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白と黒のヴァリエーション


白と黒のヴァリエーション
『黒雪鳥』という名のバレエ演目が注目を集めている中、コロレフスキー劇場内から不穏な話し声が聞こえてきた…
パイモン:
わあ、見ろよ!コロレフスキー劇団が新しい演目をやるらしいぞ。
パイモン:
『黒雪鳥』…?変なタイトルだな。雪鳥って白いもんじゃないのか?
パイモン:
主演は——
ヴォジャニーツァ:
オデット、目を覚まして。こんなにたくさんのことをあたしだけで全部こなすなんて、無理に決まっているじゃない!
パイモン:
これって…ヴォジャニーツァか?あっちから聞こえたぞ。
ヴォジャニーツァ:
開幕まであと二週間しかないのよ!どうしてこんな時に「ファデュイ」の任務なの?稽古やファンとの交流会はどうするつもりよ!
オデット:
稽古も交流会も、丸一日やるわけではありませんわ。たとえ丸一日かかったとしても、夜の時間がありますもの。
ヴォジャニーツァ:
なあに、夕飯を抜くつもり?それとも寝ないつもり?
オデット:
そんなつもりはありませんわ。自身の能力に基づいて下した合理的な判断です。決して…あら?
パイモン:
わぁっ!ごめんごめん、オイラたち、盗み聞きしようと思ったわけじゃないんだ。ただ、ヴォジャニーツァが怒ってるみたいだったから、気になって…
ヴォジャニーツァ:
旅人、パイモン、ナイスタイミングだわ。オデットを説得するのを手伝って!
旅人:
どうしたの?
オデット:
何でもありませんわ。
ヴォジャニーツァ:
うちの働き者の稼ぎ頭が、また無茶しようとしているだけよ。あなたたちも外のポスターは見たでしょう?オデットは二週間後、『黒雪鳥』に出るんだけど…
ヴォジャニーツァ:
これは元々難しい演目で、技術だけでなく、登場人物に対する理解度も求められるのだわ。
ヴォジャニーツァ:
ただでさえ稽古の時間もギリギリだっていうのに…この子ったら、ファデュイの魔物討伐任務を引き受けたのよ!
ヴォジャニーツァ:
聞いただけで時間も体力も使う仕事だって分かるでしょ!もし公演で問題でも起きたら…あなただけじゃない、劇団全体の問題なのよ!
パイモン:
うーん、ファデュイの方で調整してもらえないのか?稽古の時間がこんなにギリギリだって知らなかったって言えばいいだろ。
オデット:
いいえ、そんなことありませんわ。公演のスケジュールを知った上で受けましたの。
パイモン:
えっ!?なんでだよ?
オデット:
……
旅人:
(あまり話したくないみたい…)
オデット:
とにかく、私は両立できますわ。
ヴォジャニーツァ:
はぁ…あなたの意地っ張りには、かなわないわ。言っておくけど、あなたに連絡がつかないって誰かが文句を言って来ても、もう庇ってあげないから。
パイモン:
おう。ヴォジャニーツァ、おまえがオデットを心配してるのはわかるぞ。でも、オデットはどうしても両方を上手くやりたいみたいなんだ…
ヴォジャニーツァ:
頑固者なのは知っているけど…頼むから、今後は予定をほかの人に組んでもらって!友人として、これだけは約束してちょうだい!
オデット:
私、それくらい自分で…
ヴォジャニーツァ:
オデット?
オデット:
…わかりましたわ。
オデット:
……
旅人:
(な、なんか見つめられてる…)
旅人:
もしよかったら…
オデット:
ええ、お願いしますわ。
パイモン:
あっさりだな!?
オデット:
以前劇場に閉じ込められた時に、信頼できる人柄であることは確認できました。
オデット:
それに、執行官様とも交友がおありですから、ファデュイのやり方にも精通なさっているはず…適任ですわ。
ヴォジャニーツァ:
ふん…
旅人:
(今度はヴォジャニーツァがこっちを…)
ヴォジャニーツァ:
…どうしてあたしじゃダメなわけ?あたしのほうが付き合いが長いでしょう?
オデット:
確かにその通りです。劇場でも「組織」でも、ご一緒できて嬉しいですけれど…
オデット:
あなたに任せれば、きっと過剰に休憩時間を組み込んで…散歩やお菓子の時間に付き合うハメになりそうですもの。
ヴォジャニーツァ:
必要な休息でしょうが。
オデット:
あなたの生活には、「必要」事項が多すぎます。
ヴォジャニーツァ:
この世には面白いことがいっぱいあるのだから、ぜーんぶ体験してみるべきよ。見逃すなんてもったいないわ!
