arrow_back 原神 クエスト
隼の章 第一幕
烏合の虚像
アルハイゼンが代理賢者になったらしいが、彼の性格からすると、本当に大丈夫なのか心配だ…とりあえず、教令院に行って聞き回ってみよう。
教令院に行く
ランチョ:
君のやってるあの課題だけど、進捗はどう?
ピア:
来月には発表できるはずです。ふぅ…この前はあやうく差し止められるかと思ったのですが、何事もなくて本当によかったです。
ランチョ:
何せ、あの課題の指導教員の中にはアザールの名前もあったからね。君がとばっちりを受けるかもしれないと思ってたけど…結局どんなふうに解決したのさ?
ピア:
ほら、新しく代理賢者の方がいらっしゃったじゃないですか?あの方が私たちのプロジェクトを改めてチェックして、研究を続けることを許可してくださったんです。
ランチョ:
代理賢者?そんな職位、今まであったかな?
ピア:
聞いた話では、新しい賢者はまだ選定中で、しばらくは決まりそうにないから…一時的に、その人に任せることになったそうです。
ピア:
とにかく、彼が私たちの肩を持ってくださったおかげで、みんなの研究成果が無駄にならずに済んだんです。
ピア:
論文を出したら、私も長い休暇を取ってゆっくりするつもりです。そうですね、モンドへ旅行にでも行きたいですね…
他の数名の学者たちも、近くでアルハイゼンについて話している…
ラージクマール:
連中め、よもやアルハイゼンのやつを代理賢者にするなど…一体何を考えておるのだ!
リーアン:
まあまあ、落ち着いてください先生。たしかに経歴で言えば、先生こそが学術における権威なわけですから…どうしてあんな若造が代理賢者になったのかは、正直僕も疑問に…
ラージクマール:
バカもん!賢者になれなかったことに文句を言っとるわけではないわ。儂はな、なぜ、よりにもよってあのアルハイゼンが選ばれたのか、それが理解できないのだ。
ラージクマール:
昔、あいつが儂の授業を選択していたことがあったが…一学期を通しても数えるほどしか顔を見せなかった。それについて問い詰めたとき、あやつめ…なんと言ったと思う!?——儂の授業を聞くぐらいなら、家で本でも読んだほうがマシだと!
ラージクマール:
あの身の程知らず!へそ曲がりめ!あんなやつが代理賢者なんぞ、これが教令院の不幸でなくてなんだというのだ!ゴホッ…ゴホッ…!
リーアン:
お、落ち着いてください、先生!すぐにお水を持ってきます!
他の数名の学者たちも、近くでアルハイゼンについて話している…
レザハニ:
シーッ…一つ秘密を教えてやるよ。新しい代理賢者だけどな、聞くところによると…俺たち知論派の先輩らしいぜ!
ファリバ:
ほんと?誰誰?
ロウシャン:
アルハイゼンって名前の人だ。俺は会ったことないけど、近ごろは彼の噂で持ち切りだぜ。まあ、どれが本当の情報で、どれが偽物なのかは分からないけどな。
ロウシャン:
それより、最近は因論派にも勢いに乗ってる学者がいるらしいじゃないか。なんでも、その人が次の賢者の一人になる可能性が高いとかなんとか。
ファリバ:
へえ。その人ってプロジェクトは立ち上げてるのかしら?私たちも早めに会っておいたほうがいいかも…
パイモン:
うーん…アルハイゼンが代理賢者になるって噂は、けっこう広まってるみたいだな。でも、あいつを知らないって人もいたよな…もしかしてあいつ、そんなに有名じゃないのか?
パイモン:
それに、評価も良いものと悪いもので真っ二つだ。特にさっきのお爺さんは、あいつにすっごく不満があるみたいだったぞ…
あなたたちは、精神状態のかなり悪い学者に遭遇した…
パイモン:
うわっ、大丈夫か?具合でも悪いのか?
イリヤース:
マハマトラ…
パイモン:
マハマトラ?
イリヤース:
僕の名は…イリヤース、マハマトラに会いたい。とても、重要なことが…
パイモン:
おいおい、大丈夫かよ。あんまり無理しないほうがいいんじゃないか?
パイモン:
いっそオイラたちに事情を言って、オイラたちがおまえの代わりにマハマトラに伝言してやるってのはどうだ?
イリヤース:
ダメだ。必ずマハマトラに直接会う必要がある…信用できるのは、マハマトラのみ…
イリヤース:
悪いけど、少し肩を貸してくれないか。これはとても重要なことで、どんな失敗も起こってはならないんだ。
パイモン:
そこまで言うなら…いいぜ、オイラたちがマハマトラのところまで連れてってやる!
マハマトラと会話する
パイモン:
こんにちは!ちょっと聞きたいんだけど、セノっていま教令院にいるか?
アーラヴ:
おや、よくお見かけするお二方ですね。もしかして、セノ様のご友人の方々でしょうか?あいにくですがセノ様は、いま外で任務を執行なさっています。
アーラヴ:
何かありましたら私に言ってください。後ほどセノ様にお伝えしておきます。
パイモン:
オイラたち、教令院の入り口でこいつに会ったんだ。なにか重要なことで、マハマトラに会いたいらしいんだけど…
アーラヴ:
ふむ?もしよろしければ、私に話してみませんか?
イリヤース:
……
イリヤース:
シラージ…
アーラヴ:
シラージ?よく聞く名ですね、あの因論派の学者のことでしょうか?
パイモン:
因論派の学者?
アーラヴ:
ええ。いま勢いに乗っていると話題の因論派の学者です。大胆な発想で、考えたことをそのまま実行する天才らしいですよ。
アーラヴ:
聞くところによると、彼は因論派を代表して次の賢者の一人になるかもしれないそうです…それで、そのシラージがどうかしたのでしょうか?
イリヤース:
告発をしたい…シラージは今、危険な実験を行っている。
イリヤース:
僕はやつに攫われ、恐ろしい洞窟に連れていかれた…そこには、実験機材が山ほどあった…
イリヤース:
僕は必死に逃げた…もう少しで、やつに捕まっていただろう…
アーラヴ:
落ち着いて、ゆっくり話してください。
アーラヴ:
彼はなんの実験をしていたんですか?その洞窟はどこにあるんです?
イリヤース:
それは、覚えていない…
パイモン:
えっ?そんな大事なこと、なんで覚えてないんだよ?
イリヤース:
僕が覚えているのは、シラージがこちらに向かって歩いてきた後、僕の脳に異常が起きはじめたことだけだ…
イリヤース:
たくさんの事を忘れてしまった。まるで悪夢でも見ていたような感覚だ。だけど、あそこがとても危険なことだけは覚えている。今すぐやつらを阻止しなくてはならないんだ!
イリヤース:
そうだ、やつらは酒場で取引をすると聞いた。一刻も早く…
アーラヴ:
そう言われましても…わかりました、同僚にシラージのことを調べさせますね。
アーラヴ:
ですがその前に、マハマトラによる「虚偽検出テスト」を受けてください。
イリヤース:
僕を疑っているのか?
アーラヴ:
誤解しないでください、これはただの慣例です。
アーラヴ:
お二人はここでしばらくお待ちください。すぐに戻ってまいります。
思ったよりも長い時間待たされたあと…
パイモン:
あれ、アルハイゼン?どうしてここにいるんだ?
アーラヴ:
私が説明しましょう。先ほどイリヤースさんに虚偽検出テストを行いまして、無事に合格されました。
アーラヴ:
つまり、彼の話は信憑性が高いということです。我々は彼の提供した手がかりに基づいて、調査を展開します。
アーラヴ:
そして慣例に従って、この件をアルハイゼン様にお伝えしました。それを聞いたアルハイゼン様はセノ様に手紙を残し、我々と共に行動するとおっしゃったのです。
パイモン:
なんか怪しいぞ…あのアルハイゼンがマハマトラと一緒に行動するなんて、なにか特別な理由でもあるんじゃないか?
アルハイゼン:
考えすぎだ。少し興味があるだけだ。
パイモン:
そうなのか?意外と暇なんだな…
パイモン:
なあ、いっそオイラたちも一緒に行っていいか?
アーラヴ:
アルハイゼン様が我々の行動に加わること自体、すでに規則に反していますから…そこにあなた方も一緒となると…
アーラヴ:
…はぁ、まあいいでしょう。何せ、イリヤースさんを連れてきたのはあなた方ですからね。一緒に来てもいいですよ。ただし、計画の一切については、必ず秘密にしてくださいね。
パイモン:
おう、安心しろ!オイラたち、すっごく口が堅いんだ!
アーラヴ:
では、いま把握している手がかりについて説明します。
アーラヴ:
イリヤースさんは、シラージがある妙論派学者と酒場で取引をすると言っていました。これは数少ない正確な記憶で、逃げる際に偶然聞いたようです。
アーラヴ:
それとシラージはいま教令院にはおらず、一か月前に長期の外出調査研究を申請しています。
アーラヴ:
もうじき、イリヤースさんの言っていた取引の日時になります。今すぐ酒場へ向かい、怪しい者がいないか捜索しましょう。
アルハイゼン:
そういうことだ。すぐに出発する。…君たちは勝手にするといい。
パイモン:
オイラたちも行くって言っただろ!
容疑者を確保する
アーラヴ:
着きました。アルハイゼン様、この後はどうなさいますか?
アルハイゼン:
……
アーラヴ:
アルハイゼン様?
アルハイゼン:
どうやら君は最近、文書を一つも読んでいないようだな。
アルハイゼン:
新しく公布された教令には、すでに確立された調査案件について、たとえ賢者であってもマハマトラの行動に介入する権利はないと明確に記されている。
アルハイゼン:
君たちの上司がこの場にいれば、俺に何をするか聞くどころか、逆に「手出しするな」と警告していただろう。
アーラヴ:
…おっしゃる通りです、分かりました。ではこちらでしばらくお待ちください。ただちに周辺エリアを封鎖し、怪しい者を捜索してまいります!
