arrow_back 原神 クエスト
神守柏の章 第一幕

散りゆく青桐の葉


旧枝新芽
あなたとパイモンが「小倉屋」を通りかかると、偶然にも二人の知り合いに会った…
一平と新之丞と会話する
パイモン:
ん?あそこにいるのって…
パイモン:
一平と新之丞だ!
パイモン:
だろ!あいつらって友達だったんだな?
パイモン:
とりあえず、挨拶しようぜ!
パイモン:
おーい、一平、新之丞。おまえら、なにやってるんだ?
一平:
おや、あなたたちは!いつぞやはありがとうございました。
一平:
実は、この店で服を仕立てようとしていたところ、たまたま彼に会ったんです。
新之丞:
君たちも知り合いだったんですか?
一平:
ええ、以前、鎌治様と一緒にお世話になりまして。ただ、その後、なかなかお礼を言うことができなかったんですよ。
一平:
そちらは、どういうお知り合いで?
新之丞:
前に、千里様が彼を護衛役に任命したことがあったんです。まあ実際は、それを利用して離島から脱出するのが目的だったんですが、偶然その時に。
パイモン:
世間って狭いんだな。まさか、おまえたちが知り合いだったなんて!
一平:
あ、いえ、違います。僕たちは初対面です。服を仕立てに来た彼とたまたまここで会い、雑談をしていまして。
一平:
そうしたら、次第に鎌治様と千里様に関する話題になり…あ、えっと、これって話して大丈夫でしたかね?
新之丞:
心配いらないと思いますよ。お二人とも、ずっと前から知っていますから。
パイモン:
そうそう、たしかその二人から手紙を届けてくれって依頼されたんだよな!
パイモン:
あいつらって、もうかなりいい感じの仲だったよな?まさか、あれからさらに進展があったのか?
一平:
ええ、そのことで僕たちも近々何かあるんじゃないかと睨んでいるんです。例えば…正式に婚姻を発表されるとか。
パイモン:
わぁ!めでたいぞ!へへっ、ついに結婚するのかぁ!
一平:
まあ、ただの憶測に過ぎませんけどね。正式な発表を前に聞きに行くのも憚られますし…
新之丞:
ただ、宴用の礼服を仕立ててくるよう命令されたんです。そしたら、一平さんも鎌治様から同じ命令を受けていたみたいで。
一平:
両家が同じ時期に宴の準備をしており、さらに酒や食材類も大量に購入しています。これはもう婚礼の式を挙げると考えて間違いないでしょう。
新之丞:
それにここ最近、千里様はとても上機嫌で、しかも体重を減らすために食事を減らしているという噂まであります…つまり、そういうことなんでしょう。
パイモン:
うんうん、いいことだな!でも…
新之丞:
どうかしましたか?
新之丞:
ああ、私の気持ちなら心配する必要はありません。千里様が想い人と結婚できることを、心から喜んでいますから。
一平:
ええ、そうですよね。僕もそう思います!
新之丞:
でも、あまり喜びすぎるのもよくないでしょう。ただの誤解で、私たちがぬか喜びしているだけかもしれません。今のところ、確たる証拠もないですし。
新之丞:
招待状を届ける仕事などを任されていたら、確証を持てたのですが…
パイモン:
新之丞、ぜんぜん大丈夫そうに見えないな。
新之丞:
…すみません。実は最近、寝不足が続いておりまして…
新之丞:
お恥ずかしい話です。仕事中にこんな疲弊していては、勘定奉行にも迷惑ですし、千里様にも顔向けできません…
一平:
二人の婚約について、心配しているのですか?
新之丞:
いえ、そういうわけではありませんが、どうも…心がモヤモヤしていまして。
一平:
その気持ち、よく分かりますよ!モヤの中にいたら不安になりますし、安心して喜べませんもんね!
旅人:
(分かってない気がする…)
パイモン:
どうする?オイラたちが聞いてきてやろうか?
一平:
えっと…直接聞くのは、さすがにあまりよろしくないのでは…
パイモン:
それだ!綾華が知ってたら、確実に分かるな!
新之丞:
社奉行を巻き込むのも…それはそれでよくないかと…
パイモン:
大丈夫、こいつと綾華は親友だからな、心配いらないぞ!
新之丞:
そ、そうでしたか…本当に助かります。真相さえ分かれば、思いを巡らすこともなくなりますので。
パイモン:
じゃあ、さっそく神里屋敷へ行こうぜ!
神里屋敷に行って神里綾華に会う
一平:
ここを訪れるたび、優雅で立派な佇まいには圧倒されますね。本当に美しい場所です。
新之丞:
では、我々は迷惑をかけないよう、ここで待っています。
パイモン:
えっ?綾華はそんなこと気にしないと思うけど。
一平:
いえ、たとえ勇気を振り絞って行ったとしても、何をしたらいいか分かりませんし。それに、もし失言なんかしてしまったら…あははっ、僕たちは遠慮しておきます。
パイモン:
そっか。じゃあ、すぐ戻ってくるから、ここで待っててくれ。
トーマと神里綾人と会話する
トーマは盤面を見ながら、深く考えている…
トーマ:
盤面を見ずに、今の一手でこちらの布陣を崩すとは…さすがです。
トーマ:
さて…次はどう打つか…
パイモン:
綾華、トーマ、オイラたちだぞ!
トーマ:
君たちか!久しぶりだね。
トーマ:
悪いな。お嬢なら、ちょうど外出中なんだ…
神里綾人:
おや?
神里綾人:
この声は…トーマ、もしかして件の旅人さんかい?
トーマ:
ご明察。
神里綾人:
初めまして。綾華から話は聞いています。お会いできて光栄です。
背中を向けていたもう一名が、ようやく立ち上がった。
神里綾人:
社奉行、神里家当主神里綾人。以後、お見知りおきを。
神里綾人:
ふふ…妹がいつもお世話になっています。やっとお二人にお礼ができますね。
神里綾人:
ただ、あいにく綾華は外出中でして。神里家に関することであれば、この私にご相談ください。
パイモン:
えー、ほ、本日はお日柄もよく…このたびは突然のご訪問、誠に、えっと、ご容赦を、いただきたく…
トーマ:
ハハッ、突然どうしたんだい。
パイモン:
だってこの人、なんだかすごそうな雰囲気が漂ってるだろ。オイラの「ヤバいやつランキング」の中でも、五本の指に入りそうだぞ…
パイモン:
それに立ち上がっただけで、なんだか部屋の空気が急に変わって、喋りにくくなるし!
神里綾人:
ふふっ、小さなお客さん、過分なお言葉感謝いたします。
神里綾人:
そうかしこまる必要はありません。公務の場ではないので、どうぞ力を抜いてください。
パイモン:
ふぅ、しんどかったぁ!そんじゃあ、遠慮なくずばっと聞くぞ!
パイモン:
九条鎌治と柊千里が結婚するって噂が流れてるんだけど、おまえはなにか知らないか?
神里綾人:
おや?貴方たちの耳にも入っていたんですね。
旅人:
過去に二人を手伝ったことがある。
神里綾人:
なるほど、そうでしたか…ええ、確かに事実です。私も少し前にそのことを知りました。
神里綾人:
二大奉行の有力者同士の婚姻です。稲妻全土で大きな話題となるでしょう。
神里綾人:
祭事や文化に関することは社奉行の務め。その件も当然、我々の管轄になります。
トーマ:
まあ、ある意味、奉行と将軍様の面子は人々から同等に見られるからね。こちらも重要視しないといけない。
パイモン:
ふむふむ、なるほどな。
パイモン:
まあ、とりあえず好きな人同士が結婚できるんだし、おめでたいことだよな!
神里綾人:
ええ、そうですね。奉行間の婚姻は滅多にないことですが、あのお二人は愛を育んだ者同士。固定観念にとらわれることなく、自由な道を歩むべきでしょう。
トーマ:
では、後ほどオレが両家を訪問し、神里家からの祝いの品を届けてきます。
神里綾人:
ふむ…
神里綾人:
いや、今回は私が自ら出向こう。
トーマ:
えっ、しかし、若にはまだ公務が…
神里綾人:
九条家と柊家が婚姻関係を結ぶのだから、神里家も相応の礼を尽くすべきだろう。
神里綾人:
社奉行の業務は実に雑多。そのため、婚礼などの祭事はいつも妹に任せています。
神里綾人:
ただ、綾華はここのところ多忙で、手が回らない状況なんです。一方、私はちょうど時間が空いています。これを機に、お二人に会っておくのも悪くはありません。
神里綾人:
そこでどうでしょう、貴方たちも一緒に行きませんか?
旅人:
俺たちも?
神里綾人:
この件を気にかけているということは、貴方たちとあの二人の間には、何かしら「特別」な縁があるということ。
神里綾人:
であれば共に訪問し、彼らを祝福しませんか?それとも…私の勘違いでしたか?
パイモン:
そんな「特別」って言えるほどの仲じゃないぞ…まあ、色々ありはしたけど、ごく普通の関係というか…
パイモン:
手紙を送ったのも、ただ依頼を受けたからであって…って、ん?待てよ、もしかしてオイラたちが、この結婚の陰の立役者なんじゃないか!?
パイモン:
そ、そうなのか…
旅人:
でも、一緒に行くよ。
神里綾人:
ありがとうございます。貴方たちがいてくれれば、無意味な挨拶を多少省くことができるでしょう。
パイモン:
おまえ、社奉行のくせにあいさつが苦手なのか?
