
ローエン:
重要な仕事?とっくに半分引退してるようなもんだって聞いたんだがな。
アドルノ:
ははっ、ついてくれば分かる。これは「仁愛騎士」の必修科目だ。
アドルノについていき、彼を手伝う
マックス:
あっ!「仁愛騎士」だ!
モリツティール:
アドルノおじいちゃん!
北地ショートヘア:
ニャーオ。
ハンネローレ:
ほら、落ち着いて、押さないで!ちゃんと並んでください!
アドルノ:
まあまあ、構わないさ。子供なんだから、賑やかなのはいいことだ。ほうら、今日の分のキャンディだよ。
モリツティール:
——おじいちゃん、ありがとう!
マックス:
おおっ、おいしいなぁ!
ローエン:
…これが「重要な仕事」ってやつか?
アドルノ:
こんなのはほんの序の口だぞ。「新兵」、しっかりついてこいよ!
ローエン:
…へいへい、「隊長」。
数々の仕事を終えたローエンは、疲れ果ててベンチに倒れ込んだ…
ローエン:
はぁ…
ローエン:
逆にこっちが聞きてぇよ——なんでそんなに手慣れてやがる?
ローエン:
あの「栄誉騎士」が毎日こんなことやってるってのか…信じられねぇ…
パイモン:
オイラたちだって、世界を滅ぼそうとするやつを毎日相手にしてるわけじゃないぞ…というか、そんなやつが毎日現れたら怖すぎるだろ!
ローエン:
日常、ねぇ…モンドに戻ってしばらく経つが、いまだに慣れねぇな。
ローエン:
ついこの間までは、野宿しながら危険と隣り合わせの生活が、俺たちの「日常」だったってのに。
パイモン:
それは遠征してた時の話だろ?今はもう安心していいんだぞ!
ローエン:
そうか?俺からしたら、「日常」なんてのは端っから安心できるようなもんじゃないと思うけどな。
ローエン:
モンドの風雪は風神が吹き飛ばしたし、今の平和だって騎士団が勝ち取ったもんだ。ほんの些細な偶然に見舞われりゃ、あっという間に崩れ去るだろうよ。
ローエン:
だから…安定した「日常」が誰かに覆されるのを待つくらいなら、むしろ「非日常」に身を置いてたほうが安心できる。
旅人:
……
アドルノ:
——それほどまでに脆いからこそ、俺たち騎士が守らなければならないんだろう。
パイモン:
あ、もうキャンディは配り終わったのか?
アドルノ:
ああ。そっちも一段落ついたのか?まさか、お前がそんなに我慢強かったとはな…
アドルノ:
次の仕事は、いい運動になるはずだ…この周辺の魔物の状況を見回りに行くぞ。
ローエン:
魔物?騎士団の人手が足りてないのか?もう何年も剣を握ってないんだろ?
アドルノ:
おい、俺はまだ正式に引退したわけじゃない!ただの巡回くらいなら、まだまだやれるぞ。
アドルノ:
まあ、確かにこの間は少しキツかったが…ほら、今はピンピンしてるだろ?動けなくなってから後悔しても遅いからな。
ローエン:
本当にジッとしてられねぇじじいだな…ま、いいぜ。どこを巡回するんだ?
アドルノ:
近頃、郊外で挙動のおかしい魔物が現れたんだ。まだ被害報告はないが、用心するに越したことはない。
アドルノ:
いつもなら近くを巡回して、魔物が街に近づいていないか確認するだけなんだが、今回はお前たちがいるからな。
パイモン:
へへっ——巡回どころか、余裕で全部やっつけちゃうぜ!だろ?
旅人:
朝飯前だよ。
ローエン:
…ああ、行くか。
パイモン:
あれ?変だな…あいつなら、もっとワクワクするかと思ってたぞ…
パイモン:
そうそう…って違うだろ!はぁ、あいつがなに考えてるか、さっぱりわかんないな…
目的地に行って巡回する
パイモン:
おかしいな…それらしい痕跡は見当たらないぜ?本当にこの近くに魔物が出たのか?
???:
あの挙動不審な魔物たちを探しているのなら、一足遅かったようだな。
ディルック:
どうやら、騎士団より先にやつらを始末した者がいるようだ。
アドルノ:
ディルック?まさかこんなところでお前に会うとはな。
ディルック:
お久しぶりです、アドルノさん。それに旅人、パイモン…ローエン。
パイモン:
えぇっ、もしかして…どこかの「闇夜の英雄」が、この辺の魔物を全部倒しちゃったのか?
ディルック:
違う。
旅人:
本当に違うの?
ディルック:
…その「闇夜の英雄」とやらは知らないが…この戦場に残された痕跡は、巷で噂されているやつのやり方と一致しない。
ディルック:
何者かが早々に魔物の情報を得て、「処分」しに来たようにさえ感じる。ここには、一切の残骸も残されていないからな。
ローエン:
へぇ?まるで、ディルックさんは調査にでも来たみたいだな?だが、そいつは妙な話だ。アカツキワイナリーのオーナーが、どうして急に魔物に興味なんざ持ったんだ?
ディルック:
アカツキワイナリーのキャラバンは、ドーンマンポートを通るからな。噂を耳にして心配になり、自分で確認しに来たんだ。
ディルック:
むしろ騎士団は、遠征期間はともかく…彼らが戻ってきてからも人手不足なのですか?
アドルノ:
ははっ、相変わらず厳しいな。この巡回は俺が勝手にやってるだけだ。まだ身体が言うことを聞くうちに、できる限りのことはしておきたいからな。
アドルノ:
もう何十年もこうしてきたんだ、今更じっとしてはいられないよ。
ディルック:
…お疲れ様です、「仁愛騎士」先輩。
パイモン:
あ、あのディルックの旦那が…先輩って呼んだのか!?ファルカにさえ、そんな風に呼んでないのに!
ローエン:
フッ、それはあいつ自身に問題があるんじゃないのか?
アドルノ:
はぁ…あの件については、イロックが大団長不在の隙につけ込んだだけだ。そうじゃなければ、あれほど事を荒立てることができるものか。
アドルノ:
もしあの時、大団長と赤楊騎士があの場にいたらアルダー…お前の父、クリプスが魔龍を退けた功績を、易々ともみ消させはしなかっただろう。
アドルノ:
…俺たちのようなモンドに残った古株だけが、お前の親父のために声を上げる事態にはならなかったはずだ。
ディルック:
——だが、あの時彼らはいなかった…そうでしょう?
ディルック:
雑談は終わりにしましょう。手がかりがない以上、ここに長居する必要もありません。ではまた、旅人、パイモン。
ディルック:
それと…お気をつけて、「仁愛騎士」。
アドルノ:
やれやれ…ウルサにイロック…たとえやつらが消えようと、残された傷ってのはそう簡単に消えやしないようだ。
アドルノ:
……
ローエン:
なんだ?俺が説明してやろうか?いいぜ——ウルサはぶん殴り甲斐のある魔龍。で、イロックはぶん殴りたい督察長…
アドルノ:
はぁ…やっぱり俺が説明しよう。ウルサというのは、千年前にモンドに現れた魔龍だ。強大な力をもって、各地に災厄をもたらした。
アドルノ:
西風騎士団の創設後、初代団長ヴァネッサが風神の助けを借りてウルサを封印し、それ以来魔龍は沈黙していたんだが…
アドルノ:
つい十年ほど前、やつは再びモンドに現れたんだ!
アドルノ:
しかも、よりによってちょうど大団長が不在の時期を狙ってな。それだけじゃない…騎士団が討伐に出ると静かに身を潜め、部隊が休息を取るとちょうど現れる…
パイモン:
いくらなんでもタイミング良すぎるだろ!
ローエン:
最終的に、タイミング良くファデュイ執行官に「ついでに始末」されたんだ。
ローエン:
ああ、察しがいいな。そいつはお前らもよく知ってる——「博士」だ。正確に言えば、あいつの断片の一つってとこか?
