arrow_back 原神 クエスト
第七章 第二幕

死魂の夜想曲


下ろされる白幕
オデットが「レーレク」かもしれない。真相を突き止め、より多くの情報を得るために、コロレフスキー劇場で行われるオデットのプレビュー公演へと足を運ぶ。その間にも、スネージナヤ・グラードを襲う吹雪はますます激しくなっていく…
コロレフスキー劇場へ向かう
クリシュ:
今日は一段と冷え込みますね。雪がひどくならないといいのですが…
クリシュ:
オデットさんを観にいらしたのですね?お手数ですが、プレビュー公演鑑賞チケットをお見せください。
クリシュ:
…はい、問題ありません、チケットをお預かりします…ありがとうございます。どうぞお入りください、外は冷えますから。
観劇の準備をする
旅人:
(オデットが本当に「レーレク」なのかは…公演が終わってから確かめに行こう。)
旅人:
(タルタリヤが来れなくなったから、トーニャは一人で来てるはずだけど…もう会場に着いてるのかな?)
旅人:
(トーニャっぽい女の子がいないか探してみよう…やっぱり、プレビュー公演だと観客は少ないんだ。見覚えのある顔もちらほらいるけど…)
旅人:
(チュグノフ…また公演を見に来たのかな?えっ、ミティヤ?それにファデュイの士官のバレリーもいる。きっと、またミティヤを捕まえに来たんだな。)
旅人:
(あ…そろそろ始まるみたいだ。今のところトーニャっぽい子は見当たらないし、公演が終わってから考えよう。)
劇場で、あなたたちは一緒にスネージナヤの伝統舞踊「精霊をたずねて」のリハーサルを鑑賞していたが、演目の途中で劇場の照明が急に点滅したが、その後また元に戻った…
観客たち:
(拍手——)
ラムパーナ:
ご来場の皆様、こんにちは。劇場のスタッフです。
ラムパーナ:
本日の公演は、スネージナヤの古典バレエ「精霊をたずねて」の、記念すべき初めてのリバイバル上演です。
ラムパーナ:
ぜひとも、全キャストおよびスタッフ、そして観客の皆様で記念撮影をさせていただきたく存じます。皆様、どうぞ舞台へお上がりください…
ディモフ:
ほらほら、みんなもう少し寄ってくれ、カメラを見て…さん——に——いち!
バレリー:
ご満足いただけましたか、エネルギー学者のミティヤ先生?今日はこれ以上、俺の仕事量を増やすような逃亡計画を組まれていないといいんですが。
ミティヤ:
ははっ、何を言うんだ、士官殿。僕はただ、たまにはお前と一緒にオデットの新しい公演を観るのもいいかと思って誘っただけだ。
ミティヤ:
素晴らしい舞台だっただろう?お前も僕のように、勤務時間外に心を豊かにする楽しみを見つけるといい。
バレリー:
公演は確かに良いものでした。ですが、訂正させていただきます。今は勤務時間内です。
ミティヤ:
時間内か時間外かなんて、結局は自分で決めることじゃないか。そんなに頭が固くては、人類の科学技術は永遠に進歩しないぞ?
バレリー:
もう行きますよ。
ミティヤ:
早くないか?もう少しここの雰囲気を味わっていたかったが…少しやりすぎたか?そんなことはないと思うが…
ミティヤ:
それでは行こう、士官殿。案内は任せたぞ。「勤務時間内」に戻ろうじゃないか。
旅人:
(あの子で間違いなさそうだ。この会場で唯一、それっぽい年齢の観客だし…)
旅人:
あの…君がトーニャ?
トーニャ:
えっ…
旅人:
お兄さんは急用ができたから、代わりに俺が来たんだ。お兄さんのことは心配しなくて大丈夫だよ。
トーニャ:
そうなんだ。ありがとう。
トーニャ:
コホッ…コホッ…
旅人:
大丈夫?具合が悪いの?
トーニャ:
コホッ…ううん、大丈夫、心配しないで…
旅人:
(この寒さだし…来る途中に風邪をひいちゃったのかな?)
チュグノフ:
…こんな大雪は久しぶりだ。本当に珍しいな。
ディモフ:
ああ、外が真っ白で何も見えないぞ。ここまで吹雪くのは初めてだろう。
シュラム:
雪がやむのを待とうぜ。今、外に出たら道に迷うどころじゃねぇ、凍え死んじまうぞ。
ミティヤ:
こうなると、そんなに急いで帰る必要もなさそうだな。お前はどう思う?
バレリー:
…しばらく様子を見ましょう。
ミティヤ:
なあ、そう難しい顔をするなよ。運命が与えてくれた素敵な休憩時間なんだ。しっかり楽しまないと損だぞ?
ディモフ:
そういえば、近くに小さな宿屋があるんだ。そこなら宿泊客用に毛布がたくさん常備されてる。
ディモフ:
道はよく知ってるから、ちょっくら行って何枚か借りてこよう。急いで帰りたいやつはそれを羽織って帰れるぞ。後でちゃんと返却してくれりゃいい。
ミティヤ:
いや、そこまでする必要はないと思うが…
ディモフ:
なーに、心配するな。お前たちはここで待ってな。
チュグノフ:
感心するほど親切なやつだ。妻と娘が家で待っているからな、毛布を借りたら早く帰らなければ。
ミティヤ:
まさか僕たちも…毛布を羽織ってオルジェイナヤ・パラタに帰るのか?
バレリー:
ご心配には及びません、事前に手を打っていますから。「劇場作戦」開始から三時間半以内に俺がオルジェイナヤ・パラタに戻らなかった場合、迎えの武装チームが派遣されることになっています。
バレリー:
彼らを待って、護送してもらいましょう。貴方は軍の要人ですから、天候によるリスクも排除しなければなりません。
ミティヤ:
「劇場作戦」…抜け出した僕を連れ戻すだけで、わざわざ「作戦」と名付けなくたっていいだろ…
ミティヤ:
まったく、余計な罪悪感を与えてくれる…
旅人:
吹雪が落ち着くまで、少し待とうか。君の体調も心配だ。
トーニャ:
うん。もしかしたら、お兄ちゃんが迎えに来てくれるかもしれないし。
旅人:
(さて、本来の目的に取り掛からないと。楽屋に行ってオデットを探そう。「レーレク」の件を直接聞いてはっきりさせないと。)
クリシュ:
お待ちください、どなたかお探しでしょうか?
クリシュ:
ああ、ファンの方ですか?本日はプレビュー公演ですので、ファンサービスの時間は設けていないんです。オデットさんは今、ご休憩中ですので…
クリシュ:
申し訳ありませんが、現在、楽屋は一時的にキャストやスタッフ以外の出入りを禁止しております。
旅人:
(うーん、タイミングが悪かったか…少し待ってみよう。どのみち雪が弱まるまでは、オデットもここを離れないだろうし。)
一時間後——吹雪は依然として弱まる気配がなかった…
トルゴフ:
随分経ったが…毛布を取りに行ったやつはどうしてまだ戻ってこないんだ?
シュラム:
そうだな…相変わらず凄い雪だし…外に出てった兄ちゃんの身に何かあったんじゃないだろうな?
チュグノフ:
何があったか知らんが、私はああいう口先ばかりで人の期待を裏切るようなやつが大嫌いだ。
チュグノフ:
たまに私も部下を振り回すことはあるが…
ミティヤ:
焦りの色が見えるぞ、バレリーさん。
バレリー:
俺がオルジェイナヤ・パラタを離れてから、すでに四時間近くが経過しています。予定通りであれば、今頃、軍の者が迎えに来ているはずなのですが。
バレリー:
彼らは、俺が最も嫌うのは、時間を守らないことと計画を狂わせることだと知っています…未だに現れないということは、予期せぬことがあったのかもしれません。
ミティヤ:
この猛吹雪は「予期せぬこと」じゃないのか?
バレリー:
ミティヤ様、この世にスネージナヤの軍隊の歩みを阻めるものは、そう多くはないのです。吹雪ごときに足を止めることなど、決してありえません。
ミティヤ:
ちょっと外を見てきたらどうだ?もしかしたら連中は外で、お前の指示を待ってるのかもしれないぞ。
バレリー:
またでたらめを。貴方をオルジェイナヤ・パラタへ連れ帰るまでは、一歩たりともそばを離れるつもりはありませんよ。
ソブレワ:
この吹雪、ただの吹雪じゃないかもしれないわ…
ソブレワ:
さっきの人が外に出た時、あっという間に姿が見えなくなった気がしたの。私の見間違いだったのかしら。
シュラム:
「人食い吹雪」ってか?まだ夜にもなってないんだ、怪談はやめてくれよ。
アリョーシャ:
旅人、今日来るなら言ってくれればよかったのに。
アリョーシャ:
なんだ、オレとヴォジャニーツァに用があったんじゃないのか。オデットならまだ楽屋だぞ。
アリョーシャ:
ん…?外はこんなに吹雪いてたのか。ずっと楽屋で手伝いをしてたから気づかなかった。道理で観客がはけてないわけだ。
旅人:
ここまでの雪はスネージナヤでも珍しいの?
アリョーシャ:
ああ。これほどの吹雪は…街の外じゃ見かけるが、こんなところでは初めてだ。
アリョーシャ:
いや…外でも見たことないかもな。異常なほどに降り積もってる。
旅人:
(アリョーシャでさえ異常に感じるほどの大雪…もしかして、最近スネージナヤに出没してる魔物と関係があるのかな?)
アリョーシャ:
このままじゃ、みんなここに閉じ込められっぱなしだ。誰かが外の様子を見に行かないとな。
旅人:
一緒に行こうか?
アリョーシャ:
いや、いい。吹雪の中での行動には慣れてる。それにオレはここのスタッフで、あんたは観客だろ。任せておけ。
アリョーシャ:
入り口近くのヤツらは雪で靴を濡らさないよう気をつけろ。吹雪の中じゃ、足先を守るのが何より大事なんだ。
シュラム:
外に出るのか?気をつけろよ。さっき姉ちゃんが言ってたが、この吹雪は人を食うらしいぞ。
アリョーシャ:
ご忠告どうも。外の状況を少し確認してくるだけだが、慎重に行動する。
アリョーシャ:
ふぅ…
ソブレワ:
帰ってきたわね。ねえ、外はどうだったの?
バレリー:
近くに巡回中の兵士は見かけましたか?
アリョーシャ:
この吹雪…何かがおかしい。
アリョーシャ:
外には一切人影はなかった。雰囲気も異様だ。
アリョーシャ:
これはただの吹雪じゃない。もしかしたら、最近起きてる事件と関係してるのかもな。雪がやむまでここから動かないほうがいい。
トルゴフ:
そこまで心配するほどか?こんなに大勢の人間が雪のせいでここに閉じ込められるなんて、いくらなんでも大げさだろう?
ソブレワ:
外に出るつもり?私は、命を賭けてまでここを離れたいとは思わないわ。
ミティヤ:
どうやら事態は「ちょっとした足止め」から、「とんでもない厄介事」に変わってしまったようだ。
シュラム:
毛布を取りに行った兄ちゃんが、オレたちを置いて家に帰っただけならいいんだがな…
チュグノフ:
そんなに深刻な状況なのか…?これじゃ、娘におやすみ前のお話をしてやれないじゃないか…
ヴォジャニーツァ:
ん?あなたたち、どうしてまだいるの…
ヴォジャニーツァ:
えぇっ!?すごい雪ね…
みんなは、楽屋にいたキャストやスタッフに現状を伝えた…
ヴォジャニーツァ:
閉じ込められてしまうなんて、困ったわ…今日はプレビュー公演だったから、客が少なかったのは不幸中の幸いとはいえ…
ヴォジャニーツァ:
けど、朗報もあるのよ。劇場は常に物資をたっぷり備蓄しているの。このまま雪の勢いが弱まりそうになければ、ここで一晩過ごせばいいわ。
ヴォジャニーツァ:
いいでしょう?オデット?
オデット:
構いませんわ。
バレリー:
現状を考えると、合理的な選択ですね。ご提案に感謝します。
シュラム:
なあ兄ちゃん、外に向かって何を祈ってるんだ?お前も早く家に帰りたいのか?
トルゴフ:
お願いです、どうかお願いします、女皇陛下…!吹雪が絶対にやみませんように…
トルゴフ:
…スネージナヤの二大トップスターと一つ屋根の下で夜を過ごせるんだ!こんなチャンス、どれだけ金を積んでも得られないぞ!
オデット:
私、気が変わりました。
ヴォジャニーツァ:
あなた、少しでも妙な気を起こしたら、「トップスター」の裏の顔を見ることになるわよ。容赦なく吹雪の中に放り出してあげる。
アリョーシャ:
ここも寒くなってきたな。室温をどうにかしないと。
アリョーシャ:
扉をしっかり閉めて、暖かい場所へ移動するぞ。
現場の状況を把握する
ラムパーナ:
本日はあくまでプレビュー公演で、少々のハプニングもありましたが、オデットさんの演技はいつもよりずっと素晴らしかったですね!
クリシュ:
ええ!「愛と後悔」のような深いテーマは、誰にでも演じきれるものではありませんよ…
オデット:
……
クリシュ:
…嘘っぽくなってしまったかもしれません。またしてもオデットさんに無視されてしまいました。
オデット:
あなたはどう思われますか?本日の公演はいかがでした?
オデット:
そうですか…あなたの視線を釘付けにできなかったのは、私の問題です。次こそはしっかり見ていただけるよう、努力いたします。
オデット:
本公演の際には、チケットを一枚差し上げますね。
旅人:
(この場の雰囲気を考えると…「レーレク」の話は切り出しにくいな。二人きりで話せるチャンスを探ろう…)
クリシュ:
(…あんなのえこひいきですよ!えこひいき!)
旅人:
(それに、なんだか注目されてるみたいだし。)
オデット:
……
旅人:
ミティヤを知ってるの?
オデット:
いいえ、存じ上げません。ただ、彼は…警戒すべきかもしれないと思っただけです。
現場の状況を把握する
バレリー:
…確かに異常です。一時間以上予定の行動に遅れが出るなんて、通常は執行官が予備計画を発動すべきレベルの事態ですが…果たして吹雪そのものが原因なのか、それとも何か別の問題が…
ミティヤ:
はぁ…いつになったらこういう余暇を楽しめるようになるんだ?人はそうして初めて、人生の真髄を理解できるんだぞ。
ミティヤ:
おっと、これはこれは。この前、セラーガーデン・レストランで僕の隣に座っていたね?
ミティヤ:
劇場のスターの友達は僕の友達だ。僕はエネルギー協会所属のミティヤ。会えて光栄だ。
バレリー:
こんにちは。オルジェイナヤ・パラタ第一近衛擲弾兵団、特殊任務隊隊長のバレリー少佐です。
バレリー:
当面の間、ミティヤ様の護衛を担当しています。もし力になれることがあれば、声をかけてください。
ミティヤ:
なあ…旅人。あそこ…オデットが、さっきからこっちをチラチラ見てる気がするんだが、心当たりはあるか?
ミティヤ:
思い返してみても、彼女の気に障るようなことをした覚えはないんだよな…公演に集中していなかったのがバレたか…?
旅人:
そういえば、ミティヤの仕事って「厳冬計画」と関係してるの?
ミティヤ:
ああ、上層部が僕をエネルギー協会からオルジェイナヤ・パラタへ派遣したのは——
バレリー:
……
ミティヤ:
これも言えないのか?僕の認識では、この会話は私生活の範疇なんだが…
バレリー:
……
ミティヤ:
分かった分かった。はぁ…すまないな、旅人。見ての通り、僕たちの楽しいおしゃべりは、ここまでのようだ。
現場の状況を把握する
ヴォジャニーツァ:
劇場の楽屋にこんなに人が入るのは初めてね。まさかあなたまで来るとは思わなかったわ。
ヴォジャニーツァ:
チュグノフには会った?今日来るとは聞いていたけど…話してないの?
旅人:
あんまり話してないよ。
アリョーシャ:
言いたいことは分かる。確かにまたとない機会だ。
ヴォジャニーツァ:
ええ。なんとかしてあいつからもっと情報を引き出さないと。たとえば、なぜ急に「厳冬計画」に対する態度を変えたのか、そして前回の評議会の投票前に何があったのかを…
アリョーシャ:
それはロコットのためか?それとも単なる個人的な興味か?
ヴォジャニーツァ:
シーッ…!こんなに人の多いところで、むやみにその名前を口に出さないで!
現場の状況を把握する
旅人:
トーニャ、具合はどう?
トーニャ:
大丈夫だよ、心配かけてごめんなさい。でも、もうすっかり慣れっこなの。いつもお兄ちゃんが薬を煎じてくれるしね。
旅人:
(タルタリヤって、やっぱり面倒見がいいんだな…でも、トーニャの体調の話は聞いたことなかった。)
トーニャ:
実は今、ちょっとだけワクワクしてるんだ…
トーニャ:
吹雪でよく知らない建物に閉じ込められて、面白そうな人たちと一緒に夜を過ごすなんて、絶対に楽しいと思わない?
トーニャ:
でしょ?なんというか…学校の行事の旅行中に、変な事件に巻き込まれるみたいな…そんな展開にずっと憧れてたの。
トーニャ:
コホッ…コホッ…
トーニャ:
だ、大丈夫。ちょっと興奮しすぎただけ。
旅人:
しんどくなったらすぐ言ってね。君に何かあったら、俺がお兄ちゃんに怒られちゃう。
現場の状況を把握する
ソブレワ:
夫はとても疑い深いの。もし私が吹雪を理由に外泊すると言っても、あの人は許可しないでしょうね。
トルゴフ:
名家に嫁ぐ代償なんてそんなもんだ。慣れればどうってことない。帰るなら止めないが、俺まで巻き添えにしないでくれよ。
トルゴフ:
ん?何か用か?
現場の状況を把握する
シュラム:
…だから、あの金持ちの旦那たちを相手にするのに、武力なんてまったく必要ないんだ。縛り上げるための縄を見せるだけでいい。なぜだか分かるか?
チュグノフ:
どうしてだ?
シュラム:
勝手に想像するのさ、一モラの価値もない粗末な縄が、数十万モラもした上着をシワだらけにする様をな。それで、大人しくついてくるってわけさ。
チュグノフ:
ハハハハッ…なるほどな。ハハッ、他にも聞かせてくれ!
シュラム:
よう、新しい聞き手が来たみたいだな。よし、自己紹介といこう。オレはシュラム、傭兵だ。要は、金持ちの旦那から金をもらって仕事をしてる。
チュグノフ:
私はチュグノフ、企業家だ。この名を聞いたことがなくても、私の工場——有名なイゼカ設備製造工場は知っているだろう?
シュラム:
チュグノフの旦那は本当に有名人なのか?初めて聞く名前だぞ?
チュグノフ:
ほう?それは冗談か、それとも本気で言っているのか?
シュラム:
後でオレの縄に聞いてみよう。あいつがこれまで縛った金持ちの数は、オレが知る名前の数より多いはずだからな。
チュグノフ:
ハハハハッ…
閉じ込められたみんなと話をする
みんなは和やかな雰囲気で雑談を交わし、次第に打ち解けていった。そして気がつけば、夜になっていた…
ヴォジャニーツァ:
どうだった?アリョーシャ。
アリョーシャ:
相変わらずの大雪で、弱まる気配もなしだ。
ヴォジャニーツァ:
みんな、あたしの話を聞いて。今夜は吹雪がやみそうにないわ。外は昼間以上に危険よ。
ヴォジャニーツァ:
劇場としても、あなたたちの安全には責任を持たなきゃいけないの。今夜は泊まっていくといいわ。くれぐれも無理に外に出ないようにね。
ヴォジャニーツァ:
あとで劇場内の各エリアを案内してあげる。貴賓室でも、執務室でも、舞台裏でも、好きな場所で寝ていいわよ。舞台の上で寝たい人がいたとしても、あたしは止めないわ。
シュラム:
舞台の上は遠慮しておくぜ。もし明日の朝に雪がやんでたら、早めに来た観客に斬新な演目だと思われかねない。
チュグノフ:
眠る芝居か?そいつは面白い。演劇に名前をつけねばな。
ミティヤ:
いいタイトルだ。何が売りかも分かりやすいし、大ヒット間違いなしだろう。
クリシュ:
舞台の上で寝たくない方はこちらへ。お部屋へお連れいたします。
旅人:
(今夜はもう休もう…パイモンがそばにいないと、なんだか落ち着いて眠れない気がする。)
旅人:
(パイモンは、俺が帰ってこなくて心配してるかな?でも窓の外を見れば、理由は分かってくれるはず。)
旅人:
(パイモンの体調も少しは良くなってますように。少なくとも、悪化はしてなかったみたいだけど…明日の朝は、起きたらすぐに動こう。)
状況を把握する
ミティヤ:
目が覚めたか?こんなにゆっくり起きてくるなんて、ずいぶん贅沢だな。「黒い霧」が目前まで迫ってきてるから、ちょうど起こそうと思ってたんだ。
ミティヤ:
どうした、寝ぼけてるのか?「黒い霧」は僕たちが生まれた時からずっと足元を追いかけてきてるんだ、これ以上ないほどなじみ深いだろう?
ミティヤ:
ほら、もっと上へ登らないと生き残れないぞ。黒い霧教の連中の戯言なんて信じるなよ。
ソブレワ:
はぁ、また移動するの…キリがないわ…
旅人:
(状況はよく分からないけど…あの黒い霧、なんだか嫌な感じがする。それに…近づいてきてるような?とにかく上へ登って、少しでも離れよう…)
残ろうとする二人を説得する
ソブレワ:
私…もう限界。逃げても逃げてもキリがない…もううんざりよ!こんなことに一体どんな意味があるっていうの?
ミティヤ:
僕は、いつか必ずすべてが終結すると信じている。もう少しだけ踏ん張るんだ。
ソブレワ:
あなたは黒い霧教が嘘をついてるって言うけど、私にはあなたも嘘をついてるようにしか見えないわ。上への道に終わりなんてない、私たちには最初から希望なんてなかったの。
ミティヤ:
「黒い霧教」の思想に侵されたか、ソブレワ。お前も諦めるのか?
ソブレワ:
ええ、私は永遠の苦しみよりも、この瞬間に賭けるわ。
トルゴフ:
俺もやつらは嫌いだが、もう…疲れ果ててしまった…
ミティヤ:
……
ミティヤ:
そういうことなら、さようならだ…今だけは立場を忘れて、お前たちが黒い霧の中で安らぎを得られるよう祈るとしよう。
旅人:
本当に二人を見捨てるの?
ミティヤ:
運命というのは常に複雑に見えるが、その本質は時として単純だ。
ミティヤ:
「疑念」が生じた瞬間に結末は決まる。あとはもう、不可逆的にそこへ向かっていくだけだ…さあ、行こう。
ミティヤ:
トルゴフとソブレワの姿が見えなくなった…まさかあいつらまで「黒い霧」に呑まれる日が来てしまうとはな。残ったのは僕たちだけか。
旅人:
黒い霧の動きが止まった?