神里綾人:
おや、わざわざ世辞を言うなんて煩わしくはありませんか?世の中、そういった煩わしいことを好んで行う人もいますが、私は違います。
神里綾人:
トーマ、客人と出かけてくる。家の中のことは頼んだよ。
トーマ:
はい。若、お気を付けていってらっしゃい。
一平と新之丞に伝える
一平:
おっ、やっと戻って…
新之丞:
って、ええっ!?しゃ、社奉行様!?
神里綾人:
おや?このお二人は?
パイモン:
オイラたちと一緒に来た友達だ。紹介してやる。
綾人に二人を紹介し、彼らに状況を説明した。
新之丞:
ほ、本当のことだったんですね…
新之丞:
ただの噂ではなかった、と…くっ、そうでしたか…
一平:
それは良かった、僕たちの思った通りでしたね。
神里綾人:
ただ、私があの二人の代わりに伝えたのは、いささか妥当とは言えません。公表がされるまで、このことはどうかご内密に。
一平:
当主様、僕たちなんかにそうかしこまらないでください。絶対に秘密は守りますので!
神里綾人:
なら、安心して大丈夫そうですね。そうだ、これから九条家へ向かうのですが、案内をお願いしてもよろしいでしょうか?
一平:
もちろんですとも!光栄です!
新之丞:
その…私は先に失礼させていただきます…
パイモン:
新之丞!き、気をしっかり持てよ!
新之丞:
あ、ああ…ありがとう…
九条家に行って、九条鎌治と会話する
一平:
到着いたしました、ごゆっくりどうぞ。それでは僕はここで、失礼いたします。
九条鎌治:
ああ、ご苦労だった、一平。
九条鎌治:
まさか、社奉行様がいらっしゃるとは。十分なおもてなしができず、申し訳ございません。ちょうど家務が立て込んでおりまして…何卒、ご容赦いただきたい。
神里綾人:
九条様、そう気を遣われずとも結構です。今回は、公務で来たわけではありませんから。
神里綾人:
本日伺ったのは、柊様ともうすぐ婚礼の儀を挙げられると耳にしたからです。それは盛大な式になると思い、神里家を代表してお祝いに参りました。
九条鎌治:
それは、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、急なことで申し訳ございません…
パイモン:
オイラたちもお祝いに来たぞ!
旅人:
最近、調子はどう?
九条鎌治:
鷹司家の一件以来、天領奉行の内情はだいぶ落ち着きました。
九条鎌治:
当主代行として、政務にいち早く慣れるよう尽力しております。肩にかかる重圧や期待に応えられるようにと。
神里綾人:
謙虚な方だ。世間では貴方の評価はとても高いようですね。誠実で勤勉であり、そして責任感があるお方だと。
九条鎌治:
滅相もございません。周りの者たちに支えられているからこその地位です。そして、情勢が落ち着いてきた今、自分自身のことについても、時間を割くことができるようになってまいりました。
パイモン:
へへっ、人生の一大事だもんな。うまく縁談がまとまってよかったぜ!
九条鎌治:
いえ、そんな、何だか少し恥ずかしくなってきましたね…
九条鎌治:
あっ、申し訳ございません、その…
神里綾人:
いえいえ、このまま聞いておりますので大丈夫ですよ。どうぞ、続けてください。
神里綾人:
なにせ慶事です、お気になさらず。眉をひそめながら幸せを語る者なんておりませんでしょう?
九条鎌治:
ええ、ありがとうございます。
九条鎌治:
その、ところで今回の婚姻について、神里様はどうお考えでしょう?少し…自分本位過ぎたでしょうか?
神里綾人:
ふふっ、そんなことありません。人の恋路を妨害するなどあってはならないことですから。
神里綾人:
周りからは様々な声が上がるかもしれませんが、貴方もきっと、後々の問題を考えた上でご決断されたはずです。
九条鎌治:
ええ、おっしゃる通りです。
神里綾人:
ならば、自信を持ってください。強い意志を持つ者は、既に決めたことに揺らいだりはしません。
神里綾人:
ただ、個人的にはちょっとした懸念があります…
九条鎌治:
というのは…?
神里綾人:
天領奉行の内情を正そうと尽力したことは、称賛に値します。これを皮切りに変革が始まることでしょう。しかし、一方で柊様の父君、慎介様は未だ牢の中です。
神里綾人:
この時期に柊家と九条家の婚姻を発表すれば、各地域や勘定奉行内で貴方のあらぬ風評が広がってしまうかもしれません。
九条鎌治:
はい…
九条鎌治:
さすがは神里様。それに関しては、僕も頭を悩ませていたところです。
九条鎌治:
柊慎介様は、僕が千里さんと連絡を取るのを頑なに反対していました。以前までは、手紙で密かにやり取りを続けていたほどです。
九条鎌治:
ですから、もしこの機を逃してしまえば、次はないかもしれません。この時期に式を挙げるのは、確かに適切とは言い難いかもしれませんが…
パイモン:
あっ、思い出したぞ!あの爺さん、顔は笑ってるのに、オイラたちの邪魔してきたんだよな。まったく、ヒドいやつだったぞ!
神里綾人:
お気持ちは分かります。しかし、それは問題を先送りにしているだけのこと。遅かれ早かれ、再び向き合うことになるでしょう。
九条鎌治:
ええ、ごもっともです…しかし、千里さんが勇気を振り絞り結婚を申し込んでくれたんです。失望させるわけにはいきません…
旅人:
彼女からの申し出だったんだ。
九条鎌治:
はい、彼女から手紙を貰ったんです。悩んだ末、真剣に二人の将来について話し合いました。
九条鎌治:
そういえば、僕が改めて求婚を申し込もうと彼女のもとを訪れたとき、そんな手紙は書いてない、なんて言っていました。まったく、千里さんったら…
パイモン:
え?どういうことだ?
九条鎌治:
彼女は嘘がバレないように、あえて困惑するふりをしていたんでしょう。あの時の彼女の表情は、今も忘れられません。
神里綾人:
ふむ。
九条鎌治:
もちろん、交際を続けてきた僕には彼女の真意など明白でした。「手紙の話は僕の冗談」ということにして、その流れにかこつけて求婚したんです。
九条鎌治:
彼女は、僕の「冗談」に文句を言いましたが、顔を赤らめながら頷いてくれました。その日の午後、僕たちは婚姻について正式に話し合ったのです。
神里綾人:
なるほど。それで二人の合意のもと、式の日取りを決めたのですね?
九条鎌治:
ええ、こうして僕たちは、ようやくお互いの胸の内を知ることができました。
九条鎌治:
僕も、そろそろ頃合いだとは思っていたんです。
九条鎌治:
この先、何が起ころうとも…僕は必ず彼女のそばに立ち続け、頼れる存在になってみせます。
パイモン:
うわぁっ、ま、眩しい…
パイモン:
さっきからツッコみたかったんだけど、恋に落ちたやつって、みんなこんななのか?話が長すぎるぞ!
九条鎌治:
あっ…!
九条鎌治:
申し訳ございません!神里様、それにお二人も。お恥ずかしい話ばかりをしてしまいました。
神里綾人:
いえいえ、むしろ安心しましたよ。
神里綾人:
貴方のその態度と決意を見て、心配は不要だと感じました。
神里綾人:
婚礼の儀をつつがなく執り行えることを祈っています。
パイモン:
そうだな。おまえのそのデレた顔はちょっとイラッとするけど、おめでたいことだもんな。オイラたちも幸せを祈ってるぜ。
九条鎌治:
みなさん、ありがとうございます。
神里綾人:
さて、我々は次の用事がありますので、これにて失礼します。
九条鎌治:
はい、外までお送りいたします。
神里綾人と会話する
パイモン:
あいつ、忙しそうだったな。結婚する人ってみんなあんな感じなのか?なんていうか、幸せな忙しさだな!
神里綾人:
そうですね。九条鎌治様は身も心も幸せに浸っています。
神里綾人:
旅人さん、貴方はどう思いますか?
神里綾人:
ええ、恥ずかしがり屋ではあっても、柊千里は…そのようなことをする方ではないはずです。
神里綾人:
私も気にはなります。ただ残念ながら、物事の本質を追求することは、いい結果に繋がらないことのほうが多い。
旅人:
どうして?
パイモン:
そうだよ、なんでだ?オイラたちがもし冒険の途中で似たようなことにぶつかったら、きっと原因を突き止めるぞ。
神里綾人:
おや、冒険者の考え方では、そうなのですね。
神里綾人:
理由は主に二つです。一つ、我々が把握している情報があまりにも少な過ぎる。行動を起こすにしても立場を考えることになるため、非常に動きづらいでしょう。
神里綾人:
二つ、こちらのほうが重要なのですが、当事者たちがこの件をあまり気に留めていない点です。
神里綾人:
私たちが無理に干渉すれば、親切心が裏目に出てしまうこともあるでしょう。
パイモン:
たしかに、鎌治は全く気にしてなかったな…
神里綾人:
世の中のあらゆるものは繋がっています。一見して単純な結果であっても、その大半は複数の要因が積み重なったものです。
神里綾人:
何事も明確にしようとすれば、効率は悪くなり、苦悩も後を絶ちません。
神里綾人:
ええ、そういうことになるかもしれませんね。私のような考えを持っていなければ、社奉行の煩雑な仕事は永遠に終わりませんから。
神里綾人:
普段から、私はこのように考えています。事が起こった以上、その原因にこだわるよりも、起こった事に目を向けたほうが得策だと。
神里綾人:
それがもたらす最終的な結果が「有益」なものであり、それによって惑わされたり、被害を受けたりする人がいないのであれば、その件は看過しても問題ありません。
神里綾人:
今のところ、はっきりとした結論は出せないでしょう。私たちはまだ柊千里の考えを知りませんから。
神里綾人:
それよりも旅人さん、あのような短い会話でこうも要所を押さえているとは。妹の言う通り、優れた洞察力をお持ちのようですね。
パイモン:
あれ?でも…千里はもう鎌治と話し合ったんだよな?