パイモン:
じゃあ、魔龍ウルサの復活は…「博士」の断片による陰謀だったってのか?
アドルノ:
いや、そうとも言い切れない。いくらファデュイの執行官といえど、たった一人でモンドにあれほどの混乱を引き起こすのは簡単ではないはずだ。
旅人:
他に黒幕がいるってこと?
アドルノ:
ああ、もう一人な。「人智を超えた力」に魅入られ、裏で「博士」と結託していた人物…
アドルノ:
当時の西風騎士団の督察長であり、百有余年の騎士団の歴史における最大の裏切り者——それが、イロックだ。
アドルノ:
…ディルックが成人して間もない頃、ウルサがアカツキワイナリーのキャラバンを襲ったんだ。
アドルノ:
それは本来、やつらが恐怖を煽るために用いる常套手段であり、ありふれた襲撃の一つに過ぎないはずだった。
アドルノ:
だが、傲慢な魔龍は一介の商人——ディルックの父、クリプスによって撃退されたんだ…彼の命と引き換えにな。
アドルノ:
魔龍が敗走したという知らせは、恐怖を利用して権力を握ろうとするイロックにとって都合が悪かったんだろう。だから、やつは「騎士団の名誉を守る」という大義名分を掲げ、事件の真相を隠蔽したのさ。
アドルノ:
もし俺があの時、イロックと「博士」が手を組んでいることにもっと早く気づけていれば…すべてを阻止することができたかもしれない。
ローエン:
おい、なんでもかんでも自分のせいにすんじゃねぇ。イロックは本当に隠し事が得意なやつで、「魔龍事件」が起きるまで尻尾を見せなかったんだ。
ローエン:
…当時の被害者でさえ、自分が誰にやられたか分かってなかったんだからな。
アドルノ:
はぁ…
ローエン:
…じじい、あんなクソ野郎の影に怯えて生きる必要なんてないんだぞ。
アドルノ:
…ああ、お前たちの言う通りだな。俺たちの人生はまだまだ先が長いんだ。
アドルノ:
さて、次の仕事に向かうとしよう…今度は、お前たちもやる気が出るはずだ。第10小隊の研究を手伝いに行くぞ。
実験に協力する
スクロース:
うーん…アリスさんが残した魔法、やっぱりそう簡単に解明できそうにはないなあ。
パイモン:
よう!スクロース…ん?これは…
旅人:
遠征軍を迎えるために使ったシャボン玉?
旅人:
いかにも魔女会が作りそうなものだね…
スクロース:
あっ、旅人さん!もしかして、「模擬訓練シャボン玉・〇二式」の開発テストに協力してくれるの?
ローエン:
あれは…記憶を再現する魔法のシャボン玉か?
旅人:
君も使ったことがあるの?
ローエン:
戻ってきてすぐに、こいつを使えば遠征中にモンドで起きた様々な出来事を把握できるって教えられたんだ。
ローエン:
…でも、こんなすごい魔法の使い道が、物語を聞くためだけとはな。無駄遣いもいいとこだろ。
アドルノ:
ははっ、そう思ったのはお前だけじゃない。調査小隊もすぐにポテンシャルに気づいて、「模擬訓練」に応用しようと考えたんだ。
スクロース:
もし、先輩たちの記憶の中の強敵を再現して、新米騎士のみんながリアルかつ安全な「模擬訓練」をできるようになれば…きっと、もっと多くの戦力を育成できるでしょ?
スクロース:
でも、どれだけ調整しても、いまだに原理を完全には把握できてないの。それに、リアルと安全性の境界を制御するのも難しくて…
パイモン:
「安全」か…アリスはまともに考えたことなさそうだな。
ローエン:
へぇ?面白そうじゃねぇか。ちょっとやらせてくれよ。
ローエン:
この仕事は、じじいの出る幕じゃないだろ?
アドルノ:
気にするな。この老体に何ができるかぐらい、ちゃんと理解している。ここには俺の頭の中の「記憶」を提供しに来たんだ。
ローエン:
ああ?じゃあ、元々は誰にテストさせるつもりだったんだ?
テオドール:
スクロースさん、テストの手配はもう…あっ…ローエン?
ローエン:
…テオドールか?
テオドール:
どうしてここに…
ローエン:
——俺はたまたまじじいに連れられて、この「模擬訓練シャボン玉」とやらをテストしに来ただけだ。で、お前が本来のテスターってわけか?
テオドール:
あ、ああ…その、そちらの方々は…
アドルノ:
コホン、紹介しよう。「栄誉騎士」と、そのガイドのパイモンだ。
テオドール:
栄誉騎士?どうしてそんな有名人が…
アドルノ:
こいつはテオドール。第8小隊の見習い医師で、お前たちと同じくローエンの友人だ。
パイモン:
ローエン?…の…友達?
ローエン:
そんなに驚くことねぇだろ。俺の「ダチ」はたくさんいるんだからよ。な、パイモン?
パイモン:
お、おう…
パイモン:
(この「ダチ」の「友達料」はいくらなのか気になるぞ…)
テオドール:
ん…?
ローエン:
テオドール、お前の本職は救護と医療だったはずだろ?なんでテスターなんかやってんだ?
テオドール:
えっと、この「模擬テスト」の構築には僕も関わっているので、基本的な原理は多少理解しているんです。
テオドール:
それに、一応は騎士を目指して鍛えていましたから、もし何かあっても自分で治療できるかなと…
スクロース:
万が一ってこともあるから、絶対に無理はしないでね。ローエンさんのテストデータでも十分なんだし。
テオドール:
そ、そうですね…ローエンに任せたほうが、いい…ですよね…
アドルノ:
しゃんとしろ、テオドール。ローエンに何かあったら、お前の治療が頼りなんだぞ。
テオドール:
…はい。
ローエン:
歯ごたえのありそうな記憶があるとは思えないが——始めてくれ、じじい。
記憶の中の強敵に挑む
ローエンはシャボン玉の中の「強敵」を軽々と破した…
ローエンと会話する
スクロース:
痛覚パラメータにまったく変動がない…えっと、もっと普通のテスターに変えるべきかな…
ローエン:
——その必要はねぇ、続けろ。
アドルノ:
まだやるのか?お前にとって戦い甲斐のある敵なんていないだろうが…
ローエン:
ここにはまだ一人、もっと恐ろしいやつらを相手にした「騎士」がいるだろ?
ローエン:
さあ、見せてくれ…お前の記憶の中の「月の狩人」をよ。
旅人:
…本気なの?
ローエン:
記憶の中のあいつにまでビビるほど、落ちぶれちゃいねぇ。ただ、確かめたいのさ…
ローエン:
今の俺が、いまだにあいつの言う通り…脆い存在かどうかをな。
「月の狩人」に挑む
魔法の空間の中で、ローエンは再びシャボン玉の中の「月の狩人」を迎え撃った。
しかし戦闘中、ローエンは並々ならぬ力を爆発させ、その力が暴走するにつれて、空間そのものも次第に不安定になっていった…
今にも崩れそうな空間の中で、ローエンは突然矛先を転じ、彼を目覚めさせようとするアドルノへと真っ直ぐ向けた。間一髪のところで、ローエンはどうにかそれを抑え込み、アドルノを傷つけずにすんだ…
ローエンの状況を確認する
アドルノ:
はぁ…はぁ…
スクロース:
アドルノさん!
アドルノ:
俺のことはいい…ちょっと腰を痛めただけだ、少し休めばすぐ治る…それよりローエンは…
ローエン:
——ゴホッ!…フン…
アドルノ:
最後の一撃を無理やり抑えたせいで…かえって自分が傷を負ってしまったのか。
アドルノ:
テオドール、ローエンを検査に連れて行ってくれ。後遺症を残さないようにな。
テオドール:
分かりました…ローエン、ひとまず僕についてきてくれ。
ローエン:
……
アドルノ:
——ゴホッ!