オデット:
見逃すどころか、見つけた事すらないものですから。
ヴォジャニーツァ:
あなたはいつも自分の目の前しか見ていないものね。見つかるわけないわ。
オデット:
私たちの目は前しか見えないようにできておりますわ。
ヴォジャニーツァ:
そう、だからこそ友人が必要なのだわ!友人さえいれば、あなたの「目」は二つだけではなくなるでしょう?
ヴォジャニーツァ:
旅人、パイモン、オデットのことは任せたわよ。あなたたちの「目」を信じているから。
旅人:
うん、安心して。
ヴォジャニーツァ:
オデット!あなたも旅人に任せると決めたからには、おとなしくそのスケジュールに合わせて行動すること!
オデット:
ええ、約束しますわ。
ヴォジャニーツァ:
…それならよし。じゃあ、オデットのことは任せたわよ。スケジュール帳を置いていくから、使ってちょうだい。
ヴォジャニーツァ:
『黒雪鳥』の公演は二週間後よ。忘れないでよね。
オデット:
「ファデュイ」の任務に審査が入るのは一週間後ですわ。その点も考慮してくださいね。
パイモン:
おう!任せろ!
パイモン:
ん?ってことは…オイラたち、この二週間はオデットの専属マネージャーになるってことか?
オデット:
ええ。よろしくお願いいたします、「マネージャーさん。」
ヴォジャニーツァ:
あたしの大事なオデットは任せたから。疲れさせないように、ちゃんと見てあげて。
オデット:
スケジュール帳はあちらです。これから二週間、よろしくお願いいたします。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
早めに着きましたわね。少し休んでおくといいですわ。お水でもお飲みになりますか?
パイモン:
ありがとな!じゃなくて…そういうのはマネージャーの仕事だろ!
オデット:
お気になさらず。
パイモン:
交流会の会場って綺麗に飾り付けられてるんだな。毎回たくさんの人が並ぶのか?
オデット:
ええ。公演への期待を高めるだけでなく、踊り手自身の宣伝にもなりますわ。劇団はこうしたイベントをとても重視しておりますの。
旅人:
この後は何をするの?
オデット:
劇場開放日や座談会のある日は、観客の方々と対面で交流いたします。
オデット:
今日のようなサイン会は、ファンの方々から差し出されるポスターやパンフレットにサインをするだけです。
パイモン:
おおっ!お客さんが来るたびに、最高の笑顔で「いつも応援してくれてありがとう!」って言うやつだな!
オデット:
笑顔も感謝も、必須ではありませんわ。他のスターのマネージャーをなさった時はそうでしたの?私はそういった大袈裟な挨拶はいたしません。
パイモン:
えっと…独自路線だな。いいと思うぞ。
旅人:
黒雪鳥みたいだね。
オデット:
ええ…その通りですわ。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
ターシア:
おはよう、オデットさん!
オデット:
おはようございます。すぐに参りますわ。
オデット:
お二人とも、おはようございます。
オデット:
まもなく稽古が始まりますわ。見学されるようなら、稽古場の床に直接お座りください。
オデット:
けれど、稽古というのは反復練習が中心ですから、楽しめるかどうかは保証いたしかねますわ。退屈でしたら、いつでも出ていってくださいな。
パイモン:
おう!安心しろ、オイラたちのことは気にしないでいいぞ!
オデット:
では、お先に。
パイモン:
稽古場に足を踏み入れた途端、目つきが変わったな。一気にオーラまで別人になったみたいな気がするぞ!
パイモン:
おう。オイラたちもそっと入ろうぜ。今日の稽古が順調にいくといいな!

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
こちらです。
パイモン:
オデットの任務は、ここの魔物を討伐することだよな?
オデット:
ここだけではありません、この「エリア一帯」です。けれど、一度にすべて解決しなくても、毎回少しずつ、一歩ずつ進めていけば大丈夫ですわ——ステップを踏むように。
パイモン:
へえ…ファデュイもいいことをするんだな。
オデット:
当然でしょう?
パイモン:
へへっ、それもそうだな。少なくとも、ここを魔物から守ってるのはえらいぞ!