神里綾人:
それはあくまで九条鎌治の主観であり、「事実」とは噛み合っていない可能性もあります。
神里綾人:
私たちも、柊千里がどのように考えているのか分かればいいのですが。
パイモン:
うーん…たしかにそうだけど、オイラの頭じゃよく分からないぞ…
神里綾人:
問題ありませんよ。これから柊家へも祝福の挨拶に行くつもりでした。直接会って、彼女に聞いてみましょう。
神里綾人:
もし、彼女も九条鎌治と同じように堅い意志をお持ちであれば、お二人は共に歩むことができるでしょう。しかし、そうでなかった場合…
神里綾人:
…ふふっ。人生、常に順風満帆というわけにはいきません。
勘定奉行の人と会話する
松浦:
式に向けて、まだまだ準備が山積みですね。
松浦:
離島をよく訪れる商会の役員も招いたほうがいいでしょうか?
菱田:
ええ、少なくとも招待状を送る必要はあるかと。
松浦:
ん?…ああ、あなたでしたか、社奉行様。
八木:
わざわざ勘定奉行へお越しいただいたということは、何か重要な用事でも?
神里綾人:
いえ、ちょうど式の話をしていたようですね、今日はそのことで来たんです。神里家を代表してお祝いに参りました。
神里綾人:
現在、柊千里様のご都合はいかがでしょう?
松浦:
お嬢様なら客人の応対中です。いつ終わるかは分かりかねますが…
菱田:
神里様、それに使用人の方々も、どうぞ中でお待ちください。お茶を準備します。
パイモン:
オイラたちは使用人なんかじゃないぞ!
神里綾人:
おっと、このお二人は私の友人です。
パイモン:
えへへっ、そんなに気を遣わなくてもいいんだぞ…友人だなんて…
神里綾人:
貴方がたのお手を煩わせるつもりはありません。私たちは近くを散歩でもしていましょう。
神里綾人:
大事な式の準備を邪魔してしまい申し訳ございません。柊様のお手が空いたら、お声掛けください。
松浦:
とんでもございません。柊家の慶事は、いつもお手伝いをさせていただいている私たちにとっても、喜ばしい出来事。
松浦:
このように忙しくしているのも、盛大で、賑やかな式を挙げたいと望んでいるからです。
菱田:
時期が来れば、家族だけでなく一般の方々にも公表し、皆が参加できるようにします。
神里綾人:
ええ、素晴らしい心がけです。
神里綾人:
では、私たちはこれで失礼させていただきます。
八木:
はい、お気を付けて。
離島で暇をつぶす
パイモン:
なんか色々と話した割には、内容が空っぽだった気がするな…
神里綾人:
これだから、私は社交辞令や世辞が嫌いなんです。
神里綾人:
都合が悪いのであれば、仕方ありません。ここへ来る途中、屋台を見つけたのでそこで時間をつぶしましょう。
神里綾人:
そこの店主はいつも斬新な発想を思いつくので、私もよく通わせていただいているんです。
パイモン:
智樹のことだったのか!?
智樹:
あっ、また会ったね、君たち。
智樹:
毎回、とんでもない大物を連れてるね…
神里綾人:
おや、こちらの店主ともお知り合いなのですか?
パイモン:
おう。前に稲妻城で、将軍様と智樹のところで団子牛乳を飲んだんだ。
神里綾人:
なるほど。推薦したのは、貴方たちでしたか…
神里綾人:
団子牛乳の話は耳にしていましたが、まさか貴方たちが絡んでいたとは思いませんでした。
神里綾人:
私も普段、彼の屋台の前を通るたびに、珍しい飲み物を買っては試しているんです。いつも新しい味に出会わせてくれます。
神里綾人:
ちょうど離島で屋台をやっているのを目にしたので、立ち寄ってみようと思ったのです。
智樹:
神里様たちのおかげで商売もようやく軌道に乗り、僕の創作料理を食べてみたいという人も増えてきました。
智樹:
そして何より、この調子で創作料理の道を突き進んでもいいのだと、自信を持てるようになったんです。
智樹:
より多くの人に僕の料理を食べてもらいたい、お客さんに創作の楽しさを感じてほしいと、今はただただそう思っています。
智樹:
今回も色々と悩んだ末に、新しい飲み物の発売に踏み切りました。
神里綾人:
それは興味深い、どんな飲み物でしょう?
智樹:
お客さんに選択を委ねるんです。自由に食材を選んでいただき、それを牛乳やお茶に入れて飲み物を作ります。
智樹:
団子だけでなく、餅、紅芋団子、黒糖、夕暮れの実など…豊富に取りそろえています。
パイモン:
それ、全部牛乳に入れて大丈夫なものなのか?
パイモン:
えーっと、想像がつかないけど…意外と美味しかったりして…
神里綾人:
ここに置いていない食材も、選んでいいのでしょうか?
智樹:
えっ、それは…そうですね、問題ありません。もし何か良い食材を思いつきましたら、ぜひ申し付けてください。すぐに買ってまいりますので。
智樹:
元々は、お客さんに自由な発想を与えたいと考えてのことです。僕が用意した食材に固執する必要はありません。
神里綾人:
それは良かった。ちょうど気になる食材がありまして…
神里綾人:
スミレウリ、海草、それからウミレイシなのですが。
パイモン:
げっ!そんなの牛乳に入れるのかよ?
神里綾人:
そうですが、何かいけなかったでしょうか?
パイモン:
いやいや、それで美味しくなるのか!?
神里綾人:
大切なのは過程であって、味は二の次。未知の経験ができるのです、なんとも素晴らしいことではありませんか。
神里綾人:
いかがです?旅人さんは何か思いつきましたか?
パイモン:
ヤバそうな気がするけど、本当に大丈夫なのかよ…じゃあ、オイラも同じのを注文してみるか…
神里綾人:
では、スミレウリ入り牛乳を三杯。
智樹:
かしこまりました!すぐに用意しますので、少々お待ちを!
しばらくすると、「創作牛乳」が出来上がった。
智樹:
さあ、どうぞ。お召し上がりください。
パイモン:
ぐぇ…
パイモン:
生のスミレウリはやっぱキツイぞ!
神里綾人:
私は自然の味わいを堪能できて、悪くないと思いますよ。
パイモン:
思ったより満足してるんだな。オイラは、他にもっといい食材があったような気がしたけど…
神里綾人:
「味」を気にしているのですか?
パイモン:
当たり前だぞ!美味しい料理を食べて、ウマい飲み物を飲む。生きる上で、なによりも重要なことだと思うぞ。
神里綾人:
ええ、その通りです。私もそれらを楽しむことができたら、どれほどいいことか。
旅人:
きっと心配事が多すぎるんだよ。
神里綾人:
そうかもしれません。ですが、人の時間には限りがあります。あまり肝要でないことに時間を割くことは、私にとって心の「緩み」に過ぎず、当然ながら重要視できません。
神里綾人:
公の場に出る際は妹が代わりになってくれたり、家司のトーマが家政を処理してくれたりと、私は大変恵まれていますがね。
パイモン:
けど、今はただ時間をつぶしてるだけだろ?なにもあれこれ考える必要はないと思うけど。
神里綾人:
そうでもありません。
神里綾人:
場所を変えて、詳しくお話ししましょう。
神里綾人:
柊家を出てから、一つ気付いたことがあります。
神里綾人:
些細なことなのですが、婚礼に対する彼らの考えを知りたかったので、さりげなく聞いてみました。
神里綾人:
すると、すぐさま「柊家の慶事は、自分たちにとっても喜ばしい出来事である」と答えました…
神里綾人:
しかし、実際はその逆です。
パイモン:
ん?どういうことだ?
神里綾人:
柊慎介様はまだ牢の中。今や勘定奉行は、おそらく三奉行の中でもっとも不安定な存在でしょう。
神里綾人:
今の柊家の柱は柊千里です。しかし、彼女は嫁ぐことを選んだ。もし私が柊家を補佐する一族であれば、きっと将来が不安で仕方ないでしょう。
神里綾人:
それでも彼らは、心配するどころか、純粋にお祝いごとだと思っています。彼らは皆、聡明な方々です…これくらいのことは想定できるはず。
旅人:
確かに怪しい…
神里綾人:
おそらく、部外者の前で家の内情を話したくなかったのでしょう。しかし、彼らの言葉はあまりにも筋が通っていません。
神里綾人:
よく見張っておいてください、尚。
神里綾人の指示の後、隠れていた忍者が突然現れた…
尚:
はっ。
パイモン:
うわぁ、どこから出てきたんだ!?
神里綾人:
彼は、私がもっとも信頼を置く終末番の一人です。私たちの後を付け、ずっと密かに守ってくれていました。
尚:
当主様、当然のことをしたまでです。
神里綾人:
あそこにいた者たちから、目を離さないでください。
尚:
はっ、では早速任務へ向かいます。
神里綾人:
おっと、そうでした。先ほど私が飲んだ牛乳を、トーマにも一本買ってあげてください。
尚:
かしこまりました。
パイモン:
トーマも巻き込まれるなんて——!
勘定奉行役人の横山が、ついに通告を持ってやってきた…
横山:
神里様、柊様の応対が終わりましたので、中庭でお待ちしております。
神里綾人:
ご苦労様です。
神里綾人:
さあ、柊千里に会いに行きましょう。
柊千里に会う
パイモン:
おーい、また会ったな、千里!