スクロース:
アドルノさん!大丈夫!?
アドルノ:
心配ない…歳を取ると、どうしても身体に不調が出るものでな…少し激しい動きをするとすぐこれだ…ふぅ…後でテオドールに薬を出してもらえばいいだけさ。
パイモン:
ローエンのやつ…いったいどうしちゃったんだ?
スクロース:
この魔法に何か問題があったのかな?でも、もしあの空間が再現した記憶に不備があれば、栄誉騎士が気づくはず…
アドルノ:
問題は…ローエンにあるってことか?
アドルノ:
まさか、「月の狩人」との戦いがまたあいつを刺激したんじゃ…
アドルノ:
ああ…ローエンは昔から力を追い求めていた。
アドルノ:
騎士団の裏切り者イロックは、より強大な力を求め、「博士」と手を組み禁忌の実験を行い…
アドルノ:
ローエンは、危うくやつらの実験体にされるところだったんだ。
パイモン:
「博士」の実験だって!?
旅人:
(まさか、コレイと同じ…)
アドルノ:
幸い、イロックの配下が行動を起こす前に、騎士団はわずかな手がかりを掴んでその企みを突き止めた。
アドルノ:
やつらは慌てて実験を中断し、被験者を移送しようとしたが…それを俺たちが阻止し、全員救出することができた。
アドルノはローエンを助け出した時の様子を語った。不安で泣いている他の子供たちとは違い、ローエンの反応は…特別だったという。
スクロース:
私も前に聞いたことがある…アドルノさんの「仁愛騎士」の称号は、その事件の後に授かったんだよね?
スクロース:
でもまさか、ローエンさんが当事者だったなんて…
アドルノ:
はぁ…その称号は俺なんかが得るべきじゃないんだ。確かに、囚われていた子供たちを救い出すことはできたが、黒幕のイロックを捕らえることはできなかったからな。
アドルノ:
…やつらの実験場さえ見つけられなかった。それにローエンを、あの時の影響から完全に解放してやることもできなかったんだ。
アドルノ:
あいつはずっと、力を手に入れることでしか自分を守れないと思い込んでいた。遠征を経て、少しは考えを改めることを期待していたんだが、まさか…
パイモン:
そういうことだったのか…
アドルノ:
ふっ…あいつに付き合って「友達」のふりをするのも、結構大変だろう?
パイモン:
そうなんだよな…あっ!
アドルノ:
はっはっは、多少老いぼれようと、この目はまだ霞んでないぞ。
アドルノ:
どんな手段であれ、あいつの芝居に付き合ってくれる仲間を見つけられたことが、成長の証だろうか。
アドルノ:
芝居でも構わないんだ。お前たちと一緒にいるうちに、あいつもいつか悟る日が来るかもしれない。
スクロース:
うーん…
旅人:
スクロース?どうしたの?
スクロース:
少し気になることがあって…「栄誉騎士」、ちょっと来てくれる?
スクロース:
…妙なんだ。アドルノさんは、ローエンさんの「執念」があの魔法の空間の暴走を引き起こしたって言ってたよね。
スクロース:
でも、「模擬訓練シャボン玉・〇二式」のパラメータはどれも正常なの…むしろ、ローエンさんがあの時見せた爆発的な力のほうが、なんだか普通じゃない気がして。
パイモン:
スクロースも見たことないのか?
スクロース:
うん、それは私たちが普段目にしてる元素力とは違うみたい。アルベド先生が言ってた「虚界力」でもないし…栄誉騎士、何か心当たりはない?
旅人:
(あの一瞬、確かに感じた気がする…あの力、どこかで…でも、確信は持てない。)
パイモン:
それってつまり、ローエンの身になにか異変が起きてるってことか?うぅ…あいつ、まさか危ないことに手を出してるんじゃないよな?
スクロース:
そ、そういう意味で言ったんじゃなくて、ただ事実を報告しただけなの。証拠がないのに、仲間をそんなふうに疑うのはよくないよ。
パイモン:
た、確かにそうだな。こういう状況だって初めてじゃないんだし…やっぱり慎重に行こうぜ…
少し離れた木陰で、テオドールがローエンの怪我の具合を診ている…
テオドール:
どうして来たんだ?前にも話しただろう…
ローエン:
ファルカの命令だからな、しょうがないだろ。
テオドール:
それにしても不注意すぎるよ、あんなに大きな力を使うなんて…はぁ…
テオドール:
——万が一、バレたらどうするつもりなんだ?
ローエン:
なら、そうなる前に…さっさと実験を完成させねぇとな。

騎士の追跡
凡人を超越した力を追い求めるには、一体どんな代償を払う必要があるのだろうか…
アドルノの住む場所へ向かう
昨日、ローエンとテオドールは何も言わずに姿を消してしまったようだ。パイモンと一緒に、アドルノのところへ探しに行くことにした…
パイモン:
おーい!アドルノじいちゃん!
アドルノ:
おお、パイモンに栄誉騎士か。
旅人:
もう大丈夫?
アドルノ:
はっはっは、もう大丈夫だ。そもそも大した不調じゃなかったし、テオドールにも診てもらって、すっかり治ったよ!
アドルノ:
こんな老いぼれが今でも動き回れるのは、あいつが普段から面倒を見てくれてるおかげなんだ。でなきゃ、とっくに土の中だったろうな。
パイモン:
テオドール…って、あの第8小隊の見習い医師のことか?あいつ、見かけによらずそんなにすごいやつだったのか…
アドルノ:
あいつもかつては最前線で戦う騎士を志していたんだが…もしかしたら、医師のほうが向いているのかもな。
アドルノ:
ま、それはともかくだ…ローエンを探しに来たのか?
パイモン:
そうなんだ。あいつ、昨日のテストの後からどこに行ったのかわからなくてな…
旅人:
こっちには来なかった?
アドルノ:
ああ、今朝書き置きを残していったぞ…昨日のことを謝りたい、だとよ。
アドルノ:
あれは全部芝居で、退屈な日常に耐えられなかったとも書いてあったな。そして、詫びとして——
ローエン:
「…邪魔な魔物はすべて、俺が殺し尽くしてやる。」
パイモン:
なんだよ、その謝り方…まったく、あいつらしいな。
アドルノ:
ああ…そのへんの魔物ならあいつの敵ではないだろうが、また昨日のようなことが起きないか…少し心配なんだ。
アドルノ:
お前たちが見守ってくれるというなら、それに越したことはない。
旅人:
うん、気にかけておくよ。
ローエンを探す
倒された数多くの魔物の中で、ディルックを見つけた…?彼の話によると、これらはすべてローエンによる仕業らしい…
少し前…
ローエン:
こいつで最後か…たっぷり楽しませてくれよ!
実験魔物:
——!
ローエン:
…あん?誰だ!
実験魔物:
……!
ローエン:
チッ…逃げやがったか…
ローエン:
——ワイナリーの旦那が、魔物狩りにここまで熱心だったとはな?
ローエン:
それとも、本当に追ってるのは魔物だけじゃない…ってか?
ディルック:
君が排除したいのも、「魔物」だけというわけではないんじゃないか?
ディルック:
現場は「何一つ」痕跡が残されていないほど、念入りに処理されていたが。
ローエン:
へぇ、そいつは初耳だ。
ディルック:
なら、一緒にこの辺りの魔物を調べよう。多くの人が関心を寄せる異常が、どこにあるのかをね。
ローエン:
…やめだやめだ、俺は逃げた魔物を追うとするぜ。調査なんてのは、俺のガラじゃないしな。
ローエン:
じゃあな、ディルック…「先輩」。
ディルック:
君たちが来る前の出来事は、大体こんなところだ。
パイモン:
ローエンのやつ…一体なにを考えてるんだ?やっぱり「頑丈騎士」はやめて、「横暴騎士」って呼んでやろうかな。
パイモン:
そうだぞ!昨日アドルノじいちゃんが言ってたけど…そいつら、ちょっと変わってるけど、人を襲ったりはしてないんだろ?