ミティヤ:
ああ、どうやらひとまず「満足」したみたいだな。
ミティヤ:
こういうことはよくあるんだが、しばらくすると再び生存者を追い始める。どうすれば完全に止められるのか、誰にも分からないんだ。
ミティヤ:
——あの二人が僕たちのために稼いでくれた休憩時間だ。大切にしないとな…
ミティヤ:
ん?旅人、そんなに眠いのか?

レーレクの告白
吹雪のため、コロレフスキー劇場で夜を明かすことになった。しかし目を覚ますと、事態はより複雑になっていた…
「夢」から目覚める
チュグノフ:
うわああっ——誰か!早く来てくれ!!
シュラム:
どうしたんだ、旦那…あっ!?
旅人:
(もう朝か…どうして外がこんなに騒がしいんだろう…)
旅人:
(音は隣から聞こえてくるみたい。何があったのか見に行ってみよう。)
隣の部屋の様子を確認する
ヴォジャニーツァ:
トーニャ、あなたは見てはいけないわ…
トーニャ:
うん…
シュラム:
これは一体どういうことだ…
傍白:
室内に横たわる二人はとても穏やかな顔をしており、深い眠りについているかのように見える。
傍白:
しかし生物としての本能が、彼らからかすかに漂う気配を、明確に理解する——これは、「死」の気配だ…
旅人:
(二人は死んでしまった。理由は分からないけど…こうなることを、なんとなく知ってた気がする…)
旅人:
(どこかでこの光景を見た?それとも予感してた?うーん、思い出せない…)
バレリー:
見せてください。
バレリー:
バイタルサインがありません。死んでいます…
バレリー:
外傷や争った痕跡はなく、毒素の沈着による皮膚の変化も見られません…死因は不明です。
ヴォジャニーツァ:
昨夜はあんなに楽しそうに笑い合っていたのに、どうして急に…
ミティヤ:
まさか、二人とも何かの病気だったのか?いや…同じ日の夜に同時に発作を起こすなんて、いくらなんでも…
バレリー:
自然死とも思えませんが、自殺の動機も見当がつきませんね…
旅人:
つまり…他殺ってこと?
バレリー:
遺体の第一発見者はどなたですか?
チュグノフ:
わ、私だ…言っておくが、私は無関係だぞ!私はただ、早く起きたから雪がやんだか見に行こうとしただけで…
チュグノフ:
そうしたら、この部屋のドアが開いてて、中に誰かいるようだったから…近づいてよく見てみたら、まさかこんな…
シュラム:
証言するぜ。オレは舞台のほうで朝の鍛錬をしてたんだが、チュグノフの旦那が歩いてるのを見かけて、後をついていったんだ。
シュラム:
旦那より前に誰かがこの部屋に近づくのは見てないぞ。
アリョーシャ:
外は一晩中、大雪が降り続けてたんだ。誰かが入ってきたとは思えない。
クリシュ:
外からですか?ありえません。昨夜、私は見張りを兼ねて正面入り口で寝ていましたから。夜中に何者かが扉を開けたなら、気づかないはずがありません。
バレリー:
皆さん、二人一組になって劇場内部を捜索しましょう。どこかに不審者が隠れていないか、そして怪しい痕跡がないか調べるんです…さあ、早く!後ほど、俺も全体を見回ります。
トーニャと共に劇場内を入念に捜索したが、不審者は確認できず、すべてが昨夜と変わりない状態だった。
ヴォジャニーツァ:
…そっちも異常なし?
オデット:
舞台裏には、特に異常や何かの痕跡は見当たりませんわね。
ラムパーナ:
地下室も確認しましたが、不審な点はありませんでした。侵入者がいたとしても、この劇場で誰にも見つからないよう隠れるのは、そう簡単なことではないはずです。
旅人:
こっちも異常なしだった。
バレリー:
裏口はありませんか?あるいは、人が通れるほどのトンネルなどは?
クリシュ:
そんなものありませんよ。もしチケットを買わずに入場できる通路なんてものがあったら、とっくに私たちが塞いでいます。
クリシュ:
窓はすべて内側から施錠されていました。確認しましたが、何者かが出入りした痕跡もありません。
ミティヤ:
よそ者が出入りした可能性は、ほぼほぼ排除できるな。よく考えてみれば、外はあんなに激しく雪が降ってるんだ。足跡や水の一滴も残さずに侵入するなんて、まず不可能だぞ。
チュグノフ:
分かったぞ…これはそういう殺人事件だ。小説や劇でありがちな、犯人は私たちの中にいるってやつだろう。
バレリー:
まだ、結論を出すには早すぎます。
旅人:
(まさか…本当にそうなの?そんなことが現実に起こるなんて、想像もしなかった…)
旅人:
(吹雪…劇場…殺人事件…犯人はこの中にいる…あまりにも「定番」な展開すぎて、逆に信じられない。)
チュグノフ:
犯人の標的にしても、痕跡を残さない手口にしても…
チュグノフ:
ふん、全部辻褄が合うな。こう考えると、全貌が見えてきた気がするぞ…
アリョーシャ:
何が分かった?話してみろ。
チュグノフ:
被害者の二人はこのあたりじゃ名の知れた大商人。わざわざドアを開けていたのは、私にいち早く現場を目撃させるため…
チュグノフ:
なんて悪辣な手口だ…あんたの仕業だな、「レーレク」?
ヴォジャニーツァ:
「レーレク」ですって!?
旅人:
!!!
アリョーシャ:
「レーレク」がオレたちの中にいて、ヤツが犯人だと?
バレリー:
コードネーム「レーレク」…オルジェイナヤ・パラタの関連資料には、「厳冬計画」に反対するロコットのメンバーで、常に単独行動を取るとありました。
バレリー:
その推測に至った過程を聞かせてください、チュグノフさん。「レーレク」について何かご存知なのですか?
チュグノフ:
「レーレク」…これ以上何を望むんだ?どうしろと言うんだ?ちゃんと皇都評議会で反対票を入れたじゃないか!
チュグノフ:
夜中にうちに忍び込んで脅迫状を置いていっただろう…あんたの指示通りにしたぞ!だが「雄鶏」様が指揮を執っておられる「厳冬計画」が、そう簡単に阻止できるわけがないだろう!
ヴォジャニーツァ:
(なるほど、やっぱり「レーレク」に脅されていたのね。それなら納得よ。)
チュグノフ:
なのに今度は…人殺しまでして脅す気か?ロコットが金持ちを憎んでるのは分かってる。あんたらにとって、金持ちの命に価値はないんだろう…
チュグノフ:
ほら、誰が「レーレク」なんだ?言え、私にどうしてほしい?言われた通りにしてやるから、もう気味の悪い真似はやめろ!
オデット:
……
旅人:
(本当に「レーレク」——いや…オデットが?)
旅人:
(もしオデットが「レーレク」なら、あの性格からして、こんなことをするとは思えないけど…オデットのすべてを理解してるとも言い切れない…)
旅人:
(「レーレク」の正体につながる手がかりを持ってるのは俺だけだ。でも、今それを明かせばオデットが集中攻撃を受けることになる…)
旅人:
(どうすればいいんだろう…)
ヴォジャニーツァ:
あたしには「レーレク」が犯人だとは思えないわ。
ヴォジャニーツァ:
あたしが知る限り、あいつが人を殺した記録はない。それどころか、殺人事件に関わったことさえないのよ。
ヴォジャニーツァ:
それに…もし本当にあなたを脅すためだったとして、どうしてこんな極端で回りくどい方法を取るの?こんなの、あいつのやり方じゃないわ。
旅人:
(ヴォジャニーツァは「レーレク」がオデットかもしれないとは思ってないはずだけど——俺も同じ考えだ。)
チュグノフ:
ヴォジャニーツァさん、どうして突然そんな風に…「レーレク」をかばうんだ?
ヴォジャニーツァ:
かばう?何を言っているの…ただ、あなたたちが早まった結論を出さないように、個人的な意見を述べたまでよ。それに…あたしは、ロコットはあなたが言うほどひどいものではないと思っているわ。
チュグノフ:
私の推測を否定するというなら、あんたはどう考えてるんだ?誰が犯人か、聞かせてもらおうか?
バレリー:
まだ解決の糸口は全く掴めておらず、あくまで初期の議論の段階です。チュグノフさん、皆さんの発言の機会を邪魔しないでください。
ミティヤ:
だが、チュグノフさんが最近脅迫を受けたという事実は、無視しがたい手がかりなのは間違いない…
クリシュ:
ということは、やはり「レーレク」はこの中にいる可能性が高いということですよね?
クリシュ:
もう嫌です、雪がやんだかどうかなんて関係ありません。とにかく早くここを離れたい…
シュラム:
言っただろ、外の雪は普通じゃないって。あの兵士たちでさえ来られないんだ、外に出たら命を落とすかもしれないぞ。
シュラム:
その「レーレク」ってやつも、いくらなんでもみんなが見てる前で人殺しはしないだろ。悪いことは言わねぇ、残ったほうがいいぜ、兄ちゃん。
バレリー:
皆さん、もうしばらく劇場の中でご協力ください。あまりこういうことは言いたくなかったのですが——
バレリー:
今は、この場にいる全員が…「容疑者」です。
一同:
……
バレリー:
他に共有する情報がないようなら、一旦解散しましょう。引き続き手がかりを探していただくのは結構ですが、くれぐれも単独行動は控えてください。
「ロコット」のメンバーたちとオデットのことについて話す
ヴォジャニーツァ:
…少し感情的になりすぎてしまったわね…反省しないと。幸い、あたしの正体を疑う者はいなかったようだけど。
旅人:
二人とも。
ヴォジャニーツァ:
ああっ!もう…あなただったの。盗み聞きされたかと思ったじゃない。
旅人:
(ヴォジャニーツァとは意見が合ってるみたいだし、まずはロコットの二人と話し合ってみよう…)
タルタリヤから提供された「レーレク」に関する情報と自身の推測を、ヴォジャニーツァとアリョーシャに話した…
ヴォジャニーツァ:
いやいや…嘘でしょう?もしその話を「ゴシップ」と言うなら、今年一番の特大スクープ間違いなしよ。
ヴォジャニーツァ:
それはつまりオデットのことを…言っているのよね?そ、それが本当なら、あたしはなんて鈍いの…「レーレク」がずっとそばにいたのに、全く気づかなかったなんて…
アリョーシャ:
無理もない。「灯台下暗し」ってやつだろ。
ヴォジャニーツァ:
けど、そう言われてみると、確かにその可能性が高い気がしてきたわ。諸々の特徴も一致しているしね。
ヴォジャニーツァ:
まさか…本当にそういうことだったの?一…二…三…四…
旅人:
何を数えてるの?
ヴォジャニーツァ:
オデットが一体どれだけの身分を持っているのか数えているの。まず、あたしの同僚、つまりバレリーナでしょ…で、ファデュイに…ロコットのメンバーに…「レーレク」…
ヴォジャニーツァ:
とんでもなく大変そうね、ぎゅっと抱きしめてあげたいわ。
ヴォジャニーツァ:
あの子がファデュイに入ったのを知っていたからかもしれないけど…まさかロコットにも所属していて、さらには「レーレク」本人だったなんて、思いつきもしなかった…
ヴォジャニーツァ:
けど、ファデュイであるあの子が、どうしてそこまで過激に「厳冬計画」に反対するの?
アリョーシャ:
それは本人に直接聞くのが一番。
ヴォジャニーツァ:
このことをみんなの前で公にせず、今になって話したということは…あなたもあたしと同意見ということね?
旅人:
オデットが無実の人を殺すとは思えない。
ヴォジャニーツァ:
そうね。「レーレク」はずっとロコットの上層部の指示を無視しているけど、あたしからすればあの子の行動は悪とは言えないわ。むしろ、貧しい人々のためになっている。
ヴォジャニーツァ:
直接話を聞きに行かないと。
アリョーシャ:
だが…自分が「レーレク」だと認めると思うか?
ヴォジャニーツァ:
どうかしらね。とにかく臨機応変に対応することよ。ひとまず、あの子は人を殺していないという前提で、どれだけ情報を聞き出せるか試してみましょう。
ヴォジャニーツァ:
チャンスよ、ちょうどオデットが一人でいるわ…行きましょ!
ヴォジャニーツァ:
ねえ、オデット…
オデット:
あら?あなたたち…どうなされました?
ヴォジャニーツァ:
シーッ…声が大きいわ。ちょっとあなたに聞きたいことがあるの。
ヴォジャニーツァ:
その…あなたが…「レーレク」なのね?
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
いいの、何も言わないで。弁明もいらないわ…まずはあたしの話を聞いて。
ヴォジャニーツァ:
あたしたちは、あなたが罪のない者をむやみに殺すような人ではないと信じているわ。昨夜、あの二人を殺した犯人はあなたではないんでしょう?
ヴォジャニーツァ:
旅人はあなたの正体に勘づいていたようだけど、さっきの話し合いではあえて黙っていたのよ。
ヴォジャニーツァ:
今、議論の方向性は「レーレク」が犯人だということで固まりつつあるわ。もしあなたの正体がバレたら、すっごく不利な立場になるの。
ヴォジャニーツァ:
あたしたちは劇場の同僚だし、あなたの人となりもよく知っている。間違った非難は受けてほしくないのよ。
ヴォジャニーツァ:
だから…知っていることをすべて話してくれない?情報が多ければ多いほど、あたしたちもあなたをかばいやすくなるわ。
オデット:
……
オデット:
おっしゃる通りです。
オデット:
私が「レーレク」ですわ。そして、あのお二人を殺したのは私ではありません。
オデット:
お心遣いに感謝いたします。けれど、あなたたちに私の正体を隠すお手伝いをしていただく必要はありません。むしろ…自分から明かそうと思っていました。
ヴォジャニーツァ:
えっ!?「レーレク」であることを公表するの?みんなの前で?
オデット:
ええ、そうですわ。最初は偶然にもチュグノフに私がここにいることを言い当てられ、少々驚きました。
オデット:
状況を見極め、皆さんの態度を確認するのにわずかばかり時間を要しましたが…もう、何も懸念することはありませんから。
ヴォジャニーツァ:
あたしたちの話も聞いてみない?今ならまだ…
オデット:
すぅ——バレリーさーん!
ヴォジャニーツァ:
えっ——!
舞台上へ向かう
バレリーが全員を招集し、オデットは単刀直入に宣言した——自分こそが「レーレク」であると。
トーニャ:
オデットさんが…
チュグノフ:
何を企んでいるのか知らんが、大した度胸だ…
オデット:
所詮、単なる身分ですもの。公表したところでどうということはありませんわ。いざとなれば姿をくらまして、別の身分で生きていくことだってできます。
オデット:
「レーレク」になった時から、覚悟はしておりました。
オデット:
ですが、本当に犯人は私ではないのです…他に真犯人がいるはずですわ。
オデット:
どうしても私が犯人だと言い張るのでしたら、証拠をお出しください…
オデット:
そうでないなら、軽率な言動は謹んでいただくよう忠告いたします。もし私が音もなくあのお二人を殺せたのだとしたら、私に濡れ衣を着せようとする方も無事では済まないでしょうから。
クリシュ:
ほ、本当なんですか?オデットさん…
シュラム:
へっ、悪くない気迫だ。オレは信じるぜ。
旅人:
(オデットは「淑女」の称号を継ぐかもしれないって、サンドローネが言ってたっけ…この強硬な姿勢を見ると、納得かも…)
チュグノフ:
あんたたち、本当に信じる気か?おい、士官!こいつは自分が「レーレク」だと認めたんだぞ、何か行動を起こすべきじゃないのか?
バレリー:
俺が気になるのは…オデットがなぜこのタイミングで自ら正体を明かしたのか、ということです。
オデット:
…そうしなければ、皆さんは「レーレクを探す」ことにすべての労力を費やしてしまうでしょう。
オデット:
それでは真犯人の思う壺です。その者の身代わりとして利用され、犯人の思い通りにことを進ませるなんて願い下げですわ。
ミティヤ:
あれほどの糾弾を受けてもなお冷静さを保ち、理性的な選択ができるとは…オデットの才能は、バレエの分野にとどまらないようだ。
ヴォジャニーツァ:
そこまで考えていたとは…悔しいわね。なんだか、いつもオデットに一歩遅れを取っている気がするわ…
バレリー:
なるほど、納得しました。今は殺人事件の処理を最優先とし、「レーレク」やその背後にある事件の調査は、一時保留しましょう。
バレリー:
ですが、それでもこの場にいる全員の中で、君への疑いが最も強いことに変わりはありません。それについて異論はありませんね、オデット。
オデット:
ええ。必要であれば、二十四時間監視していただいても構いませんわ。
バレリー:
いかがですか、チュグノフさん?
チュグノフ:
ふん、妻と娘のためだ、今回は見逃してやる。だが、私の家に不法侵入したことと脅迫状の件は…ここを出たら必ず落とし前をつけてもらうぞ、「レーレク」。
オデット:
……
オデットと会話する
依然として降り続く吹雪に、皆すっかり慣れてしまったかのようだ。事件に進展がないまま、夜を迎えた…
ヴォジャニーツァ:
看守小隊のみんな、お疲れ様。「レーレク」も白湯を飲むといいわ。
旅人:
(はぁ、やっぱりバレリーは俺の「戦績」を知ってたんだ。監視役を頼まれてしまった…)
オデット:
看守なのでしたら、こちらを向くべきではありません?それではまるで…私のボディガードみたいです。
バレリー:
もし君の言う通り「真犯人」がいるのだとすれば、こうすることで警戒も兼ねることができます。
ヴォジャニーツァ:
問題はいずれ解決するのよ、トーニャ。
ヴォジャニーツァ:
雪がやんだら、専門家たちがやってくる。事件の調査は円滑に進み、あたしたちの安全も確保されるから。
トーニャ:
うん…でも雪がやんだら、みんな帰っちゃうの?
ヴォジャニーツァ:
え?寂しいの?少なくとも、劇場で働くあたしたちはここに残るつもりよ。後で特別に「楽屋の通行証」をあげるわ!
トーニャ:
本当に?やったあ!ヴォジャニーツァさん、私、ずっとあなたのファンでいるね!
ヴォジャニーツァ:
ああ…トーニャ、あなたは本当にかわいいわね。
ヴォジャニーツァ:
よし、それでは誓いを立てましょう!あたしは通行証を渡すと約束する。だから、あなたは…永遠に、あたしだけのファンでいるのよ!
トーニャ:
うん!
アリョーシャ:
はぁ…トーニャ、そんな意味不明な誓約に付き合わなくていい。
ラムパーナ:
ヴォジャニーツァさんは、時々妙なことに執着するんですよね…
ヴォジャニーツァ:
あなたたちには関係ないの!
トーニャ:
ふふっ…
ヴォジャニーツァ:
…♪…♪
シュラム:
そう緊張するな、水の精の嬢ちゃん。ここにゃみんないるし、何も怖いことはないぜ。
ヴォジャニーツァ:
あたしが緊張しているって?あなた、何を言っているの…
シュラム:
ん?いやいや、オレにははっきり「聴こえる」ぜ、その緊張がな。
ヴォジャニーツァ:
え…ちょっと待って、あたしが水の精だと知っているのはいいわ。周知の事実だもの。だけど、どうしてあなたが…「素顔」を聴き取れるの?
ミティヤ:
「素顔」?なんだそれは?初耳だぞ。
ヴォジャニーツァ:
なんと言うか…水の精は表情よりも、歌声で感情を伝え合うことに慣れているのよ。
ヴォジャニーツァ:
そして、その感情は表情より本質的なものだから、水の精の「素顔」とされているの。
チュグノフ:
見直したぞ、シュラム。がさつなやつかと思ってたが、そんなことまで知ってるとはな。
ヴォジャニーツァ:
知る知らないの問題ではないわ…普通、この「表情」は水の精同士でしか理解し合えないのよ。歌声から感情を推し量るような、そんな単純なものではないんだから。
ヴォジャニーツァ:
けど…人間のシュラムがどうして…
シュラム:
そんな大したことじゃないぜ、嬢ちゃん。きっとオレには才能があったんだろ。その、なんだ…仲良くしてる水の精のお嬢様がいてな…へへっ、誰にも言わないでくれよ。
シュラム:
まあとにかく、しょっちゅう一緒にいるうちに、彼女の表情を聴き取れるようになってたのさ。
ヴォジャニーツァ:
そう…納得できなくはないけど、それより驚いたのは…まさかあなたに水の精の友人がいたなんてね。なら…これからはあなたの前では気軽に歌えないわ。
チュグノフ:
おい、あんたの歌声にはどんな感情が込められてるんだ。こっそり聴き手を罵ってるんじゃないだろうな?
ヴォジャニーツァ:
さあ、どうかしらね?
トーニャ:
ふわぁ——
バレリー:
もうこんな時間ですか。そろそろ今夜の就寝の段取りについて話し合いましょう。「犯人」を警戒するためにも、誰かが夜番を務める必要があります。
アリョーシャ:
今夜は全員一緒に寝たほうが安全だと思うが。
チュグノフ:
ふん、私としては、「レーレク」を見張ってさえいれば何の問題もない。
バレリー:
それはつまり、オデットが犯人であることに命を賭ける、ということですか?
チュグノフ:
そ、そういう意味じゃない!変なことを言うな!
バレリー:
では、提案します。俺、旅人、オデットの三人で夜番小隊を組み、常に二人で監視をしつつ、交代で睡眠をとりましょう。
ミティヤ:
絶妙な采配だな。夜番をしながら「レーレク」も見張れる。おまけに旅人とバレリーを完全に信用できるとは限らないって問題も、二人一組で証明し合うことで解決してる。
ミティヤ:
思いつくのにかなり時間がかかったんじゃないか?
バレリー:
『部隊野外作戦ハンドブック』にこれとよく似た考え方が載っていたので。もっとも、そこで想定されている状況は、野外作戦における夜間の捕虜の監視というものでしたが。
バレリー:
ただ、これだけは言っておかなくてはなりません。この監視は決して、オデットへの不敬を示すものではありません。
バレリー:
「レーレク」の数々の秘密工作もまた、軍の特務にとっては教科書レベルの事例ですから。
オデット:
あなたからの敬意よりも、たった今、睡眠時間の三分の二が奪われたことのほうが気になりますわね。
オデット:
それでは、私が最初に休ませていただきます。おやすみなさい。
夜明けまで見張りをする
夜になり、バレリーと一緒に最初の見張りについた。
皆が舞台の上で眠っている様子は、まるで不条理な劇のようだ。気づけば最初の交代の時間になっていた…
バレリー:
そろそろオデットと交代する時間です。次は君が寝ますか?