柊千里:
神里様の他にもお連れの方がいるとは聞いていましたが、あなたたちだったんですね。
神里綾人:
柊様、お久しぶりです。息災でしたか?
柊千里:
おかげさまで、平穏な日々を送っております。滅多にお会いになれない神里様が、まさか屋敷にいらっしゃるとは思いもしませんでした。
柊千里:
公務でご多忙かと存じますが、本日は私と鎌治のため婚姻のお祝いに来てくださったとか。お気遣い、誠にありがとうございます。
神里綾人:
いえ、お気になさらないでください。我々三奉行は皆、将軍様の下で働いている者です、互いに手を取り合わなければなりません。先ほど、九条様ともお会いしましたが、この婚姻をとても心待ちにしているのがよく伝わってきましたよ。
神里綾人:
その喜びに感化されてか、私まで嬉しくなったほどです。お二人の婚姻に、幸があらんことを祈っております。
柊千里:
嬉しいお言葉、感謝いたします。
柊千里:
簡単に決められるようなことではありませんでしたが、今後はより一層、精進してまいります。
柊千里:
この一件によって、世間には少なからぬ影響を及ぼしてしまうでしょう。ですが、二人の未来のためにも、共に立ち向かっていくつもりです。
パイモン:
千里も大変なんだな。
柊千里:
はい。正直なところ、今も不安は残っています…
柊千里:
ただ、鎌治さんがいつも励ましてくれるんです。彼が約束してくれたおかげで、だいぶ気も楽になりました。
神里綾人:
どうやら、柊様は色々と悩みを抱えていらっしゃるようですね。
柊千里:
…は、はい。考えなければならないことが、とても多いので。
柊千里:
実は、先ほどまで応対していた方は、重要な客人などではなく、府中の役人である——新之丞だったのです。
パイモン:
えっ、あいつだったのか?
柊千里:
はい、彼は急に私のところに来ると、とても大事な話があると言いました。
柊千里:
話を聞いてみると、その内容はとても率直なもので…その、私に鎌治さんと結婚して欲しくないと…
旅人:
…やっぱり落ち込んでたんだ。
柊千里:
普段の彼は物静かなので、あのように興奮した姿を見て驚きました。
柊千里:
彼は、婚姻をするのに今は適していないと言っていました。ただ、それを聞いて、私も彼の言い分に一理あると思ったのです。
柊千里:
もし私が九条家に嫁げば、一家の柱がいなくなり、柊家の基盤は揺らいでしまいます。その上、私自身にも悪い影響が出るでしょう…
パイモン:
二つの家族が一つになるだけなんだから、別に問題ないんじゃないか?
神里綾人:
いえ、稲妻の風習において、「家族」とは大きな影響力を持っているのです。
神里綾人:
婚姻を結べば、柊様は九条家の一員になります。そうなれば、勘定奉行の内部では、柊様に対する態度も色々と変わってくることでしょう。
柊千里:
はい、おっしゃる通りです。このようなことを言うのは、あまりよろしくありませんが…私は少し、心が揺らいでいます。自分は周囲に流されてしまったのではないかと、そう思ってしまいまして…
柊千里:
あっ!お客様に愚痴を聞かせるなんて、本当に申し訳ございません…
神里綾人:
いいんですよ。そういった類の話を聞くのも、社奉行の務めですから。貴方が抱えている悩みを知った以上、私も相談に乗り、お役に立てればと思っております。
神里綾人:
私たちが九条様から聞いた話によれば、柊様の手紙がきっかけとなり、婚姻に踏み切ったとのことでした。
神里綾人:
しかし、貴方はそのような手紙を書いていないという話も聞いています。九条様が言うには、それは貴方の照れ隠しで、本心を言えなかっただけだと…おっと、これは言わないほうがよかったでしょうか?
柊千里:
え?それって…鎌治さんが求婚の際に使った小細工なのでは?可愛らしく色鮮やかにかかれた丸文字で、かなり念入りに用意したもののように見えましたが…
神里綾人:
ほう、可愛い丸文字だったのですか。
神里綾人:
その手紙がなければ、お二人は婚姻を結んでいなかったかもしれない、ということでしょうか。
柊千里:
そう言われると…確かに…あの手紙は、私が思っていたものと違ったのでしょうか?
神里綾人:
九条様の話によれば、手紙は貴方が書いたものだそうです。
柊千里:
えっ?どういうことでしょう…もしかして…
神里綾人:
しかし、お二人がそのように信頼し合えるのは、実に良いこと。そう考えると、手紙の由来などさほど重要ではありませんね。
神里綾人:
照れ隠しをしていたのは、きっと九条様のほうなのでしょう。なにせ、わざわざ求婚のために小細工をしたなど、私たちに認める必要なんてありませんから。
柊千里:
……
柊千里:
そうですね。おっしゃる通り、手紙の件は本当に重要ではないのかもしれません。
柊千里:
しかし、立場のことは違います。もともと私と鎌治さんは、共に歩み続けることさえできれば、気にすることなど何もないと思っていました。
柊千里:
ですが…もう少しじっくりと考える必要がありそうです。
神里綾人:
夫婦になるということは、一生に関わる重要な問題です。どうか、なるべく悔いの残らない選択をしてください。
神里綾人:
それから、困っている人々を助けるのも社奉行の務めの一つ。
神里綾人:
先ほどお話しした内容は、私自身を貴方と柊家の立場に置いて考えたものです。状況に流されて、自分の心にそぐわない決断をなさらないようお気を付けください。
神里綾人:
愛し合う者同士が一緒になることは、決して汚すことのできない慶事。お二人が安心して幸せを迎えられるよう、心から願っていますよ。
柊千里:
お言葉の一つ一つを、心に刻んでおきます…神里様、どうお礼を申せばいいのか…皆様の意見を参考に、もう一度慎重に考えてみます。
神里綾人:
ええ。ただ、ご自身の気持ちに素直に従えば問題ありません。では、柊様には考える時間が必要でしょう。私どもはこれで失礼いたします。
柊千里:
あっ!お見送りします…
神里綾人:
大丈夫ですよ、お気遣いなく。
神里綾人:
旅人さん、どこか落ち着いて話せる場所を探して、情報を整理しましょう。
柊家を出て、情報を整理する
パイモン:
千里のあの感じ…九条鎌治とは大違いだったな。
パイモン:
綾人、もっと千里に具体的なアドバイスとかしてやれなかったのか?どうすればいいか、直接教えてやればよかったのに。きっと、なにか方法を思いついてたんだろ?
神里綾人:
いえ、言えることはすべて言いましたよ。社奉行の立場上、他奉行の内情に口を出し過ぎると、かえって問題になってしまいますからね。
神里綾人:
ただ、事の真相を探れば探るほど、妙な違和感を覚えます。柊千里にはまだ見えていないのでしょう。私たちが警戒しておかなければなりません。
パイモン:
妙?どこが妙なんだ?
神里綾人:
柊千里に早く婚姻を結んでほしいと願っている者がいます。私の推測では…おそらく勘定奉行の人間でしょう。誤解を招いたその手紙も、彼らが出した可能性が高い。
神里綾人:
考えてもみてください。一般の役人ですら、柊千里の状況を心配しています。それなのに、柊家を補佐している人たちにはその様子がない。
神里綾人:
言葉に一貫性のない者がいたら、その人の行動から本心を探る必要があります。
神里綾人:
ふむ。天領奉行の鷹司家よりも遥かに優れた、実に巧妙な手口です。
神里綾人:
もし偽造の手紙が効力を発揮しなかったとしても、責任を問われる心配はありません。その時は、家の誰かが勝手にしたことで、お節介を焼こうとしただけ、と説明すればいいのですから。
神里綾人:
そして、今回のように成功すれば…表向きは二人の仲を取り持っただけであり、誰かが名乗り出る必要もありません。危ない橋を渡ることなく、柊家の力を削ぐという目的を果たせます。
神里綾人:
柊千里が九条家に嫁ぎ、柊家の当主が牢屋に入ったままとなれば、勘定奉行の中で柊家に対する不満の声が挙がることでしょう。やがて、他の一族にその座を奪われることになります。
神里綾人:
証拠ならあります、新之丞です。
パイモン:
新之丞?
神里綾人:
そろそろ戻ってくるはずですね。
神里綾人の判断通り、見覚えのある人物が再び現れた…
尚:
はっ、当主様。
パイモン:
うわぁ!こ、これで二回目だぞ。おまえ、さっきからなんなんだよ…
神里綾人:
彼らは、勘定奉行の衛兵を連れて行きましたね?
尚:
はい、新之丞という男です。
神里綾人:
やはりそうですか。
神里綾人:
首謀者にとって、柊家が弱っている今こそ千載一遇の機会となります。
神里綾人:
本来であれば、九条鎌治の説得により、柊千里の婚姻は確定的なものとなっていました。
神里綾人:
しかし、新之丞と話したことで、彼女に迷いが生じてしまった。彼らの目には、この一人の衛兵が計画を台無しにしたと映ったでしょう。
パイモン:
でも、それならどうしてオイラたちを疑わないんだ…
神里綾人:
先ほど、我々の会話を終始盗み聞きしている者がいたので、言葉や行動に注意を払っておいたのです。
パイモン:
そうだったのか!余計なことを話さなくて、よかったぞ…
パイモン:
あっ!じゃあ、手紙のことを話してた時に妙な間があったのも、千里がそれを察したからか?