オデット:
お喋りはこれくらいにして、始めましょう。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
(今日は休日…外に出てリフレッシュしろと言われたけれど…)
オデット:
(そんな時間があるとは思えないわ…まだ頑張れるのに…)
オデット:
(でも、予定通り行動すると約束した手前…やはり守るべきかしら。)
オデット:
レモン水を一杯…それと、白の雪玉花を一つお願いいたします。
オデット:
(まあ、いいわ。それならたまには…少し休むとしましょう。)

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
シュワロフ:
皆様、コロレフスキー劇場へようこそ!今日という劇場開放日を迎えることができ、大変光栄に存じます。さっそくですが——当劇団のトップバレリーナ、オデットの登場です——!プリンシパル
パイモン:
パチパチパチ——
オデット:
皆さま、ごきげんよう。
パイモン:
わぁ…あいつ、こんな時でも笑わないのか。
これこそがオデット様の魅力よっ!
シュワロフ:
皆様、熱いご声援をありがとうございます!
シュワロフ:
まずは、間もなく開幕となる期待の演目——『黒雪鳥』について伺いたいと思います!
シュワロフ:
本作は、ある古典名作文学をアレンジしたものです。
シュワロフ:
他とは違う外見を持って生まれた一羽の黒い雪鳥の物語を通して、自分と集団の関係だけでなく、運命という永遠に考え続けるべき話題について描かれています。
シュワロフ:
オデットさん、この作品についてどんな印象をお持ちですか?
オデット:
素晴らしい作品です。だからこそ、舞台上でバレエという形で表現することが非常に難しい…
オデット:
けれど、それだけの価値はありますわ。
シュワロフ:
簡潔かつ的確なご意見、ありがとうございます。
シュワロフ:
ですが、そのお言葉の裏には、とんでもない苦労と努力があるはずです。そちらについても、詳しくお聞かせいただけますでしょうか?
オデット:
……
オデット:
舞台に立つバレリーナたちは皆、全力を尽くして演技をしておりますわ。努力をひけらかすようなことはしたくありません。
オデット:
けれど、『黒雪鳥』は私にとって、確かに特別な意味を持つ作品です。最善を尽くしますわ。
シュワロフ:
ありがとうございます!それでは、ここからは観客の皆様からの質問コーナーに移ります——
シュワロフ:
そちらの青い服の女性、どうぞ!
今回の振り付けでは、多くの難しい技を取り入れたそうですね。さらには舞台上で連続フェッテの最高記録に挑戦しようとしていると耳にしました…それは本当ですか?
オデット:
ええ。
オデット:
今の私になら、できると思っておりますわ。
現在、スネージナヤには寒さに震えている人が大勢いる。スターとして、こうして公演を宣伝するよりも、援助に向かうのが先決だとは思わないのか?
パイモン:
むうっ…なんだよその質問…難癖つけに来たのか?
オデット:
この劇団のプリンシパルとして、私はスネージナヤの芸術の伝統を重んじ、この土地を想う心と深い愛を、バレエを通じて表現しております。
オデット:
私の公演をご覧になる方々には、芸術から運命に抗う力を得て欲しいと願っておりますわ——もちろん、あなたも。
……
オデットさん!黒雪鳥の役作りにおいて、鍵となるのは何ですか?
オデット:
孤独と高潔…決して運命に屈することなく、命を懸けて抗う心です。
シュワロフ:
ご回答ありがとうございます。会場の皆様、他にご質問はありますでしょうか?
オデット様!毎日どれくらいの時間をトレーニングにあてていますか?どんなトレーニングをしているんですか?
オデットさん!普段バレエの稽古をするときは、どんな音楽を聴いているんですか?
観客たちは次々に様々な質問を投げかけ、イベントが終わる頃には、すでに予定時間を三十分も過ぎていた…
オデット:
ふぅ…
パイモン:
おつかれ、オデット!みんなおまえが大好きなんだな!おまえも、めちゃくちゃいい受け答えだったぞ!
オデット:
本当にくたびれました。でも…
パイモン:
でも?
オデット:
皆さまの期待に満ちた眼差し、そしてイベント終了後も楽しそうに語り合う姿を見て…必ずやり遂げたいという決心が固まりましたわ。
旅人:
(どの言葉も、きっと本心だったんだな…)
パイモン:
おう。頑張れよ、オデット!でも今日のところは、早く帰って休むんだぞ!