アーラヴ:
イリヤースさんはここに残しておきます。アルハイゼン様には、重要参考人である彼の保護をお願いできますでしょうか。
アルハイゼン:
いいだろう。もっとも、彼が自分で自分の身を守れれば尚よかったんだがな。
パイモン:
相変わらずだな…アアル村のときもそうだったけど、すーぐ人を無視するんだもんな!
アルハイゼン:
程度の低い質問に答えることは、質問した者の甘えを許すことにつながる。それに、俺は自らの態度を彼にはっきりと理解させる必要がある。
旅人:
どういう意味?
アルハイゼン:
君たちと同じように、アーラヴもなぜ俺が一緒に来たのかについて疑問に思っている。
アルハイゼン:
だが君たちと違って、彼はこの問題をさらに複雑に考えてしまった。例えるなら、「代理賢者がマハマトラの権力に手を出そうとしている」という具合にな。
アルハイゼン:
彼の質問は、明らかに探りを入れてきていた。マハマトラはかつて賢者の影響を受け、こういった官僚の罠に巻き込まれていたからな。
アルハイゼン:
本来であれば、彼がそんな言い方をする必要はまったくないんだ。だからこそ俺は、彼らの仕事に手出しをしないことを、彼に分かってもらいたかった。
パイモン:
ややこしすぎる!
アルハイゼン:
…だから代理賢者になんてなりたくないと言ったんだ。肩書きは様々な物事を、どうしても面倒なものにしてしまう。
イリヤース:
失礼…アルハイゼンさん。
イリヤース:
どうしても聞きたいことがあるんだ…以前、会ったことはないだろうか?
アルハイゼン:
いや、君のことは記憶にない。
イリヤース:
はは…それもそうか、あなたのような方と関わり合いがあるはずもない…
アルハイゼン:
なら、どうしてそんなことを聞く?
イリヤース:
初めて会った時、なんだか、その…馴染みのあるような感覚を覚えて…
アルハイゼン:
そうか?
アルハイゼン:
錯覚だろうか?あるいは…
アーラヴ:
アルハイゼン様!容疑者を確保しました!
アルハイゼン:
シラージか?
アーラヴ:
いえ、彼と取引をしていた妙論派の学者です。名前はナランドラ。
ナランドラ:
ア、アルハイゼン様?
ナランドラ:
ちょっと待ってくれ、誰か説明してくれないか?たしかに俺は実験室から機材やパーツを盗んで売ろうとした、だが代理賢者が直々に出張ってくるようなことじゃないだろ!?
ナランドラ:
おいおい、なんてこった…まさか、とんでもないことに巻き込まれたんじゃないだろうな?お、俺はただ一時の利益に目がくらんだだけなんだ。どうか、お許しを…
アルハイゼン:
いくつか彼に質問をしたい。
アーラヴ:
もちろんです。
アルハイゼン:
シラージを知っているか?
ナランドラ:
ああ、買い手の名前だ。酒場で取引すると約束したんだが、いつまで経っても来なくて…
アルハイゼン:
取引の内容は?
ナランドラ:
なんの実験をしているか知らないが、大量のエネルギー源と電子部品を必要としていた。それらは俺たちのプロジェクトでしか扱っていない。
ナランドラ:
そいつはそれを高値で買い取るからって、俺に「損傷品の廃棄」という名目で、一部の品を確保してほしいと個人的に連絡してきた。
ナランドラ:
本当なら今日、酒場でその取引をする予定だったんだ。でもまさかすっぽかされたあげく、あんたらに出くわすなんて…
アーラヴ:
もしかしたら、シラージはイリヤースさんが情報を漏らすことを察して、あえて約束の場に来なかったのかもしれません。いずれにせよ、手がかりはここで途切れてしまったようですね。
アーラヴ:
幸い、シラージのやっていることはこのエネルギー源と電子部品を必要とするようです。その進捗も必ず滞るでしょう。我々にはまだ、じっくり調査する時間があります。
アーラヴ:
アルハイゼン様は、他に何か聞いておかれたいことはありますか?
アルハイゼン:
いや、ない。ナランドラは君たちが連れていくといい。それはそうと、少しの間イリヤースを「借りる」ことはできるか。
アーラヴ:
はい、問題ありません。
アーラヴ:
イリヤースさんには、すでに全面的な虚偽検出テストをしました。他に覚えていることはなかったようですし、我々も現時点では、彼から突破口を見つけられるとは思っていませんので。
アーラヴ:
ただ、これはついでとしてお聞きするだけなのですが、彼を手元に置いておきたい理由を伺っても?
アルハイゼン:
昔、記憶喪失に関する論文を読んだことがある。彼の記憶を取り戻せるか試してみたい。
アーラヴ:
なるほど…では、我々は一足先に教令院に戻ります。イリヤースさんを頼みました。
アルハイゼン:
ついて来い。
アルハイゼンと会話する
パイモン:
結局シラージは酒場に来なかったし、ナランドラからも手がかりはなかったな…なんだか手詰まりって感じだ。
パイモン:
アルハイゼン、本当に最後まで関わるつもりか?おまえ、この件に興味津々だよな。なんだかオイラ、ちょっと意外だぞ…
アルハイゼン:
君はすでに理由に気付いていると思っていたが。
パイモン:
えっ?全然わからないぞ…おまえはどうだ?
旅人:
シラージを知ってるの?
アルハイゼン:
ああ、俺の同級生だ。
パイモン:
そうだったのか!だからアーラヴに報告されたとき、わざわざ一緒について来るって言ったんだな!
パイモン:
つまり興味があったのは、内容じゃなくて、容疑者が知り合いだったからってことか?
アルハイゼン:
その説明は事実からあまりにもかけ離れている。まあ、俺も君がそれ以上正確な答えを出してくれるとは期待していない。
アルハイゼン:
だから、一旦そのように理解してくれて構わない。俺と彼は同じ年に入学したんだ。その後、俺は書記官になったが、彼は引き続き学術の道に進んだ。
アルハイゼン:
一年前、彼はある課題を申請した。当時の大賢者はそれを見て、俺に意見を求めてきたが…俺にはその課題があまり良いものには思えなかった。結果的に見れば、それは「根源の六罪」における「人類の進化にまつわること」に触れていたからな。
アルハイゼン:
「人類の進化にまつわること」から「恐れを知らずに奥秘について語ること」まで、「根源の六罪」はこの世のすべての罪の始まりだ。賢者たちが教令の制定と修正をするための規範でもある。
アルハイゼン:
俺から見て、シラージの研究はあまりにも詰めが甘く、そして一線を越えるものだった。大賢者は様々な意見を参考にして、最終的にそれを棄却した。
パイモン:
つまり、そいつがエネルギー源と電子部品を買おうとしてるのは…
アルハイゼン:
おおかた、許可を得ていない状況でこっそり実験を行おうとしているんだろう。
パイモン:
なーんか怪しいな…なおさら止めたほうがいいって気がしてきたぞ。
パイモン:
イリヤース、もうちょっとがんばってくれよ。なにか思い出せないか?
イリヤース:
すまない。何度も試したけど、どうやっても思い出せない。まるで、厚い霧に覆われているような感覚なんだ。
アルハイゼン:
強烈な刺激を受けたとき、人は自己防衛のため、記憶の一部を無意識に切り取ってしまうことがある。
アルハイゼン:
だが、それらの記憶は実際に消えたわけではなく、一時的に封じられているだけに過ぎない。適切な刺激を与えれば、回復する可能性はある。
アルハイゼン:
何でもいい、少しでも気になることを思い返してみるといい。必ずしも事件に関係している必要はない。
イリヤース:
実を言うと、さらわれて実験をされたこと以外に、忘れてしまったことがもっとある気がするんだ。
イリヤース:
自分がどんな人間だったのか、何をしていたのか、思い出せるものもあれば、どうやっても分からないものもある。
イリヤース:
ただ、「やらなければならないこと」が二つあったことまでは、かすかだけど覚えている。
アルハイゼン:
話してみろ。
イリヤース:
一つ目は、「教令院から給料を受け取り、ガンダルヴァー村にいる妹に渡すこと」。
イリヤース:
詳しいことまでは思い出せないけど…毎月お金を妹に渡して、家計の助けにしていたような記憶があるんだ。
パイモン:
二つ目は?二つ目はなんなんだよ?
イリヤース:
思い出せない。すまない、本当にたくさんのことを忘れてしまったんだ。
アルハイゼン:
驚くことじゃない。
アルハイゼン:
現時点において、シラージに会ったことがあるのは君だけだ。あの洞窟の具体的な位置を知っているのも君しかいない。俺たちは必要なだけ君をサポートし、記憶を回復させる手伝いをするつもりだ。
パイモン:
記憶を失うのって、きっとすっごく苦しいよな…思い出せるように、オイラたちが手伝ってやるぞ!
イリヤース:
ありがとう。「苦しい」だけじゃなく、言葉にできないような感覚もある…
イリヤース:
記憶を多く失くしすぎたせいで、自分への認知も曖昧なものになってるんだ。頭の中で何かがざわざわ鳴り響いて、今にも気を失いそうになる。
イリヤース:
けど、そんな吐き気のするような感覚の中にも、どこか解放されたような気持ちもあって…
イリヤース:
何はともあれ、君たちのおかげで、少しはハッキリとしてきたよ。
イリヤース:
僕はたしか、教令院の「調査研究準備室」という場所でアルバイトをしていた。毎月の給料も、そこで受け取っていたはずだ。
アルハイゼン:
分かった。では、まずそこの責任者のもとへ向かおう。
イリヤースは、やるべきことが二つあることを思い出した。その一つは、調査研究準備室に行って給料を受け取ることだ。
調査研究準備室の責任者と会話する
ラメシュ:
アルハイゼン様。直近の調査研究の支出表はすでに事務室にお届けいたしました。もうお読みになりましたか?何か問題などございませんでしたでしょうか。
アルハイゼン:
ああ。その最近の調査研究に関する支出だが、以前よりもかなり減ったようだな。
ラメシュ:
はい、調査研究そのものを必要とする学者が減ったことが、主な原因かと。
ラメシュ:
詳しいことは複雑な話になりますが…そういえば、本日はどうしてこちらへ?