神里綾人:
そのはずです。しかし事を企てた者たちは、このようなことで計画を止めるわけにもいきません。彼らにとって、もはや柊千里の意志に意味などないのでしょう。
神里綾人:
彼女は非常に受け身的な立場にあります。他人の言いなりとなり、駒として扱われ、あまつさえ、その婚姻も権力争いに利用されようとしている。
神里綾人:
それでも、未来で幸せが待っていると思いながら…
神里綾人:
九条家に嫁げば、柊家の娘としての肩書き、勘定奉行における地位、そして一人の人間としての「自我」をも失うことになります。
パイモン:
結婚は罠だったんだな…
神里綾人:
ただ、そう簡単にはいかないでしょう。彼らは影に潜み、駒を自在に操っている。なかなかのやり手です。
神里綾人:
その上、表立ってこの婚姻を阻止すれば、確実に「悪者」扱いされ、世論からも批判を受けるはず。
パイモン:
そんな、じゃあどうするんだよ?
神里綾人:
この事態を思い通り制御するため、彼らも前に出て牙を見せる必要があります。私は、その時を待つつもりです。
神里綾人:
それまでは、新之丞の救出を優先しましょう。彼に罪はありません。ひどい目に遭わないよう、助けてあげなくては。
神里綾人:
新之丞の居場所を教えてください。すぐに発ちます。

真実もまた嘘なり
祝福を贈る過程において、神里綾人はこの婚姻の背後に隠された陰謀に気付いた。彼の推理によると、あなたたちはすでに真実に近づいているらしい…
洞窟内の状況を調べる
パイモン:
なにしてるんだ!新之丞をはなせ!
神里綾人:
そこの者、直ちに暴行を止めなさい。
久保:
どうして、社奉行様が…
久保:
いや、俺たちを動かせるのは旦那様だけ。他のやつの言葉に耳を貸すつもりはない。
神里綾人:
そうですか…ならば、覚悟なさい!
もう一度役人と会話する
久保:
くそっ!退くぞ!
久保:
早く、旦那様にこのことを伝えないと!
パイモン:
オイ、逃がすかっ!
神里綾人:
追わなくて結構。
神里綾人:
魚を釣るには餌が必要です。放っておきましょう。
神里綾人:
それよりも、彼らは先ほどの戦いで鍵を落としていました。まずは、新之丞を救出します。
神里綾人:
ただ、激しい戦闘だったので鍵を見失ってしまったようです。蹴られてどこかに行ってしまったのかもしれません。
パイモン:
あっ、タヌキがいるぞ!もしかして、タヌキが持ってったんじゃないか?
神里綾人:
ええ、追いかけましょう。
新之丞と会話する
新之丞:
本当にありがとうございます、助かりました…
新之丞:
あやうく溺れ死ぬところでした。彼らは、私を檻ごと海に放り込むつもりだったようです。
新之丞:
そ、そうだ!お嬢様の婚姻ですが…何者かがそれを利用して、良からぬことを企んでいるようなんです!
パイモン:
落ちつけ、新之丞。そのことならもう知ってるぞ。
新之丞:
えっ?
神里綾人:
はい、その件でしたら、私たちも気づいていました。ここまでの流れも、私が考えていたものとほぼ一致しています。
神里綾人:
この計画の首謀者は、そう簡単に諦めないでしょう。すぐに新たな策を講じてくるはずです。私たちも、対抗手段を考えなければなりません。
新之丞:
社奉行様が、自ら手を貸してくれるんですか?
神里綾人:
この件は三奉行に留まらず、稲妻全土に関わる一大事。私の中立的な振る舞いも、ここまでです。
神里綾人:
将軍様は、昔からくだらない権力争いを嫌悪していました。将軍様の臣下たる奉行として、私はこの件を解決に導く義務があります。
新之丞:
そ、そうなのですか…
神里綾人:
新之丞、とりあえず今は戻ってはいけません。どこか身を潜めるのが得策です。
神里綾人:
旅人さんにパイモンさん、我々もここを離れましょう。
しばらくすると…
松浦:
おや、これはこれは、社奉行様ではありませんか。
松浦:
あなたが理由もなくここに現れ、私の部下に怪我を負わせたと聞きましたが…
松浦:
まさか、何か企んでいらっしゃるのでしょうか?
神里綾人:
いえ、私刑が行われていると小耳に挟んだものでして。責任ある稲妻の公人として、見過ごすわけにはいかなかったのです。
神里綾人:
たとえ新之丞が貴方の家臣であっても、好き勝手にできるという法はありません。
松浦:
私刑?はっ、私刑だなんてとんでもない。これは、ただのお仕置きですよ。
松浦:
あの雑輩…どういう訳かお嬢様のもとへ行き、自分勝手で失礼なことを口走ったのです。身の程知らずも甚だしい!
松浦:
そのせいで、お嬢様はひどく怯えていらっしゃる。
神里綾人:
つまり、彼がそのような行動を取った理由を、貴方は分からないのですね?そうでなければ、「どういう訳か」なんて言い方はしないはずです。
松浦:
こちらはあらぬことを色々と吹き込まれたのです。訳が分からないのも当然でしょう。両家の婚姻は実にめでたいことですが、あの小賢しい男のせいで、事が複雑になってしまいました。
松浦:
柊様が九条家へ嫁いだとしても、柊家のお嬢様であることに違いはありません。勘定奉行でもっとも地位あるお方のままです。
松浦:
もちろん、私たちも誠心誠意を尽くして彼女に仕え、後顧の憂いを断つのにお力添えします。
松浦:
責務を果たすのが我々の原則。それを守るどころか、あの男はお嬢様の心を乱した。
松浦:
彼は情熱的な男であったがゆえに過ちを犯したのでしょう。しかし、あなたのように高貴なお方であれば、同じ結論には至らないはず。
パイモン:
くそぉ~!理屈ばっかこねやがって…ムカつくな!
神里綾人:
そういえば、ふと思い出した話があります。社奉行に就いて以来、私は毎日のように興味深いものを見聞きしてきました。
神里綾人:
ある外国の商人から聞いた話によると、とても長い舌を持つ鳥がいるそうなんです。その舌を口の外へ引っ張り出すと、結び目を二つも作れるほど長いとか…
神里綾人:
貴方も博識なお方。そのような希少な鳥が普段どういった目的で使われるか、当てられるのではないでしょうか?
松浦:
はっ?えっと…観賞用の愛玩動物ですか?
神里綾人:
ふふっ、この鳥の面白いところは飼うことができず、何の役にも立たないところでして。仮に捕まえたとしても、舌を切って窓から放り捨てるしかありません。
神里綾人:
なぜなら皆、口を揃えてこう言うのです。「舌が長く、屁理屈ばかりこねて騒いだ挙げ句…すべてハッタリであった」と。
松浦:
なっ…!社奉行様ともあろう方が、我々勘定奉行を揶揄するためにここまで来られたのですか?
神里綾人:
いえ、とんでもありません。勘定奉行の皆様は、いつも実直で、自身の責務を果たす善良な方々だと思っています。
神里綾人:
まさか、貴方のような方が人を煙に巻いたり、重箱の隅をつついたりするとは思いもしませんでした。その上、柊様を勘定奉行から引きずり下ろそうと画策するとは…
松浦:
社奉行様、その発言に証拠はあるのですか?
神里綾人:
目の前に証人がいるではありませんか。貴方は、彼が核心を突いたのを知って、慌てて口封じをしようとしましたね。
神里綾人:
おや、松浦家は名家だというのに、忠誠心は臣下である彼に遠く及ばないようです。
神里綾人:
せっかく教育を受けて官僚になったのに、表沙汰にはできない悪巧みばかりするなんて。賢いと言うべきか、愚かだと言うべきか…ふむ、果たしてどちらでしょう?
神里綾人:
将軍様のために働いてきた貴方は、周りの優秀な人々からちっとも学ばず、利益に目がくらみ、自らの前途を断ってしまった…
神里綾人:
松浦様、私は決して怒ってなんかいませんよ。むしろ、貴方のことを残念に思っているのです。
松浦:
…くく、はっははっ!ああ、そうですか?では、聡明なあなたは、私をどうしようというのです?
松浦:
これは我々勘定奉行の問題。こちらで何とかします!
松浦:
それから、他家の内情にまで口を出すのであれば、私も勝手にあなたの意図を推察してもよいということですよね?
松浦:
あなたはただ、勘定奉行と天領奉行の力が一箇所に集中することを避けたいだけ。もしそうなれば、奉行間の均衡が取れなくなり、社奉行の地位が脅かされてしまうからです。
松浦:
——だから、もっともらしい理由を見つけて、この婚姻をなかったものにしようと企んでいるのでは?
神里綾人:
おや?貴方の目にはそのように映っていたのですね。さすがと言うべきでしょうか。三勢力に関する利害の配慮は、私よりも遥かに優れているようです。
松浦:
ふん、婚礼は必ず行います。どのような手を使おうとも止めることは出来ません。
松浦:
今頃は布告もされ、稲妻でその瓦版が飛び交っているでしょう。
松浦:
九条鎌治と柊千里が恋仲であったことは、世間に知られていませんでした。ですが、今はもう各地で話題となっているはず。
松浦:
これが布告された時点で、たとえ婚姻がまだであっても、あとは時間の問題です。
神里綾人:
ふむ。なるほど、やはり私の考えが足りていませんでしたか。
松浦:
ほう!ようやくそれを思い知ったのですか?
神里綾人:
本当は貴方のことを、そこらの人々よりは賢いと思っていたのですが…まったく残念です。
松浦:
神里綾人、き…貴様ぁ!