バレリー:
では、お言葉に甘えさせてもらいます。少し仮眠を取ってきますので、もし眠くなったらいつでも起こしてください。
旅人:
(やっとオデットと一緒に夜番をする時間だ。彼女を起こさないと…)
旅人:
(そもそも、ここへ来たのはオデットから情報を聞き出すためだった。何を聞くべきか、考えをまとめておいたほうがいいかな…)
オデット:
……
オデット:
…そんなにじっと見つめて、どうされたのですか?
オデット:
頭の中が整理できなくて、眠れませんの。
オデット:
それに…あなたに聞きたいことがありましたので。
旅人:
そっちも?
オデット:
やはり、あなたも私に用があったのですね。この機会にはっきりさせておきましょう。
オデット:
まず、あなたへの質問はとてもシンプルなものです。その…
オデット:
ロザリン様は…最期の瞬間に、何か…遺言のようなものを残しましたか…?
オデット:
はぁ…そうですか。気がかりだったのは、それだけです。
旅人:
「淑女」のことをずっと考えてたの?
オデット:
いいえ。
オデット:
あんな目的のためなら手段を選ばない人に…想いを馳せるなんてことはありません。
オデット:
…ロザリン様のやり方には賛同できませんし、その性格も軋轢を生みやすいものですが…それでも、恩があることは変えようのない事実ですわ。
旅人:
サンドローネから少し聞いたよ。
オデット:
あの方から…確かに「傀儡」様はロザリン様と仲がよかったようですものね。
旅人:
でも、詳しいことは知らないみたいだった。
オデット:
ロザリン様はこの手のことを誰かに話す方ではありませんし、たとえ話していても私には関係のないことです。
オデット:
幼い頃、私と母が生きていくためには、ファデュイに加わり、ロザリン様の指導を受けるしかありませんでした。
オデット:
今も訓練の過酷さを覚えています。優れた才能もない私は、雪と氷に囲まれながら、ただひたすら鍛錬を積むしかありませんでした。
オデット:
偉大なる執行官の注目を浴びる新兵として、期待された通りの成果を出す必要がありました。「淑女」様の顔に、泥を塗るわけにはいきませんでしたの。
オデット:
あの頃は毎日、疲労と寒さによる苦痛に耐えていて、なかなか寝付けない日も多くありました…
オデット:
それにより、痛覚のほとんどを失ってしまいましたの——これも生きていくための代償なのでしょう。
オデット:
そのような経験をした子供が、自身の運命を憎むのは当然のことではありません?
旅人:
本当に…多くの代償を払ったんだね。
オデット:
バレエに同等の努力を注いできたのは、それが幼い頃の私にとって、運命に抗える唯一の手段だったからです。
オデット:
私はロザリン様に伝えたかったのです——ファデュイの要求もあなたが私に抱く期待も、私は欲しておらず、いつか必ず自由を得てみせると。
オデット:
おそらくあの方は、私の訓練成績が芳しくないのは、バレエのことで気を散らしているせいだと思っていたのでしょうね。
オデット:
ある夜、こっそりバレエの稽古をしていると、突然ロザリン様が現れましたの。私を連れ戻しに来たのだと、すぐに気づきました。
オデット:
私はこう言いました——「あなたには、母から受け継いだ踊りを見る資格などありません」と。
オデット:
まさか、自分より先に私が激昂するとは思ってもみなかったのでしょう。ひどく驚いた表情をしていました。
オデット:
けれど不思議なことに、あの方は訓練の時のように私に厳しく当たることはなく、しばらく沈黙したあと立ち去っていったのです。
オデット:
それ以来、干渉されることも、口出しされることもなく、踊りの稽古中に現れることもなくなりました。
旅人:
プライドが高い人だったからね。
オデット:
ええ…けれど、今となってはこの燃珀を手にするたびに、どうしてもあの夜のことや、ロザリン様の顔を思い出してしまいますわ。
旅人:
それは「淑女」からの贈り物?
オデット:
…「贈る」という言葉は、穏やかすぎるかもしれません。ロザリン様は自身の炎を氷の中に封じ込めたのです。これは、相手の能力を高く評価する証であると同時に、一種の監視の手段でもあります。
オデット:
ロザリン様はすべての燃珀の位置を把握しており、それを所持する者が怪しい行動を取れば、即座に疑いの目を向けました。ふっ…「高く評価される」ことは、これほどまでに息苦しさを感じますのね…
オデット:
ですから、ロザリン様の訃報がスネージナヤに届いた時、多くの人がすぐさま燃珀を砕きましたの。まるで枷から解放され、重い肩の荷が下りた様子でした。
オデット:
けれど、私はいまだにこれを持ち続けています…この「熱」は、痛覚の薄れてしまった私でも、はっきりと感じ取れる数少ないもののひとつですから。
オデット:
あの夜、ロザリン様は本当に踊りをやめさせに来たのでしょうか?確信が持てないのです。私はあの方を恐れるあまりに、とても酷いことを言ってしまいました。
オデット:
やはり、何も残していなかったのですね…構いません。ただ、最後まで歩み寄ることができなかったのが、少し残念なだけですわ。
オデット:
えっ…和解?その時に…?
オデット:
いいえ、あの日以来、ロザリン様が訪ねてきたことはありません。モンドへ向かったことも、しばらくしてから知りましたの。
オデット:
まさか…
旅人:
一度、アルレッキーノに話を聞いてみて。
オデット:
ええ、そうしてみます。感謝いたしますわ。
旅人:
ところで、一つ聞いていい?パイモンの不調は、「厳冬計画」のエネルギー研究の影響なの?
旅人:
パイモンは大切な仲間なんだ。「レーレク」なら、もっと詳しいことを知らないかな?
オデット:
…あのエネルギー実験の最終目的は、決戦用の武器を製造することです。
オデット:
すでにナド・クライで構築が完了しており、今は十分に強力なエネルギーの注入を待っている状態ですわ。
オデット:
ええ、武器に関するすべての実験や開発はオルジェイナヤ・パラタの奥深くで行われており、「道化」——ピエロ様が管理なさっています。
オデット:
なぜこの実験がパイモンの不調を引き起こしたのかは分かりません。けれど、疑問の答えを得るには自ら足を運ぶのが一番でしょう。
オデット:
ここを出ましたら、あなたの入場許可を申請してみます。
オデット:
お話しした通り、その肩書きは好きではありませんの。ロザリン様のことを教えてくださったお礼がしたい、ただそれだけのことで——
オデット:
ゴホッ、ゴホッ…
旅人:
ん?どうしたの、具合でも悪いの?
オデット:
ゴホッ、ゴホッ…
バレリー:
ずいぶんと話が弾んでいるようですね。
オデット:
寝ていなかったんですの?
バレリー:
いかなる過酷な環境下であろうと、速やかに眠りにつき体力を温存する。それが軍人が持つべきスキルです。当然寝ていましたが、どうかしましたか?
旅人:
いや、なんでもないよ…
旅人:
(もしずっと起きてたとしても、聞こえてないよね…)
バレリー:
お疲れ様でした。さあ、交代しましょう。旅人、今度は君が休む番です。
旅人:
うん。
旅人:
(ここに来てからもう二度目の夜…幸い、パイモンの体調に関する手がかりは得られたけど…)
旅人:
(パイモンはこの二日間、ぐっすり眠れてるのかな…)
旅人:
(ん…なんだか、視線を感じる…)
オデット:
……
旅人:
(もしかして、オデットの寝顔を見つめたことへの仕返し?)
オデット:
……
旅人:
(まあいいや、もう寝よう…)
状況を把握する
クリシュ:
ちょっと、何をボーッとしているのです!あなたももう限界なのですか?
ラムパーナ:
私たち、もうどれくらい歩いたんだっけ?覚えてる?
クリシュ:
時間なんて概念は、とっくになくなっていますよ…頭上のあの…何と言いましたか?あれを発見して以来…
ラムパーナ:
「星の鍵」…じゃなくて、「鍵の星」?…まあ、どっちでもいいわね。名前を付けた人は「黒い霧」に呑み込まれちゃったし。
クリシュ:
私たちは頭上のあれを発見してからというもの、あそこに辿り着きさえすればここから出るための希望があると信じ、ひたすら上へと進んできたのです。
クリシュ:
ところが、どれだけ歩いても、まったく距離は縮まりそうにありません…
ラムパーナ:
はぁ…それでもここまで来たんだし、万が一ってこともあるでしょ…もしかしたら、あと少しで着くかもしれないわよ?ほら、喋ってると「黒い霧」に追いつかれるわ。
「黒い霧」から脱出する
クリシュ:
……
ラムパーナ:
クリシュ、怪我したの?
クリシュ:
いいえ、大丈夫です。ただ急に…もう歩きたくなくなってしまって。
ラムパーナ:
そう…実は私も…とっくに限界だったの。こんな「希望」なら…いっそ、ないほうがマシだったかもね。
クリシュ:
あの星が示す「希望」を信じてここまで来ましたが、あれはそもそも実在せず、私たちは集団幻覚を見ているのではないかと思えてきました。
クリシュ:
そうでなければ…どうして永遠に手が届かないのでしょう?
ラムパーナ:
お気遣いありがとうございます。私たちを励まそうとしてくださったんですね?
クリシュ:
感謝します。ですが、もう十分です。これ以上希望を与えないでください。ここでは希望は毒なのです。
クリシュ:
あなたはまだ進まれるおつもりなのでしょう?心より敬意を払います。私はもう諦めましたが、いつかあなたが本当に星を「掴み取り」、この忌々しい場所から抜け出せるよう祈っています。
「星」のある場所に行く
オデット:
おめでとうございます!ここまで辿り着いたのは、あなたが初めてですわ!
旅人:
本当にやり遂げたんだ…
オデット:
私は「星の使者」ですの。
オデット:
これ以上、「黒い霧」は昇ってきません。どうやら、あなたの仲間を二人呑み込んで、一時的に満腹になったようです。
オデット:
今のうちに少し休んで、それからまた出発いたしましょう。
オデット:
あら?ここから出るとは何のことですの?この「星」は、「スタートライン」を意味する目印ですわ。
オデット:
よくぞスタートラインまで辿り着かれました。準備が整い次第、上へ向かって出発いたしましょう。私がどこまでも付き添います。
旅人:
ここまで苦労したのにスタートライン…?
旅人:
……
オデット:
あら、どうしましたの?ちょっと、まだ出発もしていないのに倒れてはいけません!

謎に包まれた冬の静寂
劇場内で連続死亡事件。しかし、犯人に関する手がかりは一切掴めない。これは普通の事件ではないのかもしれない…
「夢」から目覚める
ヴォジャニーツァ:
ラムパーナ!ラムパーナ!
旅人:
(ヴォジャニーツァが叫んでる…?一体何が…)
ヴォジャニーツァ:
クリシュ!早く目を覚まして!
傍白:
冗談だったはずの「舞台上で眠る劇」が、今まさに上演されている。しかしそれは、悲劇という形でだった——
傍白:
皆が「眠る人」を囲んでいる。何が起きたのかはすぐ理解できた。まるで、事前に誰かから答えを聞いていたかのように…
バレリー:
死因は不明——昨日亡くなった二人と、完璧に状況が一致しています。
ミティヤ:
今回はみんな一緒に舞台で寝ていた。つまり、周囲の環境が原因である可能性は排除できる…
オデット:
ラムパーナ…クリシュ…
シュラム:
でも、ゆうべは夜番がいたんだろ?三人もいたのに、何も気づかなかったのか?
オデット:
私も不思議でなりません。少なくとも、私が起きている間に異変はなかったはずですもの。
バレリー:
俺もです。そして個人的な意見ですが、オデットと旅人は信用できます。
チュグノフ:
実は、ゆうべはずっと眠れなくってな…なんだか自分が狙われているような気がして、ただ目を閉じているだけだったんだ。
チュグノフ:
だから妙な物音がすればすぐ気づくはずだが、聞こえてきたのは、旅人と「レーレク」が雑談する声だけだった。
トーニャ:
わ…私もです。みんなを起こさないように咳を我慢してたから、よく眠れなくて…もし何かあったら、私も気づいたはずです…
ヴォジャニーツァ:
一体どういうことなの…!こんなことが、二度も…
ヴォジャニーツァ:
ラムパーナとクリシュ…長い付き合いだったのに、舞台の上でこんな姿を見ることになるなんて…
トーニャ:
ヴォジャニーツァさん…
旅人:
(たった二日で、四人が被害を受けた。しかも、今のところ何の手がかりもない…)
旅人:
(一刻も早く何が起きてるのか解明して、せめてトーニャの安全は確保しないと。この子に何かあったら、タルタリヤに申し訳が立たない…)
バレリー:
雪はまだやまないのですか?
アリョーシャ:
ああ、確認した。外に人影もない。
シュラム:
オレたちだけで解決するしかねぇのか?
チュグノフ:
恐らく、犯人は手を下そうと思えばいつだって下せた。夜番なんて、最初から何の意味もなかったんだ。
チュグノフ:
「レーレク」は毒を使ったに違いない!死体を見ても全く分からないような毒を!
オデット:
またですの?
チュグノフ:
昨日からずっと考えていたが…「レーレク」が正体を明かした時の言葉…あれは真実なのか?いや、絶対に違う!断言するぞ!
チュグノフ:
明らかに私たちを弄んでいる。正体を明かした上で殺人を続けるほうがスリルがあるからな!そうだろ!?
オデット:
そんなことを考えるのは、あなたのような変人だけですわ。
チュグノフ:
なんだと…!
ヴォジャニーツァ:
もういいわ。昨日あなたが「レーレク」を疑ったのは、被害者が大商人で、「レーレク」に動機があるかもしれないという理由だったでしょう…
ヴォジャニーツァ:
けど、今日の被害者はどちらも一般市民で、あたしとオデットの同僚なのよ。彼らが罪を犯す理由がどこにあるの?また、あなたを怖がらせるためだとでも言うつもり?
チュグノフ:
どうだかな?あんたはこいつのことを完璧に理解していると言えるのか?
チュグノフ:
フン、考えてもみろ!世の中に、本当に人を殺す度胸のある人間がそう何人もいるか?
チュグノフ:
そのうえ、冷酷非道な「レーレク」が名乗り出てきたんだ。こいつ以外ありえないだろう!
バレリー:
ここまでの発言はどれも推測の域を出ておらず、手がかりにはなりません。証拠を提示してください。
チュグノフ:
どうして士官までこいつを庇うんだ?夜番の時に何か言われたんじゃないか?
チュグノフ:
フン、考えてみれば分かることだったな。軍は私のような金持ちを目の敵にしているから、こういう犯罪者と結託するんだ…
チュグノフ:
そうして、財産を奪って言いなりにさせようとする!ファデュイだの、冬契軍だの、ロコットだの…どいつもこいつもロクな奴らじゃない!
バレリー:
……
チュグノフ:
な、なんだ…!
トーニャ:
……
トーニャ:
…き、昨日、他人の発言を邪魔してはならないと言ったのはバレリーさんですよ。
トーニャ:
もう四人も亡くなってしまったんです…昨日までは普通にクリシュさんとお話ししてたのに、こんなことになって…
トーニャ:
今は、内輪揉めなんてしてる場合じゃないはずです。
トーニャ:
コホッコホッ…
チュグノフ:
トーニャ…
トーニャ:
たとえ…チュグノフさんが、独りよがりで屁理屈ばかりの、いばることしかできないダメな人だったとしても…
トーニャ:
この人だって、被害者の一人なんですよ!
チュグノフ:
うぐっ…
シュラム:
ぷっ…コホンコホン。
バレリー:
俺は手を出そうとしていたわけではありません。ですが、確かに君の言う通り、彼の発言を遮るべきではないですね。
バレリー:
チュグノフさんも落ち着かれたはずですので、話し合いをつづけましょう…
ミティヤ:
その必要はないだろう、もう話し合うことなんてないからな。明らかに、この状況は異常だ。
ヴォジャニーツァ:
何か思いついたの?あなたはこの中で一番頭が切れるのよ、早く言って!
ミティヤ:
さっきから考えてたんだが、今ある手がかりはどれも、劇場の外に関することばかりだ…オデットの正体も、チュグノフが受けた脅迫も…
ミティヤ:
だが、肝心の二件の殺人事件については、一切手がかりがない。これはあまりにも不自然だ。どんなに用意周到な犯人でも、何かしらの痕跡は残すだろう?
アリョーシャ:
何が言いたい?
ミティヤ:
これは心霊現象なのかもな。生身の人間がやったとは思えない。
ヴォジャニーツァ:
ええと…あなたは科学研究者なのよね?そんな結論を出すとは、信じがたいわ…
ミティヤ:
ははっ…僕の研究は好奇心を満たすためのものだ。この状況を科学で説明するのは無理そうだから、その好奇心を幽霊へ向けたに過ぎない。
オデット:
そういえば…この劇場に来たばかりの頃、幽霊が出るという噂を耳にしました。
トーニャ:
幽霊…!?
ヴォジャニーツァ:
そんな話もあったわね…けど、所詮は噂でしょ。あたしたちはここで長年働いてきたけど、ヘンなことは何も起きなかったわよ?
旅人:
(まさか、幽霊の話題になるなんて…もしパイモンがいたら、怖がって俺の後ろに隠れてただろうな。)
ヴォジャニーツァ:
それじゃ、視点を変えてもう一度手がかりを探してみるのはどう?きっと、新たな発見があるはず。
バレリー:
そうですね…犯人を捕らえるのも幽霊を捕らえるのも、俺にとっては同じことです。皆さんは引き続き慎重に行動してください。俺は遺体を同じ部屋に移しておきます。
劇場内にある手がかりを調査する
アリョーシャ:
ん?いいところに来たな、旅人。これを見てくれ。
ミティヤ:
アリョーシャが見つけたんだが、お前の意見も聞いてみたい。これはおそらく…調査報告書だろう。ちょうど、さっき話に出た幽霊と関係あるみたいだぞ。
旅人:
(調査報告書?ずいぶん年季が入ってるみたい。この署名はスメール人のものに見えるけど…スメールから来た調査員が書いたのかな?)
アリョーシャ:
劇場の責任者は、わざわざ調査員を雇ってこの件を調べてたようだが、この報告書は誰の目にも触れなかったらしい。
ミティヤ:
責任者は幽霊に危険性があるかどうかを知りたかったようだが、それと同時に、噂が広まって劇場の客足に影響が出るのを恐れたんだろう。
ミティヤ:
重要なのは…幽霊騒動は事実で、その原因は地脈の流れの滞りにある、ということだな…まさか、今回の調査方針は正しかったのか?
旅人:
(地脈に問題が生じるのは、もはや珍しいことじゃない気がする。確かに、魂に関わる問題を引き起こすこともあるし…)
旅人:
(でも、本当に今回の事件と関係あるのかな?)
ミティヤ:
それと、報告書の最後に書かれている「天の使い文明」や、「地脈改造」といった言葉も引っかかるが…
ミティヤ:
完全に僕の専門外だな…さっぱり分からない。
ミティヤ:
おっと、報告書からメモが…お前の足元に行ったぞ。
旅人:
なになに…
メモに書かれた文字:
「死」はすぐそばに。
ミティヤ:
なんだか気になるな…報告書に挟まってたということは、それを書いたやつが残したメモだろう。
ミティヤ:
「『死』はすぐそばに」…僕たちの現状を示唆しているのか?
ミティヤ:
だが、報告書はずっと昔に書かれたものだろう?一体どうやってこんな予言めいたことを…
アリョーシャ:
事態は想像以上に複雑なようだ。
ミティヤ:
それにしても妙だな…報告書とメモ、それぞれの内容は矛盾しているぞ。
ミティヤ:
報告書には、劇場の幽霊騒ぎに実害はなく、現実には何の悪影響もないと書かれている。一方で、そのメモは警告のように思える…
ミティヤ:
「死」とは一体何を指しているんだ…?
ミティヤ:
ああ…言葉の解釈次第で、結論へ至る過程は大きく異なる。ひとまず、分析はここまでにしておくか。もっと情報が必要かもしれない。
劇場内にある手がかりを調査する
オデット:
バレリーさん、こちらをご覧ください…旅人さんも。
バレリー:
このノートは…何を記録するためのものですか?
オデット:
劇場の当直用ノートです。大抵、クリシュが使っていましたの。
オデット:
普通は、各公演のトラブルや観客数、退場時間などを記録するのですけれど…
オデット:
ええ。彼は、チケットの確認をする際、いつもこのノートを持っていました。
バレリー:
これがあれば、確かに今回の公演に関する多くの情報が手に入りますね。何か気になる点はありましたか?
オデット:
人数が…何度数え直しても、これに記録されているものと食い違っていますの。
オデット:
私たち…入場者数より、一人多いようです。
バレリー:
ノートの内容は間違いなく正確なのですか?不正入場や、何らかの事情があったということは?
オデット:
クリシュは真面目で仕事熱心でしたから、ミスをすることはほぼ皆無でした。
オデット:
それに…今回はプレビュー公演なので元々観客は少なく、チケットの販売数も厳しく制限されていましたもの。彼にとって、管理は容易だったはずです。
バレリー:
ですが、俺たちのチケットは入場の際に回収されてしまいましたので、あらためて確認することはできません。
オデット:
ええ…この劇場は、チケットを再利用していますから。終演前に観客が外に出ることはめったにないので、確認の際に回収するのです。
オデット:
ええ。けれどこの人数の誤差は、今の私たちにとって大きな手がかりになると思います。
バレリー:
どこからともなく一人増えた、ということですか…
劇場内にある手がかりを調査する
旅人:
トーニャ?何か見つかった?
トーニャ:
ううん、まだなにも。えっと…心霊現象の手がかりを探すんだよね?あなたと一緒に探したほうがいいかなって…
旅人:
これは手書きのよく分からないノートだけど…一緒に見る?
トーニャ:
この見た目のノートなら…怖いことは書いてなさそうだね…
トーニャ:
うん、一緒に見よう。
旅人:
(これはヴォジャニーツァのノートみたい…)
トーニャ:
うーん…こんなことしていいのかな?なんだかうっかり他人の秘密を覗き見しちゃったような…
トーニャ:
お父さんとお母さんに向けて書いたのかな?でも、どうして手紙じゃなくてノートに書いてるんだろう?
ヴォジャニーツァ:
それは、彼女の両親はかつてスネージナヤの女皇に追放された水の精の貴族で、どんな配達員もたどり着けない新たな領地に行ってしまったからよ。
トーニャ:
ごめんなさい!
ヴォジャニーツァ:
いいわ、気にしないで。ちゃんとしまっておかなかったあたしの落ち度よ。手がかりを探すなら、隅々までしっかり探さないとね。あなたたちは何も悪くないわ。
ヴォジャニーツァ:
さあ、ノートを渡して。この部屋はあたしが調べるから、あなたたちは他の部屋をお願いするわ。
ヴォジャニーツァ:
ああああああああぁ——ッ!!どうしてこれを忘れていたのよ!このページも、このページも、それにこのページも!恥ずかしすぎるわ!