アルハイゼン:
彼のことは知っているだろう、イリヤースだ。かつてここでアルバイトをしていたと聞いている。訳あって、今日は彼の給料をもらいに来た。
ラメシュ:
ええ、それは構いませんが…イリヤース、この数日いったいどこへ行っていたんです?
ラメシュ:
忙しくなったタイミングで、あなたが急に何も言わずにいなくなってしまったものですから、仕事はすべて他の学者で分担したのですよ。
イリヤース:
予想外の状況になってしまいまして…
イリヤース:
みんなに迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ありません。何かできることはないでしょうか?
ラメシュ:
あなたの仕事は、もう他の学者がほとんど終わらせてくれています。ただ一つだけ、まだ終わっていないものがありますがね。
ラメシュ:
チャンドラは覚えていますか?前に彼が出した外出調査の研究申請は、あなたが担当していたはずです。
ラメシュ:
しかし数日前、その申請を彼が取り下げましてね。外出調査研究の計画をキャンセルしてしまったようです。
ラメシュ:
これで調査研究の申請を取り下げたのは、今月で十二人目になります。ですので、その理由を聞いてきてほしいのです。この時間、チャンドラはコーヒーを飲んでいるはずですから、カフェにいるでしょう。
イリヤース:
わかりました。それで、給料ですが…
ラメシュ:
あなたが戻ってきた後に、ちゃんと渡しますよ。もちろん、次はありませんからね。いつも挨拶もなく姿を消されては、他の同僚の迷惑になりますから。
ラメシュ:
これでいいでしょうか、アルハイゼン様?
アルハイゼン:
異論はない、そうしてくれ。
チャンドラと会話する
チャンドラ:
イリヤース?久しぶりだな、何か用か?
イリヤース:
調査研究の申請を取り下げたと聞いて、その理由を聞きに来たんだ。
チャンドラ:
ああ、それか…これといった理由はないんだ。ただ行きたくなくなっただけさ。
チャンドラ:
それに申請を取り下げたのも、俺だけじゃないはずだろ?最近はみんな、研究のモチベーションがないんだ。
アルハイゼン:
「研究のモチベーションがない」?
チャンドラ:
そうだ…というか、君は誰だ?どこかで見たことがあるような…
アルハイゼン:
気にするな、続きを話せ。
チャンドラ:
この前、賢者が失脚しただろ?彼らが主導していた多くの実験プロジェクトが中止になって、それに関与していた学者も審査を受けたんだ。
チャンドラ:
こういう問題が重なる時期に、リスクを冒して新しい研究をしようなんて誰も思わない。だから、まずは適当に何かで時間をつぶして、状況が明るくなるまで待つことにしてるのさ。
アルハイゼン:
君の言う「状況が明るくなる」は、「新たな賢者の好みを把握する」ということだろう?
チャンドラ:
ずいぶん、はっきりとものを言うんだな…でも実は、研究のモチベーションに欠けている原因はそれだけじゃない。
パイモン:
他になにがあるんだよ?
チャンドラ:
…アーカーシャ装置が止まったことさ。
チャンドラ:
知ってるだろう。研究には様々な知識が必要になる。
チャンドラ:
今までなら、必要なものはなんでも申請をすれば、アーカーシャが応えてくれていた。
チャンドラ:
この上ないほど便利だったよ。苦労して調べる必要もなく、様々な実験を素早く行うことができていたんだからな。
アルハイゼン:
なるほど。
チャンドラ:
ははっ、君も理解できただろ?あんなに良いものを経験してしまったら、今さら苦労して資料を調べようなんて人はいなくなる。
チャンドラ:
今の教令院でプロジェクトの立ち上げや研究を行っている人はほんの一握りしかいない。ほとんどは名のある学者たちがプロジェクトを立ち上げるのを待って、その時になったら一斉に参加するつもりなのさ。俺みたいにな。
チャンドラ:
名前が載るのは論文の後ろのほうになってしまうけど、面倒は大幅に減る。複雑な思考もいらないし、自分に割り当てられたことだけ考えればいい。
イリヤース:
——!!
パイモン:
イリヤース、どうしたんだ?
イリヤース:
頭が…痛い。
イリヤース:
思い出した…シラージがこっちに歩いてきた時、こう言っていた…
イリヤース:
「お前は『シラージ36号』となり、私が主導する意識の中に溶け込んで、固定されたモジュールのことだけを考えるんだ…そう、蜂の巣にいる働き蜂のようにな。」
パイモン:
なにがなんだか全然わからないぞ…どういう意味なんだ?
アルハイゼン:
それこそがシラージの研究していた内容だ。当時提出された課題とも一致する…「ハイブマインドと進化の道」だ。
アルハイゼン:
主に三つの点を実現すれば、人間社会においてハイブマインド——つまり集合自我を形成でき、人類の進化を成し遂げられるとシラージは信じていた。
アルハイゼン:
まず、能力の高い順に被験者に番号を付け、1番をマスターマインドに設定する。
アルハイゼン:
そして、マスターマインドが物事を数々のモジュールに分け、重要度に基づいて異なる番号のメンバーに振り分ける。
アルハイゼン:
また、メンバー間では迅速に情報を交換する手段を持つ必要がある。最も理想的なのは、記憶と感情を共有することだ。
旅人:
……
パイモン:
オイラ、まだよくわかってないんだけど…それになんの意味があるんだ?
アルハイゼン:
つまり、多くの脳を一つにつなげ、それぞれの脳に応じた思考内容を配分するのと同じことだ。
アルハイゼン:
それを用いて群衆の意識をまとめ、「個体」でありながら「組織」でもある、新しい存在を形成していく。
アルハイゼン:
おそらくシラージは、この「ハイブマインド」こそ、人類を凌駕しうる存在だと考えているのだろう。
パイモン:
うわぁ…たくさんの人をぎゅうぎゅう詰めにしてるような感じで、ちょっと怖いぞ…
イリヤース:
アルハイゼンさんの言う通り、シラージはすべての被験者に異なる番号を割り当てていた。番号が後ろの者は、メンバーの衣食住といった簡単な問題だけを考えていたんだ。
イリヤース:
そして番号が前の者は、未来における発展計画といった複雑なことを考える。シラージは僕を36号と呼んでいたから、真ん中から後ろ寄りの番号だと思う。
イリヤース:
それにシラージは、計画は着々と進んでいて、「蜂の巣」はもうじき完成するとも言ってた。
パイモン:
そんなの、完成する前にはやく止めなきゃダメだぞ!
イリヤース:
精一杯のことはする。ただ残念ながら、思い出せたのはこれだけなんだ。あの洞窟がどこにあるのかは、まだ思い出せない。すまない…
アルハイゼン:
ゆっくり考えるといい、いつか思い出せるはずだ。だが、少し妙だな…細かい辻褄が合わない。
イリヤース:
なにか、おかしなところが?
アルハイゼン:
たったの36番目?残念だ。君の才能はその程度じゃないと思うが。
アルハイゼン:
シラージが何に基づいて番号を設定しているのかはっきりとしないが…とりあえず、用事が終わったのなら、もう行こう。
チャンドラ:
待ってくれ。
チャンドラ:
さっきシラージについて話しているのが聞こえたんだが、彼を探してるのか?
アルハイゼン:
ああ、何か手がかりでも?
チャンドラ:
ああ、シラージは最近何かと有名だからな。聞くところによると、多くの有名な学者からも認められて、次の賢者の有力候補だそうじゃないか。
チャンドラ:
彼の研究グループに何が何でも入りたいと思っている人は大勢いるだろうな。俺にはこれといった才能もないし、そんなチャンスはまずないけど…
チャンドラ:
ただ、ジャナキっていう学者のことは知ってるよ。かつてシラージの招待を受けたことがあるにも関わらず、それを断ったそうだ。
チャンドラ:
もし興味があるのなら、彼女に聞いてみるのはどうだ?普段は花園の涼亭で本を読んでるはずだ。
ジャナキと会話する
パイモン:
おまえがジャナキか?オイラたち、シラージのことについて聞きたいんだけど。
ジャナキ:
……
ジャナキ:
イリヤース?
イリヤース:
僕を知っているのか?すまない、君のことはもうあまり覚えていないみたいだ。
ジャナキ:
とぼけてるの?
イリヤース:
いや、本当に記憶喪失なんだ。思い出せないことが山ほどある。
ジャナキ:
それで?当時やったことはもう覚えてないから、許してほしいとでも言いたいわけ?
ジャナキ:
それとも、代理賢者を後ろ盾にして、私とのことを清算するつもり?最も「群れに馴染めない」二人が一緒にいるなんて、最悪以外の何ものでもないわね…
アルハイゼン:
待て。君たちにどんな因縁があるかは知らないし、どうでもいい。
アルハイゼン:
シラージがかつて君をプロジェクトに誘っていたらしいが、それは本当か?
ジャナキ:
…だったらなに?
ジャナキ:
確かにシラージから誘われたわよ。私も、彼の課題にはけっこう興味があったし。
ジャナキ:
たしか、ハイブマインドに関する課題だったかしら?でも私を45番目の被験者にしたいとか言い出したから、数字が低すぎるって思って断ったの。
ジャナキ:
そんなに後ろのほうなんて嫌でしょ?絶対に行くもんですか。
パイモン:
イリヤースが36番で、ジャナキが45番…シラージはいったいどれだけの人に目をつけたんだよ?
アルハイゼン:
その番号が何に基づいて振り分けられているか、シラージから聞かされていないか?
ジャナキ:
聞いたわよ。前の賢者たちはアーカーシャを利用して、私たちの脳内から知識を抽出していたわよね?
ジャナキ:
当時、彼らはアーカーシャによって抽出された人々の知識の量をファイルに残していたの。
ジャナキ:
シラージはどこからかそのファイルを手に入れて、それをもとに被験者に番号を付けていると言っていたわ。
アルハイゼン:
なるほど、そのデータで頭脳の演算能力を測ることができると思っていたのか…
旅人:
そんなことができるの?