神里綾人:
もう言いたいことは終わりのようなので、そろそろ私もよろしいでしょうか?
松浦:
…何が言いたい?
神里綾人:
婚姻を結ぶことで勘定奉行と天領奉行が一つになれると、本気でお思いですか?
神里綾人:
実際、孤立するのは、勘定奉行のほうかもしれませんよ。
松浦:
なに?
神里綾人:
さて、貴方とは大変有意義なお話ができましたので、これで失礼します。
パイモン:
お、おい!なにがなんだか、オイラさっぱりなんだけど!
神里綾人:
彼らが策を講じるのであれば、私も無策で挑むわけにはいきません。予想していた通り、彼らは前に出て牙を見せてくれました。
神里綾人:
まずは稲妻城に戻って、現状を確認しましょう。策の説明はその後いたします。
城内の掲示板のところに行って、現状を確認する
柚子:
これ見て、勘定奉行の柊お嬢様と天領奉行の九条鎌治様が結婚するみたいよ。
古谷昇:
コホッコホッ…へぇ、これ以上、お似合いの二人はいないだろう。
柚子:
ええ。けど突然よね、そんな雰囲気まったくなかったし。
古谷昇:
ああ。でも、この一歩を踏み出すのは、そう簡単なことではなかったはずだ。二人の門出を祝おう。
パイモン:
結婚式が行われるのは、もう間違いないみたいだな。
神里綾人:
結論を出すのは早計です。向こうはこの勢いに乗じて婚姻を押し進めるつもりなのでしょう。ならば、こちらは相手の計略の裏をかけばいい。
神里綾人:
ただ、それも九条鎌治の協力あっての話ですが。
九条鎌治と会話する
九条鎌治:
皆様、いいところにお越しくださいました。実は、僕も今しがた耳にしたばかりなのですが…どういう訳か、僕と千里さんの婚姻が公表されたようなんです。
九条鎌治:
どうして、こんなにも急な発表がされたのでしょう?僕は、まだ心の準備が…
パイモン:
それなんだけど、実はすっごく複雑なことになってて…
九条鎌治に事の経緯を説明した…
九条鎌治:
なるほど…まさか、僕たちの婚姻を利用しようとする者が現れるとは…
神里綾人:
このまま婚姻を進めた場合、貴方に影響はさほどありません。しかし、柊様のほうには何かしらあると考えたほうがいいでしょう。
九条鎌治:
僕も、その可能性を考慮していなかったわけではありません。ただ、彼女と結ばれたいという想いのほうが勝ってしまったのです。だから、千里さんを守るためなら何でもすると、そう彼女に約束をしました。
神里綾人:
ええ、お気持ちはお察しします。ただ失礼ながら、彼女はそもそも貴方の庇護を必要としていなかったのではないでしょうか。
神里綾人:
考えてもみてください、貴方が彼女が守られなければ大変なことになると思った時点で、彼女は何か失っていることになるのではないでしょうか。
九条鎌治:
そんな…
神里綾人:
貴方を責めるつもりはありませんよ。大切な人を守りたいという気持ちは当然ですから。それに、貴方はとても聡明で優しいお方。心配のあまり混乱さえしていなければ、もっと慎重に考えることができたはずです。
神里綾人:
貴方の愛する柊様は、きっと自立心が強く、優しく、決して屈しないお方なのでしょう。
神里綾人:
しかし、もし彼女がこのまま貴方と婚姻を結べば…これから先、貴方にもたれ掛かることになってしまいます。
神里綾人:
それでも、問題ないのでしょうか?
九条鎌治:
……
九条鎌治:
僕は心から彼女を愛しています。この身を捧げても、彼女を幸せにしたい。
九条鎌治:
だからこそ、彼女が苦しむ姿はもちろん、利用される姿も見たくありません。
九条鎌治:
神里様のおっしゃる通りです。僕の今までの考えは…あまりにも稚拙で自分本位でした。
九条鎌治:
ただ、もう手遅れなのではないでしょうか?既にあちこちに布告が…
神里綾人:
私に策があります。しかし…この策には「悪役」が必要です。
神里綾人:
鎌治様、この策で私と貴方は悪役を演じ、ある程度の危険に身をさらす必要があります。
神里綾人:
いかがなさいますか?
九条鎌治:
まだ挽回の余地があるのならば、ぜひその策をご教授いただきたい。
神里綾人:
私は勘定奉行の者にこう伝えました。この婚姻によって、勘定奉行と天領奉行が一つになることはない、これは逆に勘定奉行を孤立させる計略であると。
神里綾人:
この計略で柊家の力を弱めるには、ある条件が必要です。それは、天領奉行が婚姻について何も思わないこと。
神里綾人:
そもそも「目狩り令」の終結後、天領奉行は勢力の弱まった勘定奉行に手を出すことも可能でした…
神里綾人:
そのような行動を起こさなかったのは、貴方が天領奉行の当主に就き、そして相手に柊様がいたからです。
神里綾人:
つまり、貴方にとって最善とも言える手は、社奉行の支持を受け、一刻も早く婚礼の儀を挙げること。そして、柊様を迎えることです。
神里綾人:
——それによって、天領奉行の当主である貴方は、もう何も心配をする必要がなくなります。
九条鎌治:
なるほど!確かに今の状況に合った、巧妙な策と言えます…
旅人:
これなら、柊千里は不可欠な存在になる。
神里綾人:
そうです。我々の狙いは柊様の立場を変えることにあります。早々に彼女を「追い出すべき足手まとい」から、「いなくてはならない守護者」へと変えるのです。
神里綾人:
そうすれば、勘定奉行での柊様の地位も確保できるでしょう。
神里綾人:
あの者たちがこの一件の背後にある組織網に気づいた時、婚姻を阻止するため、あらゆる手段を講じるはず。
神里綾人:
彼らが作り上げた障害は、彼ら自身の手で解決してもらえばいい。
九条鎌治:
承知しました。
パイモン:
うぐぐ…組織網がうんたらかんたら…って、複雑すぎてわけわかんないぞ!オイラたちはなにをしたらいいんだ、もっとわかりやすく言ってくれ!
神里綾人:
となれば、「事の背景」が勘定奉行の耳に無事届くようにしなければなりません。
神里綾人:
私と話をした松浦様も今頃は落ち着きを取り戻し、起こりうる事態を考えているはず。用心を始めることでしょう。
神里綾人:
彼は間違いなく、稲妻城内に偵察を多数送り込みます。我々はその者を利用し、偽の情報が育つようにするのです。
神里綾人:
鎌治様、貴方のお力もお貸しください。
神里綾人は、九条鎌治に詳細を伝えた。しばらくして…
神里綾人:
そろそろ頃合いですね。私の忍びが彼の放った偵察を一名特定しました。その者が策にかかるか、皆で見に行くとしましょう。
勘定奉行の偵察の行動を観察する
神里綾人:
あの者が松浦家の偵察です。
神里綾人:
気付かれないよう、彼の後をつけましょう。
気付かれずに秀夫の後をつける
橋本:
おい、見たか?今、九条鎌治様が人を大勢引き連れて、ここを通ったよな?
長瀬:
最近、公表された婚姻と関係あるんじゃないかしら?
橋本:
そうかもしれないが…婚姻であんなに焦ることはないだろう。それに眉をひそめていたようにも見えた。
橋本:
部下に色々と命令もしていたようだし、そこまでする必要があるだろうか?
山上:
天領奉行の人間が、両家の婚姻の件で離島へ行ったみたいだな。しかも、かなりの人を引き連れていた…
山上:
全部で、百人は超えてたんじゃないか?
徳長:
どうも、きな臭いな…面倒なことが起きたりしないだろうか…
徳長:
…九条鎌治様が、単に心配性なだけであればいいが。
秀夫:
婚姻の件は広まったが、旦那様が心配していたことが的中したのかもしれない。
秀夫:
新婦を迎えるだけであれば、あんなにも人はいらないはず。
秀夫:
状況を確認しなければ。
パイモン:
あいつ、どっか行ったみたいだぞ…
神里綾人:
予想通りです。ついて行きましょう。
遠くから観察する
パイモン:
うわぁ、天領奉行の人がこんなにたくさん!
秀夫:
あの、この通りで何か起きたのでしょうか?
秀夫:
僕は商人なのですが、気付いたらこのような厳重な警備が敷かれていたもので、少し怖くなりまして…
岡林:
いえ、ご心配なく。既にご存じかと思いますが、九条鎌治様と柊千里様が近々婚姻を結ばれます。
岡林:
そこで九条様は、柊様を予定より早く稲妻城へお迎えするつもりなんです。
秀夫:
そ、そんなことが…
岡林:
ここにいる皆は、柊様のためにその道を守っています。
岡林:
我々だけでなく、この先にも天領奉行の者が大勢待ち構えており、その全員が同じ任務を背負った者たちです。
秀夫:
…その、僕が言うのもあれですが、いくら何でも張り切りすぎなのでは?
岡林:
いえ、こうすることで、九条様が柊様を重要視していると世間に見せつけているんですよ。九条様は最初から最後まで、このように格式高い扱いを続けようとされています。
秀夫:
そ、そうだったのですね…すみません、お騒がせしました。
秀夫:
な、なんてことだ。旦那様が懸念していた点が的中するとは。
秀夫:
あの者たちは通りを護衛していると言っていた。もし旦那様が柊様を手放さなければ、この男たちはいずれ離島へ…
秀夫:
いや、柊様が離島から離れれば、彼らが押し寄せてくる可能性がより増すかもしれない…天領奉行を相手に、今の旦那様では勝てる見込みなどないだろう。
秀夫:
すぐに戻って報告しないと!