ヴォジャニーツァ:
ああああああぁ——ッ!!
劇場のホールに戻って集合する
ミティヤ:
——状況と情報を整理して考えてみれば、ありえなくはないだろう?ごく自然な推理じゃないか。
バレリー:
それは貴方の研究者ならではの発想ではありませんか?あるいは、俺がいまだに「殺人事件の捜査」という視点で見てしまうため、その意見を受け入れられないだけかもしれませんが。
ミティヤ:
はぁ…確かに、少し非現実的だったか?分かった、ひとまず推測の域に留めておこう。そっちの言うことにも一理あるしな。とりあえず、お前が考えている方向性で推理を進めるか。
バレリー:
ええ、そろそろ他の皆さんの調査も一段落ついた頃でしょうか。ようやく有益な手がかりが手に入ったことですし、一旦集合してもらいましょう。
みんなは再び舞台の上に集合し、調査で得た情報を交換した…
バレリー:
…さて、情報は出揃いましたね。
バレリー:
まずは俺の推測から。当直ノートが示す手がかりから判断するに、この中にいる「増えた一人」が犯人である可能性が高いです。
バレリー:
普通にチケットを購入して入場すれば、身元が割れるリスクが高まりますからね。
バレリー:
ですから、犯人は事前に劇場内に潜伏していたか、何らかの方法でスタッフの目を盗んで俺たちの中に紛れ込み、殺人事件を起こす機会をうかがっていたはずです。
ヴォジャニーツァ:
それでは、もう一つの手がかりである「調査報告のメモ」については、どう思っているの?
バレリー:
おそらく犯人の悪趣味な悪戯でしょう。心の歪んだ殺人者を何人か知っていますが、彼らは往々にしてこういった小細工を好むのです。
ヴォジャニーツァ:
そうなるとやっぱり、劇場の幽霊騒ぎは何の関係もないのね…
シュラム:
なるほどな。どこからともなく紛れ込んだ観客が、ただ公演を観に来ただけなわけがない。
旅人:
(そんなに単純な話なのかな…)
チュグノフ:
つまり、その「増えた一人」を捕まえれば、問題は解決するということだな?
チュグノフ:
劇場側は、私が今回のプレビュー公演を観に来ることを知っていただろう?私はそんな不正入場をする不届き者ではないからな。
ヴォジャニーツァ:
そうね、あなたはありとあらゆる手を使ってチケットを入手したと聞いているわ。なんでも、あと少しで入口の地べたに転がって駄々をこねる勢いだったとか。
チュグノフ:
だ、誰がそんなみっともない真似をするか!
ヴォジャニーツァ:
こんな質問に意味はないでしょうけど、一応聞いておきましょう…チケットを持たずに入場した人はいる?
一同:
……
ヴォジャニーツァ:
うーん…自分から名乗り出るのを期待するのは、さすがに考えが甘かったわね…
ミティヤ:
「レーレク」が自ら「レーレク」だと認めるような奇跡は、そう何度も起きることじゃない。
今ある手がかりを分析する
旅人:
シュラム、君は本当にチケットを使って入場したの?
シュラム:
ん?なんだ?どうしてオレにだけそんなことを聞く?そんなに怪しく見えるか?
アリョーシャ:
あんたが怪しいというより、他の連中には信用できる理由があるだけだ。
シュラム:
ったく…もう二日近く一緒にいるんだ。いい加減、オレがどんな性格かくらい分かってくれ。こんなに真面目なやつが、不正入場すると思うか?
ヴォジャニーツァ:
あたしもあなたを信じたいけど…この場には、あなたを知る人も、身元を証明できる人もいないのよ…
ヴォジャニーツァ:
そういえば、昨夜…水の精のお嬢様と知り合いだから、「素顔」を聴き取れると言っていたわよね。
ヴォジャニーツァ:
あたしの知る限り、この街に水の精は数えるほどしか残っていないわ。その知り合いのことを話してくれるかしら?おそらくあたしも知っているはずよ。
ヴォジャニーツァ:
…それに、みんながあなたのことをよく知るきっかけにもなるでしょう。
シュラム:
いや…それは…ハハハッ…その…
チュグノフ:
どうした?恥ずかしがっているのか?ヘラヘラするな、気持ち悪いぞ。状況を考えろ…
シュラム:
おい、言いすぎだろ!…分かった、白状するぜ。実は、その水の精のお嬢様と付き合っててな…
シュラム:
元々は単なる雇われのボディガードだったのに、ひょんなことからお嬢様との間に恋の火花がはじけちまってな。ハハハッ、こんな夢みたいな幸運がオレに訪れるとは思わなかったぜ。
オデット:
要点だけ話してくださるかしら。
シュラム:
分かった分かった。だが彼女の名前を明かすのは、ちょっとな…ほら、今は人間と水の精の関係が悪い時期だろ…
シュラム:
オレが守ってるとはいえ…もし彼女が人間と付き合ってることがバレたら、きっとフェイ側からも人間側からも圧力を受けちまう。
ミティヤ:
なんだと…お前…ちょっと待て、そんなはずは…
チュグノフ:
シュ、シュラム…何を言っているんだ…?
シュラム:
ん?なんだその反応は。何か変なことを言ったか?
ヴォジャニーツァ:
「関係が悪い時期」…「フェイ側」…「人間側」…ですって?
シュラム:
お、おう…内戦の話だぞ。人間とフェイは戦争中だろ?
バレリー:
俺の知る限り…スネージナヤにおける直近の大規模な内戦は、約四百年以上前に女皇陛下の即位直後、まだ統治が不安定だった頃に起きたものです。
シュラム:
四百年以上前…だと?
旅人:
(どういうこと?シュラムは「過去」の人間なの?)
バレリー:
ミティヤ様のおっしゃる通りでした…あの荒唐無稽な推理は…正しかったようです。
ミティヤ:
正直、僕も驚いている…自分でも半信半疑だったからな。
アリョーシャ:
誰か説明してくれ、状況が把握できない。
ミティヤ:
旅人は…なんとなく理解できてきたようだな?
ミティヤ:
よし、これで大体はっきりしたな。「調査報告書」によると、地脈の流れが滞っているせいで、魂は劇場をさまよい続けることになった。
ミティヤ:
そしてシュラムこそが、ずっと昔に劇場で亡くなった人物であり…「増えた一人」のはずだ。
ミティヤ:
メモに書かれていた「『死』はすぐそばに」という言葉だが、あれは…「死者」、つまり「すでに死んでいる人間」を指しているんだろう。
オデット:
死者…すでに死んでいる人間…
ミティヤ:
僕たちの中に死者が紛れ込んでいて、「増えた一人」は過去の亡霊だったというわけだ。
シュラム:
オレが死者だと?ったく…冗談きついぜ、兄ちゃん。絶対に何かの間違いだ。
シュラム:
それにオレが死者かどうかはともかく、この二日間、誓って殺しなんてやってねぇ!
ヴォジャニーツァ:
ええ。シュラムが死者だとしても…「調査報告書」には、劇場内の魂は現実に影響を与えないから無害だと書いてあったのでしょう?
ミティヤ:
ああ…だが、問題を引き起こしているのが「魂」ではなく、「地脈」そのものだとしたら?
ミティヤ:
地脈には魂を強く引き寄せ、呑み込む力がある。もし地脈が魂を追い続ける「ブラックホール」のようなもので、それに呑み込まれまいと逃げ続ける魂がいたとしたら…
旅人:
(あれ?その例えに似た状況…どこかで体験した気がする。)
ミティヤ:
「ブラックホール」は目標を達成できなければ、誤って無関係の魂を呑み込もうとするかもしれない。もちろん、これはあくまで推測だ。
バレリー:
亡くなられた四名は死因すら判明していません。貴方の言うように、彼らの魂が地脈に呑み込まれたと仮定するならば…ある程度、筋は通ります。
ヴォジャニーツァ:
確かに、すべての疑問に説明がつきそうだけど…本当に、これが事件の真相なの…?
旅人:
(ミティヤの独断的な推論に頼ってる部分が多い気がする。確実な証拠がない推測も含まれてるし…)
旅人:
(でも、現時点ではこれ以上に可能性のある仮説は立てられそうにない…)
オデット:
それなら、どうしてシュラムは自分が「死者」だと気づかなかったのでしょう?二、三日も一緒に過ごして、ご自身が置かれている状況を把握できなかったのかしら?
ミティヤ:
劇場の中を何百年もさまよっていた魂なら、自分の存在そのものや、存在理由を疑うことはないんだろう。それが当然のことだと感じているんじゃないか?
シュラム:
…う…うっ…ぐぐ…っ…
シュラム:
天才坊やの言う通りかもしれないな…
シュラム:
うっ…頭が割れそうなぐらい痛いが…何か、思い出せた気がするぞ…
シュラム:
「死」に関する記憶は思い出したくなくて、忘れようとしていたんだな…
アリョーシャ:
…一番つらい記憶だろうからな。
シュラム:
あの日、オレはお嬢様とこっそり抜け出して、劇場のチケットを買って公演を観に行ったんだ。あまり興味はなかったが、彼女と一緒にいられるだけで幸せだった。
シュラム:
すると突然、大勢の人間が劇場に押し入ってきて、劇場内の水の精は観客もキャストも関係なく、全員出てこいと怒鳴り散らしてな…
シュラム:
さすがのオレでも、人間とフェイの関係がさらに悪化したんだと察した。もはや過激派は、戦争とは無関係な水の精さえも見逃さなくなっていたんだ。
シュラム:
だが、オレならこの場を切り抜けられると思い、上着を脱いでお嬢様に被せ、どさくさに紛れてこっそり逃げようとしたんだが…
シュラム:
結局あっさり捕まっちまって…裏切り者と罵られた。
シュラム:
そうなると当然、相手が何人いようと、お嬢様が逃げられるよう全力を尽くすしかない。ボディガードとして…いや、恋人としてな。
シュラム:
……
チュグノフ:
もう十分だ。それ以上思い出さなくていい。
シュラム:
なんていうか…はぁ…やっぱり、少し受け入れがたいぜ。オレ…本当に死んでるんだよな?
シュラム:
みんな…悪かったな。
シュラム:
自分が死んでるなんて思ってもなかったとはいえ…結果的にお前たちを巻き込んじまった…ハハッ。もしオレがあの四人に「死」をもたらしたってんなら、どんな罰でも受け入れる。
トーニャ:
シュラムさん…
シュラム:
もうこれ以上迷惑はかけられない。どうすべきかは腹が決まってる——オレは何百年もさまよってたんだよな?
シュラム:
じゃあ、そろそろ行くべき場所に行くとするぜ…「死」を連れてな。去り際くらい、カッコつけさせてくれよ。
バレリー:
シュラムさん、他の解決策を考える余地はあると思いますが…
シュラム:
兄ちゃんよ、オレが「死者」であることは確かな事実なんだ。当然、「死」を受け入れるべきだし、「死に方」なんてどうでもいい。それとも、軍の規則に「死者は死ぬな」とでも書いてあるのか?
バレリー:
いいえ…軍は関係ありません。俺個人がそう望むのです。
シュラム:
…もうオレのことは気にしないでくれ、兄ちゃん。ああそうだ、水の精の嬢ちゃん。恋人の名前はリディア…リディア・オゼロワというんだが、彼女がその後どうなったか、知らないか?
ヴォジャニーツァ:
オゼロワ…オゼロワおばさんのことね。みんなからはそう呼ばれているわ。たくさん子供がいる、とても優しいおばさんよ。
シュラム:
ハハッ…よかった、生きてたんだな。たくさんの子供か、最高じゃないか…ああ…いつまでもオレのことを想って嫁にいかないなんてこと、ありえないよな?ハハ…
シュラム:
幸せに過ごしてるなら、それで十分だ。はぁ、オレはもう死んじまったんだからどうしようもないか。彼女のことが気がかりで長い間ここをさまよってたが…これでもう、未練はない。
シュラム:
見送りはいらねぇ。お前たちと過ごしたこの数日、楽しかったぞ…来世でまた会おうぜ。
チュグノフ:
ああ…またな。
トーニャ:
シュラムさんはもともと死んでるってわかってても…すごく悲しい。
ミティヤ:
「死」という問題は…どんな答えを出そうと、残酷であることに変わりない…
ヴォジャニーツァ:
あの頃のフェイと人間との対立は、そこまで激しかったのね…あたしはまだ幼かったから、当時のことをあまり覚えていないの。そんなにも大勢の一般人が巻き込まれていたなんて…
ヴォジャニーツァ:
けど、双方の衝突の詳細な記録は、ほとんど現存していないわ。
ヴォジャニーツァ:
人々が知っているのは、女皇陛下がファデュイという組織を作り、強引にフェイの貴族の大半を追放し、強大な力で人間を鎮圧したということくらい。
バレリー:
女皇陛下は自らすべての罪を背負われたのでしょう…対立を緩和し、双方の矛先をご自身に向けさせる道を選ばれました。
バレリー:
だからこそ、あれほど凄惨な内戦があったにもかかわらず、人間とフェイの間には大きな遺恨が残ることもなく、この数百年間は概ね平和に共存できているのです。
ヴォジャニーツァ:
つまり、陛下がフェイを追放したのは…街で暮らすフェイを守るためでもあったの?みんなに憎まれることと引き換えに、平和を手にされたのね…
バレリー:
とはいえ…陛下は民衆からの恨みなど気にも留められていないでしょう。そもそも、心から憎んでいる民はそう多くいません。
ヴォジャニーツァ:
あたしは、何も分かっていなかった…
バレリー:
さて、ミティヤ様の推測が正しければ、「死者」の問題は解決し、事態は一段落ついたと言えますね。少し休憩しましょう。
チュグノフ:
はあ…それにしても、このひどい天気はまだ続くのか…
ひとまず部屋に戻って休む
旅人:
(とりあえず、ひと休みできそう。あとは吹雪がやむのを待つだけ…)
旅人:
(この数日一緒に過ごしたシュラムが、まさか何百年も前から劇場にいた亡霊…いや、「死者」だったなんて…本当に変な感じだ。)
オデット:
コンコンコン。
旅人:
……
オデット:
コンコンコン。
旅人:
それは…ノックのつもり?開いてるよ、オデット。
オデット:
一種の自己暗示だとでも思ってください。「他人の部屋に入る」という行為において、ノックをするのが「オデット」、しないのが「レーレク」ですわ。
オデット:
ありがとうございます。
旅人:
それで…何かあった?一人で俺のところに来るなんて…
オデット:
ヴォジャニーツァが言っていましたわね。あなたは私の正体を知っていたと。
オデット:
けれど、誰が「レーレク」なのか議論した時、私の立場を心配して、黙っていてくださいました。
オデット:
心より感謝いたしますわ。
旅人:
そんな…俺のほうこそ…稲妻での「淑女」の件を責めずにいてくれて、ありがとう。
オデット:
実は、もう一つ話が…あの時の私の素性のように、ある人物の秘密をお話ししたいのです…
オデット:
これは、あなたに相談すべきだと思いました。
オデット:
ミティヤさんについてですが…
オデット:
私は先日…彼の「死」を目撃しましたの。
旅人:
ええっ!?
オデット:
「レーレク」としての私が、厳冬計画を阻止しようとしていたことはご存じですわね?
オデット:
「厳冬計画」に関わる例の実験…その裏にいる技術リーダーがミティヤさんだと知った時、私は真っ先に彼を探し出し、計画から手を引くよう脅迫するつもりでした。
オデット:
彼とは劇場で頻繁に顔を合わせますが、劇場内で手を下すとなると、私の正体が露見するリスクが大きすぎると考え…
オデット:
オルジェイナヤ・パラタに潜入し、彼の実験室を突き止めることにしましたの。そのほうが、脅迫の効果もより高まりますでしょう?
オデット:
ええ…と言っても、偶然が重なった結果でもあります。それに、私もファデュイですから、あの建物の構造はある程度把握しておりました。
オデット:
ともかく、私がミティヤさんの実験室に侵入した時には、彼は…すでに息絶えているように見えたのです。
オデット:
呼吸や脈拍も確認しましたが、確実にすべての生体反応が失われていました。
オデット:
私はてっきり、「厳冬計画」の阻止を企む他の者が、私より先に手荒な手段で手を下したのだと思い…急いでその場を離れましたが…
旅人:
ここで過ごした最初の夜、ずっとミティヤを警戒してたのは…そういう理由だったんだね。
オデット:
ええ。今回の公演中、観客席に座る彼に気づいた時は、危うく表情を崩してしまうところでした…
オデット:
なにせ私からしてみれば、彼は死から蘇った不可解な存在ですもの。その後、殺人事件が起きたことで事態が複雑化し、注意をそらしてしまいましたが…
オデット:
先ほど…ミティヤさん自身が、私たちの中に「死者」が紛れ込んでいるとおっしゃったことで、これ以上この問題を無視し続けることはできなくなりました。
旅人:
でも、もしこのことをみんなに打ち明けたら…「レーレク」が疑われた時みたいに、ミティヤが標的にされるって思ったんだよね。
オデット:
ええ。もしかしたら、何か事情があるのかもしれませんし…
オデット:
それに、あの時すでに「死者」はシュラムだということが分かっていましたから…「増えた一人」が彼だということは明白でしたもの。
旅人:
まさか他の「死者」候補がいたなんて…
旅人:
君の気持ちは分かるよ。あの話し合いはたくさんの情報が錯綜してたから、急にそんな話を持ち出したら、みんなはもっと混乱してたはず。
オデット:
あなたは、この件についてどうお考えでしょうか?
旅人:
まず確認したいんだけど、君がミティヤの「死」を目撃したのは、大体いつ頃なの?
オデット:
七日前の午後です。
旅人:
七日前…思ってたより前のことだね。実は、つい数日前、レストランでミティヤに会ってるんだ。間違いなく、君が彼の死を目撃した後だよ。
旅人:
あの日のミティヤの振る舞いに妙な点はなかったはず。ヴォジャニーツァとはたくさん話してたし、バレリーからは逃げようとしてた。
オデット:
つまり、その日の時点でミティヤさんはすでに「生きていた」ということですわね…けれど、私の勘違いだとはどうしても思えませんの…
旅人:
それに、今日得た手がかりからすると、「死者」が存在するのは劇場の地脈に異常があるせいだけど…
旅人:
ミティヤは、オルジェイナヤ・パラタの実験室で死んでたんだよね?劇場周辺の地脈が、そんな遠くまで影響を及ぼすとは思えないよ。
オデット:
おっしゃる通りです。確かに、それでは「死者」となる条件は満たされません。
旅人:
そう考えると、ミティヤが「死者」である可能性は限りなく低いはず。オルジェイナヤ・パラタで死んだと思ったのは、君の気のせいじゃないかな。あるいは…
オデット:
あるいは…?
旅人:
本当に「蘇った」のかも。
オデット:
…ええ、そうだと思います。では、この情報を皆さんにお話しするのは…
ミティヤ:
なんだ?一対一のファンミーティングか?
オデット:
……
ミティヤ:
整理券はどこでもらえるんだ?
オデット:
…そんな物はありません。
ミティヤ:
あははっ…ちょっとみんなの様子を見て回っているんだ。少しでも悲しげな雰囲気を和らげたいしな。もしお腹が空いてるなら、ヴォジャニーツァさんが食べ物を配ってるぞ。
劇場の舞台に集合する
吹雪は未だ吹き荒れており、気づけばまた夜を迎えていた。
チュグノフ:
一体いつまで降り続けるんだ。まさか、本当にスネージナヤに現れたというあの「魔物」と関係あるのか?
バレリー:
仮にそれが事実だとしたら、むしろ安心できますね。すでに女皇陛下自らが討伐に出陣なされましたから、俺たちはただ凱旋を待てばよいのです。
チュグノフ:
おい…死後も寒さは感じると思うか?シュラムのやつ、この寒さに震えてなければいいんだが…コートの一枚でも持たせてやるべきだったか…
アリョーシャ:
「死」は元々冷たいものだ。吹雪がヤツを受け入れてくれる。
ヴォジャニーツァ:
あたしはシュラムのことを忘れない。あいつの行く末が平穏であることを祈るわ…ラムパーナやクリシュは、あいつのせいで死んだわけではないの…
ヴォジャニーツァ:
そう考えると…なんだか、九死に一生を得たような気分になるわね…
ヴォジャニーツァ:
ただ、ここを出た後、彼らの家族にどう説明すればいいのよ…
トーニャ:
コホッ…コホッ…
チュグノフ:
……
チュグノフ:
…大丈夫か?ほら、新品だから安心して使うといい。
トーニャ:
…コホッ、コホッ…ありがとう…
ヴォジャニーツァ:
あなたにしては優しいじゃない。今朝、トーニャに助けられたから?案外、義理堅いのね。
アリョーシャ:
トーニャが割って入らなければ、今頃大怪我をしてただろうしな。
バレリー:
はぁ…手を出すつもりはないと言ったはずですが…
チュグノフ:
…フン、うるさいやつらだ…
チュグノフ:
…あんたらはみんな、私を嫌っていると思っていたからな…私をかばってくれたのが嬉しかったんだ…ありがとう。
トーニャ:
あ…いえ、お礼なんていいんです。私もあなたにひどいことを言っちゃいましたし…
チュグノフ:
ずっと言い出しにくかったんだが、その…君は私の娘に本当によく似ているんだ。
チュグノフ:
誰に対してもとても優しいのに、私にだけ遠慮のない物言いで…それなのに、私と妻が喧嘩した時は、いつも私の味方をしてくれて…
チュグノフ:
特に、まだ小さかった頃なんて一緒に出かけるたびに…
トーニャ:
コホッ…コホッ…
チュグノフ:
おっと大丈夫か、ゆっくり落ち着いて…いや、待った…トーニャ、その咳はいつから続いているんだ?
トーニャ:
コホッコホッ…覚えてないけど…ずっと前から…コホッコホッ、心配しないでください、平気ですから。
チュグノフ:
普段は薬を飲んでいるのか?
トーニャ:
飲んでます。本当に大丈夫です、お兄ちゃんがフロストフラワーの葉っぱを煎じて飲ませてくれると、すぐに良くなりますから。それを飲めばずっと楽になるんですよ。
チュグノフ:
……
チュグノフ:
…そうか…それならいいんだ。
バレリー:
そろそろ就寝の準備をしましょう。「死者」はすでに去りました、今夜はもう不測の事態は起きないはずです。
バレリー:
とはいえ万が一に備えて、今夜は俺が見張ります。
オデット:
交代は必要ありませんの?私もできますわよ。
バレリー:
ご心配なく。夕方に少し仮眠を取ったので、万全の状態です。この二日間、皆さんも気を張り詰めっぱなしだったでしょうから、今夜はゆっくり休んでください。
旅人:
(本当に長い一日だった…この劇場で、こんなに複雑な出来事に遭遇するなんて…)
旅人:
(バレリーの言う通り、今は休んでリラックスしたい…このままじゃ、悪夢を見てしまいそうだ…)
状況を把握する
チュグノフ:
ああ…目を覚ましたぞ!「大男」さん、早く来てくれ!