ディルック:
可能性としては、何者かが陰で密かに処理していると考えられる。そして…どうやら奴らは腹が減ると、優先的に自分の仲間を攻撃する習性があるようだ。
旅人:
仲間を…攻撃するの?
ディルック:
ああ。目撃情報が少なく、確信が持てなかったが…ここに残された魔物の残骸には、確かに互いに攻撃し合った痕跡が数多く残っている。
ディルック:
群れを成していながら、互いに殺し合う…自然発生した魔物とは思えないな。
旅人:
確かに、不気味だね…
パイモン:
えっ?でも、魔物同士で攻撃し合うっていうんなら、ほっといて自滅するのを待てばいいだけじゃないか?どうしてそんなに警戒するんだ?
ファルカ:
なにせ、「ウルサの血肉」を持つ魔物が現れたのは、今回が初めてじゃないからな。
パイモン:
——ファルカ!
ファルカ:
よう、奇遇だな。栄誉騎士にパイモン、それにディルックも。
ディルック:
…どうやら騎士団も、今回の異常事態について何も知らなかったというわけではないようだな。
ファルカ:
ああ…イロックの悲劇は、二度と繰り返させるわけにはいかないからな。
パイモン:
さっき言ってた…「ウルサの血肉」?それも、イロックってやつと関係あるのか?
ファルカ:
常軌を逸した力を得るため、イロックはかつてドットーレの断片と共謀した。そして、魔龍ウルサの血肉から、その力が込められた血清を抽出したんだ。
ファルカ:
俺たちがイロックの粛清を決断した時、あいつと配下の連中はすでにその血清を使っててな…対処に手を焼かされたもんだ。
ファルカ:
筋力が大幅に増し、血に飢え、狂気に飲み込まれたやつは、仲間同士で殺し合ってさえいた。
ファルカ:
皮肉なもんだ…結局、イロックはその力を制御しきれず、配下のやつらにも剣を向け、狂気の果てに自滅しちまったんだからな。
パイモン:
魔龍ウルサ…一体なにものなんだ?そんな恐ろしい力を持ってるなんて…
ファルカ:
ああ、そうだ。確かに、そういうこともあったな。
パイモン:
じゃあ…なんでその時は封印しかしなかったんだ?まさか、初代大団長でもそいつを倒せなかったってのか?
ファルカ:
いや…伝説の魔龍ウルサは、かつて「天の使い」だったからだ。
パイモン:
——えっ?
旅人:
——えっ?
ファルカ:
遥か昔の話だが…天の使いたちはある選択を迫られたらしい…その時ウルサが選んだのは、己の「力」を残すことだった。
ファルカ:
心を失い力だけが残されようとも、その天の使いは人間の都市国家に憧れを抱き続けた。だがそいつは、自分が近づいただけで周囲の無数の命を滅ぼしちまうってことすら…もはや分からなくなっていたのさ。
ディルック:
だから、当時のヴァネッサはそれを封印することを決めたのか?
ファルカ:
ああ。だが、ウルサは「博士」の手によって再び目覚めた…これは間違いなく騎士団の過失だ。俺はその事実から目を背けるつもりはない。
ディルック:
過去の責任を追求するより…今は目の前の禍根を早急に断つことのほうが重要だ。
ディルック:
——魔龍ウルサの血肉の性質が、なぜ今またあの魔物たちに発現したんだ?
ファルカ:
…今となっては認めちゃいないが、かつて俺たちは、イロックに対して大きな期待を寄せててな。あいつは騎士団のやり方をよく知ってやがる。
ファルカ:
あいつは討たれる前に、実験場に関する情報をすべて破棄したんだ。
ファルカ:
おかげで、いまだに実験に使われてた材料の在り処も掴めてない。恐らく、「断片」の援助もあったんだろう。
ファルカ:
だがドットーレが残した手駒は、すべて旅人がスメールで片付けた。それはお前も耳にしてるだろう。
ファルカ:
当時やつの「断片」がモンドに残した「隠蔽手段」も、それと同時に効力を失ったと考えてるんだ。
パイモン:
あっ、じゃああの魔物たちは…その実験場から逃げ出してきたってのか!
ディルック:
恐らくそれだけじゃない——何者かが、過去の実験を再開したんだろう。
旅人:
(実験…ウルサの血肉…天の使いの力…)
旅人:
(まさか…昨日ローエンから感じた力は…)
ファルカ:
昨日の騒ぎの時…お前も感じたんだろう?
旅人:
うん、あの時…
ディルック:
つまり、ローエンは人智を超えた力を手に入れるため、禁忌の実験に手を染めた可能性が?
パイモン:
あいつ…そこまで悪いやつじゃないよな?
ディルック:
力、富、権力…「善人」を「悪人」に変えるきっかけは、いくらでもある。
ディルック:
ウルサもイロックも…あの選択をするまでは、君が想像するような「悪」ではなかった。
ファルカ:
ローエンの動機なんてどうだっていいんだ。俺には、あいつが引き返せなくなる前に連れ戻す義務がある。
パイモン:
じゃあ…どうするんだ?このまま、こっそり調査を続けるのか?
ファルカ:
そんな面倒なことをする必要はないさ。俺が今日ドーンマンポートに来た理由…それは——直接、あいつを問いただすためだ!
一方、ローエンは自らのターゲットを全力で追跡していた…
ローエン:
…ちょこまかとよく逃げるじゃねぇか。
ローエン:
さてと…もう逃げ場はねぇぞ?
テオドール:
おい——ローエン!
テオドール:
実験体を片付けてる場合じゃない!騎士団が動き出したんだ!
ローエン:
…フンッ。
テオドール:
今日、ドーンマンポートに知らない騎士が大勢来てたんだ…昨日のテストが知られたのか?それとも、実験体が捕まったのか?まさか、もう気づかれたんじゃ…
ローエン:
元々、時間の問題だっただろ。むしろ、ここまで引っ張れたこと自体が幸運だ。
ローエン:
フッ…味方だと頼もしいが、敵に回すと本当に厄介だな。
テオドール:
どうするんだよ!早く逃げたほうがいいんじゃないか!?
ローエン:
…今ここで逃げたら、もう二度と目的は達成できなくなる。
ローエン:
お前がそれを知らせに来れたってことは、騎士団もまだ半信半疑だってことだ。この機に乗じて、一か八か賭けてみるとしようぜ。
ローエン:
今すぐ、もう一度俺を実験台に使え。
テオドール:
今?でも、前の問題がまだ…
ローエン:
何を迷ってんだ?端っから言ってるだろ…俺はお前とは違う。この実験は全部、俺自身のためにやってるんだ。
ローエン:
並外れた力を手に入れるためには、並外れたリスクを負わなきゃなんねぇ…覚悟はとっくに出来てんだよ。
テオドール:
でも…
ローエン:
何が「でも」だ?さっさとしやがれ。まさか、何のための実験だったか忘れたなんて言わねぇよな?
…しかし、どうやらテオドールとローエンは未だに目的を達成できていないようだ。
テオドール:
……!
ローエン:
——ゴホッ!
テオドール:
ダメだ!やっぱりダメだよ!…量が少なかったのか?それとも、濃度が足りてないのか?
テオドール:
まさか…完璧な結果なんて、そもそも存在しないのか…
テオドール:
ローエン!ひとまず隠れよう!また魔物を集めて実験すれば…
ローエン:
…ダメだ!
ローエン:
隠れるだと?騎士団がそんな時間をくれるってのか!?俺たちはもともと…この僅かな時間に賭けてたんだろうが。
ローエン:
今逃げれば、あいつらの疑いが確信に変わる。そうなりゃ、今後どこに行こうと騎士団の目を気にしなきゃならねぇ…そんなんで、どうやって目的を達成するってんだ?