パイモン:
あいつ、逃げてったぞ…
神里綾人:
これで仕掛けは十分。膨れ上がる疑心暗鬼は、恐怖を育てる養分となるでしょう。
神里綾人:
あとはそれが成長し、熟すのを待つだけです。嵐の前の静けさこそ、もっとも不安を煽るものですからね。
パイモン:
あいつら、大人しく過ちを認めるかな?
神里綾人:
気になるのであれば、二日後また離島へ来て、柊家の状況を確認するといいでしょう。
神里綾人:
私は他にも色々と公務があるので、ひとまずここで身を引くとします。
神里綾人:
——駒は既に動きました。彼らが投降するのも、時間の問題でしょう。
旅人:
そんなに自信があるの?
神里綾人:
ええ。このような手を使うのは、何も初めてではありませんからね。
神里綾人:
では皆さん、またお会いしましょう。柊千里が幸せになることを、心から願っています。
パイモン:
行っちゃったぞ…本当にあいつの予想通りになるのかな?
パイモン:
おう、オイラも同感だ。二日後、また離島に来てみようぜ。

嵐の後の静けさ
神里綾人によると、やるべき事はすべて完了したという。後は、勘定奉行内部の反応を待つだけとなった。本当に彼の予想通りに事が運ぶだろうか…
離島の人と会話する
笹野:
天領奉行の人たち、もう何日も離島にいるよな。
楓:
柊千里様をお迎えに来たのでしょう。ただ、それほど時間の掛かることではないと思いますが…
笹野:
聞いた話だと、柊様がいなくなるのを勘定奉行の人たちが嫌がってるらしい。突然、態度が急変したのだとか…
笹野:
これだけの人を遣わせたんだ、僕だって混乱するよ。何が目的なのか分からないしね。
楓:
しーっ、声が大きいですよ。聞こえたらどうするんですか。
笹野:
ああ、ごめん。はぁ、どうなることやら…
離島の人と会話する
康明:
旦那様はいつまで耐える気なのだろうか…
秀夫:
さあな。攻めるのか退くのか、もうさっぱりだ。
秀夫:
最近の旦那様は特に様子がおかしい。些細なことで腹を立てるし、疑心暗鬼な状態がずっと続いている…怒鳴られることもしょっちゅうだ。
秀夫:
不安なのは分かるが…いったい、どうしたらいいんだか。社奉行様には逆らわないようにと、あれほど忠告したのに。
康明:
確かに…あのお方は、確信の持てないことには決して手を出さないらしいしな。
康明:
このまま柊様が連れて行かれたら、天領奉行と社奉行はどう動くか…
秀夫:
そうならないためにも、柊様と相談されるよう旦那様に進言しよう。
離島の人と会話する
畑中:
おや、何か御用でしょうか?
畑中:
我々は柊様を稲妻城へお迎えするため、二日前よりここに来ています。
畑中:
九条鎌治様のご命令は確固たるもの、必ずや実現させるつもりです。しかし我々が訪問するたび、柊家はいつも何かしら口実を見つけて、この件を引き延ばしにしてきます。
畑中:
命令を完遂できるまで…つまり、柊様にご同行いただけるまで、離島に滞在する予定です。
畑中:
申し訳ございません。それについては、我々も望んではいません。
畑中:
一般の方々の生活には、一切影響を与えないとお約束します。ただ、柊家の周りの方々がもう少し協力的であってくれたらいいのですが。
畑中:
もし、このまま膠着状態が続けば、鎌治様がより強引な命令を出される可能性もあるでしょう…
柊千里に会って会話する
パイモン:
離島で話されてる内容は、どれも千里に関することだったな。
パイモン:
もう勘定奉行の誰もが、千里を重要な存在だって理解したはずだ…でも、千里は自分自身のことをどう思ってるのかな?
パイモン:
千里のところに行ってみようぜ。
柊千里:
あっ、旅人さん!
柊千里:
外での出来事はもう既に耳に入っていますよね?いったい何が起こっているのでしょう?
パイモン:
そう焦らないでくれ、オイラたちが説明してやる。実は…
人がいないことを確認し、柊千里に状況を説明した。
柊千里:
天領奉行の人が来てから、彼らは急に怯え始めたかと思うと、何か密談をするようになりました。その上、天領奉行の者と接触しないよう、私は言われています。
柊千里:
まさか、そのようなことになっていたとは…すべて神里様の計画だったのですね。そうと分かれば、彼らが妙な態度を取っているのも説明がつきます。
柊千里:
…申し訳ございません。実はまだついていないんです。
柊千里:
「答えなんて最初からなかったのかもしれない。選択肢がなければ、これほど悩むことはなかった…」と。
柊千里:
迷走するあまり、こう思ったこともあります。ただ突然、貼られた布告を見て、婚姻はもう確定事項なのだと知ると…
柊千里:
安心するどころか、逆に心に大きな穴ができたのを感じました。
柊千里:
神里様のおっしゃる通り、この先私を待ち受けているのは…本当に、幸せと言えるものなのでしょうか?
柊千里:
でも、今は受け入れられます——誰かが私の婚姻を利用しようとしているのです。断固、それを阻止しなければ…
柊千里:
ただ、これも私が求めていた答えではありません。そして、この件がどういった結果をもたらすのかも疑問が残ります。
松浦:
ああ、柊様、こちらにいらっしゃったのですか。いなくなったのかと思い、肝を冷やしました。
松浦:
あ、あなたたちは…あの時、社奉行様の隣にいた…
松浦:
な、何しに来たのですか?まさか…柊様を連れ去るおつもりか!?
柊千里:
落ち着いてください。この方たちは友人で、私を訪ねに来ただけです。
松浦:
友人…ただの友人であると?
松浦:
柊様、以前もお伝えしましたが、今はとても特殊な時期。いかなることにも警戒していただかなければなりません。
松浦:
私たち…いや、勘定奉行全体にとって、あなたはとても重要な人物なのですから。
松浦:
この者たちの目的が…真っ当なものであると、証明できるのですか?
パイモン:
そんな回りくどい言い方すんなよ!どうせ、オイラたちが千里を連れて行くとか思ってるんだろ!
旅人:
化けの皮が剥がれたね。
柊千里:
私の友人に失礼な発言はやめてください。あなたは警戒をするあまり、目に映るものすべてを疑うようになっています。
松浦:
私は…くっ…
旅人:
お嬢様の言葉も聞けなくなったの?
柊千里:
一連の出来事は既に把握しています。この方の訪れこそ、あなたたちにとって唯一の希望になるかもしれません。私を信じてください。
柊千里:
離島での騒動は、あなたたちに問題を収拾する能力がないことを証明しています。これ以上膠着状態が続けば、事態は拡大するばかりです。
柊千里:
これは命令ではなく、私はただ釈明を求めています。そして、あなたたちはその釈明に対する責任だけを負えばいいのです。
松浦:
……
松浦:
承知いたしました、柊様。他の者と相談してまいります。
パイモン:
千里、立派だったぞ!
柊千里:
ふぅ、すごく緊張しました。でも、このような事態になった以上、私がしっかりしなくてはなりません…こうも上手くいくとは思いませんでしたが。
旅人:
これが言葉の重みっていうやつだね。
柊千里:
ええ、では納得のいく答えが出るのを待ちましょう。
しばらくすると、疲弊した様子で彼が戻ってきた。
松浦:
厳粛な話し合いのもと、此度の一件は私どもの過ちであり、反省しなければならないとなりました。
松浦:
正直なところ…今は誰も余裕がなく、みんな恐怖に怯えています。このままでは、遅かれ早かれ全員おかしくなってしまう。
松浦:
はぁ、申し開きの余地もありません。私心に囚われたばかりに、大局を見ず突き進み、ここまで事態を悪化させてしまいました…
松浦:
どうか…もう一度、機会をいただけないでしょうか?お嬢様のためにも、そして勘定奉行のためにも…
松浦:
ごもっともですね…
松浦:
天領奉行を説得できるのは、社奉行の神里様しかいません。
松浦:
後日、神里屋敷へ向かい、持てる限りの誠意を尽くして助力を乞うつもりです。
松浦:
柊様、ご同行いただけないでしょうか?あなたは今や、もっとも重要な人物、我々も…こうする他に方法が思い当たりません…
神里屋敷に行って神里綾人に会う
松浦:
その、社奉行様とは、ご親友なんですよね…?
松浦:
この後、もしお会いすることがありましたら、よろしくお伝えください。
社奉行本部に入った。
松浦:
社奉行様、すでにご存知のこととは思いますが…現在、離島に天領奉行の者たちが集結しており、柊様を迎えようと躍起になっております。
松浦:
先日はとんだご無礼を働いたというのに、このようなことを申し上げるのは実に憚られるのですが…何卒、寛大な処置をお考えいただけませんでしょうか…
神里綾人:
松浦様、申し訳ございませんが、私は公務で忙しいのです。この後も別の予定が詰まっています。歓談に時間を割くことはできません。
神里綾人:
何か用があるのでしたら、率直に言っていただけると助かります。
松浦:
くっ…
松浦:
我々の謝罪が取るに足らないものであることは、百も承知です。しかし、現状はこのように謝罪をする以外、方法がありません…勘定奉行の者たちも皆、事の深刻さを理解しております。
松浦:
柊様は私たちにとって、なくてはならない存在。これからもずっと力になっていくことを約束いたします。
松浦:
ですから、社奉行様に間に入っていただき、九条様ともう一度話し合っていただけないでしょうか。
神里綾人:
口ではなんとでも言えますね。今さら布告を撤回すれば、人々に嘘をついたことになる。きっと稲妻の民は三奉行をあざ笑うでしょう。これについて、どう対処するおつもりで?