バレリー:
「大男」ではなく、「扉」とお呼びください。「黒い霧」が来ます、急ぎましょう。
チュグノフ:
おい、歩けるか?上に向かう最中に魔物に襲われたんだが、「扉」さんが私たちを守ってくれてな。
チュグノフ:
どこから現れたのかは分からないし、口数も少ないが…魔物相手には容赦ないようだ。
チュグノフ:
しまった、いつの間にか「黒い霧」がまた迫ってきているぞ。あんたも急げ!
チュグノフと会話する
チュグノフ:
あぁ、疲れた…「黒い霧」はまだ押し寄せてくるのか…はぁ…
チュグノフ:
おい、見ろ!下から魔物がたくさん来ているぞ!「黒い霧」から出てきたのか?
チュグノフ:
まずい!あいつら、凄い速さで向かってきているじゃないか!早く逃げるぞ、このままじゃ追いつかれる!
バレリー:
……
チュグノフ:
「扉」さん!何やってるんだ、早く行くぞ!やつらが上がってきてるのが見えないのか!
バレリー:
見つけました。
バレリー:
これが、俺の「扉」です。
チュグノフ:
な、何を言っているんだ?ここに残るつもりなのか?
バレリー:
これが「扉」の責務ですので。
旅人:
「扉」…そういう意味だったんだね…
チュグノフ:
ダメだ!私たちを助けてくれたあんたを、こんなところに置き去りにできるか!
バレリー:
先に進んでください。何もかもを永遠に「扉」の外に締め出すことはできません。さあ、早く。
チュグノフ:
だが…
チュグノフ:
…いや、あんたの言う通りだな。行くぞ、「扉」さんの犠牲を無駄にするなよ!
チュグノフ:
「黒い霧」は動かなくなったみたいだが…魔物たちも、「扉」さんもいなくなってしまった。
チュグノフ:
今思うと…あれは全部、幻覚だったんじゃないか?
チュグノフ:
気を張りすぎて、扉を人間だと勘違いしたんだろうか?
旅人:
でも、俺も「扉」のことは覚えてる。
チュグノフ:
そうか…いくらなんでも、二人同時に同じ幻覚を見るなんてありえないな。
チュグノフ:
どうした、眠いのか?ちょうどいい、しばらくは安全だろうし少し休むか…

死魂の夜想曲
問題は解決したように思えたが、死亡事件は依然として続いている。何か見落としているのだろうか?生きて劇場から脱出すべく、引き続き全力を尽くそう…
周囲を確認する
旅人:
(…今、何時だろう?もう朝かな。なんだか悪い夢を見てた気がする…)
旅人:
(みんなまだ寝てるみたいだ…この二日間ほんと大変だったし、無理もないか。起きてるのは見張りのバレリーだけかな…)
旅人:
(バレリー…?)
バレリーの様子を確認する
傍白:
その姿はいつもと変わらず、あらゆる不安を預けてしまいたくなるほど落ち着いている。
傍白:
でも、そこだけ時間が静止していた——まるで、神から休息を与えられたかのように。
旅人:
み…みんな、起きて。
ミティヤ:
やはり…これまでと同じで、死因は特定できないな。
ミティヤ:
今まで迷惑ばかりかけてすまなかった、バレリー。どうか安らかに眠ってくれ。
ミティヤ:
もうあの駆け引きを味わえないと思うと、自由すらも退屈に感じてしまいそうだ…友よ。
オデット:
トーニャは?あの子は無事ですの?
ヴォジャニーツァ:
様子を見てきたけど、大丈夫そうだったわ。ただこの二日間の疲れに加え、病気のこともあるから、しばらく寝かせておいてあげましょう。
オデット:
ということは、昨晩亡くなったのはバレリーさんだけ、ということですわね。
アリョーシャ:
誰も起こさず、見張り中のバレリーを殺すなんて不可能だ。それは断言できる。
ヴォジャニーツァ:
忌々しいのだわ。これでは昨日とまったく同じね…すぐそばにいる「死者」を見つけたっていうのに。
ミティヤ:
いや、同じじゃない。犠牲者が二人から一人に減っている。もしかすると…
旅人:
毎晩死ぬ人数と、紛れてる「死者」の人数が同じ…って言いたいんだよね?
ミティヤ:
ああ。昨日僕たちは「死者」であるシュラムを見つけた。そして彼が劇場を去った夜、犠牲者が二人から一人に減った。
ミティヤ:
つまり…僕たちの中に、もう一人「死者」がいるということだ。
ヴォジャニーツァ:
まだ「死者」がいるの?でもチケットの状況を考えたら、増えたのは一人だけでしょ?今はもう数が合っているのに…
ミティヤ:
一人増えることに比べれば、一人減るのはそれほど不自然じゃない。例えば、チケットを見せて入場した後に出て行ったとか、吹雪がひどくなる前に帰宅したとか…
旅人:
(今ミティヤが言った可能性は、昨日オデットが話していた内容を思い出させる…)
旅人:
(ただ、あの時は「別の死者」なんて存在しないと思っていたから…)
旅人:
(くっ…昨日もっとこのことを突き詰めてれば、今回の悲劇を避けられたかもしれない…)
オデット:
ごめんなさい、私のせいです…手元にあった情報を軽視せず、もっと早く皆さんに話していれば…
旅人:
俺も、もっと気にするべきだった…
ヴォジャニーツァ:
二人とも…何か話してないことがあるの?
ミティヤ:
どうやら、僕たちの知らない重大な情報があるようだ。聞かせてくれ。
オデットは、自分がミティヤの「死」を目撃したこと、そして昨日の話を伝えた。
ミティヤ:
僕が…「死者」?
ミティヤ:
ああ…それはまたとんでもなく重大な情報だな…
旅人:
昨日話し合ったとき、やっぱりあり得ないと思って、いったん置いておくことにしたんだ。
ミティヤ:
ああ、その場に僕がいたとしても、きっと同じ結論を出していただろうし、あまり気にしないでくれ…どう考えても不可解だしな。
ミティヤ:
とりあえず、弁明させてもらおう。さっきオデットが言った午後のことを含め、少し振り返ってみたんだが…
ミティヤ:
僕に「死んだ」記憶はない。この点がシュラムと異なっている。
ヴォジャニーツァ:
ええ…あたしも数日前にミティヤに会っているし、彼が「死者」だとは思えないわ。
アリョーシャ:
ミティヤじゃないなら、誰なんだ?投票でもして決めるか?
ミティヤ:
唐突な質問で悪いが、旅人…お前はトーニャの兄さんと知り合いなんだよな?トーニャとは前にも会ったことがあるのか?
旅人:
いや、ないけど…それってつまり…
チュグノフ:
おい!どういうつもりだ!妙な憶測はよせ!
チュグノフ:
自分が疑われているからって、他のやつになすりつけるつもりか?
ミティヤ:
困るな、チュグノフさん。これは真っ当な話し合いだ。そうやって声を荒らげるのはやめてくれ。話し合うつもりがないなら黙っててもらえるか?
チュグノフ:
この…!ガキが…!
旅人:
(ミティヤが急にトーニャのことを聞いたのは…あの子を疑ってるから?)
旅人:
(たしかに年齢だけでトーニャだと思ったけど、まさか…)
チュグノフ:
…ただ単に、あんたの疑いは筋違いだって言いたいだけだ。トーニャが死者なわけない。
チュグノフ:
私は前にトーニャを見たことがある。あの子は…執行官の妹だろう?「公子」ってやつの。
ミティヤ:
へえ?それは本当か?
旅人:
(この劇場で、トーニャの兄が「公子」だってことを話した覚えはない。じゃあ、チュグノフは本当に会ったことがあるのかも。)
ミティヤ:
チュグノフの証言が正しいなら、トーニャも候補から外れる。となると、やっぱり「死者」がいるとは考えにくい…
ミティヤ:
……
ミティヤ:
オデット、すまないがもう一度確認させてくれ。僕が「死んでいた」時のことについて…
オデット:
ええ、構いませんわ。
ミティヤ:
どんなに記憶を掘り起こしても、やっぱり「死んだ」覚えはない。ただ、ふと思い出したことがある…
ミティヤ:
ヴォジャニーツァさん、この前一緒に食事した時「研究員の一時的な記憶喪失」について話したのを覚えているか?
ヴォジャニーツァ:
ええ、なんとなくなら。そのせいで実験が進まなくなったとか、原因は研究員たちのストレスにあるんじゃないかとか、そう言ってたっけ。
ミティヤ:
ああ。死んだ記憶こそないが、当時、僕にも記憶喪失のような症状が出ている。
ミティヤ:
あの日の午後の記憶が、一部消えているんだ。
オデット:
あなたが失ったというその記憶は…
ミティヤ:
どうして今までこのことに気づかなかったんだ…人間は必ずしも自分の「死」を自覚できるとは限らない。
オデット:
気づかないうちに殺されたり、眠っている間に亡くなっていたり…そういったケースのことを言っているのでしょうか?
ミティヤ:
となると、研究員たちの記憶喪失はもしかすると…
ミティヤ:
オデット、新たな視点を与えてくれてありがとう。このところ僕を悩ませていた問題も、ようやく解決の糸口が見えた。
ミティヤ:
よし。今日は僕がここを去ろう。
ヴォジャニーツァ:
「僕が去ろう」?ちょ、ちょっと待って。もっとよく考えたほうがいいわ。一歩間違えたら、命を落とすことになるのよ?
チュグノフ:
お、おい…もう弁明は終わりってことか?そんなあっさり決めちまうなんて…
ミティヤ:
ああ。それに理由はさっき言ったことだけじゃない。よくよく思い返してみると…
ミティヤ:
オデットの公演中、客席で研究に関するいいアイデアを思いついたはずなんだが…その瞬間、思考がぶつりと途切れているんだ。
ミティヤ:
どうしても思い出せないし、記録も残せていない…おそらく、そのタイミングでまた「一時的な記憶喪失」が起きたんだろうな。
ヴォジャニーツァ:
つまりそれって、記憶喪失になるたびにあなたは「死んでいる」って言うの?
ヴォジャニーツァ:
そんなのありえないのだわ。人が何度も死ぬわけないでしょう?
ミティヤ:
僕はオデットさんの証言を信じる。記憶が途切れている間、僕は死、あるいはそれに近い状態にあったんだ。
ミティヤ:
そして、この劇場にいる間にも似たようなことが起きた。結果、僕は劇場の地脈の影響により「死者」になったんだ…筋は通っているだろう?
ヴォジャニーツァ:
で…でも…
ミティヤ:
もう他に「死者」に関する手がかりはない。科学者である僕に、この実験をやらせてくれ。
ミティヤ:
安心しろ、事態はそこまで悪くない。もし僕が本当に「死者」なら、劇場から出ることは救いになる。
ミティヤ:
それに、僕がまだ生きているとしても大丈夫だ。だって最近、僕は「生き返った」ことがあるんだろう?なら今回だって、生き返れるはずだ。
旅人:
(確かに、今できることはこれしかない…ミティヤがわざと軽く言ってるのは、みんなに後ろめたさを感じさせないためなんだろうな。)
ミティヤ:
研究者とはそもそも、実験という「賭け」を何度も行い、真実を掴もうとする人種だ。
ミティヤ:
「吹雪」、「地脈」、「死者」、「記憶喪失」…謎に包まれたまま何もできないのは、実に気分が悪い。
ミティヤ:
もし生き返ったら、その時は必ず真相を持ち帰る。だから待っててくれ。
夜の帳が降り、空気が重く静まり返る。最初の夜に比べ、人数は半分以下になっていた…
ヴォジャニーツァと会話する
トーニャ:
ミティヤさん…最期に会うこともできなかった…
ヴォジャニーツァ:
むしろ良かったかもしれないわ。別れの瞬間は決まって悲しいものだもの。
トーニャ:
私、お別れって嫌い。どうしていつも、そばにいる人はいなくなるの?ここでも、外でも…
ヴォジャニーツァ:
それは…あたしたちの最期が、もともと孤独なものだからでしょうね。
ヴォジャニーツァ:
よく考えてみれば…あたしたちが今こうして生きているのは、ただ運が良かったからに過ぎないわ。ここでは毎朝、誰もがそのまま目覚めない可能性があるのだから。
ヴォジャニーツァ:
でも、それは外にいても同じことなの…眠りにつくとき、再び目を開けられる保証なんて、どこにもないもの。
ヴォジャニーツァ:
だからもしここを出られたら、起きている時間をもっと大切にしたい…後悔を残さないように。
旅人:
(後悔を残さないように、か…)
旅人:
(ここ数日、胸の中にどうしようもない焦りが湧いてくる…)
トーニャ:
大丈夫?なんだかすごく辛そうだけど…
ヴォジャニーツァ:
何か悩みがあるのなら話してみて。もうここにはあたしたちしかいないし、遠慮なんていらないわよ?
旅人:
うん。アリョーシャとオデットは会ったことあるんだけど、俺にはパイモンっていう仲間がいるんだ。ただ最近、体調を崩してて…
ヴォジャニーツァ:
その子のことが心配なのね…ここに閉じ込められてもう何日も経つし、そう思うのも仕方がないことだわ。
旅人:
初めは、この世界の出来事に対して、自分はただの「傍観者」でしかないって思ってた。たぶん、俺が「降臨者」だからかな。
トーニャ:
「降臨者」?
旅人:
でも、パイモンがそばにいてくれたおかげで、だんだんとこの世界との繋がりが深まっていくのを感じたんだ。
旅人:
パイモンは、食いしん坊で寝ぼすけで遊びたがりだけど、最高のガイドでもある。パイモンのそんな「リアル」な姿が、俺にこの世界が「現実」なんだって教えてくれた。
旅人:
ここ数日、つい無意識に考えるんだ。「もしパイモンがいたら、こんな時なんて言うんだろう?」って。
旅人:
そしてそんな想像から戻ってくると、会話は先に進んでる。俺だけが、自分の世界に取り残されてるんだ。
旅人:
この孤独感を乗り越えようとはしてるけど…それでも、やっぱりパイモンに会いたい。俺にとってパイモンは、ある意味「この世界」そのものだから。
トーニャ:
きっとその子もあなたに会いたがってるはずだよ。もしかすると、その子にとってもあなたがこの世界のすべてかもしれないね。
ヴォジャニーツァ:
慰めになるかは分からないけど、水の精の多くがスネージナヤ・グラードを去った時、あたしも世界が空っぽになったみたいに感じたわ。
ヴォジャニーツァ:
周りの笑い声や喧噪が、どれも自分とは関係のないものに思えたの。だからあなたの気持ちはよく分かる。
ヴォジャニーツァ:
もしかすると、ひとは一生をかけて、愛する者がずっとそばにいるわけではないという事実を、受け入れていくのかもしれない。
ヴォジャニーツァ:
あたしたちにできるのは、共に過ごすその一瞬一瞬を大切にすること。
ヴォジャニーツァ:
ここを出られたら、すぐその子のところに帰ってあげて。後悔が残るような物語は、あたし好きじゃないの!
旅人:
うん…二人とも、ありがとう。
トーニャ:
ねえ、ヴォジャニーツァさん。なんでお別れが嫌いなのに、一族のみんなと一緒にここを離れなかったの?
ヴォジャニーツァ:
それがあたしの選択だったから。後悔したこともあったけど、今はもう吹っ切れているわ。
ヴォジャニーツァ:
前にも言ったように、歌声は水の精の「素顔」よ。水の精たちの感情はすべて、歌声に込められているの。
ヴォジャニーツァ:
みんなの歌声は、数百年もの間この劇場で響き続けた。そこに込められている喜びや悲しみといった感情は、まるでひとつひとつの物語を紡いでいるかのようだわ。
ヴォジャニーツァ:
でも読み手のいない物語は、存在していると言える?あたしが思うに、それは消えてしまったも同然。
ヴォジャニーツァ:
だから、あたしは残ったの。歌い手として、そして同時に聴き手として。そうすれば、あの歌声は永遠に消えないから。
トーニャ:
いつか、水の精の歌声を聴き取る方法を教えてくれる?私もシュラムさんみたいに、特別な聴き手になりたい。
ヴォジャニーツァ:
ふふ…ありがとう、トーニャ。あなたは最高のファンだわ。なら試しに一曲歌ってみるから、聴いてみてくれる?
トーニャ:
うん!私、がんばる!
ヴォジャニーツァ:
…♪…♪
トーニャ:
聴いたことない曲なのに…なんだか少し「懐かしい」感じがする。どうしてだろう?
ヴォジャニーツァ:
わあっ!すごい、トーニャ!才能があるのだわ!
ヴォジャニーツァ:
普通の人だと、せいぜい「楽しい」か「悲しい」かくらいしか分からないのに…そんなに具体的に聴き取れるなんて。
トーニャ:
えへへ!今のって何を歌った曲なの?
ヴォジャニーツァ:
実はこれ、劇場で一度も披露したことない曲なの。水の精の儀式で歌われるもので、通常の演目には入らないものなのよ。
ヴォジャニーツァ:
歌の意味は…「亡き家族や友が我々を見守ってくれますように。歌声を標に、夜の間だけでも帰ってきてくれますように」と、だいたいこんな感じだわ。
トーニャ:
そっか、亡くなった人に向けて歌うものだから、「懐かしさ」を感じたんだね…みんなに届くといいな。
ヴォジャニーツァ:
さあ、夜も更けてきたわ。トーニャもまだ治ってないし、そろそろ寝ましょう。見張りは…もう必要なさそうね。
トーニャ:
うん。あの…ヴォジャニーツァさん、眠るまで、さっきの歌をもう何回か歌ってくれる?
ヴォジャニーツァ:
もちろん。大ファンからの頼みは断らないのだわ。
ヴォジャニーツァ:
…♪…♪
旅人:
(今回の一件のことを考えると、この劇場を出たら、もうここには近づかなくなるだろうな。)
旅人:
(でも、それだともうヴォジャニーツァの歌声を聴けなくなる…そう思うと、名残惜しい。)
旅人:
(眠りにつくまで、この瞬間を大事にしないと。)
状況を把握する
旅人:
(ここは…どこだ?)
旅人:
(真っ暗で、頭が少しふらふらする…誰もいないのかな?)
旅人:
(ん?何の音…?)
ヴォジャニーツァ:
魂よ、守護の契りのもと、戻りたまえ…
旅人:
ゴホッ、ゴホッ…はぁ——はぁ——
旅人:
まだ、生きてる?今のは…
ヴォジャニーツァ:
質問ならあとで受け付けるわ!こっちに来てスイッチを入れて。そうすれば「光」が戻るから!
ヴォジャニーツァ:
ふぅ、これで安全だわ。さっきの霊体は「夜祷者」——光が強いときはあまり動かないけど、暗くなると途端に攻撃的になるの。
旅人:
そ、それって…「幽霊」?
ヴォジャニーツァ:
ええ、似たようなものよ。大変かもしれないけど、ここの明るさを保ってくれる?でないとあいつに殺されてしまうから。
ヴォジャニーツァ:
そうよ。生き返らせることができたからよかったけれど、あのまま死んでいたら面倒なことになっていたわ。
旅人:
「面倒」で片付く話じゃない気もするけど…えっと、君って人を生き返らせることができるんだ?
ヴォジャニーツァ:
うん。あたしはあなたの守護霊だから。
ヴォジャニーツァ:
あっ、初めましてだったわね。「魂返し」はあたしの特技なの。よろしくなのだわ。
旅人:
ありがとう…よろしく。
ヴォジャニーツァ:
さあ、のんびりしている暇はないわ。黒い霧に追いつかれないよう、夜祷者に気をつけながら進みましょう。
「黒い霧」から脱出する
ヴォジャニーツァ:
暗い…!このままじゃ間に合わないわ!急いで!
ヴォジャニーツァ:
旅人!!
ヴォジャニーツァ:
あたしがいる限り、ぜったいに死なせないのだわ…!
旅人:
はぁ——はぁ——
ヴォジャニーツァ:
また生き返ってくれて、よかったわ。
旅人:
うん、ありがとう。
ヴォジャニーツァ:
さあ、光が残っているうちに早く行って。
旅人:
えっ…君は?一緒に行かないの?
ヴォジャニーツァ:
ええ…あたしはもう「果てた」から。一緒には行けない。
ヴォジャニーツァ:
守護霊は「消耗品」なの。生き返らせる力は、そう何度も使えないのよ。
ヴォジャニーツァ:
見た目は何ともないけど、内はもう枯れている。じきに存在も薄れていくわ。
ヴォジャニーツァ:
あたしはもうここまでみたい。でも、黒い霧こそがあたしの還る場所。だから気にすることはないわ。
旅人:
どうしてもっと早く教えてくれなかったの?
ヴォジャニーツァ:
教えたところで、あたしとあなたの運命は変わらないもの。あなたの負担になるだけだわ…そうなれば守護霊の存在意義に反してしまう。
旅人:
でも…
ヴォジャニーツァ:
さあ、行って。夜祷者はもうすぐそこまで来ているわ。
旅人:
……
周囲を確認する
トーニャ:
うぅ…ぐすっ…ヴォジャニーツァさん!どうしてこんなことに、ヴォジャニーツァさん!
チュグノフ:
……
アリョーシャ:
死体は…確認するまでもないな。
傍白:
毎朝の訃報と降りかかる死に、次第に感覚が麻痺していく…
傍白:
劇場の空に水の精たちの悲歌が、ヴォジャニーツァに別れを告げるよう響いた気がした。
傍白:
その歌声は感情を揺さぶり、共鳴し、胸を締め付ける。
オデット:
そんな…どうして。嘘をつきましたわね、チュグノフ。分かっているのですから。
チュグノフ:
なっ…
チュグノフ:
何の根拠がある!それより自分のことは棚上げか!
チュグノフ:
最初、黒幕は「レーレク」だと疑われていた。そして毎回都合よく死を回避し、今も生き残っている。一番怪しいのはあんただろう!?
チュグノフ:
それとそっちの狩人もだ。いつもどこか他人事みたいな顔しやがって。そもそも劇場から出ないよう最初に言ったのはあんただったな。ここに閉じ込めて、何を企んでやがる?
アリョーシャ:
無差別に噛みつくのは、焦りとやましさの表れだ。
アリョーシャ:
だがその威勢のよさは、これまでとまるで別人に見える。最後の抵抗か?
チュグノフ:
ふん、脅しのつもりか?ああいいさ、この劇場で今日まで生き残ってきたんだ、今さら死を恐れるとでも?ほら、殺せるものなら殺してみろ!
旅人:
(終わらない悲劇のせいで、みんなもう限界がきてる…)
旅人:
(バレリーとミティヤがいない今、誰かが場をまとめないと…)
旅人:
(でもその前に、考えを整理しておこう。残った人たちの中で、一番「死者」の可能性が高いのは誰だろう?)