オデット:
いえ、劇場の稽古場を借りて練習して…踊り疲れたら帰りますわ。
オデット:
ふふっ…
オデット:
この点に関しては、私のほうがプロですから。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
この作品でオデット様を観られるなんて感無量です!オデット様の孤高って感じの雰囲気は、黒雪鳥のイメージにピッタリだと思います!楽しみにしてます!
オデット:
ありがとうございます。
ミティヤ:
やあ、オデット。
オデット:
……
オデット:
ミティヤさん。わざわざ並ばずとも、マネージャーに一声かけて下さればよろしかったのに。
ミティヤ:
それは悪いからな。ファンだという立場を忘れてはいけない。
ミティヤ:
それに、列に並ぶのも楽しみの一環だ。嬉しそうにワクワクしている同志と並ぶのは、なかなか楽しいんだ。
ミティヤ:
僕もただ待っていたわけじゃないぞ、並んでる間に色々とメモしていたんだ。同時並行でタスクを進められて、なかなか充実感があったぞ。お前ならわかるだろう?
ミティヤ:
そういえば最近は、僕の同僚たちまで『黒雪鳥』について話していた。エネルギー協会にまで人気の波が及ぶとはな…
オデット:
どうぞ、サインしましたわ。
ミティヤ:
おお!ありがとうオデット。公演、頑張ってくれ!
バレリー:
……
オデット:
あなたもサインが欲しいんですの?
バレリー:
俺はミティヤ様についてきただけですが…じゃあ、お願いします。
オデット:
ええ。
バレリー:
とても美しい字ですね。
バレリー:
俺の部下も何人か、公演を観に行くようです。彼らに代わって、応援の気持ちを伝えさせてください。公演の成功をお祈りしています。
オデット:
ありがとうございます。
オデット:
…どうりでマネージャーの姿が見当たらないと思いましたわ。
パイモン:
あいつは友達が来たから、挨拶しにいったぞ。オデットのほうは大丈夫だよな?
オデット:
ええ、今日は楽しかったですわ。
パイモン:
本当か?ぜんぜん楽しそうに聞こえないぞ!
オデット:
これでも喜んでいるのです。私は笑顔を偽ることも、他人に合わせることもいたしません。
旅人:
こういうイベントは苦手なのかと思ってた。
オデット:
…態度のせいで、誤解させてしまったかもしれませんね。
オデット:
私は、こういったイベントにもそれなりの価値と意義があると思っていますわ。私のことを好いてくださる方々にとっては、なおさらです。
オデット:
それに、私も誰かに認められることで進む「力」を得られますわ。ただ、そうした「力」に依存しすぎて、自分自身の心の声をないがしろにしてはならないと、常に自分を戒めているだけです。
オデット:
さもなければ、私は私自身としてではなく、皆に期待される姿のまま生きていくことになってしまいますわ——オルゴールの上で踊る、ただの人形のように。
パイモン:
さすがだな、こんな時でも冷静なのか。
オデット:
さて、おしゃべりはもう十分ですわね。あなたたちは、何にサインしてほしいのですか?
オデット:
では、どうぞ。
パイモン:
わぁ!これは…?
オデット:
ずいぶん昔に撮ったものです。この一枚しか残っておりませんけれど…記念にはなりますでしょう。
パイモン:
すっごく素敵だな!でもこれって、すごく大事な写真なんだろ?本当にオイラたちが貰っちゃっていいのか?
オデット:
見せびらかしたりしなければ、構いませんわ。誰もが私のマネージャーになれるわけではありませんもの。
旅人:
ありがとう。
オデット:
どういたしまして。
オデット:
…こちらこそ、応援ありがとうございます。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
ふぅ…
パイモン:
これで終わりか?
パイモン:
大丈夫か、オデット?なんだか今日は、いつもより気合が入ってたな。
オデット:
そういうわけではありませんわ。ただ…
オデット:
……
旅人:
言いたくないなら、無理しないで。
オデット:
いえ、言葉を整理していただけです。
オデット:
ここは、私が幼い頃にバレエの稽古をしていた場所ですの。
パイモン:
バレエの稽古?外でか?
オデット:
もちろん、ほとんどは室内…鏡に囲まれた稽古場の中で稽古していましたわ。
オデット:
けれど、自然の中で踊るのも好きでしたから、屋外で練習することもありましたの。外で踊ると、「美しいものを讃える」という、バレエの芸術としての本質を思い出せるのです。
パイモン:
そうだったのか!じゃあ、ここの静けさを守るために、このファデュイの任務を引き受けたのか?