神里綾人:
三奉行を貶めることは、将軍様の顔に泥を塗ることに等しい。貴方たちは、果たして雷霆の怒りに耐えられるのでしょうか?
松浦:
それは…我々が全責任を負います。それから新たに布告を出し、説明の場を設け、すべては誤解であったと民に知らせるつもりです。
松浦:
なるべく、影響を最小限に留めるよう努力します…
神里綾人:
…松浦様、このような結果になると知っていれば、初めからこんな愚かな行為はなされなかったでしょう。
神里綾人:
しかし、おっしゃる通り、私や九条様の心情がどうであれ、三奉行は稲妻の行く末を何より優先する必要があります。
神里綾人:
このままでは、離島で起こっていることの収拾がつかなくなるでしょう。それに、柊様や離島の人たちに罪はありません。
神里綾人:
これは、非常に重大な問題です。速やかに解決を図らなければ、流言飛語が飛び交い、三奉行の評判はどん底まで落ちてしまう。
神里綾人:
鳥を飼ってみれば理解できるはずです。よく舌の回る鳥は、心地よい鳴き声を響かせることもあれば、気が散るほどお喋りすることもあります。
神里綾人:
舌があまりにも長すぎて、飼うことすらままならない鳥なら…舌を切ってしまえばいいんです。そうすれば、一瞬で解決できますからね。
松浦:
…は…はい!
神里綾人:
貴方の目的は分かっています。私が九条様と話しても構いませんが、それで気が変わる保証などありません。
松浦:
それも承知の上です。社奉行様のお力を借りられるだけで十分です!
神里綾人:
分かりました。では、そろそろお引き取りください。勘定奉行にはまだ後片付けが残っているはず、そうでしょう?
松浦:
はい、ではこれで失礼いたします…社奉行様には、なんとお礼を申したらいいか、心より感謝いたします!
神里綾人:
それから柊様。貴方にお話ししておきたいことがあります。少し、お時間をいただいても?
柊千里:
えっ、は、はい…
柊千里:
先ほどの神里様はまるで別人のようで、息ができないほど緊張してしまいました。
神里綾人:
彼のような傲慢な家臣には、厳重な戒めが必要となります。私は社奉行として、将軍様の信頼を背負っているのですから、当然のことをしたまでです。
神里綾人:
しかし、私の身分など関係なしに、個人的な立場から貴方にあるお話をさせてください。
柊千里:
はい、神里様、拝聴いたします。
神里綾人:
ご存知の通り、神里家には極めて困難な時期がありました。
神里綾人:
かつて、私ども一族は過ちを犯しています。父上はその償いと家名を回復させるために奔走し、その多忙さゆえに早逝しました。
神里綾人:
父上を心から愛していた母上も、追うように亡くなっています。
神里綾人:
突然の出来事に、社奉行に走った激震は計り知れません。内部の者たちは、それはもう騒然としていました。
神里綾人:
神里家の力は失墜…周りの者たちは、残された私と妹を邪魔な存在だと思ったでしょう。
神里綾人:
今となっては些か信じがたい話に聞こえますが、確かにこれが、当時の社奉行の実情でした。
パイモン:
なんだか、今の勘定奉行と少し似てるな…
神里綾人:
あの時の私は、現状を受け入れるほか道はなく、誹謗や搾取に耐えながら、強力な後ろ盾を探しました。
神里綾人:
私に、他の選択肢などなかったのです。両親の遺志を継ぎ、幼い妹を守らなければなりませんでしたからね。
神里綾人:
自分がどうなろうと構いませんでした。ただ「家族」を…大切な「家族」だけは、他人に踏みにじられるわけにいかなかった。
神里綾人:
幸い、私の努力は報われ、没落寸前であった神里家を立て直すことができました。
柊千里:
…何だか、理解できたような気がします。私の戸惑いや不安が、いったいどこから来ているのかを…
柊千里:
新之丞は、私の輝きを誰よりも知っていると言ってくれました。だからこそ、これから人の下に付くことになる私を見て、いたたまれない気持ちになったんだと思います…
柊千里:
私の胸の内にある不安は、婚姻への迷いだと思っていました。でも実際は違います。私が弱いから、それゆえに現状を制御できないと感じ、不安になっていたんです。
神里綾人:
鎌治様が婚姻と素直に向き合えたのは、その覚悟があったからです。
柊千里:
…ええ、今の私は、あの時の彼と同じ立場にあるのでしょう。
柊千里:
彼は、勇ましく将軍様に向かって武器を構えました。私も今…
柊千里:
その時の彼のように、自分自身を超える時なのだと思います。
神里綾人:
はい。貴方が真に成長すれば、お父上も安心するでしょう。その時、貴方自身の人生を歩ませてくれるはずです。
神里綾人:
しかし、残酷な言い方かもしれませんが、これらは貴方が幸せになるための「前提条件」に過ぎません。
柊千里:
…はい、それでも成し遂げてみせます。
柊千里:
この機に、柊家がかねてより担ってきた責務を引き継ぐつもりです。そして、すべてが落ち着いた頃、また婚姻のことを考えようと思います。
柊千里:
そうすれば、鎌治さんに掛かる重荷を軽減できます。私も身を守りつつ、彼を支えていくことができるでしょう。私どもの家が配下となることも、荷物となる心配もなくなるはずです。
神里綾人:
お二人が幸せな道を歩めるよう、心からお祈りしています。改めて婚姻が決まった際には、またお祝いさせていただきますね。
柊千里:
神里様、本当にありがとうございます!まさか、ここまでお力になっていただけるとは思ってもいませんでした。
柊千里:
では、私もそろそろ失礼いたします。まだまだやるべきことが残っていますので。
神里綾人:
ええ、どうかお元気で。今の貴方なら、どのようなことをなさっても彼らから尊重されるはずです。
柊千里:
はい、それは既に身をもって感じております。此度の一件、心より感謝いたします。
パイモン:
オイラ、なんだか千里が輝いて見えるぞ!
パイモン:
おまえもすごかったな。誰もがお手上げだと思ったのに、それをこんな見事に解決するなんて。
神里綾人:
棋局において、相手の攻勢を利用し戦局に変化をもたらすことは、ままあることです。
神里綾人:
今回の相手は、決して難敵ではありません。策を練ってはいましたが、先見性に欠けており、その手段も未熟でした。このような結果となるのも予想通りです。
パイモン:
…もしオイラだったら、こんな方法一生思いつかなかっただろうな…
パイモン:
でも、千里が柊家を再興しようとしているのを見て、なんだか安心したぞ。
神里綾人:
ええ、そうですね。稲妻が安定するのは、我々にとってもいいことです。何より、社奉行の仕事も減ります。
神里綾人:
あっはは、こう見えても社奉行の当主ですよ。
神里綾人:
恐らく松浦様にとって、権力は一生追い求めるものだったのでしょう。しかし私にとって、稲妻の安泰こそがもっとも優先すべき事項です。
神里綾人:
稲妻が安泰であるからこそ、社奉行も平穏無事でいられます。そして、神里家や社奉行に関わりある一族たちも、穏やかに暮らせるのです。
神里綾人:
しかし、人は貪欲な生き物。このような謀は初めてではありません。この先もきっと起こるでしょう。
神里綾人:
私はただ、三勢力を牽制し合うようにしただけ。安泰とは、完全なる静止を指すだけではありません。行動を起こしにくくすることも安泰と言えます。
神里綾人:
もうひとつの利点は、柊様の重要性が知れ渡った点です。私も彼女に大きな恩を売ることができました。
神里綾人:
関わりのなかった一族と親交を結ぶよりも、今まで通り柊家と付き合うほうがよほど楽ですしね。
パイモン:
ただの結婚で、そこまで考えるなんて…
パイモン:
まさか、最初っから結婚を阻止しようと思ってたんじゃないよな!?
神里綾人:
ふむ。確かに、私の判断は不謹慎なものだったかもしれませんが、柊千里への言葉に偽りはありませんよ。
神里綾人:
——己の立場に関わることを一度諦めれば、今後一生、妥協し続けなければならなくなります。
神里綾人:
苦境に立たされているとも知らず、ただ奈落に落ちていく、そんな彼女は見たくありません。
神里綾人:
これからの成長を見守るとしましょう。
パイモン:
そうだな、こればかりは待つしかないな…
旅人:
それじゃあ、また。
神里綾人:
ええ、お二人ともどうもありがとうございました。いつか妹の手が空いている時にでも、貴方たちを招待させてください。
トーマ:
どうやら、一件落着のようですね。
トーマ:
何もかも、すべて丸く収まった。唯一の問題は…なぜか変な味の牛乳を飲まされたことぐらいでしょうか。
神里綾人:
おや?口に合わなかったかい?珍しい味のものが好きだったと思ったんだけど。
トーマ:
若、あなたというお方は…
神里綾人:
旅人も一杯飲んだんだよ。
トーマ:
彼はどうでしたか。若から見ても、良い印象だったのでは?
神里綾人:
ああ。今回、旅人は重要な役割を果たしてくれた。もし、彼とその連れが私に手を貸してくれていなかったら、両家とも私のことをもっと警戒していただろうからね。
神里綾人:
そう簡単に核心を突くことは、できなかったかもしれない。
トーマ:
さすがは若。他人の問題に介入しつつ、ご自身の目的も果たすとは。
神里綾人:
ふふっ、ただの成り行きだよ。ああ、そうだ…暇があるうちに、この間途中になってしまった棋局の続きをやろう。