テオドール:
それじゃ…この状況でどうするっていうんだ?
ローエン:
…今夜、ターゲットを盗み出すぞ。
ローエン:
…俺たちと一緒に、「地獄」へ落ちてもらおうじゃねぇか。
ターゲットの所在地へ向かう
ローエン:
やっぱり、騎士団はもう動き始めてるよな…
テオドール:
あの人だかりは?なんだか様子がおかしいよ…
ローエン:
あれは…アドルノだ!
数時間前…
アドルノ:
ふぅ…こんなところにいたのか!
北地ショートヘア:
ニャー…
アドルノ:
目を離しちゃ駄目じゃないか。ちゃんと、手の届く範囲で遊ばせないと。
モリツティール:
ありがとう…本当にありがとう、アドルノおじいちゃん!
アドルノ:
それと、もう一人で街の外へ探しに行かないようにね。お前がその子を心配するように、ハンネローレだってお前を心配してるんだ。今回は秘密にしてあげるけど、これっきりだよ。
モリツティール:
うん…わかった。
北地ショートヘア:
ニャー…!
実験魔物:
グルル…!
モリツティール:
あっ!ま…魔物?
アドルノ:
魔物?どうしてこんなところに…それに、どこか様子も変だ…
モリツティール:
あっ…ああ…
アドルノ:
怖がらなくていい、俺がついてるぞ!ほら、立て!走って逃げるんだ!
モリツティール:
で…でも…
アドルノ:
早く行くんだ——ここはおじいちゃんに…騎士に任せておけ!
アドルノの状況を確認する
アドルノを住まいへと送り届けた。ファルカは皆にアドルノが襲撃された一部始終を説明した…
ファルカ:
…その後駆けつけた騎士たちが、近郊に侵入した魔物を片付けたが…やつの力は、常軌を逸していた。
ファルカ:
それでもアドルノは子供が逃げる時間を稼ぐために、最後まで必死に戦ったんだ。
テオドール:
アドルノさん…アドルノさん!
アドルノ:
ふっ…
アドルノ:
…大丈夫だ。俺の身体のことはお前もよく知ってるだろ…お前がいなけりゃ、今日まで生きてはこられなかった。
アドルノ:
誰かを救うためにまた身体を張るほうが、ベッドで寝てるより…よっぽど騎士らしいと思わないか!…ゴホッ!
アドルノ:
長い間、俺の身体をよく診てくれたのに…残念だが、ここまでみたいだ…苦労をかけたな。
テオドール:
……
アドルノ:
ローエン…「仁愛騎士」の称号、そして第5小隊の隊長の座は…
ローエン:
俺は…
アドルノ:
——気に入らなければ、放っておけばいい。お前は…お前の生き方をすればいいんだ。
ローエン:
……
ファルカ:
…ローエン、ちょっと来てくれ。
ファルカ:
調査小隊の分析結果が出た。アドルノを襲った魔物は、ウルサの気配を纏っていたそうだ。
ローエン:
……!
ファルカ:
ここまできて、まだだんまりを決め込むつもりか?
ローエン:
……
ファルカ:
これは尋問じゃない。黙秘を続けても構わないが、できれば洗いざらい話してくれないか。
ローエン:
——ああ、話そう。
ローエン:
…全部話すし、どんな処罰だって受けてやる。だが…
ローエン:
もう一晩だけ、俺に時間をくれ。明日、騎士団本部ですべて説明するから。
ローエン:
これは、騎士としての誓いだ。
ファルカ:
はぁ…
ファルカ:
…お前とは長い付き合いだが、騎士の名に懸けて宣誓するのを聞くのはこれが初めてだぞ。
ローエン:
ハッ、俺一人が誓いを立てたところで大した信用がねぇことくらい、分かってる。
ファルカ:
だが、「仁愛騎士」の願いも上乗せすりゃ、十分な重みになるだろ。
ファルカ:
約束だからな、ローエン。
テオドールはアドルノのベッドの前に突っ伏した。しかし、悔やみながらも、依然として何かを隠しているようだ…
アドルノ:
…すまないな、テオドール…
アドルノ:
本当は隊長の座をローエンに譲り、「仁愛」の称号をお前に残すつもりだった…お前が幼い頃からこの称号に憧れていたことを、知っておきながら…
テオドール:
それはあなたのせいじゃありません、アドルノさん…
テオドール:
僕にはローエンのように、騎士団の試験に容易く合格できるほどの才能がなかった…
テオドール:
何年努力しても、いまだに見習い医師のまま…そんな僕が、騎士の名を継ぐわけにはいきませんよ。
アドルノ:
ゴホッ…医師であれ騎士であれ、みんなを守っていることに変わりはないだろう?
アドルノ:
俺はずっと、お前は「仁愛」の名に相応しい騎士だと思っていたぞ…
テオドール:
…そんなことはありません。僕は、多くの過ちを犯してきたんです。
テオドール:
そして今から…さらに大きな過ちを犯そうとしています。
ローエンが立ち去った後、黙って傍観していたディルックが出てきた。どうやら、ファルカの対応策に少なからず不満があるようだ…
ディルック:
…こうも簡単に彼の頼みを聞き入れてよかったのか?
ファルカ:
じゃあ、どうしろっていうんだ?報告書を提出させて、それを承認してから行かせれば満足だったか?勘弁してくれよ。
ファルカ:
あいつにとってアドルノがどれほど大きな存在だったかは、よく知ってる。だから、あの誓いの重みも信用できるさ。
ディルック:
昔、ある男が騎士の名のもとに父に多くの誓いを立てたが、最終的にその友情は裏切られた。
ディルック:
「歪んだ執念と時の移ろいは、友さえ敵へと変貌させる。風向きが変わるのと同じくらい、ありふれたことだ。」
ファルカ:
…クリプスの言葉か?懐かしいな。
パイモン:
おまえたち…知り合いだったのか?
ファルカ:
かつて、野心に溢れた青二才が三人集まって、それぞれの未来を思い描いてたんだ。
ファルカ:
騎士に憧れた金持ちの坊っちゃんは、結局ワイナリーの家業を継ぐことになった。
ファルカ:
規律を破ってばかりの半人前は、最終的に騎士団全体を率いることになった。
ファルカ:
そして最後の一人は…欲した富も、憧れた力も、何ひとつ手に入れることはできなかった。
ファルカ:
残された執念だけが、日を追うごとに高く高く積み上がっていったんだ。
パイモン:
それが、イロックが…「博士」に付け込まれた原因なのか?
ファルカ:
「博士」が何を吹き込んだにせよ、選択をしたのはイロック自身だ。
ファルカ:
やつの考えが理解できるからといって、同情するわけじゃない。ましてや、同じ轍を踏むなんてことはありえない。
ファルカ:
今度こそ、俺は部下から目を離さねぇ…
レッツブルグ:
た、大変だ!
ファルカ:
——お、おい!俺の話はまだ終わってないぞ?
パイモン:
今の声…アドルノじいちゃんがいるほうからか?
ファルカ:
レッツブルグ…何があった?
パイモン:
アドルノじいちゃんが…いない!?それに、ローエンとテオドールもか!?
レッツブルグ:
分かりません…見回りに来たらドアが開けっ放しになってて、中を覗いたら…もぬけの殻だったんです!
レッツブルグ:
アドルノ隊長はベッドから起き上がれるような状態ではないですし…一体、誰が連れ去ったのでしょう!?
ヴォーナー:
大団長——緊急事態です!ローエン副隊長が巡回中の騎士の制止を振りきって、郊外へ向かいました!
ファルカ:
ったく…あいつ…
ディルック:
彼は何か言っていなかったか?
ヴォーナー:
何か…?いえ…副隊長はひどく急がれている様子で、私たちに道を開けるよう叫ばれて走り去ってしまいました。
旅人:
追いかけなかったの?