アルハイゼン:
データの真偽はさておき、知識で人を評価するのは無意味なことだ。
アルハイゼン:
「知能」はせいぜい「能力」の一部でしかない。人というものはとても複雑だ、単一の基準で測ることはできない。
ジャナキ:
でしょ!だから言ったのよ、私が45番だなんて絶対におかしいって。
アルハイゼン:
それ以外に、シラージについて何か知っているか?
ジャナキ:
もうないわ。彼に誘われて、断った。それだけよ。
ジャナキ:
他に用事はある?なければもう行くわ。そいつを見てるだけで鬱陶しくなってくるもの。
イリヤース:
待ってくれ。その…僕は以前、君になにをしたんだ?
ジャナキ:
本当に忘れたの?
イリヤース:
本当だ、信じてくれ。
パイモン:
オイラが証言するぜ!マハマトラも、こいつが色んなことを忘れてて、嘘はついてないって言ってたしな。
ジャナキ:
そう、忘れたのならそれでいいわ。
ジャナキ:
思い出しただけではらわたが煮えくり返るのよ、わざわざもういちど話すなんてごめんだから。ひとつ分かってほしいのは、あなたがたくさんの人に面倒をかけたってこと。その中に、私も含まれていたの。
ジャナキ:
他に言うことはないわ、さようなら。
パイモン:
行っちゃったぞ…おまえ、すっごく嫌われてたみたいだけど、本当になにも思い出せないのか?
イリヤース:
ああ。でも彼女の言葉には、なんだか心が沈む感覚があった。
イリヤース:
何か…本当に何かよくないことをしてしまっていたようだ…
アルハイゼン:
思い出したいと思うか?
イリヤース:
えっ?
アルハイゼン:
君はシラージを告発するための証人だが、今は間違いなく記憶を失っている。
アルハイゼン:
もし君自身が思い出したくないと言うなら、誰もそれを強制はできない。必死に思い出そうとするフリをしてから、一言「できない」と言えばそれで終わりだ。
イリヤース:
僕もどうすればいいか分からない…前にも言ったけど、記憶喪失に気付いたあと、なぜか解放されたような感覚を覚えた。
イリヤース:
でも、僕は自分が解放されるべきではない気がするんだ。だからやっぱり、過去に起こったことを思い出したい。どうすればいいと思う?
アルハイゼン:
俺は君に関する資料を調べることができる。
アルハイゼン:
これは仮説だが、本当に君が「たくさんの人に面倒をかけた」のなら、そのことが必ず資料に残されているはずだ。
アルハイゼン:
見てみるか?
イリヤース:
…ああ、頼みたい。
アルハイゼン:
よし、ならまずは知恵の殿堂へ向かおう。少々時間を費やしたが、そろそろ給料も取りに行くべきだ。
イリヤースに関する情報を探す
アルハイゼン:
二手に分かれて行動しよう。イリヤースが給料を取りに行っている間、君たちは俺と来て資料を調べてくれ。
アルハイゼン:
終わり次第ここで集合し、ガンダルヴァー村へ向かう。
イリヤース:
分かった、ありがとう。
アルハイゼン:
気を楽にするといい。緊張したところで何も意味はない。
イリヤース:
分かった…もう準備はできているんだ。過去にしたことが何であれ、それに向き合うつもりだ。
イリヤース:
そして、シラージについてもなんとか思い出して、すべてにけりをつける。
アルハイゼン:
その言葉を忘れないことだ。では、またあとで。
アルハイゼンと会話する
アルハイゼン:
ふむ、ここ数年の重要な資料はすべてここにあるはずだ。
イリヤースと会話する
イリヤース:
僕は…何をしたんだ?
アルハイゼン:
資料によると、君はかつて「勇気と正義感」によって教令院から表彰され、「英雄」のような待遇を得ていたとある。
イリヤース:
僕が?
アルハイゼン:
ああ。君の指導教員が学術的剽窃をしていて、それを君が告発したようだ。
アルハイゼン:
調査によって君の告発した内容が証明され、指導教員はマハマトラに捕まった。
アルハイゼン:
この件は当初、それなりに騒ぎになったらしく、教令院は君を表彰…
イリヤース:
——!!
アルハイゼン:
どうした、何か思い出したか?
イリヤース:
いや、ただ…頭がすごく痛い…まるで割れるようだ。
イリヤース:
そんなことを僕が?でも、どうして…
アルハイゼン:
ひとまず放っておこう。シラージの件と直接的な関係はなさそうだ、こんなことで頭脳にダメージを負う必要はない。
イリヤース:
…すまない。
イリヤース:
本来聞いて嬉しくなることのはずなのに、体が本能的に拒んでいるようだ。無理やり思い出そうとすると、感覚がなくなるほどの痛みがする。
アルハイゼン:
ならば順を追って事を進めよう。記憶を取り戻すのは元より苦しいことなんだ。特に、思い出したくないようなものなら尚更な。
アルハイゼン:
君がやるべきだと思うことをやるといい。
イリヤース:
ありがとう。どうして君がそんなに確信を持てるのかわからないけど、少しは自信が出てきたよ。
パイモン:
じゃあ、次はガンダルヴァー村に行って、給料をイリヤースの妹に渡せばいいんだよな?出発だ!
イリヤースの両親と会話する
イリヤース:
たぶんこの近くだ。たしか次の道は…こっちだったか…
アルヤーシャ:
イリヤース?いきなり帰ってきてどうしたんだ?
イリヤース:
父さん…なんでもない、ただ様子を見に来たんだ。
アシェラ:
本当に何もないのね?またいじめられてない?隠さず私たちに言ってちょうだい…
イリヤース:
——!!
アシェラ:
イリヤース!どうしたの!
イリヤース:
大丈夫、ちょっと頭が痛くて。よく寝られなかったからかも…
アルヤーシャ:
はぁ…だからあの時、一時的な感情で動いてはならんと言ったんだ。結局、あんな騒ぎにまでなって…
アルヤーシャ:
教令院での生活もよくないんだろ?脅迫の手紙が家にまで届いている。そっちでも色々と苦労してるだろ…
アシェラ:
どうしても嫌なら、教令院をやめて帰ってきてもいいのよ…
イリヤース:
本当に大丈夫、少し休めばよくなるよ。
パイモン:
イリヤース、記憶喪失のことを知られたくないみたいだな…
旅人:
家族に心配をかけたくないんだね。
イゼベル:
まあまあ、お父さんもお母さんもその辺にしてあげて。お兄ちゃんは元々頭痛もちなんだし、話は今度でもいいでしょ?
イゼベル:
お兄ちゃん、場所を変えて話そう?
イリヤースの妹は一行を静かな場所に連れていった。
イゼベル:
お兄ちゃん、頭が痛いの…ちょっとはよくなった?
イリヤース:
だいぶよくなったよ。そうだ、今月の給料をもらってきたんだ。家のほうは最近どうだ?
イゼベル:
順調だよ。でも、みんなお兄ちゃんを心配してる。
イゼベル:
お父さんとお母さんの口うるさいところは許してあげて。ほんとはみんな、あのときお兄ちゃんは正しいことをしたって知ってるから。
イゼベル:
ただ、あれからお兄ちゃんの良くない噂がたくさん流れちゃって…家にまで脅迫の手紙が届いたの。お父さんたちからしたら、たぶん…お兄ちゃんにもっと周りに溶け込んでほしいのかも。
イリヤース:
「溶け込む」…
イゼベル:
そう。あれ、もしかしておぼえてない?「あのとき」から、お兄ちゃんは——
イゼベル:
お兄ちゃん?どうしたの?
イリヤース:
ああ…そうだったのか…思い出したよ。大丈夫、もうぜんぶ思い出したんだ。
イゼベル:
今日のお兄ちゃん、なんか変だよ?…とにかく、お兄ちゃんがしたかったことは理解してるよ。でも、私もお父さんとお母さんと同じように、お兄ちゃんにはもっと楽しく暮らしてほしいって思ってるの。
イゼベル:
お兄ちゃんが英雄かどうかなんて気にしない。もっと気楽に生きてほしい、ただそれだけ。
アルハイゼン:
君のその理解は、彼をだいぶ楽にしてやれるだろう。
イゼベル:
本当?それならいいんだけど。あなたはお兄ちゃんのお友達?
アルハイゼン:
俺よりも、この二人のほうが友達という言葉にふさわしいだろう。俺の名はアルハイゼン、彼らは旅人とパイモンだ。
イゼベル:
あっ!たしかに誰かから聞いたような…でも、お兄ちゃんにお友達がいるってわかってほっとしたよ。
イゼベル:
一緒にお家でご飯でもどう?ちょうど食材を買いすぎちゃったの。
イリヤース:
悪い、まだ他の用事があるんだ。
イゼベル:
そっか、残念…じゃあ、私は先に行くね。お兄ちゃん、自分を大事にね!
イリヤース:
安心してくれ、もうみんなを心配させるようなことはしない。
アルハイゼン:
思い出したのか?
イリヤース:
ああ、思い出したよ。
イリヤース:
さっきはありがとう。なんだか、あなたもそこまで嫌われるほどの人じゃないように思えてきたよ。
アルハイゼン:
感謝しているときに口に出す言葉には思えないな。
イリヤース:
えっと、すまない…僕は…心からそう思ったんだ。前に酒場の入り口で、「以前に会ったことはないか」と聞いただろ?
イリヤース:
あなたに会った時、懐かしい感覚を覚えたって言ったけど…実は、あれは「嫌な感じ」だったんだ。
パイモン:
嫌な感じ?
イリヤース:
そうだ。でも接してみると、実はそこまで嫌な人ではないんじゃないかと気付いた。
イリヤース:
おかしいな、どうして当時は、あんなふうに考えていたんだろう…
アルハイゼン:
俺は他人の考えることをあまり気にしないが、それこそが自分の長所だと思っている。君も人付き合い程度で気を揉まなくて済むよう、俺のように泰然としているべきだ。
イリヤース:
うん、僕もあなたのような考え方ができればよかったんだけどね…それはそうと、シラージが実験をやっている洞窟がどこにあるかも思い出したよ。そこに連れていこう。
パイモン:
本当か?やったぜ!