旅人:
【トーニャを選ぶ】
旅人:
トーニャ、テウセルは元気にしてる?
トーニャ:
…テウセル?
旅人:
君のお兄ちゃん——アヤックスが家に送った手紙に、俺のことが書いてあったよね?例えば「金髪の旅人」とか、覚えてない?
トーニャ:
知らない…それに、お兄ちゃんの名前は「ラジク」で、アヤックスじゃないけど。
チュグノフ:
…くそっ!
旅人:
チュグノフ…説明してくれる?昨日言ったことは嘘だったんだね?
オデット:
やはり嘘を。なぜそのようなことをしたのです?
オデット:
いつも口にしていた奥様やお子さんの話も…「家族思い」っていう設定を作るための嘘なのでしょう?
オデット:
「レーレク」として、ある晩あなたの家に忍び込んだことがあります。ですがその時、家にはあなたしかいませんでした。たまたま家族が留守だったからとも思いましたが…
オデット:
今になって考えてみると、その線は薄そうですね。おそらく…本当はずっと独りなのではありませんか?
旅人:
(わざわざそんな嘘を?でも、どうして…)
チュグノフ:
……
チュグノフ:
くそっ…くそおおお!なぜこの吹雪は止まない…止んでくれれば、止んでくれさえすれば…
トーニャ:
そっか…思い出した、どうやって自分がここに来たのかを。すごく遠い出来事のような、でも昨日のことのような…
トーニャ:
この咳は「霜蝕症」って病気のせいなの。周りの人は「雪咳」とも呼んでた…
トーニャ:
珍しい病気で、気候や遺伝が関係するみたい。命に関わることもあるんだって。そのせいで、私ずっと病院のベッドの上で過ごしてたの。
トーニャ:
でも、どんどん身体は弱っていって…病院の治療も、お兄ちゃんがフロストフラワーの葉を煎じて作ってくれた薬も、ぜんぜん効かなくって…
トーニャ:
それである日、お兄ちゃんに「昔みたいにもう一度だけ外へ遊びに連れてってほしい。たくさんの友達に会って、新しいことをしたい」って言ったんだ。
トーニャ:
そしたら、こっそり私を病院から連れ出してくれたの。
トーニャ:
劇場に着いて、チケットを買って中に入って…その間ずっとワクワクしっぱなしだった。公演もすごく素敵だったはずなのに、だんだん眠くなって…
チュグノフ:
トーニャ…
トーニャ:
目を覚ました時、お兄ちゃんはいなくなってた。
トーニャ:
でも、お兄ちゃんが私を置いていくわけない。だからここで待つことにしたの…きっと私のために薬を作りに行ったんだって思ったから。戻ってきたら、文句の一つでも言うつもりだった。
オデット:
トーニャ、その時にはもうすでに…
トーニャ:
うん、わかってる。もうわかってるよ。私、死んじゃったんでしょ?今の咳もだるさも、身体の記憶を引き継いだものなんだよね。
トーニャ:
…悪かったのはお兄ちゃんじゃなかった…私が、お兄ちゃんを置いていったんだ。
トーニャ:
ごめんなさい、気づくのが遅くなって。「死」のせいで認識が歪んでたみたい…みんなを巻き込んじゃった。
旅人:
じゃあ…名前も「トーニャ」じゃないんだよね?でも、それならどうして?
「トーニャ」:
小さい頃、お兄ちゃんと読んだ本の中に、トーニャっていう子が出てきたの。
「トーニャ」:
病院を抜け出したあと、家族や病院の警備員たちが私たちを捜してたから…
「トーニャ」:
あなたがお兄ちゃんの代わりに来たって言って、トーニャって呼んだとき…
「トーニャ」:
見つからないよう、わざとお兄ちゃんと私しか知らない偽名を使ったんだと思ったの。でも、私の勘違いだったみたい。
オデット:
…唯一の救いは、あなたの死の記憶が苦痛なものではなかったことですわね…
オデット:
さて、次はあなたの番です、チュグノフ。お話ししてくださるかしら?理由もなしに生まれる嘘などありませんもの。
チュグノフ:
ああ…あんたの言う通り、嘘をついてた。知ってたのは、執行官「公子」とその妹がチケットを持っていることだけで、トーニャのことは見たことない。
チュグノフ:
それと家族のことも、すべて嘘だ。
チュグノフ:
実際は…とっくに家族を失っている。ただ、その現実を受け入れられなくてな。私は人生の後半を、自分を騙しながら生きている、どうしようもない男さ。
チュグノフ:
私の娘はイゼカっていうんだ。そう、あのイゼカ設備製造工場のイゼカだ。
チュグノフ:
あの子も…雪咳で亡くなった。まだ六歳だったのに。生きていれば、ちょうどトーニャと同じくらいの歳だ…
チュグノフ:
あの子が亡くなった後、妻もイゼカと過ごした日々を忘れられず、その苦しみから目を背けるように私の元を去った。
チュグノフ:
ある日、仕事から帰ってきて空っぽの部屋を見たとき…息が詰まりそうになったよ。それで無意識のうちに想像を始めたんだ…あいつらがまだそこにいる光景を。
チュグノフ:
それが心を軽くする、唯一の方法だと気づいた。だから…自分を騙し続けたんだ。
アリョーシャ:
悲しみのあまり現実逃避か…だが、そこに罪はない。
アリョーシャ:
そろそろ、偽証について話してもらおう。
チュグノフ:
一昨日の夜、この子がこう言っていたんだ——お兄ちゃんがフロストフラワーの葉を煎じて飲ませてくれると。
チュグノフ:
それと、その症状を見て…私はすべてを察した。トーニャが「死者」だということを含めてな。
チュグノフ:
雪咳はかつて不治の病だった。私もフロストフラワーの葉を採りに行っては、イゼカのために煎じていたんだ…長い長い間、ずっとな…
チュグノフ:
だが娘が死んだ翌年、ファデュイの「道化」様が霜蝕症——雪咳の治療薬を開発された…
チュグノフ:
…しかも、これまでの治療法は何もかもデタラメで、誰かがでっち上げたものだと判明したんだ。
チュグノフ:
そんな事実を、受け入れられると思うか?あと少し…あと一年早ければ!
チュグノフ:
だから、知っていたんだ。フロストフラワーの葉を煎じて雪咳を治そうとする人が今はもういないってことを。
チュグノフ:
この子は、雪咳がまだ不治の病だった頃の子なんだとな。
オデット:
つまり、あなたはご自身の娘をこの子に重ねていたんですの?「死者」であると知りながら?
アリョーシャ:
筋が通らない。死んでると分かっていながら、どうして固執する?
チュグノフ:
そもそも私は…あんたらの言う妙な理屈を信じちゃいない。そのやり方だって納得できてないんだ。
チュグノフ:
誰かを「死者」だと決めつけて、生きたまま吹雪の中に放り出すだと?
チュグノフ:
ミティヤも、せっかく仲良くなったシュラムも吹雪の中に消えた。次は「トーニャ」の番か?
チュグノフ:
いや、最悪前の二人は受け入れよう。だが、こんなに健気な「トーニャ」が、目の前でこうして立っているんだぞ!私たちと変わらず息をしているんだ!それでもこの子を「死者」扱いするのか!
チュグノフ:
私はただ、この子を助けたいだけだ…吹雪が止みさえすれば…そうしたら、すぐにでも一番いい雪咳の治療薬を手に入れてこよう!
チュグノフ:
必ずこの子を治す。だから、吹雪の中に放り出させはしない!
チュグノフ:
今度こそ!絶対にだ!あと少しってところで助けられないのは、もうごめんだ!でなきゃ私は、自分を永遠に許せない!
「トーニャ」:
チュグノフさん、そんなことしなくて大丈夫です。
チュグノフ:
「トーニャ」…?
「トーニャ」:
一昨日の夜には、もう私が「死者」だって分かっていたんですよね?
「トーニャ」:
バレリーさん、ミティヤさん、そして大好きなヴォジャニーツァさんも、みんな私のせいで死んでしまいました。
「トーニャ」:
そんなこと、望んでなかった。あなたは私を救うことで、救われたいだけなんです。それが私の心に、罪悪感を植え付けるとも知らずに。
チュグノフ:
いや、違う!本当に助けたい一心で…!
「トーニャ」:
自分がもう死んでるってことは、誰よりも分かっています。あなたに救われることより、みんなと過ごしたこの時間のほうが、私は大切です。
「トーニャ」:
悲劇が何度も続きましたが、それでもこんなに素敵な人たちと出会えて、一緒に何日も過ごすことができました。
「トーニャ」:
病院を抜け出してからの出来事はどれも、昔の私には到底できない大冒険です。
「トーニャ」:
本当に、みんな大好き。できることなら、こんな結末じゃなくて、この魂と引き換えに死んだ人たちを生き返らせたい…
「トーニャ」:
だから、あなたのしたことは許せません。チュグノフさん。
チュグノフ:
…すまなかった。
「トーニャ」:
私じゃなく、みんなに謝るべきです。
「トーニャ」:
…これでおしまい。これ以上みんなに迷惑をかけるわけにはいかないし、私の冒険も、そろそろ終わらせないと。
アリョーシャ:
もう行くのか。今日はまだ早い、もう少し残ったらどうだ。
「トーニャ」:
ううん、大丈夫、ありがとう。あっ、そうだ…
タシュカ:
私の名前は「タシュカ」っていうの。みんなに会えて、本当によかった。
オデット:
お別れだというのに、まるで初対面の自己紹介のようですね…
チュグノフ:
タシュカ…
アリョーシャ:
何をする気だ、チュグノフ?狂ったか?
チュグノフ:
私も外に行かせてくれ。もうこれ以上、自分を騙すことはできない…
オデット:
いいえ、そのような逃避は認められません。あなたの嘘のせいで多くの方が亡くなられました。そう簡単に逃げられると思わないでください…
オデット:
ここを出たら、ファデュイ仕込みのお仕置きを「レーレク」が見せてあげます。覚悟なさるように。
(荒れ狂う吹雪は、まるで止む気配がない。そして、また夜がやってきた…)
オデット:
外へ出ましょう。この吹雪は止む気配がありません。スネージナヤ全土——いえ、世界中が吹雪に飲まれ、滅んでしまったのかもしれませんわ。
アリョーシャ:
やっと「死者」の問題が片付いたんだ。せめて…この夜だけはゆっくり過ごそう。
オデット:
そう、ですわね。それに私、チュグノフと一緒に死ぬのはあまり気が進みませんし。
チュグノフ:
でもあんたは、私が先に死ぬことを許さないんだろ?
オデット:
チュグノフ、真面目な話ですけれど、もしここから出られましたら、真っ先にあの工場を閉鎖してくださいませんか?あれのせいで多くの方が凍えていますの。
チュグノフ:
今はそんな話をしている場合じゃ…
チュグノフ:
いや、分かったよ、止めるさ。あんなもの、もうどうでもいい。
ノックの音:
ドンドンドン——
旅人:
……!?
オデット:
幻聴かしら…ノックが聞こえたような。
ノックの音:
ドンドンドン——
オデット:
本当に誰かいるようですね…けれど、外はまだ吹雪いているはずですのに。
アリョーシャ:
開けるか?
旅人:
(ようやくこれで助かるのかな?)
旅人:
(でもここ数日、安堵した途端によくないことが起きてるし…)
旅人:
(扉の外にいる存在のせいで、さらに状況が悪化するかもしれない…)
ミティヤから状況を聞く
旅人:
……
ミティヤ:
ゴホッ…やあ…みんな、帰ったぞ。
オデット:
…どうです?少しよくなりました?
ミティヤ:
ああ、だいぶな。ありがとう。お前たちがまだいてよかった。戻っても、もう誰も劇場にいないんじゃないかって心配だったんだ。
ミティヤ:
さて…トーニャとヴォジャニーツァさんがいないところを見るに…
ミティヤ:
昨日の夜はヴォジャニーツァさんが亡くなり、そして最後の一人と思われる「死者」トーニャを見つけた。そうだな?
チュグノフ:
トーニャじゃない、タシュカだ。
アリョーシャ:
どうやって戻ってきたんだ?外の状況を見る限り、戻れるとは思えないが。
ミティヤ:
ゴホッ…ああ、その鍵は…「歌声」にある。歌声が聴こえてきたんだ。
ミティヤ:
吹雪の中を進むうちに、僕の意識はだんだんと薄れていった。どれくらい歩いたか分からないが、やがて気を失ってしまった…
ミティヤ:
ただその時、急に歌声が聴こえたんだ。それが意識を呼び覚まし、自分を取り戻させてくれた。
ミティヤ:
それから歌声のするほうへ、ひたすら歩き続けた。その声の主を探してな…そしたら、劇場の扉を見つけたんだ。
旅人:
歌声…
ヴォジャニーツァ:
実はこれ、劇場で一度も披露したことない曲なの。水の精の儀式で歌われるもので、通常の演目には入らないものなのよ。
ヴォジャニーツァ:
歌の意味は…「亡き家族や友が我々を見守ってくれますように。歌声を標に、夜の間だけでも帰ってきてくれますように」と、だいたいこんな感じだわ。
旅人:
それ、ヴォジャニーツァの「魂を呼ぶ歌」だ。まさか本当に効果があるなんて。
オデット:
魂を呼ぶ歌…ということは、やはりミティヤさんはもう…
ミティヤ:
そうか。なら、僕の推測は当たっているらしい。これこそ、急いでお前たちに伝えたかったことだ。
ミティヤ:
劇場を出た直後、僕の意識はまだはっきりしていて、その時の記憶もそこそこ残っているんだが…
ミティヤ:
外の世界は知っているものとは違っていた。そこは…「吹雪だけ」の世界。人も建物も、すべて消えていた。
ミティヤ:
どう説明したらいいか…とにかく、現実世界とは思えなかったのは確かだ。
ミティヤ:
それと魂を呼ぶ歌だが…ヴォジャニーツァさんの歌によって呼び戻されたってことは…僕はもう死んでいて、魂になっているってことなんだろう。
ミティヤ:
ただ、自分が「死んだ」と明確に感じたことはない。それに今ここにいる僕が、吹雪の中に入る前と何か違うところがあるようにも思えない。
オデット:
私も、変わったところがあるようには思えません。それに以前から疑問だったのですが、魂には実体がないはずではありませんか?
オデット:
ですが、シュラムにしてもタシュカにしても、死んでいるというのにはっきりと目に映っていましたし、触れることもできました…私やあなたと何も変わりません。
旅人:
(なんだか、嫌な予感がする…ミティヤが俺たちに伝えようとしてることって、まさか…)
旅人:
もしかして…劇場にいるみんなはもう全員死んでるって言いたいの?
ミティヤ:
ああ。おそらくここは…「死後の世界」だ。
チュグノフ:
なんだと?
ミティヤ:
現実の僕たちはみんなこの劇場で死んでいる。劇場の地脈の流れが滞っているせいで、僕たちの魂はここに囚われてしまったんだ。つまり、この吹雪に終わりはない。
ミティヤ:
皮肉な話だな。これまで必死に「死者」を探してきたが、実際は全員が「死者」だったってわけだ。単に、ずっと昔に死んだか、最近死んだかの違いでしかない。
ミティヤ:
あのメモを覚えているか?あれには「『死』はすぐそばに」と書いてあった…どうやら意味を履き違えていたらしい。
ミティヤ:
本当の意味は、考えていたよりもずっとシンプル——僕たちがもう死んでいるという事実を伝えていたんだ。
オデット:
これまでの「生き残るための行動」や「死者探し」は…すべて無意味だったということですか…
ミティヤ:
いや、そうとも限らない。少なくとも、二つの迷える魂を解放して、還るべき場所へと導いてやれたからな。
ミティヤ:
二人の「死者」が存在し続ける限り、僕たちの中から誰かの魂が選ばれて地脈に吸い込まれる。この数日間、僕たちが目にしてきた「死」は、魂が地脈に還ったことを意味していたんだ。
チュグノフ:
そうは言うが、今や「迷える魂」っていうのは…私たちのことなんだろう?
チュグノフ:
どうりでヴォジャニーツァさんの死体を部屋に運んだとき、何日も経っているのに他の死体が腐敗していなかったわけだ。
ミティヤ:
そのことからも、僕たちには肉体がないことを証明できるな。この身体は「死後の世界」における器にすぎない。
旅人:
(俺が…死んでる?そんなまさか…)
旅人:
(いや。これですべてが終わるわけない…)
オデット:
すでに死んでいるだなんて、にわかには信じ難いですね。一体どうして死んでしまったのでしょう?皆さんも、死んだときの記憶はないのでしょうか?
チュグノフ:
チッ…どうやって死んだかも分からないなんて、理不尽にもほどがあるな。くそっ…せめて理由くらい教えやがれ。
ミティヤ:
ああ。理由も分からず気づけば死んでいたなんて、普通は納得できない。だから僕も、吹雪の中を歩きながら、そのことをずっと考えていた…
ミティヤ:
…死因、死亡時刻、すべての根源は何なのかを。意識が途絶えるその瞬間まで…
ミティヤ:
いや待った…最後に、何かを見たような…
旅人:
思い出せる?
ミティヤ:
…ダメだ、思い出せない…万年筆とノートも失くしてしまったらしい…
オデット:
ミティヤさん…指に血がついていますよ?
ミティヤ:
ん?いつの間に右手の指に血が?…もう乾いているようだが。
ミティヤ:
これは…!?
旅人:
……!?
ミティヤ:
意識を失う寸前、僕は自分の血で記録を残していた…?
ミティヤ:
どうした?まさか…このマークを知っているのか?
旅人:
ロノヴァ——「死の執政」だ。
一同:
……
旅人:
アリョーシャ、前に話してくれたスネージナヤの言い伝えを覚えてる?
旅人:
たしか人は今際の際を迎えると、死神が親しい人に化けて、魂を奪いに来るって話だったよね。
旅人:
その顔がはっきり見えたとき、命も尽きるって。
ミティヤ:
子供の頃、似た言い伝えを聞いたことあるな。その死神が、お前の言う死の執政なのか?
旅人:
うん。たぶんメモにあった「『死』はすぐそばに」は…死神がすぐそばにいて、親しい誰かに化けてるって意味でもあったんだ。
ミティヤ:
はは…「死」、「死者」、「死神」。一つの言葉に三つの意味を含んでいたってことか?
ミティヤ:
最初にあのメモを見たとき、調査報告書と矛盾していると感じたが、今思えばあれもわざとだったんだな。
オデット:
死神によるミスリードかしら?私たちを互いに疑わせて「死者」を探させることで、自分に目がいかないようにしていたと。
旅人:
(ここまでのことを踏まえて、いちばん「死神」の可能性が高い人は…)
旅人:
君なの、アリョーシャ?あの時、調査報告書を見つけたのはアリョーシャだった。ミスリードの情報を入れる余裕も十分あったよね。
アリョーシャ:
…それだけでオレを疑うのか?
アリョーシャ:
別のヤツが先に調査報告書を見つけて、メモを挟んでから元の場所に戻した可能性だってあるだろ?
ミティヤ:
否定はできないな。そもそもメモはずっと前に挟まれたもので、今回の件でやっと発見されただけかもしれない…
旅人:
ひとつ気づいたことがあるんだ。パッと見、場を仕切ってたのはバレリーやミティヤで、あとはたまに俺がその役をやってたけど…
旅人:
今思い返してみると、アリョーシャは口数こそ少ないものの、いつもさりげなくみんなを誘導してた気がする。
アリョーシャ:
例えば?
旅人:
外の危険性を繰り返し強調して、みんなをここに留まらせたのも君だし、全員で一緒に寝るよう呼びかけたのも君だった…
旅人:
それに今日の昼、これまで死者が出ていくのを引き留めたことはなかったのに、タシュカのことは引き留めた。その意図はまだ分からないけど…
アリョーシャ:
意図も分からず闇雲に疑うのは、さすがに理不尽じゃないか?
旅人:
(まだ認めてくれない。けど、決定的な証拠がひとつあったはず…)
ミティヤ:
気になるのは…もし死神がアリョーシャに化けているとしたら、本物のアリョーシャはどこにいるかだ。いつ「入れ替わった」?
旅人:
公演が終わって雪が強くなり始めたとき、みんなはただ大雪のせいでここに閉じ込められただけだと思ってた。
旅人:
そして二日目の朝、死体を発見してようやく俺たちは異常事態に気づいた。
旅人:
でも今思えば、事件は「あの時」からすでに始まってたんだ——あのディモフっていう人が吹雪の中に消えて、戻ってこなかった時から。
ミティヤ:
つまり、最初の犠牲者はディモフであって、一夜目のソブレワやトルゴフじゃなかったってことだな…
旅人:
「あの時」を事件の始まりだとすると、ひとつ明らかになることがある…
旅人:
「魂を呼ぶ歌」がない状況で、あの吹雪の中から帰ってこられたのは、アリョーシャ、君だけだ。
ミティヤ:
あるいは、帰ってきたのはアリョーシャじゃなく…「死神」だったか。
アリョーシャ:
……
アリョーシャ…?:
いいだろう。ここまで理詰めされては、もう演じる必要もない。
オデット:
アリョーシャ…?
ミティヤ:
お前が死神か?
ロノヴァ:
言い伝えにある古臭い名は好まない。凡人、わたしのことは「死の執政」と呼びなさい。
ロノヴァ:
「全滅」することなく二人の死者の問題を解決し、わたしの存在にまで気づいた…予想を上回る出来だ。称賛に値する。
ミティヤ:
魂を奪えるって話だが、夜の間に起きた死は全部お前の仕業か?
ロノヴァ:
自分たちの最初の推理を信じたらいい。きみたちの言う二人の「死者」の存在によって、地脈はいつまでも留まり続ける魂を強く求めるようになった…
ロノヴァ:
そして毎夜、その穴を埋めるために、同じ数の魂を呑み込んだ。だから、わたしが直接手を下したことはない。もちろん、魂を奪い、導くことはわたしが司ってる力ではあるけど。
ロノヴァ:
せっかくだし、見せてあげよう。
ミティヤ:
何をした!
ロノヴァ:
今日の二人分は…これで終わり。
ロノヴァ:
そう慌てるな。きみたちはもとより死者なのだから。その魂は地脈へ還るのが道理だろう。
ミティヤ:
僕たちがもう死んでることは知っている。殺したのはお前なんだろう?
ロノヴァ:
「殺した」?いや、殺戮とは凡人がわたしの権能を僭越する行為だ。わたしは死を司る存在…誰かを死なせるのに「殺す」なんて回りくどい方法は必要ない。
ロノヴァ:
きみたちはただ「条件」を満たし、わたしの「死の呪い」を発動させただけ。
旅人:
(「不死の呪い」の存在は知ってるけど、死に関する呪いは他にもあったんだ…)
旅人:
呪い?いつかけたんだ?どうしてそんなことをした?