ヴォーナー:
もちろん追いかけました!ですが、私たちではローエン副隊長の足に追いつくことはできず…
ファルカ:
追えるところまででいい、追ってくれ!そのあとは俺たちに任せろ!
ファルカ:
おい、ディルック、「栄誉騎士」…ひとっ走り付き合ってくれるか。

騎士の決意
取り返しのつかない運命を前に、ローエンが下した決断は、彼をどこへ導くのだろうか…
目撃地点に行く
ファルカ:
ふむ…追跡の報告があったのはここまでだな?
ファルカ:
さすがは第5小隊の「最も鋭い矢」だ。こうも早く見失ってしまうとは。
パイモン:
感心してる場合じゃないだろ!他に手がかりはないのか?
ディルック:
草地の露が異常に冷たい…元素力の影響のようだ。
ファルカ:
おお?栄誉騎士は頼りになるな!
ファルカ:
他人に目撃されただけじゃなく、痕跡も残していくとは…いつものあいつらしくないな。
ディルック:
あるいは、意図的にそうしているのだとしたら?
ファルカ:
急いで何かを成し遂げようとしてるのか…それとも何かを阻止しようとしてるのか…どちらにせよ、俺たちがやるべきことは一つだ。
パイモン:
だな!あいつを捕まえて——全部白状させてやるんだ!
ローエンの後を追う
地面の痕跡をたどり、山の中で隠された入口を見つけることができた。少し準備を整えてから、奥へと足を踏み入れることにした…
みんなと会話する
ファルカ:
この辺の鉄板や容器の感じ…スネージナヤ周辺を遠征していた時のことを思い出すな。
ディルック:
どうやら君の推測は正しいようだ。ここが、「博士」の断片が残した実験場で間違いないだろう。
ディルック:
やつが隠蔽し続けていたんだな…騎士団が長年この入口を発見できなかったのも無理はない。
ファルカ:
だが隠蔽が解けた後、誰かが俺たちより先にここを発見した。で、魔龍の血肉に関する実験を再開させちまったようだ。
パイモン:
あいつ…まさか…
少しずつ前進していったが、突然のめまいに襲われ、無数の不思議な光景に包み込まれた…その後、轟音と共に意識を取り戻した…
ファルカ:
今のは…記憶で形作られた魔法の空間か?
ディルック:
僕たちの邪魔をするために仕掛けられた罠みたいだな。
パイモン:
罠?もしかして、またローエンが…
ファルカ:
いや、あいつならこれ以上に凶悪な手を百通りは持ってる。
ファルカ:
かつてイロックに捕らえられ、あの空間を生み出す魔法を知ってるやつは…
ファルカ:
…ローエン一人だけじゃない。
実験場の奥深くで、ローエンはようやくテオドールに追いついた。
テオドール:
…その様子じゃ、僕に協力しに来たわけじゃなさそうだね。
ローエン:
俺はむしろ、さっさとケリをつけてやるのが、お前を助けることになると思ってるんだがな。
テオドール:
ふっ…ははは!ケリをつける?今さら何を言ってるんだい?
テオドール:
あの時、実験体が逃げ出して…僕が諦めかけた時、それを許さなかったのは誰だ!
激怒したテオドールはローエンを問い詰めた…
過去のある時のこと…
テオドール:
うぅ…くそ…実験体は…全部逃げてしまったのか?
ローエン:
…自分を実験台にするのが早すぎたな、テオドール。
ローエン:
イロックの実験場を見つけて、ドットーレが残した装置の制御に成功した。それで、やつらの実験を再開できるとでも思ったか?
ローエン:
今の自分のザマを見てみろよ——指一本動かすのも一苦労で、実験体が逃げるのをただ眺めてることしかできねぇだろ。
テオドール:
ローエン…僕を逮捕しに来たのか?
ローエン:
ハッ、その真逆だ——なんでお前が逃げた魔物に食われずに済んでるか、分からねぇのか?
テオドール:
君が…倒したと?
ローエン:
逃げ出したやつらも、俺が処理しといてやる。放っておいたら、明日にでも騎士団が手がかりを追って、ここを嗅ぎ当てちまうからな。
テオドール:
どうして僕を…助けてくれるんだ?
ローエン:
お前がウルサの血肉を使って何をするつもりなのか、俺にはお見通しなんだよ。じじいのために書いたあの検査報告書も、とっくに読んでんだ。
ローエン:
老いぼれて弱った体に大量の古傷…いつ死んでもおかしくねぇ——「人智を超えた力」でもありゃあ、話は別だがな。
テオドール:
…ちゃんと隠し通せていたはずなのに!アドルノさんにさえ気づかれなかったのに!
ローエン:
この程度のことで驚くんじゃねぇよ。
ローエン:
俺たちは「仁愛騎士」にここから救い出された「仲間」だ。お前の様子がおかしいことくらい、気づいて当然だろ?
テオドール:
…それが、黙っていてくれる理由なのか?
ローエン:
いいや——勘違いすんなよ。確かに、俺もあのじじいには少しでも長く生きててほしいと思ってる。そうすりゃ、不必要な責任なんて負わずに済むからな。
ローエン:
だが、本当に興味があるのは「力」そのものだ。
ローエン:
魔物を使った実験は行き詰まり、自分の身体じゃウルサの力に耐えられないことに悩んでる…そうだろ?
ローエン:
——だったら、俺を実験材料に使えばいい。
一方、現在——
「仲間」から問い詰められ、ローエンは沈黙した…
ローエン:
……
テオドール:
…君がいなきゃ、ここまで来られなかったはずだ!
テオドール:
血清の精製、実験の継続、アドルノさんをここへ運び込むこと…全部君の提案だろう?ローエン!
ローエン:
ああ、そうだな。だから俺も、失敗する覚悟は出来てる。
テオドール:
失敗だって?あと少しだったのに…あとほんの少しだったのに…君のことさえバレなければ、まだチャンスはあるんだ!
過去のある時のこと…
テオドール:
ローエン!聞いてくれ、ウルサの血清はやっぱり効果があったんだ!
テオドール:
アドルノさんが容体を持ち直して、もうベッドから降りて歩けるようになったんだよ!君がいてくれて本当によかった。でなきゃ、先週にはもう…
テオドール:
残念だけど…今の段階じゃ、アドルノさんの食事や薬に低濃度の血清を少量加えることしかできないんだ。まだ根本的な治療はできなくて…
ローエン:
そうか。そりゃよかった…
ローエン:
——なんたって、お前の実験が順調であればあるほど、俺がこの力をモノにできる希望もデカくなるだろ。
テオドール:
あのさ…アドルノさんに会いに行ったらどうだ?よく君のことを話してるし…
ローエン:
…やめとく。あの人の小言を聞くのは御免だ。
ローエン:
それに、無駄な接触はバレるリスクを高めるだけだしな…俺たちに残された時間は少ないだろ。
ローエン:
騎士団は遅かれ早かれ異変に気づく。小細工をしたところで、ただの時間稼ぎにしかならない——あとどれくらいで完全に制御できそうだ?
テオドール:
もうすぐ…もう目前なんだ!君の協力のおかげで、血清の力はずいぶん安定してきた。まだ完璧とまでは言えないけど…
ローエン:
…急ぐからって、直接じじいに使うんじゃねぇぞ。
テオドール:
まさか!考えすぎだよ。自分が何をしてるかくらい、ちゃんと分かってるさ。
ローエン:
どうだかな?自分は分別があると思い込んでるやつは、痛い目を見て初めて間違いに気づくもんだ。
テオドール:
ははっ、もし本当にそんな日が来たら、君が僕にその痛い目を見せてくれよ!
一方、現在——
テオドールはまだローエンを説得し、実験を続けさせようとするが、ローエンはすでにテオドールの非現実的な幻想を打ち砕くことを決意していた…
ローエン:
バレなければ…だと?お前は、騎士団がまったく疑ってないと思ってたってのか?誰が調査の進捗を遅らせてたのか、考えもしなかったのか?