パイモン:
でもたしか、「やるべきこと」は二つあるんだよな?まだ一つしかやってないぞ?
パイモン:
もう一つはどうするんだ?やらないのか?
イリヤース:
…物事には優先順位がある。必ずやシラージがハイブマインドを完成させる前に止めなくてはならない。さもないと、取り返しがつかなくなるからね。
パイモン:
それもそうだな…じゃあ今すぐ出発しようぜ!
ガンダルヴァー村で、イリヤースは過去の記憶を取り戻した。シラージの隠れ家も思い出したと彼は言った。一緒に様子を見に行ってみよう。
アルハイゼンと会話する
パイモン:
変だな、思ったより中は大きいぞ。本当にまだ完成してないのか?
パイモン:
イリヤース、ここに見覚えはあるか?ってあれ…イリヤースはどこだ?
アルハイゼン:
近くに彼の気配はない。
パイモン:
はぐれちゃったのかな?ここで待つか?それとも一旦戻って探しに行くか?
アルハイゼン:
必要ない、引き続き奥へ進もう。
パイモン:
おう、じゃあこのまま進んで、広くなってる場所であいつを待とうぜ!
イリヤースの心の声を聞く
突如めまいがしたのち、いくつかの場面が脳裏に現れた…
ラジュ:
もういいよ、イリヤース。君はもう俺のために十分やってくれた…
イリヤース:
僕には理解できない。ガニーが君の研究を盗んだことはみんな知ってるはずだ。なのになぜ誰も真実を公にしようとしない?
イリヤース:
あいつは君の論文を使って研究プロジェクトを申請しておきながら、プロジェクトの難題はすべて君に解決してもらっていた。このこと自体、別に秘密でもなんでもないはずだろ…
ラジュ:
あのプロジェクトに何人いると思う?もしガニーが学術的剽窃で離職したら、プロジェクトも終わりだ。そうすれば、数多くの人が巻き添えになる。
イリヤース:
だけど、ガニーは明らかに君を底なしに搾取しているだろ!
イリヤース:
最も困難な仕事は昼夜問わず君にやらせて、休みなんて当然ない。挙句の果てに君の研究結果を、堂々と自分がやったと主張している!
イリヤース:
そんなの、間違ってるよ。どうして我慢するんだ?
ラジュ:
みんなから口外するなと釘を刺されているのさ。それもあながち間違ってはいない。みんなそうやってここまで来たんだ…順調に卒業できればそれでいい…
イリヤース:
……
ラジュ:
気にするな、あいつから報酬はもらってるから。
イリヤース:
半年の努力と、数々の眠れない夜、そして好き勝手に浴びせられる脅迫と罵倒、その結果がたったの二万モラだって言うのか?
イリヤース:
まるで人を家畜かなにかのように扱っている…
ラジュ:
もういい、もう言うな。大丈夫だ、もう少し我慢すればいいんだ。
場面はここで途絶えた。
パイモン:
どうしたんだ?
旅人:
イリヤースの過去を見たかも。
パイモン:
えっ?もしかしておまえ、実は心を読む力があったのか?
アルハイゼン:
そんなわけがないだろう。
アルハイゼン:
俺もいま、わずかに「見」えた。おそらく、イリヤースがハイブマインドと接続する過程で、一部の記憶が漏れ出したのだろう。
パイモン:
接続?ハイブマインド?
アルハイゼン:
明らかに、ここは未完成の状態なんかじゃない。「蜂の巣」が完成してから、かなり時間が経過している。
アルハイゼン:
ハイブマインドに関する研究プロジェクトはすでに完成し、イリヤースは今まさに、群れに戻ろうとしているんだ。
旅人:
イリヤースは俺たちを騙してたの?
アルハイゼン:
その見解では全体を捉えられていない。引き続き進めば、君にも分かるはずだ。
イリヤースの心の声を聞く
新たな場面が脳裏に浮かんだ…
ジャナキ:
あなた一人が名声を得るために、私たちの一年もの努力が無駄になったのよ。一体どれだけの人を巻き込んだのか、分かってるわけ?
ヤープ:
英雄になりたかったのなら、いつだってよかっただろ。プロジェクトが終わってからじゃだめだったのか?
イリヤース:
君たちはなにを言っているんだ…ラジュが屋上から飛び降りたんだぞ、何とも思わないのか…?
ヤープ:
ラジュのことは確かに残念だった。俺も、あいつはもう少し忍耐のあるやつだと思ってたよ。
ヤープ:
このプロジェクトを終わらせるために、みんな苦労してたんだ。あいつだって、もう少し耐えられただろうに…よりによってこんな時に…
ジャナキ:
とにかく、もうあなたとは関わりたくないわ。あなたの軽率な行動のせいで、ガニーはマハマトラに審判された。このプロジェクトも、もう終わりよ。
ジャナキ:
もっとも、あなたはどうでもいいと思っているんでしょうね。でもね、私も含めて、このプロジェクトを頼りに卒業しようとしてた人が何人いると思ってるの——
ジャナキ:
もう、お先真っ暗よ。最悪の場合、私たちはみんな卒業できなくなる、分かってるの?
イリヤース:
すまない。
ジャナキ:
別に謝る必要はないわ。私もあなたの謝罪を受け入れる気はないから。でもこれだけは言っておくわ。あなたは必ず、代価を支払うことになる。
場面はそこで途絶えた。
パイモン:
なにボーっとしてるんだよ。またなにか見えたのか?
旅人:
イリヤース…
アルハイゼン:
多くは考えるな。言いたいことがあるなら、直接会って話すといい。
イリヤースの心の声を聞く
今度はとても明晰な場面が見えた。おそらく最近の出来事のようだ…
ピタール:
変だな。イリヤース、君を参加させてもいいという研究グループは一つもないのか?
ピタール:
課題を終わらせるには、他の学者と共に報告書を完成させる必要がある。君が学術的剽窃を告発した英雄なのは知っているが、それでも例外にはならない。そうだろう?
ピタール:
あるいは、他の学者との関係改善を模索してみるといいかもしれない。独立独行も、程度が過ぎるとよくない。
イリヤース:
…はい。
イリヤース:
……
???:
何やら、悩んでいるようだな。
イリヤース:
君は…?
シラージ:
おっと、自己紹介を忘れていた。私の名はシラージ。
イリヤース:
シラージ、さん…聞いたことはある。僕に何か用でも?
シラージ:
人々は常に、群れに馴染めない者を嫌う。お前もその苦労がよく分かったはずだ。
シラージ:
聞けば、ガニーを告発してから、ずっと孤立しているようじゃないか。しかも、家族ですらお前のやり方に賛同してくれないとか。
シラージ:
実はな、私は今、ある研究をしているんだ。お前を「徹底的に集団に溶け込ませる」ことができる。そうすれば、こんなふうに苦しみながら生きる必要はなくなる。
シラージ:
どうだ、試してみるか?
場面はそこで途絶えた。
アルハイゼン:
何を見た?
パイモン:
やっぱりそうだったのか!あいつ、本当にオイラたちを騙してたんだな!あの大悪党め!
パイモン:
いや、正真正銘の大悪党はシラージのほうだったな!イリヤースは普通の悪党だ!
パイモン:
あったまきたぜ、はやく問い詰めてやろう!
実験基地の最奥に進む
パイモン:
イリヤース!
イリヤース:
来たか。
イリヤース:
わざとハイブマインドに溶け込むプロセスを遅延させた。最後に「イリヤース」の身分で、君たちと会いたかったからね。
イリヤース:
「イリヤース」として、君たちに謝罪しよう。ガンダルヴァー村で思い出した二つ目のやるべきこと、それは——「君たちをここに連れてくる」ことだったんだ。
イリヤース:
マハマトラを回避し、アルハイゼンを蜂の巣に連れ込む——それこそ、この「シラージ36号」に与えられた任務だった。
パイモン:
お、おまえ…とっくに「シラージ36号」になってたのか?でも、マハマトラの虚偽検出テストに合格したはずだよな…
イリヤース:
ああ、あの時は本当に多くのことを忘れていたんだ。自らの身分や、責務までね…
イリヤース:
だけどそれは、僕がショックで忘れたわけではなく…自ら削除したものなんだ。
イリヤース:
アルハイゼンを騙すことは困難を極める。絶対に完璧な偽装を作り上げる必要があった。
アルハイゼン:
最高の偽装とは、自らをも欺くこと。
イリヤース:
いかにも。君たちに蜂の巣が未完成だと言ったのも、蜂の巣の完成に関する記憶を削除したからさ。
イリヤース:
ここはとっくに完成している。ここを離れる前、僕は36号として生きていた。そして今、僕はその身分を取り戻すことを選んだ。
イリヤース:
僕が本当の意味で解放されるのは、この場所だけなんだ。
イリヤース:
言いたいことはこれだけだよ。この部屋に入れば、僕の意識は再び群れに溶け込む。お別れだ。
アルハイゼン:
それが君の選択か?
イリヤース:
……
パイモン:
そうだぞ、オイラたちが知り合ったのは、「シラージ36号」なんかじゃなくて、「イリヤース」のほうだ!
パイモン:
どれだけ外に残るのが苦しくても、逃げちゃダメだとオイラは思うぞ!
シラージ:
まだ考える時間が必要か、イリヤース?
パイモン:
あっ、おまえは——
アルハイゼン:
彼がシラージだ。
パイモン:
おまえが大悪党だな!
シラージ:
「悪党」…実にストレートな物言いだ。まるで私が人どころか、神さえも怒らせたと言いたげだな?
パイモン:
おまえ——
シラージ:
私はアーカーシャ装置を改造し、使用者の記憶と感情を共有できるようにした。その後、教令院から学者を募り、この偉大なる「ハイブマインド」を創り上げた。
シラージ:
一人一人に番号を振り分け、実験計画を分割し、彼らに実行させた。
シラージ:
ここでは、人々は複雑な思考をする必要がなく、楽に、かつ幸せに生きることができる。これは彼らの選択であり、私はただ彼らの願いを叶えてやっているに過ぎない。
パイモン:
お、おまえ…そんなの言い訳だ!