オデット:
それも一つの理由です。
旅人:
もう一つの理由は?
オデット:
もう一つの理由は…『黒雪鳥』ですわ。
パイモン:
『黒雪鳥』?今回の演目のことか?
オデット:
ええ。私、幼い頃にもこの演目を練習しておりましたの。けれど…結局舞台に立つことはかなわず、当時は長い間落ち込みました。
パイモン:
たしか…羽の色がみんなと違う、黒い雪鳥の話なんだよな。
オデット:
ええ。私、子供の頃は彼女をとても可哀想に思っていましたの。生まれつきの羽の色のせいで、理不尽な運命を強いられたことを…
オデット:
そうでなければ、その他の仲間たちと同じように、普通の生活を送ることができたはずですわ。
オデット:
だから…黒雪鳥が嫌いでしたわ。彼女のようにはなりたくないと思っておりました…
オデット:
けれど、運命とは残酷なものです。私が舞台の上で白く輝く雪鳥になりたいと願えば願うほど、現実の私は異質な黒雪鳥へと近づいていった…
旅人:
(ファデュイとロコットのことかな…)
オデット:
幸い、今はもう黒雪鳥を嫌ってはおりませんわ。
オデット:
けれど、幼い頃の気持ちを思い出すことで、これまでの歩みを振り返って、劇中の黒雪鳥の心をよりうまく表現できると思いましたの。
パイモン:
それで、この場所に来ようと思ったんだな…
旅人:
どうだった?
オデット:
…あなたたちは、黒雪鳥の結末をご存知かしら?
旅人:
知らない。
オデット:
彼女は最終的に群れに溶け込もうとするのをやめて、独り気高く生きていくことにするのです。
オデット:
心を決めた彼女は、どの雪鳥よりも高く飛びました。最後には純白の雲が彼女を抱きしめ、彼女はそのまま、どの白い雪鳥も飛んで行くことのできない場所へ旅立ったのですわ…
パイモン:
綺麗な終わり方だな。
オデット:
ええ。孤独でありながらも、美しい。
パイモン:
へへっ、今のオデットならきっとうまく演じられると思うぞ。オイラたちも応援してるからな!
オデット:
ありがとうございます…
オデット:
まずはファデュイの仕事をしっかりとこなさなくては。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
討伐完了。
パイモン:
おお、お疲れ!ちょっと休憩するか?
オデット:
大丈夫、疲れてなんていませんわ。
パイモン:
前にオデットからこの任務を引き受けた理由を聞いたけど…オデットってファデュイの仕事も結構好きだよな。
パイモン:
少なくとも、ここ何回かの討伐で疲れたとか大変だとか、文句を言ってるところなんか見たことないぞ。
オデット:
おかしいでしょうか?
パイモン:
そういうわけじゃなくて。ただ…こういう仕事とバレエの仕事って、ちょっとそぐわない感じがするだろ。
オデット:
ええ…以前は、私もそう思っていましたわ。
旅人:
今は?
オデット:
今は…こういった仕事は頭を冷やしてくれると思っています。それに、気晴らしにもなりますわ。
オデット:
幼い頃…ファデュイに入ったばかりの頃は、確かにこの仕事がとても嫌いでしたわ。バレエの稽古の時間を奪われてしまいそうでしたから。
オデット:
それに…
オデット:
父との別れ、母の傷…長い間、私はかつての幸せが打ち砕かれたという事実から立ち直ることができませんでした。
オデット:
私はそのことをロザリン様やファデュイ…そして「厳冬計画」のせいにして、憎しみで自分を駆り立て、前へと進んで来ましたの。
オデット:
今になって、私が本当に嫌いだったのはそれらではなかったのだとようやくわかりました…私はただ、自分とは関係ないはずの物に、自分の生き方を支配されるのが嫌だったのです。
パイモン:
オデット…
旅人:
本当の気持ちに気づいたんだね。
オデット:
本当の気持ち…
オデット:
今の私はかつて夢にまで見た舞台に立ち、幼い頃の夢を叶えました。本来ならば誇りに思うべきなのに…時折、苦しく感じてしまいます。
パイモン:
えっ?なんでだ?