ローエン:
こいつは端っから、俺たちと騎士団、そしてアドルノのじじいに残された時間による一か八かの賭けなんだ…何度も言っただろ?
ローエン:
戦いに負ければ撤退する、賭けに負ければ認める…いつまでも戦場や賭場に居座り続けても、余計悲惨な敗北を招くだけだ。
テオドール:
——じゃあ、どうしろっていうんだ!このまま、アドルノさんが死ぬのを黙って見てろって!?
ローエン:
フン…寝ぼけてんのか?今のじじいの状態で、血清の力になんて耐えられるわけねぇだろ。じじいを殺すつもりか!
テオドール:
僕はまだ負けを認めていない!ローエン…君が来る前に、最後の精製を終わらせたんだ!
テオドール:
これは何度も精製を繰り返した高濃度の血清だよ…これを使えば…君でさえ、僕を止めることはできない!
テオドール:
協力する気がないなら、最初の頃と同じように…僕自身で、この実験を完成させる!
実験記録と現場の痕跡をもとに、この地で起こった出来事を明らかにしていくことになった…
ファルカ:
…幼い頃の曖昧な記憶を頼りに、テオドールは一足先にここを見つけ出した…そして、アドルノを延命させるためにイロックの実験を再開したんだ。
ファルカ:
だが実験が失敗して魔物が逃げ出した時、それに気づいたローエンが協力を申し出たんだな。そうして、二人は魔龍ウルサの血清を抽出し続けた…
ファルカ:
——それが、この実験場での出来事の全貌みたいだな。
ディルック:
彼らをどうするつもりだ?
ファルカ:
はぁ…そういうことは後でジンたちに丸投げしちまえばいい。規則通りに対処してくれるだろ。
ファルカ:
今、それ以上に気がかりなのは、この地下に隠されてる…「ウルサの血肉」のほうだ。
奥へ進む
テオドールは高濃度の血清を注射し、無理やりアドルノを連れ去ろうとしたが、ローエンに阻まれた…
テオドール:
ぐあぁっ——
テオドール:
なぜだ…最高濃度の血清を…使ったのに…!
ローエン:
お前は弱すぎんだよ…その自覚すら無かったとはな。
テオドール:
…自覚が無いだって? 君にそれを言う資格があるのか…力を制御できず暴走した君に!
ローエン:
そうだな——だからこそ分かるんだよ。これ以上、続けるわけにはいかねぇってな!
ローエン:
寿命を延ばす代償が自我を失うことなら、俺たちが救えるのはじじいじゃねぇ。アドルノっつう名前の怪物だろ!
ローエン:
いまだに自分のザマが見えてねぇようだな——それが、じじいに「仁愛」の名を託されたやつの姿かよ!
テオドール:
ぼ…僕は…
テオドール:
…認めない…認めないぞ!
ローエン:
……
アドルノ:
…最後にこうしてお前たちを抱きしめたのは、いつのことだったか?
アドルノ:
あっという間に…この腕には収まりきらなくなってしまったな。
テオドール:
ア…ドルノ…さん…?
ローエン:
じじい…
アドルノ:
全部聞こえていたぞ…お前たちが、俺をここまで支えてくれていたんだな?
アドルノ:
お前たちが、俺に機会を与えてくれたんだ…またお前たちを抱きしめられる機会を…
アドルノ:
だから…
アドルノは二人の少年の肩に手を置き、優しく慰めた。かつて、小さな子供だった二人を救い出したあの時のように…
アドルノ:
どうして泣くんだ。「仁愛騎士」が最期に子供を泣かせてしまうなんて、示しがつかないだろう?
アドルノ:
約束してくれ、笑って見送ってくれると…
テオドール:
僕は…
テオドール:
僕はただ…見ているだけなんて嫌だったんです…あなたが…
アドルノ:
お前たちがそばにいてくれる…それだけでもう十分じゃないか。
ファルカ:
——アドルノ!テオドール!
旅人:
——ローエン!
ディルック:
…どうやら、君たちの問題は解決したようだな?
ローエン:
…いや、まだ終わってねぇ。
奥底から響く唸り声:
グオォォーッ
パイモン:
これ…なんの音だ!?
ローエン:
やっぱり…あの二つの血清を抽出するために、ウルサの血肉の活性を限界まで刺激したんだろう。
ローエン:
あの力がここから漏れ出たら、この辺りの生物みんなに影響が出る…ここの植物や、さっきの魔物みたいにな。
テオドール:
そんな…!
ローエン:
なに強がってんだ?今は指一本動かすのも一苦労だろ?その感覚、俺もよく知ってるぜ。
ローエン:
とっとと俺に渡すべき物をよこしな。あとは…大人しく見とけ。
テオドール:
…地下への鍵は、僕の上着の内ポケットにある。
テオドール:
魔龍ウルサの血肉…そしてその力のすべてを…徹底的に破壊してくれ。
ローエン:
じゃあな…アドルノ。
アドルノ:
ああ、行くんだ。あんな力は、この世に存在すべきではない…
奥底から響く唸り声:
グオォォーッ
パイモン:
ここを通れば…昔、「博士」とイロックがウルサを使って実験してた場所に着くのか?
ファルカ:
ああ。力を追い求める狂人に、力を選んだ天の使い…とんだ茶番だな。
ディルック:
なら今こそ、その茶番に幕を下ろす時だ。
ファルカ:
魔龍ウルサが残した力だ…みんな、気を引き締めろ。準備はいいか?これは——死闘になるぞ!
うごめく魔物:
グオォォーッ
パイモン:
うわっ——あっちはなんの騒ぎだ!?
ローエン:
…実験体として捕まってた魔物どもだ。「博士」の仕掛けとウルサの力で、今まで生きてやがったんだろう。
ローエン:
ハッ、最近俺が捕まえてきたのも多少はいるがな。どうやら、どいつもこいつも落ち着きがねぇみたいだ。
旅人:
——数が多すぎる!
パイモン:
その檻って、頑丈なのか?魔龍と戦ってる最中に、そいつらの相手までする羽目になったりしないよな…
ローエン:
もし頑丈なら、逃げ出したやつらをわざわざ始末する必要なんてなかったんだがな。
ローエン:
ま、心配しなくていいぜ。そいつらに邪魔はさせねぇ…保証してやるよ。
旅人:
…どうするつもり?
ローエン:
元部下の野心、肉親の仇…そいつは、お前らがケリをつけなきゃならねぇ宿怨だろ?
ローエン:
だから、俺が捕らえた魔物は俺に片付けさせろ。
ローエン:
おっと…
ローエン:
西風騎士団第5小隊副隊長——出撃を申請する。
ファルカ:
はっ、ようやく出撃前には報告が必要だって分かったのか?
ファルカ:
——行ってこい、ローエン。
ファルカ:
それと、生きて帰ってこいよ。これは大団長命令だ。
ローエン:
なら、さっさとウルサを片付けてくれよ、「先輩方」。
パイモン:
なあ、旅人…あいつ、手伝いに行かなくて大丈夫か?
ファルカ:
ほう?どうやらあいつの「友達料」は無駄じゃなかったようだな?
ディルック:
…彼に解決できるのか?
ファルカ:
信じろ、あいつが俺たちを信じてるみたいにな。なにせ、あいつはお前に次ぐ最年少隊長になるんだぞ。
ローエン:
イロック、月の狩人、ドットーレときて…ハッ、今度はウルサか?どうやら俺は、そいつらに挑める運命にないみたいだ。
ローエン:
だが凡人には…凡人の喧嘩ってもんがあるんだよ。
ファルカ:
だからこそ、お互いの「執念」と対峙し…
ファルカ&ローエン:
…ケリをつけるぞ!
魔物を阻止する
襲い来る数多くの魔物に、ローエンは必死に立ち向かった。そして、もう一方の戦況もまた熾烈を極めていた…
ファルカ:
俺に続け!
ディルック:
判決を…下す!