シラージ:
ならば聞くが、この場所と外に違いはあるか?
シラージ:
過激な風潮の中では危険な研究に熱心だった教令院の学者たちも、萎縮した風潮の中では無為に日々を送るだけのものとなってしまった。
シラージ:
人々はみな「集団意識」に従って生活している。たとえ尖った者であっても、挫折を繰り返した後は群れに溶け込もうとするのだ。
シラージ:
私の言っていることは間違っているか、イリヤース?
イリヤース:
……
シラージ:
否定する必要はない、なぜなら間違ってなどいないからだ。群れを成す動物にとって、群れることは本能。
シラージ:
そして「群れを成す」ことの終着点こそ、ハイブマインドなのだ。平凡な蜂の群れは、それを頼りに強くなる。蜂を人間に置き換えることで、このモデルからさらに強大な力を引き出すことができる。
シラージ:
「蜂の巣」へようこそ、アルハイゼン。お前はかつて大賢者に助言し、傲慢にもこの課題を否定したな。
シラージ:
あまりにも重みのない、鳥の羽のようないくつかの言葉で、私のすべての努力を水泡に帰した。もちろん、お前がそれを気にしていないことは百も承知だ。お前にとって他人の苦しみなど、取るに足らないことだろう。
シラージ:
だが、私はあきらめなかった。私はついに当初の論文を現実にしたのだよ。
アルハイゼン:
ここへ来る際、蜂の巣には誰もいない部屋が多くあった。
シラージ:
気付いたか?彼らはどこにいると思う?
シラージ:
答えは教令院さ。彼らは今、もう一つの計画を実行している…私を賢者にする計画だ。
シラージ:
ハイブマインドは我々を一つに繋ぐ。すべての者が共に思考し、長所を生かし、複数の複雑な計画を同時に実行できるようになる。さらに、不測の事態に対して策略を修正することも可能だ。
シラージ:
すべて順調なんだ、お前という最大の障害を除けばな。お前を片づけたのち、私は衰えることのない影響力を利用して、ハイブマインドを合法の研究にする。
シラージ:
影響はますます拡大し、最後にはすべての者が私の群れに加わるだろう。私…いや、「群れ」はすべてを掌握し、教令院を新たな未来へと導く。
パイモン:
そんなことさせるもんか!
シラージ:
口先を尖らせるだけ無駄だ。お前たちに何ができる?イリヤースの選択すら変えられないお前たちに。
シラージ:
蜂の巣に戻れ、36号。
イリヤース:
…はっ。
パイモン:
待て、戻っちゃダメだ!思い出せ…外にはおまえを心配してる人がたくさんいるんだぞ!
パイモン:
それに、おまえは「群れに馴染めない」わけじゃなかっただろ!友達なら、オイラたちがいるじゃないか!
シラージ:
根無し草のお前たちが、よく恥ずかしげもなくそんなことが言えるものだ。教令院で一生を過ごすわけでもあるまい?お前たちが離れた後、悲劇が繰り返されるのは目に見えているだろう。
シラージ:
戻れ、36号。よく分かっているはずだ、人は綺麗事などで楽に生きていけるほど、甘いものではないと。
パイモン:
イリヤース…どうして…
シラージ:
お前たちもアルハイゼンと同じで、傲慢すぎるのだ。
シラージ:
お前たちは、誰もが自分と同じように聡明で、理知に富み、自らの信念をもって生きていると思っているが、その実ほとんどの者がただ楽に生きていたいだけだということを知らない。
シラージ:
36号が記憶を失った状態で蜂の巣を離れることを私が許したのは、必ず戻ってくるとわかっていたからだ。事実、お前たちよりも私のほうが、人間性というものを理解していることが証明されたわけだが——
シラージ:
何とか言ったらどうだ、アルハイゼン。お前の遺言を聞いてやる。
アルハイゼン:
言いたいことは、すでに一年前にはっきりと伝えてある。君が提出したモデルはあまりにも不安定だ。どんなに煌びやかに包装したところで、その脆弱な本質を変えることはできない。
アルハイゼン:
だが、それも仕方のないことだ。仮に君がこれらの問題を見つけられるほど鋭い人間だったら、とうに気付けていたはず——イリヤースがハイブマインドに戻った時、君の「蜂の巣」にある種の変化が起こることに。
周りの環境に変化が起きた…
シラージ:
どういうことだ…
パイモン:
なにが起こったんだ?
アルハイゼン:
「群れ」が計画を実行するためのモチベーションは、機械の運行に例えればエネルギー源に等しい。
アルハイゼン:
そこでマスターマインドである君は、俺に対する自らの憎悪を群れに同期させ、彼らに俺を片付けさせる計画を促した。
アルハイゼン:
しかしイリヤースが群れに戻った時、彼の記憶と感情は他のメンバーに共有される。その中には彼が外で得た、俺に対する新たな「認識」も含まれているんだ。
回想の声:
さっきはありがとう。なんだか、あなたもそこまで嫌われるほどの人じゃないように思えてきたよ。
回想の声:
おかしいな、どうして当時は、あんなふうに考えていたんだろう…
アルハイゼン:
これは君が彼らに与えた憎悪と相反するものだ。二つの異なる感情は、全く新たな対立をもたらす。
パイモン:
そういうことか!あれ、待てよ?つまりおまえは、イリヤースが「蜂の巣」に戻ることをとっくに知ってたのか?
パイモン:
あいつを引き留めるふりをしたのも、シラージを騙すため…?
パイモン:
さすがおまえだぜ、アルハイゼン!よし、ハイブマインドが混乱してるうちに、一気にオイラたちが…
パイモン:
ってあれ?元通りに回復した!?
シラージ:
言ったはずだぞ、お前は傲慢がすぎるんだ、アルハイゼン!その程度の目算で、私の蜂の巣を揺るがすつもりだったのか?
シラージ:
イリヤースの帰還はたしかに蜂の巣に異なる感情をもたらした。だが群れにおいて、そんなものはさざ波にもならない。
シラージ:
無駄なあがきだ。そろそろ終わりにしよう。その身でハイブマインドの恐ろしさをしかと味わうがいい…
パイモン:
魔物がいっぱい現れたぞ!どっから出てきたんだよ?
パイモン:
それに、なんだかいつもに増して不気味だ…
シラージ:
私は魔物をも群れの範疇に引き入れたのだ。やつらの番号は最後尾に近いが、それでも群れのメンバーには変わりない。
シラージ:
たとえ知性の低い連中でも、これを利用すれば素晴らしい連携を発揮できる。そう——過酷な訓練をした兵士のようにな。
シラージ:
果てのない荒波に飲まれるがいい。お前たちは、尽きることのない傲慢の代価を払うのだ!
パイモン:
おい!アルハイゼン!おまえのやり方が効いてないみたいだぞ、どうするんだよ?
アルハイゼン:
俺が用意した「プレゼント」はもう「群れ」の内部に届いている。受取人がサプライズに気がつくまで、あと少しのところだ。
アルハイゼン:
君たちは目の前の厄介事にだけ集中しろ。
パイモン:
うぅ、わかったよ。なんでそんなに自信満々なのかわからないけど…やってやるぜ!こいつらを足止めしよう!
蜂の巣の騒乱を見届ける
movie
部屋は赤い光に包まれている。「蜂の巣」内部の稼働に問題が生じたのは間違いない。アルハイゼンが意図的に、番号の振り分け規則についてイリヤースに疑問を抱かせたこと、その疑問が今や蜂の巣メンバーの共通認識となっていること——それらをハイブマインドの状況を読み取ってシラージは確認した。シラージのマスターマインドの威信が失墜するにつれ、蜂の巣メンバーの私欲と懐疑は洪水となって彼を溺れさせる。シラージが苦しみ、他を顧みる余裕がなくなった頃を見計らって、アルハイゼンは「蜂の巣」を操作する装置を破壊した。
アルハイゼンと会話する
パイモン:
「蜂の巣」は…止まったのか?
旅人:
もう終わった。
パイモン:
さっき、なにが起こったんだよ?
アルハイゼン:
記憶と感情の共有により、ハイブマインドのメンバーは意見を統一させやすくなった。
アルハイゼン:
例えばイリヤースだが、異なる認識が生まれたとは言え、最終的にはハイブマインドの判断に従っていた。
アルハイゼン:
しかし、これは完璧なものであるとは言えない。このような理論に基づけば、ハイブマインドが負の感情を処理する際、抑制が効かないどころか、拡散させてしまうことになるからだ。
旅人:
「私欲」…
アルハイゼン:
イリヤースが引き起こした騒動は決して無意味ではなく、群れのマスターマインドに対する疑いを生み出すことができていた。
アルハイゼン:
疑いは計画が頓挫するたびに大きくなり、マスターマインドの影響力は減っていった。そして群れには、必然的に負の感情が生まれたんだ。
アルハイゼン:
心配、失望、恐怖、貪欲…人と人が本当の意味で心を交わすことができない以上は、数ある負の感情もうまく隠れてしまう。
アルハイゼン:
だが隠し事のできない蜂の巣においては、負の感情は潮水のように蔓延する。もちろん、その導火線となったのは、俺がイリヤースに放った言葉だがな。
アルハイゼン:
鳥の羽のような、いくつかの言葉だけで事は足りるんだ。言葉の力を軽んじるな、シラージ。
シラージ:
あのときから…お前はすでにハイブマインドを壊す方法を考えていたというのか…
シラージ:
しかし、どうしてイリヤースがおとりだと気付いた?いつ?
アルハイゼン:
彼を一目見た時点で分かった。
アルハイゼン:
それと、俺は一度も傲慢な目で君を見たことはない。俺は常に客観的な評価をしているだけだ。
アルハイゼン:
君のハイブマインドと人類の進化に対する考えは甘すぎる。だがそれでも、君は頭がよく、何事にも慎重だった。
アルハイゼン:
そんな君が被験者を逃がすことは絶対にない。そんなミスをするはずがないし、仮にそうなったとしても、何も手を打たないなんて、尚更ありえないんだ。
シラージ:
ハハハッ…まさかお前の口からそんな評価を聞く日が来るとはな。仮にも同情で言っているのなら、そんなものは不要だ。
シラージ:
お前が私を平等に見たことなど一度もない。私たちが同じ場所にいたときさえ、お前が私に送る視線には距離を感じた。
シラージ:
隠す必要はない。私は誰よりもはっきりと知っている、あれこそは天才ゆえの傲慢に他ならない。あのような視線に耐えられるものなどいない!