ロノヴァ:
人間は時にわたしに祈りを捧げ、死がいつ訪れるのか、いかなる形でやってくるのかを聞く…
ロノヴァ:
けど、死がなぜ訪れるのかを問う者は少ない。あえて答えを出すなら、死が訪れるのはただ「死期に至ったから」だ。
ミティヤ:
本当は、言いたくないだけなんじゃないか?
ロノヴァ:
くだらない挑発はよしなさい。きみは本来、わたしと口を利く資格さえ持たないのだから。
ロノヴァ:
かつて天の使いたちがここの地脈を好き勝手いじったせいで、今回の仕事はこうも煩雑になってしまった。まったく忌々しい。
ミティヤ:
仕事?僕たちをここに閉じ込め、友が一人、また一人と死んでいくのを見させるのがお前の仕事なのか?
ロノヴァ:
どうしても疑問を解消したいのだな。なら、ここ数日の見事な立ち回りへの褒美として、度を越さない疑問くらいであれば答えよう。
ロノヴァ:
完全な「死」とは、肉体が永遠の眠りについた後、魂が地脈に還ることを指す。
ロノヴァ:
わたしの仕事は万般に及ぶ。その中には当然きみたちもよく知る…魂を地脈へ導くことも含まれてる。
ロノヴァ:
きみはナタの夜神の国について詳しいだろう?かつて、わたしはその構築に賛同した。ナタの魂を導くのに便利だったからね。
ロノヴァ:
そして、この劇場と繋がってる地脈も、一部の特殊な創造物の魂を収容できるよう、天の使いによって手を加えられてる…
ロノヴァ:
けどそれがかえって、普通の魂を受け入れる妨げとなり——
ロノヴァ:
呪いによって劇場で命を落としたきみたちは、その影響を受けてしまった。結果、完全な死を迎えられず、この「死後の世界」に留まることになったの。
ロノヴァ:
「死の呪い」で命を落とした魂が、いつまでも地脈に還れず、そのまま時を逃せば…
ロノヴァ:
永遠に生と死の狭間に囚われ、死の権能も生の権能も及ばない存在となってしまう。
ミティヤ:
つまり、お前は事態をすぐさま収拾し、僕たちの魂を地脈に還す必要がある。でないと、お前は僕たちを支配できなくなる…ってことだな。
旅人:
(すごい、一瞬で相手が危惧してることを見抜いた。きっとこれがロノヴァが出てきた理由なんだろう。)
旅人:
でも魂を導く力を持ってるなら、姿を隠さずに直接解決すればよかったはずだ。どうして、アリョーシャに化けてたの?
ロノヴァ:
神の考えを理解しようというのか?まあいい、教えてあげよう。
ロノヴァ:
ここは劇場で、わたしは「死の劇」を間近で観賞することに興味があった。舞台が主な活動場所になるよう誘導もさせてもらった。
ロノヴァ:
いつの間にか少し没頭してしまっていたけど…きみたちが「大人しく死んでくれなかった」せいで手間をかけさせられたわけだし、その埋め合わせだと思ってくれ。この答えで満足か?
ミティヤ:
満足とは言えないな。
ロノヴァ:
不満か。けど人間は昔から、神に対してそのような印象を抱いてきただろう?
ミティヤ:
さっき仕事が煩雑すぎるって、愚痴をこぼしていたよな?
ミティヤ:
僕にもよく分かる。仕事ってなると、やっぱりどうにもならなかった部分があったんじゃないか?
ロノヴァ:
きみという人間は、なかなか独特な見方をするのだな。まあいい、確かに厄介な部分はあった。
ロノヴァ:
劇場の地脈の流れが滞っているせいで、一日に受け入れられる魂の数に制限があったんだ。だから、一度にすべての魂を導けなかった。
ロノヴァ:
軽率に正体を明かせば、無用な抵抗に遭うのは目に見えていた。中には逃亡を選ぶ者もいるだろう。そうなれば、魂が消えてしまうかもしれない。
ロノヴァ:
それからきみたちの言う二人の死者についてだけど、確かに意図的に誘導してその問題を解決するよう仕向けた。
旅人:
ちょうど聞きたいと思ってたんだ。俺たちもあの二人と同じで、死んだ魂なのに、なんで彼らだけ特別だったの?
ロノヴァ:
数百年もの間、あの者たちは自ら地脈へ還ることを拒み続けてきた。天の使い文明が生み出した「流れの滞り」を利用して、地脈の導きに抗い続けたの…
ロノヴァ:
それと同時に、数百年にわたって執念が積み重なっていった。それは死者の怨念に等しく、いつ爆発するかも分からない「爆弾」でもある。
ロノヴァ:
もはや看過できない状態にまでなっていた。解決するには、二人に死を自覚させ、心残りをなくさせたうえで、自らの意思で吹雪の中を歩ませるしかない…
ロノヴァ:
そしてわたしが導くことで、ようやく地脈へ還ることができる。さもなければ…いや、きみたちはその結末を知りたくはないだろう。
旅人:
うっすら覚えてることがあるんだけど…すごく怖いタシュカに会った気がするんだ。夢の中だったかな?もしかして、あんな結末を迎えるかもしれなかったってこと?
ロノヴァ:
なるほど。夢の中で多くの啓示を得てきたようだ。「死」は人に知恵を授けることもある。魂は世の万物、そしてあらゆる因果と繋がってるのだから、何も不思議ではない。
ロノヴァ:
ともあれ、わたしは魂に対する「心のケア」が苦手なの…
ロノヴァ:
この件は「天の使い」レベルのものだから、力を直接使って解決することはできない。なら「爆弾処理」はきみたちに任せたほうが賢明だ。
ロノヴァ:
それに、二人の死者の存在が、毎晩きみたちの魂を否応もなく地脈へと還す…わたしからすれば一石二鳥というわけだ。
ロノヴァ:
二つの難題が目の前で互いに削り合う。わたしは近くで局面を制御し、最後に死の力をもって締めくくるだけ。
ロノヴァ:
ついでに…死によって描かれたこの「劇」を、人の視点でじっくり鑑賞させてもらったよ。
ミティヤ:
見事な計画だ、「死神」。
ミティヤ:
ここの地脈が一日に受け入れられる魂には制限があると言っていたが…これまでの状況を振り返るに、その数は「二人」だな?
ロノヴァ:
その通り。凡人であっても、それは一目瞭然だろう。
旅人:
(地脈は一日に二人しか受け入れられない…これまでのことを振り返りながら、ここ数日の「死」の状況を整理してみよう。)
この数日間の出来事を振り返る
旅人:
(これで、一連の流れがはっきりした。)
ミティヤ:
お前の仕事はまだ終わってないだろ?僕と旅人はまだこうして立っているぞ。
ロノヴァ:
水の精の歌声は想定外の状況をもたらしたが、大したことではない。
ロノヴァ:
地脈はすでにきみの魂を掴んでる。明日の朝、最初の光が差す頃、きみは引き戻されるだろう。わたしも水の精という種族に対して、見方を改める必要がありそうだな。
旅人:
そっか…ヴォジャニーツァは、魂が「夜の間だけ」でも帰って来るようにって言ってたし、長くは留まれないんだ。
ロノヴァ:
それから旅人、きみに対してわたしの力でできることは、その魂を一時的に肉体から切り離すことだけだ。テイワットの地脈はそもそもきみを受け入れない。
ロノヴァ:
そしてその魂は、きみの意志によって肉体に固く繋がれてる…
ロノヴァ:
テイワットの規則が適用されない降臨者のきみに死を与えるには、最も暴力的な手段を使うしかないルール…たとえば、肉体か魂を直接破壊するとか。
ロノヴァ:
降臨者に関することに、今のところ首を突っ込むつもりはない。アスモダイがずっと行方知れずのままか…あるいは、きみがこの件にしつこく干渉するようなら話は別だけど。
ミティヤ:
最後にひとつ聞かせてくれ…僕たちのここでの犠牲や抵抗は、最初から意味のないことだったのか?
ロノヴァ:
死に理屈など通じない。それにきみの言う「犠牲」とやらは、人間が勝手にそう思ってるだけだ。
ロノヴァ:
わたしに言わせれば、それは死を目前にした、ただの自己満足でしかない。行動を起こすことで、わたしの手から何かを取り返せると幻想を抱くなんて、実におこがましい。
movie
アリョーシャに偽装した「死神」に対し、ミティヤと共に攻撃を仕掛けた。あなたの剣は確かに「死神」の偽装した肉体に傷を一つ刻み込んだが、すでに目的を果たした「死神」は立ち去ってしまった。その後、劇場にいた人々も「死後の世界」から帰還した…

ヤドリギ
劇場で幾日も過ごす中、パイモンを心配する気持ちが積み重なり、そして会いたいと思うようになっていた。しかし宿に戻ると、予期せぬ事態が起きていた…
劇場のスタッフと会話する
旅人:
オデット、大丈夫?
オデット:
私…どうしたのでしょう?
旅人:
どこまで覚えてる?
オデット:
ええと、何のことかしら…?公演は終わったのでしょうか?私、何が起きたのか思い出せなくて…
旅人:
(オデットは何も覚えてないみたいだ…)
ミティヤ:
……
旅人:
ミティヤ?
ミティヤ:
ん…?ああ、すまない。少しボーッとしていたみたいだ。お前は…
旅人:
覚えてる?
ミティヤ:
……
ミティヤ:
ああ、戦友、思い出した。どうやら僕たちの予想は間違っていなかったようだな。
ミティヤ:
オデットがオルジェイナヤ・パラタで僕の死を見たときと同じように、死の執政に殺されても、どういうわけかみんな最後は生き返る…
ミティヤ:
…ただ、死んでいた間の出来事は忘れてしまうが。
旅人:
オデットや他のみんなは忘れてるのに、どうしてミティヤは覚えてるの?
ミティヤ:
もしかすると…これのおかげか?お前はこれを死の執政のマークだって言ってたよな?
旅人:
俺には…何も見えないけど。
ミティヤ:
なに…見えないのか?…なるほど、死後の世界で描いたものだし、現実の世界で見えないのも頷ける。
ミティヤ:
となると…このマークは僕の魂に刻まれているってことか?なんだか気味が悪いな。ただ不幸中の幸いと言うべきか、こうして記憶を残すことができた。
ミティヤ:
お前は…死の執政が言っていたように「降臨者」だから覚えているのか?
旅人:
ちょっと事情が複雑なんだけど…そういうことだと思う。
ミティヤ:
ひとまず一段落ってところか。さっそくだが、今ある情報を整理しよう。
ミティヤ:
まず確かなのは、ここにあるすべてが「死ぬ前」の状態のままだということだ。死後の世界と現実では、時間の流れ方が違うらしい。
旅人:
人は死の間際、時間の流れが遅くなって、一生を短時間で振り返るって聞いたことがある。
ミティヤ:
その時点ですでに、死後の世界に片足を突っ込んでいるってわけだな?いずれにせよ、僕たちが死後の世界で過ごした数日間は、現実ではおそらく数分程度の出来事だったんだろう。
ミティヤ:
これは前にオルジェイナヤ・パラタのスタッフが大勢、短時間の記憶喪失に陥ったときの状況と一致する。今にして思えば、これもすべてあの死神が言っていた「死の呪い」による一時的な死だったんだろうな。
ミティヤ:
真相を知らない者たちにとっては、死んで生き返るまでの間の記憶が欠けているように感じるはずだ。
ミティヤ:
となると、今の疑問点は二つ。死の呪いの発動条件と、死んだ後どうして生き返るかだ。
旅人:
少なくとも、俺たちを殺すことがロノヴァの本当の目的じゃないってことだよね。ただなんで「人を殺す」のかは、まだ分かってないけど…
ミティヤ:
ああ。今回は劇場の地脈に問題があったから、あいつも特別な処理が必要だったんだろう。以前の研究員の記憶喪失の件からしても、僕たちを殺すことはもう日常茶飯事になっているようだ。
ミティヤ:
そういえば…「死ぬ」直前に、何か書こうとしていた気が…
ミティヤ:
思い出せない…たしか研究に関係するものだったはず…
ミティヤ:
……
ミティヤ:
すまない、旅人。また後で話そう。今すぐオルジェイナヤ・パラタに戻らないといけなくなった。
バレリー:
失礼、少しお話いいですか?以前の調査では、ミティヤ様に君のような友達はいなかったはずなんですが——
バレリー:
さっき親しげに話をしてましたよね?ミティヤ様は急いでどこへ行ったのでしょうか?
バレリー:
ああ、それと…俺たち、前にどこかで会ったことがありませんか?急にこんなことを言うのは変に思うかもしれませんが、何だか「親しみ」を感じるんです。
旅人:
ちょうどその話をしようと思ってたんだ。劇場のみんなを集めてもらえないかな?
再び舞台の上に皆が集まった。ただ今回は現実世界であり、外も吹雪いてはいない。
劇場の地脈が特殊だったこともあり、皆の記憶は完全に消えていないようだ。
それはまるで遠い夢の出来事のようで、話をするうちに記憶が呼び起こされていく。
皆はそれぞれ自分の「結末」を確認し——そして、今日の劇はようやく終演を迎えた。
劇場を出る
オデット:
まさかチュグノフが本当に工場の閉鎖を決めるとは思いませんでした。劇場で起きたことは、悪いことばかりでもなかったようです。
オデット:
あなたの話によれば、死後の世界の私がオルジェイナヤ・パラタへ連れて行くと約束したのですよね?たしかに…そのような約束を交わした覚えがあります。
オデット:
ええ、一度様子を見に行きましょう。そもそもオルジェイナヤ・パラタへ向かうのも、その子の不調の原因を突き止めるためですから。
宿に戻ってパイモンの様子を確認する
旅人:
(やっと戻ってこれた。俺の感覚だとずいぶん時間が経ってるけど、パイモンからしたら、公演ひとつ分の時間だったんだよね。)
旅人:
(パイモンに会うとき、少し感情を抑えないと。じゃないとおかしく思われるだろうし…)
オデット:
お待ちください。なんだか空気が妙です。
オデット:
しっ…音を立てないように。中の様子を見てみましょう。
ファデュイ兵士:
…まだ「公子」様に連絡はつかないのか?他に指示は?あの方が戻られたら…
ファデュイ兵士:
あっ…
ファデュイ兵士:
申し訳ございません。あのような状況では、我々もどうにもできず…
旅人:
まさか!パイモンに何かあったの?
ファデュイ兵士:
その…ど、「道化」様が、あの方がここに来られて、パイモン様を連れて行かれたのです。
ファデュイ兵士:
「道化」様はファデュイの統括官で、その権限はあらゆるものを上回り、口を挟むことも許されません。わ、私たちではどうしようもなく…
旅人:
「道化」が!?
オデット:
あの方はいつここを離れましたか?パイモンの様子は?
ファデュイ兵士:
一時間ほど前です。
ファデュイ兵士:
パイモン様はぐっすり眠っておられました。「道化」様は彼女を丁重に扱っていたので、決して、決して手荒なことはされていません…
旅人:
どこに行ったか心当たりはある?
ファデュイ兵士:
それは…
オデット:
おそらくオルジェイナヤ・パラタでしょう。「道化」様はこのところずっと、あそこで実験を監督し、進捗を注視していらっしゃいます。ファデュイであれば皆が知っていることです。
オデット:
まさか、あの方が自らここに来るなんて。パイモンを連れ去った目的が何であれ、オルジェイナヤ・パラタに戻られた可能性が高いでしょう…ちょうど私たちも行く予定でしたし…
旅人:
案内をお願い、オデット。
オデット:
ええ、行きましょう。
オルジェイナヤ・パラタでパイモンを探す
オデット:
この先です。急ぎましょう…
旅人:
いや、ここからは一人で行くよ。「強行突破」するつもりなのは分かってるでしょ?オデットはファデュイだし、外にいたほうがいい。
オデット:
いえ。私も、あなたを連れて行儀よく入ろうとは思っていません。同じく、強行突破しに来たのです。
オデット:
私はファデュイの一員ですが、同時に厳冬計画に反対する「レーレク」でもあります。
オデット:
今はパイモンの安全が優先です。戦力は多いに越したことありませんし、中にある仕掛けも「内部の人間」がいたほうが対処しやすいでしょう。
旅人:
君がそう言うなら…
オデット:
迷っている時間はありません。行きましょう。
ロノヴァの「死の呪い」に対処する
旅人:
(なっ…この感覚!覚えがある、これは…)
旅人:
(「死の呪い」だ!くっ、死後の世界から戻って来たばっかなのに、よりによってこんな時にまた…)
旅人:
(オデット…)
「死後の世界」から脱出し、現実に戻る
旅人:
(ここは…死後の世界?)
旅人:
(何とかして現実に戻らないと。ん?これは…オデットの「燃珀」?もしかして、目を覚ますことができたのはこれのおかげ…?)
パイモンを探す
旅人:
オデット…オデット!
旅人:
(息をしてない…けど、これまでの経験からして、しばらくすれば「生き返る」よね?)
旅人:
(手の中の燃珀で俺の魂を導いてくれたのかな?なんだか前にも夢で似たようなことがあった気がする…)
旅人:
(オデットのおかげで、すぐに魂が身体に戻ることができた…ありがとう。)
旅人:
(でも…ごめん、君を守る余裕は今なさそうだ。この時間を使って、パイモンを取り戻す!)
パイモンを探す
全速力でオルジェイナヤ・パラタへと駆け込み、パイモンがいる部屋のスイッチも見つけた。しかし、扉を開けた瞬間、「死の執政」ロノヴァが突如降臨した…
旅人:
(見つけた!やっぱりパイモンはここにいたんだ!)
ロノヴァ:
まだ懲りないのか。
旅人:
ロノヴァ!?
ロノヴァ:
すでに一度、大勢を巻き込んだ死を経験してるのに、また現れるなんて。
ロノヴァ:
一度なら偶然で片付けられたけど、二度目ともなれば、意図的にスネージナヤの問題に介入してると考えざるを得ない。
旅人:
……
ロノヴァ:
その顔を見る限り、本当に何も知らないようだ。
ロノヴァ:
なら、今回はきみにひとつ忠告をしておこう。スネージナヤの件に手を出すな。
ロノヴァ:
教訓から学ぼうとしない文明は、自らの存在価値を浪費し続け、いずれ存在意義を失う。
ロノヴァ:
そして降臨者であるきみは、まさに消えゆく文明が必死に掴もうとする「藁」…自分の立場をよく考えることだ。
旅人:
そういう判断は自分でするから、忠告なんていらない。
ロノヴァ:
なら好きにしなさい。けど「清算」の日が訪れれば、降臨者といえど無傷ではいられないよ。
ロノヴァ:
さて、そろそろ「生き返る」時間か。この地の凡人たちに、わたしの姿を拝む資格はない。今日はここまでとしよう…
movie
互いに対峙する中、ロノヴァは突然パイモンを「回収」しようとした。幸い「道化」が現れ、ロノヴァの攻撃を防いだ。その後、あなたとロノヴァは激しい戦いを繰り広げた。激戦の最中、「死の呪い」によって一時的に命を絶たれていた人々が次第に「復活」し、それを察知したロノヴァは、再び姿を消した…
パイモンと会話する
旅人:
すごく会いたかった、パイモン。
パイモン:
大げさだな。へへっ、オイラたちそんなに長いこと離れてたわけじゃないだろ?
旅人:
今回はいろいろあったから。
旅人:
体調はもうよさそうだね?
パイモン:
おう、すっかり元気になったぞ。さっきひと眠りして、起きたらここにいたんだけど…
パイモン:
「道化」と今あいつと話してるやつが、なにか「エネルギー」を注入してくれてな。それがオイラを苦しめてた力を打ち消してくれたみたいだ。
旅人:
ミティヤのおかげでもあったんだ?
ミティヤ:
すまない。劇場を急いで離れたのは、どうしても確かめたい仮説があったからなんだ。
ミティヤ:
仲間のことなら安心してくれ。実験エネルギーがその子に与えた影響は反転させた。「道化」様からそうするよう命じられてな。
「道化」:
ようやく正式に顔を合わせることができたな、旅人よ。パイモンの容体は一刻を争うものだったゆえ、断りなく連れて行かせてもらった。どうか気を悪くしないでくれ。
パイモン:
で…でもおまえみたいな大物が、なんでオイラのことを気にかけてくれるんだ?
「道化」:
そなたがスネージナヤに来たばかりの頃にも告げたはずだ…我らはかつて、共に過ごしたことがあったと…遥か遠い過去の話だがな。
パイモン:
たしかに言ってたな。あの時、初めて会ったはずなのに、おまえにすごく親しみを感じたんだ…
「道化」:
懐古に耽るのは後にしよう。ミティヤ、先の報告を続けよ。エネルギー研究の最終実験を前倒しにした結果、何を得られた?
ミティヤ:
はい。まずは良い知らせを——死の執政に関する僕の推測が証明されました。
ミティヤ:
そして悪い知らせですが…実験およびヤドリギ計画の全面的な一時停止を提案します。今のところ突破口は皆無です…これは研究者として、冷静な判断に基づくものとなります。
「道化」:
……
「道化」:
そなたの意見を尊重し、ひとまず停止させよう…死の執政を始末するまではな。
パイモン:
待った待った、おまえたちなんの話をしてるんだ?死の執政ロノヴァを始末する?始末って、殺すってことか?
ミティヤ:
脅威でさえなくなるなら、何でもいい。だが片がつくまで、僕たちの成すことはすべて徒労に終わるだろう。
ミティヤ:
先ほどの一件で、ロノヴァの目的…あるいは死の呪いの発動条件を確信した。
旅人:
聞かせて。
ミティヤ:
あいつがやっているのは、スネージナヤの科学技術の進歩を止めることだ。天理を脅かす手段を、スネージナヤが一切持てないようにするためにな。
「道化」:
天理の犬め…
ミティヤ:
そして、技術進歩につながる発想や研究、実験などが、死の呪いの発動条件なんだろう。
ミティヤ:
さっき、僕はエネルギー研究の最終段階となる実験を行った。成功すれば、革新的な技術を得られたはずだったんだが…
ミティヤ:
案の定、実験が始まった途端、すべての研究員、技術者、観測者が呪いによって「死」を迎えた。
ミティヤ:
僕たちの心血も、厳冬計画で集めたエネルギーも資材もすべて無駄になり…何ひとつ得られなかったんだ。
旅人:
つまり、あの劇場でも似たようなことが起きてたってこと?
ミティヤ:
ああ。公演中、実験に役立つ重要なアイデアを思いついてな。ただそのせいで、みんなを巻き込んでしまった。
ミティヤ:
呪いの内容は…「科学技術を進歩させる要因が現れたとき、その場にいるすべての命を奪う」といったところだろう。
パイモン:
す…すごく荒っぽいやり方だな。
ミティヤ:
普通に考えれば、呪いが発動するのはオルジェイナヤ・パラタ内だけだ。部外者の立ち入りも禁じられているし、この集団的な死という現象はこれまで目撃されてこなかった。
ミティヤ:
たぶん、オデットが最初の目撃者なんだろう。死の呪いは、彼女がオルジェイナヤ・パラタに潜入する直前に発動したんだ。
パイモン:
でもおまえ、さっき「最終段階となる実験」とか言ってなかったか?ってことは、まったく進展がないわけじゃないんだろ?