旅人:
消えろ!
過去の咆哮:
グオォォーッ
「ウルサ」の咆哮とともに、魔物たちは血肉の匂いに引き寄せられ、この場から逃げ出そうとした。
うごめく魔物:
グオォォーッ
ローエン:
ここから出てぇのか?ウルサに呼ばれたか…それとも血清の匂いを嗅ぎつけたか?
ローエン:
だが、通すにはいかねぇな。俺の後ろには魔龍と殺し合う英雄だけじゃなく…鈍く、弱く、脆い凡人だっているんだ。
ローエン:
だからよ…
ローエン:
——まとめてかかってきやがれ!
ローエンは血清の瓶を握りつぶし、自らを最も危険な囮に変えた…
うごめく魔物:
グオォォーッ
魔物を阻止する
数え切れないほどの魔物を倒すうちに、ローエンの体力の限界が訪れ、意識が朦朧としてきたようだ。数々の思い出がローエンの心に湧き上がった…
イロック:
「喜ぶがいい!君たちは凡俗を超越し、傑出した存在となるのだ——」
???:
お前は、力を手にすれば自らの運命を意のままにできると思いこんでいたな。
月の狩人:
「鈍く、弱く、脆い…凡人だ。」
???:
取るに足らないその傲慢さが、より理不尽な力によって粉砕されるまで…
ローエン:
……
ローエン:
「…ナド・クライのことは『最強戦力』に任せるか。」
???:
お前はかつて、自分が特別な存在ではないという事実を受け入れたつもりでいた。
テオドール:
「——じゃあ、どうしろっていうんだ!このまま、アドルノさんが死ぬのを黙って見てろって!?」
???:
だが、自分の周囲にありふれた死が訪れることは、受け入れることができなかった。
ローエン:
……
ローエン?:
お前は間違っていない、決して間違ってなどいないぞ!力こそが森羅万象の唯一の解なのだ!運命の喉元を締め上げ、死にすら抗うことができる!
ローエン?:
残る問題は、お前の力がまだ足りない…全く足りていないことだ。この贈り物を受け入れない限り、力は手に入らん。
ローエン:
……
ローエン?:
本来、力と手段に善悪の区別などない——お前はそう考えていたのではないか?
ローエン?:
アビスの力を分け合い、魔女の集会に助けを求め、神の加護を仰ぐ…
ローエン?:
それらに何の違いがあるというのだ?凡人には、力を手にする資格がないとでも言うのではないだろうな?
ローエン?:
——だからこそ、この力を受け入れるのだ…「天の使い」の導きを。
ローエン:
お前の言う通りだ…力はただの力でしかねぇ。だから…
ローエン:
——破滅を招くのは、いつだって人間自身の驕りと愚かさだけだ。
ローエン?:
な、なにを…!
ローエン:
ハァ…ハァ…ようやく静かになったな。
ローエン?:
…このまま凡庸に甘んじるつもりか!私の導きを、放棄するというのか!?
ローエン:
欲しいもんがありゃ、俺自身の手で手に入れてやる。「導き」とやらを受け入れたところで、その力を支配すんのは「俺」じゃねぇんだろ?だったらよ…
ローエン:
消えな——俺に制御できねぇ力なんざ、いらねぇんだよ。
ローエン?:
ぐあああああっ——
ローエンの状況を確認する
パイモン:
ローエン!目を覚ませって!ローエン!
旅人:
…ローエン!
ローエン:
…そんなデカい声を出すなよ。ちょっと休みたいだけだ…今回の喧嘩はさすがに疲れたぜ。
ファルカ:
ははっ、お前の口からそんな言葉が聞けるなんてな。
ローエン:
俺に注射したわけじゃねぇ。魔物を引き寄せるのに使っただけだ——暴走した魔物と戦おうってのに、自分まで暴走してどうすんだよ。
ローエン:
お前らがウルサを始末した後、今度は俺が始末される羽目になったら…たまったもんじゃねぇだろ。
ローエン:
ま、昔の実験の後遺症…そいつに少しばかり手を焼かされたってとこだ。
ディルック:
ウルサの血肉は完全に取り除いた。今後、二度と活性化するリスクはないはずだ。
ローエン:
…そうか、取り除いたんだな。
ローエン:
アドルノのじじいとテオドールはどうした?
ファルカ:
あの二人は、増援に来た騎士に連れ帰らせた。
ファルカ:
テオドールの処分…そしてお前についても、しばらく時間を置いてから追及するつもりだ。
ファルカ:
…最期の時を迎えるまで、そばにいてやってくれ。
ローエン:
…ありがとな、大団長。
ローエンと会話する
しばらくして…
アドルノ:
「俺の人生は、誰かの涙を拭うためにあった。だから、俺の墓の前ではどうか泣かないでくれ。」
アドルノ:
「…仁愛騎士、ここに眠る…」
ローエン:
フン、じじいめ…その墓碑銘、なかなかお似合いじゃねぇか。
パイモン:
お墓参りしながらガムを膨らませるやつがいるなんてな…
ローエン:
ん?お前らもじじいに会いに来たのか?ガムが欲しけりゃやるぞ?
旅人:
え、遠慮しとくよ…
ローエン:
じじいは、昔からよくこういうのを持ち歩いてたんだ。「子供にあげれば喜んで食べるんだ」、とか言ってな。
ローエン:
向こうに行ってもこうしてキャンディが手に入って、きっと喜んでるだろうよ。
ローエン:
謹慎中は他にやることもねぇからな…暇つぶしに作ってたんだ。
パイモン:
どうりで、この前の叙勲式でおまえを見かけなかったのか…謹慎を言い渡されてたんだな。
ローエン:
ハッ…謹慎だけで済むわけがねぇだろ。「話の分かる」ジン団長は、あと二つも処罰を下してくださったんだぜ。
旅人:
あと二つの処罰?
ローエン:
——騎士団は俺への叙勲と、隊長への栄進を撤回するんだってよ。
ローエン:
「仁愛騎士」の称号はアドルノと共に葬られ、第5小隊隊長の座も、しばらくは空席となるわけだ。
パイモン:
それって…本当に大丈夫なのか!?
ローエン:
ファルカが言ってたぞ…「ほーら、大団長が長期不在で代理団長に任せっきりだったのに、モンドにはなんの問題もなかっただろ!」ってな。
旅人:
説得力がありすぎるね…
ローエン:
「仁愛騎士」の称号については、尚更そうあるべきだ。
ローエン:
その名にふさわしくないやつが受け継ぐなんて許さねぇ…たとえそれが俺自身でもな。
パイモン:
オイラ、ほんの一瞬だけど…おまえに結構似合うんじゃないかって思ってたんだぞ…気のせいだったみたいだけどな。
ローエン:
へぇ?俺としては、別の称号のがいいがな——「外道騎士」?「覇道騎士」?「頑丈騎士」ってのも悪くねぇだろ?
ローエン:
だが、罪を犯した俺が次の勲章を授かるためには…もっと勝ち戦に貢献しなきゃなんねぇだろうな。
ローエン:
当然だろ。ある男にこう言われたんだよ。コホン…「自分の限界と平凡さを認めることこそが、超越と非凡へ至る第一歩だ」…ってな。
ローエン:
俺は勝ち続けるぜ。どんな手段を使ってでもな。
旅人:
……
ローエン:
心配すんな。失敗から学ぶ…それも強くなるための過程だろ。それに、何のために力を追い求めてるのかも、俺自身がよく分かってる。
ローエン:
自分が元々何を望んでいたのか忘れるようなら、それこそ本当の負け犬になるだろうが。俺がそんなマヌケだってのか?
ローエン:
ま…お前の言う通りかもな。万が一何かあった時、手を貸してくれるやつがいるに越したことはない。
ローエン:
だから、俺が本当の強さを手に入れて、すべてを背負えるようになるまでは…
ローエン:
…俺より先に死んだりすんなよ。