アルハイゼン:
君の視点は完全に、自身の物事を見る習慣に基づくものだ。
アルハイゼン:
君の目には俺が、君と同じく「群れに馴染めない」者に映っていることだろう。だが俺は、自分自身を高みに置いて、物事を俯瞰しようとしたことなど一度もない。
アルハイゼン:
俺はただ、忙しない環境や無意味な喧噪から離れ、すべてを客観的に見たいだけだ。
アルハイゼン:
君こそ、本当の自分と折り合いを付けられず、他人の評価や勝敗を過度に気にしていたんじゃないか。
シラージ:
傲慢だったのは、私のほうだとでも言いたいのか?
アルハイゼン:
違うとでも?傲慢で、脆弱だ。
アルハイゼン:
人々をシンプルで凡庸な群れに見立て、俺を君の同類と見なしたじゃないか。
シラージ:
……
シラージ:
何がどうあれ、今回は私の負けだ。教令院に連れていき、審判を下すがいい。
アルハイゼン:
もちろん君は審判を受ける。だが、捕まえるのは俺の仕事じゃない。
アルハイゼン:
俺は一介の事務方に過ぎないからな。君たちの連行は、やはり大マハマトラ殿に任せよう。
パイモン:
セノ!どうしてここにいるんだ?
セノ:
「符号」を辿ってここへ来た。だがどうやら、もうことは終わっているようだな。
パイモン:
ふごう?
アルハイゼン:
セノへの手紙の中に、簡単な図案を書いておいたんだ。ここへ来る途中、それと同じ符号をいくつか道に残した。
パイモン:
待てよ、セノへの手紙って…
パイモン:
あっ!思い出したぞ!おまえが来たばかりのときに、アーラヴが言ってたな。おまえがセノに手紙を残したって!
パイモン:
本当に最初からイリヤースが変だって気づいてたのか!まったく、オイラたちまで騙すことないだろ!
アルハイゼン:
それは言いがかりだ。俺は一切、君たちを誘導したり騙したりしたつもりはない。
アルハイゼン:
そういえばこの前、院内で資料を見つけたんだ。そこにある通りにすれば、視力を高めることができるらしい。物事がよく見えない君にぴったりだと思うが、どうだ?
パイモン:
おまえな…
パイモン:
そうだ、セノ。たしかシラージは、教令院にも何人かメンバーを送ってたみたいだから、そいつらも見逃すなよ!
セノ:
安心しろ。すでにマハマトラのほうで怪しい者を調査し、シラージの仲間を大量に逮捕している。
セノ:
これもハイブマインドが動揺した原因の一つだろう。すべて、お前の想定内だったというわけか、アルハイゼン。
アルハイゼン:
ふむ、俺が興味を持っていたのはここまでだ。逮捕は君たちに任せるとしよう。
アルハイゼン:
それでは。
パイモン:
勝手に行っちゃったな。うぅ…被験者がたくさんいるぞ…とりあえず様子を見てみようぜ。
被験者と会話する
カーワン:
お、終わりだ…こんなにたくさんの計画の策定に関わってたなんて…しかも、代理賢者を打ちのめそうとしてただって…?
カーワン:
こんなことをしてたなんて…頭のネジが外れてたとしか思えない…
ゴリ:
私たちは幇助したに過ぎないけど、アルハイゼンがマハマトラに圧力をかけて罪を重くされないか心配だわ。
ゴリ:
代理賢者、書記官…何であれ私たちが恨みを買っていい身分じゃないわ…これからの教令院での日々は、いばらの道になりそうね。
ポウヤン:
先のことを考えるのはよそう。それより、群れから離れたあと、少し罪悪感を覚えたんだ。
ポウヤン:
今までそう感じなかったのは、そもそもアルハイゼンの名があまり知られていなかったのと、聞かされていた評価もよくないものだったからだと思う。
ポウヤン:
シラージにアルハイゼンを憎むよう仕向けられた俺たちは、彼を悪者だとしか思っていなかった。そして成り行きのままに、その感情を受け入れてしまったのさ。
ポウヤン:
今になって思えば、筋の通らないことをたくさんしてしまったと思うよ。
カーワン:
自業自得とも言えるだろうね。はぁ…なあ君たち、俺たちの代わりにアルハイゼンに謝っておいてくれないか?
パイモン:
いいぜ、オイラたちがアルハイゼンに言っておいてやるよ。でも、あいつがおまえたちを許してくれるかまでは…わからないけどな。
カーワン:
大丈夫。なんにせよ、それで少しは俺たちの気も楽になるんだ。彼が俺たちを恨むなら、相応の罰を受ける覚悟はできている。
アーラヴ:
そろそろ行く時間です。
ゴリ:
はぁ…行きましょう。
パイモン:
あいつら…「騙されてた」って考えてもいいのかな?
パイモン:
外に出たら、アルハイゼンに聞いてみようぜ。
イリヤース:
…どうやら、僕はやはり「シラージ36号」にはなれないようだ。このままイリヤースとして生きるしかない。
イリヤース:
実はガンダルヴァー村にいた時、自分から名乗り出て、君たちに真実を告げるべきか悩んだ。
イリヤース:
でも…当時の僕にはまだその勇気がなかった。
イリヤース:
結局のところ、僕はかつての正義感さえ失った上に、「群れに馴染む」こともできなかった。
パイモン:
イリヤース…
イリヤース:
そんなに悲しまないでくれ、悪いのは僕なんだから。
イリヤース:
でも、まったく収穫がなかったわけじゃない。蜂の巣が崩壊する瞬間、僕の脳裏にこんな思いが浮かんだんだ。
イリヤース:
僕が溶け込もうとしていた「群れ」は、僕の想像していたものほど強くはなかった。
イリヤース:
それが分かると、心なしか、少し勇気が湧いてね…いつの日か、僕もアルハイゼンさんのように、まったく他人の態度を気にしないでいられるようになれるかもしれない。
パイモン:
おう、おまえならできるって信じてるぜ。
イリヤース:
ありがとう。じゃあ僕はもう行くよ。この事件の主犯の一人として、裁判を受けにね。
イリヤース:
今回のことは、ひとまず僕の両親と妹には内緒にしてくれないか?もう僕のことで心配させたくないんだ。
イリヤース:
それと、僕が謝罪していたとアルハイゼンさんに伝えてほしい。二人とも、さようなら。
セノ:
ここの被験者は全員、俺たちが連行する。
セノ:
あとは人員を手配してこの場所を封鎖する。資料を回収したのち、装置を破壊する手はずだ。
セノ:
お前たち、ケガはないか?包帯と止血剤なら持ってきているが。
パイモン:
大丈夫だぞ!でも…ちょっと疲れたぜ。
セノ:
はやく休め。アルハイゼンが出口のほうで待っている、他に用がないなら彼と落ち合うといい。
セノ:
ただ、引き続き注意しろ。潜伏しているシラージの仲間への警戒は怠るなよ。解決できないトラブルに遭ったら、教令院に来て俺を呼べ。
パイモン:
おう、セノも気をつけろよ!
パイモン:
じゃあ、まずはアルハイゼンと落ち合おうぜ!
アルハイゼンと会話する
アルハイゼン:
事件も順調に解決したことだ、もう帰ってもいいだろう。
アルハイゼン:
もう少し早く終わると思っていたが、予想より時間がかかったな。
アルハイゼン:
その顔を見るに、まだ何か質問したいことがあるようだな。
アルハイゼン:
その好奇心は尊重しよう。だが既に定時を過ぎているな、悪いが答えられない。
パイモン:
おい!オイラたちはおまえの同僚じゃないんだぞ!
アルハイゼン:
単なる口実だ。わからなかったか?
パイモン:
お、おまえ…そうまでして答えたくないのか…!
パイモン:
うぅ、今日は絶対にあのなんとかマインドとか、進化のほにゃららのことを話してもらうぞ。逃げられると思うなよ!
アルハイゼン:
では、これで。
パイモン:
おい、待てって!
アルハイゼン:
…もういいだろう?君のそういうところは、どこぞのしつこいやつらにそっくりだな。
パイモン:
話をそらしてもムダだぞ!
アルハイゼン:
……
アルハイゼン:
最初から説明するのはあまりにも面倒だ。ここで立ったまま延々と議論するつもりもない。そうだな、とりあえずついて来るといい。
パイモン:
えっ?どこに行くんだよ?
アルハイゼン:
着いたら分かる。
アルハイゼンの考えを聞く
パイモン:
ここって…おまえの家か?
アルハイゼン:
ああ。
パイモン:
オイラたちを家に招待してくれるなんて…えへへっ、どうしたんだよ、急にそんなに親切になっちゃって…
???:
帰ってきたか。ちょうどこの絵の掛け方について意見を…ってちょっと!誰だよ、その人たち!?
アルハイゼン:
そう驚くな、見るからに客人だろう。
カーヴェ:
あ、あなたたちは…まさか、教令院の人間ではないだろうね…?
旅人:
違うよ。
パイモン:
オイラ、どっかでおまえのことを見かけたような…うーん…あっ!?あのときの!
カーヴェ:
どうして僕を知っているんだ!まずいぞ、ここに住んでいることが皆にバレたんじゃ…
アルハイゼン:
どうした?今になってようやく恥の自覚が芽生えてきたか?
パイモン:
おまえら、ルームメイトじゃなかったのか?
カーヴェ:
それはそうなんだが…頼む、誰にも絶対に言わないでくれ!決して、誰にもだ!
アルハイゼン:
たしか、ハイブマインドと潜在意識についての本がいくつかあったな。持ってくるから、君たちは雑談でもしていてくれ。
パイモン:
えっ?お、おいっ!