ミティヤ:
その通り。たとえ神に足止めされようと、人は成果を少しずつ積み重ねることで、ゆっくりと科学技術を進歩させることができる…
ミティヤ:
だが、ロノヴァも分かっていたんだろう。こうした地道な積み重ねも、いつか限界を迎えると。その時、「真理」を証明するための実験が不可欠になるってことを。
パイモン:
それが、さっきやろうとしてた実験ってことか?
ミティヤ:
ああ。僕たちは今、技術進歩における重要な局面にいる。量の積み重ねが、質に変化する直前まで来ているんだ。たった一度の実験で、これまでのすべてが結実するはずだった。
ミティヤ:
だが今の状況は、暗闇の中を手探りで進み続けてきた僕たちの前に、光を一切通さない壁が立ちはだかったようなものだ。
ミティヤ:
ロノヴァの死の呪いがある限り、実験を進めることも、成果を得ることもできない…
「道化」:
厳冬計画を進めてきた今のスネージナヤの国力では、この状況下で試行錯誤を繰り返す余裕はない。
「道化」:
ロノヴァを排除せぬ限り、計画の続行は不可能だ。
パイモン:
でも相手は死の執政なんだぞ…誰でも思い通りに死なせることができるんだろ?それっていちばん恐ろしい力な気がするし、そんな理不尽なやつに勝てるのか?
ミティヤ:
いや。あいつだって、なんでも思い通りにできるわけじゃないはずだ。その証拠に…ほら、僕はまだ生きている。
パイモン:
ってことは…
ミティヤ:
研究員をすべて殺してしまえば済む話なのに、なぜ何度も生き返らせ、技術をここまで発展させる余地を与えたんだ?
パイモン:
つまり…死の執政には、オイラたちの知らない制約があるってことか?
ミティヤ:
ああ。そこにこそ、現状を打破する鍵があるだろう。
「道化」:
いずれにせよ、死の執政は元より我らが越えねばならぬ関門。「生」、「死」、「時」、「空」…そのすべてと対峙せねばならんのだ。何しろ…
「道化」:
…我らの目標は「天理」なのだからな。
パイモン:
ファデュイは…天理に挑むつもりなのか?
旅人:
(ファデュイとスネージナヤの女皇の目標が天理っていうのは、薄々勘づいてはいたけど…)
旅人:
(「道化」の口から直接聞かされると、やっぱり驚く。女皇の目的がずっと人々に伏せられてるのも頷ける。)
旅人:
(スネージナヤにとって、それはどんな道を意味するんだろう…)
ミティヤ:
「道化」様、しばらく休暇をいただけないでしょうか。その間に、考えとデータを整理したいと思います。
「道化」:
ああ、休め。実験のことは考えるな。一般人に死の呪いが及ぶのは避けねばならん。
「道化」と会話し、さらなる情報を聞く
「道化」:
さて、まだ時間はある。スネージナヤの貴賓であるそなたをもてなしたいのだが、何か知りたいことはあるか?
旅人:
「ヤドリギ計画」について…
旅人:
「ヤドリギ」って言葉、コロンビーナも言ってた気がする。
パイモン:
そうそう!オイラもその名前を聞いて気になってたんだ。スネージナヤが厳冬計画を進めてるってことは知ってたけど、そのヤドリギ計画っていうのはなんなんだ?
「道化」:
厳冬計画はそなたらも知る通り、国家の資源を管理する一連の施策だ。その目的は…ヤドリギ計画を完遂することにある。
「道化」:
そなたらがこれまで目にしてきた多くは、本質的にすべて、ヤドリギ計画を推進するためのもの。
「道化」:
ナド・クライのクーヴァキ実験設計局もそうだ。クーヴァキの研究は表向きに過ぎず、その核たる目的は、現地の資源と研究成果を用いてヤドリギを造ることにある。
旅人:
それが天理との戦いに使う武器、なんだよね?
パイモン:
えっ、なんでわかったんだ?
旅人:
ある人から少し情報を教えてもらって、そこからね。
パイモン:
それが…あそこにあるやつのことだな!ナド・クライにあんなに人を置いてたのは、あれのためだったわけか。よし、じっくり観察させてもらうぞ…
「道化」:
クーヴァキだけでは、天空の島の守りを破ることはできない。ましてや天理に挑むとなればなおのこと。
「道化」:
光界の力をいなすことは、天理も慣れているだろう。そして元素力は、天理が自ら転化させた人界の力。その創造者に対抗する刃にはなりえん。
「道化」:
ゆえに我らは「第三降臨者」と「星の楔」に関連するエネルギーへと目を向けた。そこには、ヤドリギを真に天理に対抗するための兵器に変貌させる可能性が秘められている。
「道化」:
星の楔に宿るエネルギー、その源流を辿ることで、一種の「対天空の島用エネルギー」を得られるのだ。
パイモン:
クーヴァキ実験設計局…厳冬計画…新エネルギーの研究、これらは全部ヤドリギ計画でひとつに繋がってたんだな。
パイモン:
それに、もうすぐ計画は実を結ぶみたいだ。だから死の執政に狙われることになったのか…
旅人:
スネージナヤの女皇について…
「道化」:
女皇陛下は自ら魔物の討伐へ赴かれた。でなければ、陛下も喜んでそなたを迎えたであろう。
旅人:
(どうやらスネージナヤ側は、俺とファデュイのこれまでの衝突を咎めるつもりがないみたいだ…)
「道化」:
執行官は神の心の回収において、一定の裁量を有する。だがそれは同時に、彼らの振る舞いが常に、スネージナヤの公式の立場を示すものとは限らないことを意味する。
旅人:
よく考えてることがわかったね。
パイモン:
そういえば、ずーっと聞きたかったことがあるんだけど、スネージナヤの女皇はなんで神の心を集めてるんだ?それも天理に対抗するためなのか?
「道化」:
無論、神の心は天理への重要な切り札だ。それ以外のことは…女皇陛下に直接尋ねるといい。我輩が伝えるべきか判断しかねる事柄なのでな。
パイモン:
おまえみたいな偉いやつでも判断できないことなのか…まあ、いいや。
旅人:
天理に挑むなんて、一般人からしたら夢物語みたいなものだけど、女皇はどうしてそんなに執着してるの?
「道化」:
今のテイワットの「文明」は儚い泡も同じ。いつでも「否定」され得るものだ。
「道化」:
我々の文明が抗争の果てに滅びるならば、それもまた致し方あるまい。だが、天理の一存によって存在を根底から否定され、消滅の運命を辿ることだけは容認できぬ。
「道化」:
この状況を覆し、天理を破って初めて、我々の文明はようやく真に根を張ったと言えよう…
「道化」:
さもなくば、カーンルイアやヒュペルボレイアの民が味わった悲劇が、繰り返されるだけであろう。
パイモン:
「滅びる」ことは許せても…「否定」されることは許せない…
「道化」:
それと…そなたらにはまだ理解しがたいものかもしれぬが…この世界のあらゆる規則が、呪いで構成されていることを知っているか?ルール
パイモン:
えっ?あらゆる?おまえたちが言ってた「死の呪い」や、おまえとダインが受けてる「不死の呪い」のことなら知ってるけど…
旅人:
ヒルチャールの誕生…それにナタの「反魂の詩」も呪いってこと?フリーナの長い寿命が、フォカロルスの呪いによるものだってことは知ってるけど…
「道化」:
うむ。それに…「魔神の人間への愛」もまた、天理が魔神に刻んだ呪いだ。
パイモン:
そ、そんなものまで?
「道化」:
女皇陛下は以前より、天理を憎むに足る、十分な理由を抱えておられる…
「道化」:
もし陛下が天理の力を奪い取れば、世界を再構築されるだろう…その時、人々は呪いと偽りから完全に解放される。
「道化」:
期待するといい。それはそなたらの想像を超える世界となるはずだ。
「道化」:
スネージナヤの民はこうしたことを知らぬ。だが、常に過酷な環境に抗ってきた国——この神に愛されぬ雪国で…
「道化」:
我らは女皇陛下のもとに集い、共に「抗う」ことを決めた。よりよい新世界を迎えられると信じてな。
旅人:
パイモンとの関係について…
パイモン:
オ、オイラ、ほんとになにも覚えてないんだ!過去にこいつに会った記憶なんてないし。信じてくれ!
旅人:
何そんなに慌ててるの…
「道化」:
パイモンがここの「対天空の島用エネルギー」の研究に影響を受けた理由は…
「道化」:
…天空の島より来た、そこの創造物であるからだ。
パイモン:
オイラが?天空の島の創造物?
旅人:
(そういえば、あの時は頭に血が上ってて流しちゃったけど…ロノヴァも、パイモンは天空の島の創造物だって言ってた。でも、天空の島の力や権能は持ってないって…)
「道化」:
そなたも知る通り、ナド・クライの月の破片はファデュイが持つ技術によって、空より引きずり下ろしたものだ。
「道化」:
そして、その技術が初めて振るわれたのは、五百年余り前のカーンルイア。
「道化」:
我輩が天穹に向けてこの技術を用いたときに得られたものこそ…天空の島より降臨したパイモンだった。
「道化」:
その後、パイモンを黒王へ献上したが、あの方は興味を示さず、満足もしなかった。
「道化」:
以降、パイモンは我輩の宮殿に住まうことになったのだ…「カーンルイアの災厄」が訪れる、その時までな。
パイモン:
ええと…頭がこんがらがってきたぞ。おまえが言ってるのは五百年前のカーンルイアの話なんだよな?そこにオイラがいた?
旅人:
パイモンは少なくとも五百歳以上ってこと?
パイモン:
でも、そんな記憶まったくないぞ。空から来たことも、誰かの贈り物にされたことも…
「道化」:
おそらく、カーンルイアの災厄はそなたにも何らかの呪いを刻んだのであろう。記憶の喪失など、我輩が見てきた代償の中では最も軽い部類だ。
パイモン:
カーンルイアの記憶だけじゃなくて、オイラこの五百年、どう過ごしてたのかもわからないんだ。頑張って思い出そうとしても、ここ数年の記憶しかなくって…
パイモン:
カーンルイアにいたときのオイラは、どんな感じだったんだ?天空の島から降臨したってことは、もしかしていろいろ知ってたり、めちゃくちゃ頭が良かったりしたのか?
「道化」:
残念だが、そなたがカーンルイアに降臨したとき、その意識は生まれたての赤子も同然であった…天空の島でどのような存在であったかを知る者もいない。
「道化」:
性格も、カーンルイアで暮らしていた頃と今とで、さして変わらぬ。
パイモン:
うぐっ!記憶を取り戻して天才になるっていうオイラの計画が、始まる前に終わっちゃったぞ…
パイモン:
でも、その頃のおまえはきっとオイラの面倒をよく見てくれてたんだよな?だって…記憶をなくしてるのに、なんとなく親しみを感じるし…
「道化」:
…いや、むしろ逆だ。当時の我輩はそなたの存在をずっと無視していた。「賢者」フロプタチュールとの争いにばかり気を取られてな…
「道化」:
だが今、我輩の目に映るそなたは違う。あの狂気の時代において、唯一狂わなかったもの、そう見える。ゆえに守るべき存在だと考えているのだ。
パイモン:
えっと…過去の扱いを考えると、おまえに親しみを感じたのはオイラの勘違いだったみたいだな。
パイモン:
それより気になるのは…な、なあ…旅人、オイラが「天空の島の創造物」だからって、サヨナラなんてことはないよな…?
パイモン:
へへっ、安心したぞ。それにオイラも今聞いたばっかで、まだ頭が追いついてないんだ!
旅人:
もう質問はない。これからの話をしよう…
旅人:
ありがとう、いろいろ教えてくれて。正直、ちょっと意外だった。こんなに詳しく情報を共有してもらえると思わなかったから。
「道化」:
状況が状況だ。ファデュイが「盟友」に隠し立てする必要もあるまい。
パイモン:
「盟友」?
「道化」:
「ヤドリギ計画」を完遂するには、死の執政の問題は避けて通れぬ。そしてそなたも…あやつを放っておくつもりがないのだろう?
旅人:
うん。ロノヴァがまたパイモンを「回収」するって言ったときから、もう和解の道はなくなったと思ってる。
「道化」:
あれほどの相手を前に、立場の違いを気にする余裕などない。持てる力をすべて集結することこそ、行動する上での前提条件と考えるべきだろう。
パイモン:
おまえ、オイラのために死の執政に挑むのか?で…でもオイラなんてただの…
パイモン:
ありがとう…ありがとな…へへっ、そんなこと言われると、なんて言ったらいいかわかんなくなっちゃうな!とにかく、すっごく嬉しいぞ!
「道化」:
女皇陛下はまもなく凱旋される。ファデュイ内部でも対策を協議するつもりだ。再会の時は、そう遠くないだろう。
旅人:
うん、パイモンのことを助けてくれてありがとう。当面は俺がしっかり目を光らせておくから。
パイモン:
なあ…最後にもうひとつだけ話が、いや…お願いって言ったほうがいいか。天理に対抗するヤドリギってどんな見た目をしてるんだ?見てみたいぞ!
パイモン:
あ、機密だってことはわかってるから、無理なら大丈夫だからな。ちょっと聞いてみただけで…
「道化」:
構わぬ。
パイモン:
えっ!いいのか!いや…やっぱやめとくか。もしロノヴァがこのタイミングで現れたら…
「道化」:
技術は未完成だが、もはや天空の島の創造物ごときが破壊できる段階にはない。安心するといい。
パイモン:
へえ~、どうりで今までそんなに近づいてもなかったのに体調が悪くなったわけだ。よし、じゃあ安心して見学させてもらうぞ!
オルジェイナヤ・パラタを離れる
パイモン:
あれ、オデット?
オデット:
パイモン?無事に救出できたのですね…顔色もよさそうですし、体調はもう良くなりましたの?
パイモン:
えへへ、まあいろいろあってな…ところでどうしてここに?オイラたちを待ってたのか?
オデット:
ええ。目を覚ましたあと追いかけようとしたのですけれど、守衛たちも同じく目を覚ましてしまい…一人で相手をするには骨が折れますし、堂々と「潜入」するわけにもいきませんでしたから…
オデット:
…それで引き返して、ここで待つことにしましたの。
旅人:
オデットのおかげで、魂がすぐに身体に戻れたよ。ありがとう。
オデット:
本当に効果があったのですね?嫌な予感がしたので、一か八か賭けてみただけだったのですが。
オデット:
お礼を言うのでしたら…これに感謝を…
オデット:
こちらの件も一段落しましたし、私も自分のすべきことをしてきます…
劇場を出た後の人々
工場スタッフ:
あっ、チュグノフ工場長、おかえりなさい。先ほど厳冬計画の一時中断の通知を受け、急ぎ会議を行いました。
工場スタッフ:
こちらが暫定案となります。生産ラインの拡大だけでなく、収支構造を最適化するための、現実的な人員削減についても検討しました。
工場スタッフ:
試算によれば、工場の利益を少なくとも三割は向上させられる見込みです!あとは工場長の一声があれば…
チュグノフ:
必要ない。
チュグノフ:
エネルギーはそれを必要とする者たちに譲る。生活のためでも、商売のためでも、好きにさせたらいい。
チュグノフ:
生産停止と解雇の準備を進めてくれ。従業員の再就職支援を行い、補償金も漏れなく払うんだ。これまでみんな、ご苦労だったな。
工場スタッフ:
な、何かの聞き間違いでしょうか?どうなさったのです?苦しい時期を乗り越えて、ようやく稼ぎ時が来たというのに…
チュグノフ:
急にやる気がなくなったんだ。理由なんてものはない。
チュグノフ:
「イゼカ」は…もう休ませるべきだ。
アリョーシャ:
ロコットのメンバーへ告ぐ。「レーレク」の過激な行動は組織の評判と社会の治安を損なうものであった。よって協議の結果、その名を永久に封じることにした。
アリョーシャ:
だが、その動機が人々の利益のためであったことを鑑み、我々は政府と交渉し、最終的に一切の処罰を免除させた。
アリョーシャ:
「レーレク」本人には活動を自粛させるが、今後の素行次第では、他のコードネームでロコットでの活動再開を許可する。
アリョーシャ:
この通達の目的は、影の中で活動する者にとって、動機と手段は等しく重要であると再認識させるためだ。
アリョーシャ:
厳冬計画が一時中断され、ロコットが段階的な勝利を収めた状況であっても、決して驕らず、着実に成果を重ねていかなければならない。
アリョーシャ:
「我らは行動する——オーロラと凍土を永らえさせ、栄光と団結を築き上げるために。」
ヴォジャニーツァ:
「我らは行動する——オーロラと凍土を永らえさせ、栄光と団結を築き上げるために。」
ヴォジャニーツァ:
どうやら、本当に一段落したようだわ。
アリョーシャ:
オレたちのことか?
ヴォジャニーツァ:
ただの独り言よ。
ヴォジャニーツァ:
昔の皇都評議会は、あんなに賑やかではなかったわ。
「淑女」の墓へ向かう
オデット:
(まさか、私がここに来るなんて…)
オデット:
(今ならすべて分かります、ロザリン様。)
「淑女」:
私はこれまで、数多くの「精霊をたずねて」を見てきたわ。あんたの母親が踊ったものも含めてね。
オデット:
…どうして急にそのような話を?
「淑女」:
たとえまったく同じ演目であっても、踊る人によって、そこには違う「味」が宿る。
オデット:
まさか私とバレエの話をされるなんて。
「淑女」:
私はただ、演目が失われてしまうのを惜しんでいるだけよ。彼女はあんたに教えなかったんでしょう?
オデット:
ふんっ、そんな回りくどい挑発、らしくありませんわね。
「淑女」:
「吹き荒ぶ雪の中、私たちは抱き合い、無情に流れる時を溶かしてゆく…」
「淑女」:
「たとえ最期にこの身が砕け散ろうとも、それこそが愛の証」
オデット:
……
オデット:
歌えないのですか?
「淑女」:
おだまり。
movie
この物語は「燃珀」、「淑女」、「記憶と忘却」に関連する…しかし、オデットは最後にすべてを受け入れ、前に進み続けることを選んだ。
パイモンと一緒に辺りを散策する
パイモン:
外の空気は最高だな!頭もクラクラしないし、熱っぽさもなくなった。ようやく思う存分飛べるぞ。
パイモン:
やっと、自分がどこから来たのか知ることができたぜ。最初はちょっと不安だったけど、今はむしろ安心してるんだ。
パイモン:
「天空の島の創造物」ではあるけど、たぶんそんな大したやつじゃなかったと思うぞ。たとえば「食べて飲んで遊ぶだけの精霊」とかさ。
パイモン:
それにおまえも言ってくれただろ、こんなことくらいでオイラを…おい、早く来いよ!なんでそんなにゆっくり歩いてるんだ?
旅人:
ここ数日、ベッドの上で食べてばっかりだったから、てっきりそんな速く飛べないと思って。
パイモン:
そんなことないぞ!なんたってオイラは「白いふわふわ」で、身軽だからな!
パイモン:
最初はスネージナヤ・グラードの本屋に寄ろうと思ってたけど、今はあちこち飛び回りたい気分だし、ひとまず後回しだな…
パイモン:
あれ?なんで八重堂の娯楽小説があるんだ…ああっ!これ、オイラがフォンテーヌでいちばん好きだった推理小説だぞ!まさか続編が出てるなんて!
パイモン:
スネージナヤの本も面白そうだな。ただどれも重そうで、持ち歩くのが大変そうだけど…
旅人:
あちこち飛び回りたい気分じゃなかったの?
パイモン:
飛びながら読めば解決だぞ!
パイモン:
なあ、この二つの人形、どっちが可愛いと思う?
パイモン:
へへっ、いいぜ!店主、二つともくれ!オイラはこっちな!
旅人:
どっちを買うかって意味じゃなかったんだ…まあいいや、ここは俺が払うよ。
ブルシコ:
はい、お買い上げありがとうございます。
パイモン:
じゃあ持ってくな…あれ?
パイモン:
んん?
パイモン:
えぇええっ——!?
旅人:
ぷっ…
パイモン:
いったいいくつあるんだ!おい、なに笑ってるんだよ。まさか、最初から知ってたな!
パイモン:
見ろ、広場に人が集まってるぞ…あっ、タルタリヤだ!おーい!
「公子」:
この声…やっぱりおチビちゃんか。それに相棒も。身体のほうはもうよくなったみたいだね?
パイモン:
おう。「道化」が原因を知ってて、治してくれたんだ。へへっ、オイラが寝込んでる間、護衛を付けてくれてありがとな。
「公子」:
いや、まあそれについてはちょっと決まりが悪いというか…まさか「統括官」が君のところに行くとは思わなかったから。ごめんよ。
「公子」:
そうだ、紹介させてくれ。妹のトーニャだ。
パイモン:
よろしくな、トーニャ。
トーニャ:
こちらこそ。その、兄がいつもご迷惑をおかけしています。本当にお恥ずかしいです。
「公子」:
ハハッ、なんでいきなりそんなことを言うんだ…事実ではあるけど。
旅人:
(この子が本当のトーニャ…)
「公子」:
そういえば、劇場で会えなかったんだって?いくら待っても俺が来ないから、この子、心配になって劇場を出たみたいでね。
トーニャ:
そうなんです、何も聞いてなくて!街中を探し回って、ようやくグルポフの前で捕まえたときに、教えてくれたんですよ。
「公子」:
最近忙しくって、家に帰るヒマがなくってね…旅人なら事情を知ってるし、説明してくれると思ったんだ。
トーニャ:
もうっ、雪はどんどんひどくなるし、普段めったに遅刻しないから心配したんだよ!なのに、約束をすっぽかしただけだったなんて…
「公子」:
ごめん、ごめん、いくらでも謝るから。オヤジとオフクロにだけは言わないでくれよ。
旅人:
(すれ違いはあったけど、本物のトーニャがあの騒動に巻き込まれなかったのは、むしろ良かった。)
旅人:
(それに、タルタリヤは普段約束をすっぽかすような人じゃないし、やっぱり「レーレク」の件を追うためにチケットを譲ってくれたんだろうな。)
トーニャ:
気にしないでください、もう過ぎたことですし…あっ、面白かったですか?最初に観た人の感想を教えてください!
旅人:
うーん…
旅人:
見どころは、ここからかな。
トーニャ:
えぇっ、何ですかその感想…
パイモン:
おい、おまえたち、見ろよ!
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スネージナヤを脅かす魔物を討伐した後、女皇はすでに帰還し、スネージナヤ・グラードの玉座に座している…