カーヴェ:
おいっ!本当に行ってしまうのか!なに考えてるんだ、おいアルハイゼン!
パイモン:
……
旅人:
……
カーヴェ:
……
カーヴェ:
すまない、失礼を承知で聞くが、その…あなたたちはもしかして、友達のふりをするようアルハイゼンに雇われた役者なのか?
パイモン:
ん?なにがなんだって?
カーヴェ:
…違うのか?あいつが友達を家に招いたことなんて、今の今まで一度もなかったんだ。驚くのも無理ないだろ?あいつの気難しさは、あなたたちもようく知っているはずだ。
パイモン:
でも、おまえはあいつの友達じゃないのか?
カーヴェ:
…ぐぅ…別に、友達というわけじゃない…
カーヴェ:
はぁ…昔は友達だった。今はもう違う。
パイモン:
ん?
カーヴェ:
まあ気にするな。僕はカーヴェ、もう少し…まともな状況で知り合えていたらよかったんだが。とにかく、僕がここに住んでいることは内緒にしておいてくれ。
パイモン:
なんだか、ずいぶんな事情があるみたいだな。口止め料をくれたら、考えてやってもいいぞ?
カーヴェ:
ああ、やはりあなたたちは正真正銘、あいつの友達だな。今のでよくわかった!
パイモン:
なんだよ、至って普通の反応だろ。さんざん自分で弱みをさらけ出しといて!
カーヴェ:
だ、だからといって…なにもあいつみたいに僕をいじることないだろ?
アルハイゼン:
どうやら気が合うようだな、君たちの騒音がリビング全体に響き渡っていた。
カーヴェ:
ふん、自分の友達は自分でもてなしてくれ。
アルハイゼン:
本はここに置いておこう。
目の前の本をざっと読んだが、内容が奥深く、すぐには理解できなさそうだ…
パイモン:
頭の中がグルグルしてきたぜ…すっごく複雑で難しいぞ…やっぱり聞いてみよう。
パイモン:
えっと…まず、おまえはどうやってハイブマインドの「弱点」に気づいたんだ?
アルハイゼン:
実は一年前、シラージの論文が大賢者まで届いたとき、俺はそれとなく意見を求められた。そのとき、俺は棄却するべき理由を二つ挙げていたんだ。
アルハイゼン:
一つ目の理由は以前にも言ったように、彼の研究が「人類の進化にまつわること」に関与していて、教令院はそうした研究を禁じているということ。
アルハイゼン:
二つ目の理由は、彼の極端な研究の方向性に比べて、方法があまりにも保守的だと感じたことだ。
パイモン:
ん?あれで保守的なのか?あんなにデッカイ実験室まで作って、たくさんの人を集めて…そんでもって、おまえをやっつけようとしてたんだぞ…
アルハイゼン:
ハイブマインドを安定させる方法が一つだけある——被験者の人間性を完全に抹消することだ。
アルハイゼン:
思考をマスターマインドに集中させ、群れにおける他の被験者を道具と見なす。それこそ、ハイブマインドにおける最適解だ。
パイモン:
そんなの、危険すぎるぞ!お、おまえ…本気でそう思ってるわけじゃないよな?
アルハイゼン:
俺はただ事実を述べているだけだ。もし仮にシラージがそうしていたところで、俺は今と変わらず、くだらないと思っていただろうが。
アルハイゼン:
いかなる種族の進化も、一夜にして遂げることは不可能だ。人間性を完全に失ってしまえば、それを人間と呼ぶことはできなくなる。
アルハイゼン:
これこそ、教令院が「人類の進化にまつわること」について研究を禁じている理由だ。そうした研究のほとんどが、最終的には「進化」に背く方へと向かってゆくからな…
パイモン:
そうなのか…
カーヴェ:
ハッ、君の口からそんな言葉が出るなんてな。人間性を失ったら人間じゃなくなるって言うのなら、君は十年後には別の種族になっているんじゃないか?
アルハイゼン:
なら君はどうなんだ?キノコンにでも退化しているんじゃないか?
カーヴェ:
そうだとしても、僕は情も義もあるキノコンになるぞ。
カーヴェ:
悪いな、別に聞き耳を立ててたわけじゃないんだが…あなたたち、一体何があったんだ?トラブルにでも巻き込まれたのか?
パイモン:
そうとも言えるな。変な学者に出会って、集団を引き連れてオイラたちを狙ってきて…
カーヴェ:
狙われた…って、大丈夫だったのかい?
カーヴェ:
そう…だったのか…
カーヴェ:
はぁ、人生にはトラブルがつきものだな。こんなことなら、今日は外出なんかしなければよかったと思わないか?そうしておけば、厄介事に遭うこともなかった…そうだろ?
カーヴェ:
うちで大掃除の手伝いでもしたほうがマシだったな。あそこにある本を見てくれ、随分と長いことあのままなんだぞ。まったく、普段読まない本は外に山積みにするなってんだ!
パイモン:
えっと…
アルハイゼン:
……
アルハイゼン:
君は場を気まずくしていることに気付いたほうがいい。まさか、自分が口達者だなどとは思っていないだろうな?
カーヴェ:
おい、どの口が言ってるんだ!…ふんっ。それで、結局のところ、その…君は大丈夫だったのか?
アルハイゼン:
悪くはない。少なくとも、君がいじくり回しているあの掛け絵に比べれば、よほどマシだ。
カーヴェ:
君ってやつは…!本当に何も分かってないな。僕の装飾のセンスに口を出さないでくれ!
旅人:
(なんかカーヴェがまた怒った…)
パイモン:
こいつら、どっちがおかしいのか、もうよくわかんなくなってきたぞ…さっさと話を終わらせて帰ろうぜ…
旅人:
パイモンの好奇心のせいで…
アルハイゼン:
こそこそ話をするなら、声の大きさに気を付けるべきだ。
パイモン:
ぐぇ…あ…あはは…
アルハイゼン:
まだ他に問題でも?
パイモン:
えっと…あっ、そうだ。学者たちがおまえに謝りたいって言ってたんだ。どうか許してほしいって。
アルハイゼン:
俺は彼らを責めてはいない。より正確に言えば、彼らの俺に対する態度についても、まったく気にしていない。
アルハイゼン:
ある意味では、彼らもシラージに騙されていたんだ。マハマトラによる審判でも、その点は考慮されるだろう。
パイモン:
それからイリヤースなんだけど、あいつはガンダルヴァー村にいたとき、真実をオイラたちに伝えるか迷ったらしいんだ。でも結局、勇気がなくて言えなかったんだって。
パイモン:
あいつもおまえに謝ってたぞ。
アルハイゼン:
どうでもいい、端から彼に真実を吐露してもらおうなどとは思っていなかった。
アルハイゼン:
経歴からして、彼は普通の人間よりも勇敢だった。そのような者を過度に責める必要はないだろう。そういうことは、却って自分の弱さを証明するだけだ。
アルハイゼン:
俺はこれから夕食に行く。あと十分だけ時間をあげよう、最後の質問をするといい。
パイモン:
うーん…オイラはもうなにもないぞ、おまえは?
旅人:
アルハイゼンの「興味ある」ことって何?
パイモン:
おう…たしかにすごく気になるな。
パイモン:
教令院にいたとき、おまえは「興味があって」マハマトラと一緒に調査してるって言ってたよな?
パイモン:
でもシラージに会ったとき、おまえはあいつと実験、どっちにもそこまで興味がないように見えたんだけど…
アルハイゼン:
俺は彼個人にはまったく興味がない。だが「あれだけ多くの者」が「自らの意思で彼のハイブマインドを構成していたこと」について、興味を持っていただけだ。
アルハイゼン:
今は、その理由もすでに判明している。
旅人:
教令院の雰囲気と関係が?
アルハイゼン:
ああ。賢者が失脚し、アーカーシャ装置が止められた。これらのことは教令院の雰囲気に影響を及ぼした。
アルハイゼン:
シラージの実験は許可を得たものではなかったにも関わらず、あれだけ多くの人間を集めていた。これは、近ごろの研究プロジェクトがいかにその数を減らしているかを物語っている。
アルハイゼン:
代理賢者として、これに対応する方法を考えるつもりだ。
アルハイゼン:
それから、イリヤースの件も気にかけておく必要がある。学術的剽窃の告発は正しいことだ、あのような結果になるのは間違っている。
パイモン:
なるほど…なんだかんだ、アルハイゼンも真面目に仕事してるみたいだな!
アルハイゼン:
「最低限」、真面目に仕事をしていると言ったほうが正しいだろう。辞表の審査が下りるまで、これら面倒事の処理に尽力するよ。
パイモン:
待てよ、「辞表」!?
アルハイゼン:
すでに教令院には辞表を出したんだ。じきに「代理賢者」の身分を離れ、書記官として仕事を続けられるようになるだろう。
アルハイゼン:
この件はシラージも知らないはずだ。彼は少し運が悪かった。あと数日辛抱していれば、何もせずとも俺は自ら辞任していたんだからな。
アルハイゼン:
そうなれば、彼が何をしようと俺の知ったことじゃない。だがたとえ俺がいなくとも、あの不安定なモデルではどのみち崩壊は避けられなかったはずだ。結果はそれほど変わらなかっただろう。
パイモン:
でも…どうして辞めちゃうんだよ?
アルハイゼン:
俺は賢者には向いてないし、やりたいとも思わない。教令院も既に、規則に従って各学派から新たな賢者を選び始めている。だがその過程はとても長く、時間がかかるんだ。
アルハイゼン:
代理賢者を長く務めるだけ、正式なものに推挙される可能性が高まってしまう。それは困るんだ。俺は人生をそんなことに費やしたくはない。
旅人:
とても明確な進路だね。
アルハイゼン:
明確であることはとても大切だ。さて、そろそろ時間だ。君たちも夕食を食べに行くといい。
パイモン:
そういえばオイラも腹が減ってきたぜ。じゃあまたな、オイラたちも美味しいもんを食べに行くぜ!
旅人:
またね!
アルハイゼン:
ああ、またな。