オデット:
人々が期待する「私」はあまりにも輝かしく、あまりにも完璧だからです——それは、私の光ではないのに…
オデット:
今やその光が、私の生活にまで影響を及ぼし、支配し始めているような気がします。
オデット:
皮肉なものですわね。かつてはファデュイの仕事に支配されそうだったバレエが、私の生活を支配するようになるだなんて…
オデット:
仰る通り、「支配」とまではいかないかもしれませんわね。ただ、時々少し嫌になってしまいますの。
オデット:
そんな時は、ファデュイの仕事に集中するのですわ。そうすると冷静になって、何のために踊っているのか見つめ直すことができます…
オデット:
光の中では、自分の姿もはっきりと見えませんから。
パイモン:
なんか…哲学的だな。
オデット:
ただの、個人的な所感です。
オデット:
時々、私は両親から、血とともにそれぞれの仕事に対する情熱を受け継いだのかもしれない…と思います。
オデット:
けれど、どちらも半分だけ…だから、永遠に一方からもう一方へと飛び移り続け、探し求め…永遠に腰を据えられないのです…
旅人:
見方を変えて…
オデット:
そうですわね…
オデット:
…どちらを選ぼうとも、二人がかつて歩んだ道筋に沿って前へ進み続けている…ともいえるかもしれません。
オデット:
たとえあの頃の純粋な喜びが失われても、私は孤独ではありませんわ。
オデット:
二人の翼に守られながら、私も翼を育て——最後には私自身が決めたあの空へと羽ばたくのです——あの黒雪鳥のように。
パイモン:
おう!オイラたち、これからもずっと応援してるからな!
旅人:
話してくれてありがとう。
オデット:
マネージャーなのに…なんだか変ですわね。
オデット:
けれど、どうしてあなたが複数のファデュイの大物たちと良好な関係を築けたのか…今なら理解できますわ。
オデット:
あなたは、どんな話も根気よく聞いてくださるのですね。
オデット:
お返しになりそうなものは持っておりませんけれど…よろしければ、この栞を。記念に取っておいてくださいませ。
パイモン:
すっごく綺麗だな!ありがとう!
オデット:
こちらこそ。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
ヴォジャニーツァ:
こうやって回るの?つ、つま先が痛くてかなわないのだけど…本当にこれであってる?
オデット:
ええ。
ヴォジャニーツァ:
うぅ…目が回ってクラクラするのだわ…これも大丈夫なの?水の中でなら、どれだけ回ってもピンピンしているのだけど…
オデット:
初心者なのですから、あたりまえですわ。
ヴォジャニーツァ:
でも、あなたはいつも舞台上であたし以上にくるくる回っているでしょう。一体どうしているの?舞台上で目を回しているわけはないでしょうし…
オデット:
どこか一点を見つめたまま体を回転させ、一周したところで素早く首を戻すのです。
ヴォジャニーツァ:
…こう?
ヴォジャニーツァ:
オデット…ちょ、ちょっとはマシになったかしら?
オデット:
ええ、ちょっとは。
ヴォジャニーツァ:
はぁ、陸の人間って、水の中にいるフェイよりもずっと大変なのね…
オデット:
練習あるのみですわ。もちろん陸の上で。
オデット:
経験上、少なくとも一ヶ月はかかります。
ヴォジャニーツァ:
えぇっ…一ヶ月で習得できるの?
オデット:
少なくとも、慣れはしますわ。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
パイモン:
今日は休みの日だけど、オデットはちゃんと休んでるのか…?あいつって、普段から頑張り過ぎちゃうタイプだよな。
パイモン:
心配だから、あいつのよく行く場所をいくつか回ってみないか?会えたら、ついでに様子を聞いてみようぜ。
パイモン:
劇場には来てないみたいだな。よしよし!
パイモン:
こっちにもいないな…魔物の痕跡もないし。
パイモン:
レストランにご飯を食べに来てる様子もないな…
パイモン:
だいたい回ったけど、ニアミスとかじゃない限り、家で休んでるみたいだな。それなら安心だぜ!
旅人:
パイモン、あそこ。
パイモン:
わっ、オデット!
オデット:
……
パイモン:
オデット!こんなところで会えるなんてな!
オデット:
あなたたち…私に何かご用ですの?
パイモン:
いやいや、見かけたから挨拶しに来ただけだぞ。なんでそんなに緊張してるんだ?
パイモン:
箱がいっぱい…買い物してたのか?
オデット:
うっ…
パイモン:
オデット?
オデット:
オルゴール、ですの…どれが出るのかわからないのですけれど、私、シークレットが欲しくて…
パイモン:
それでこんなにたくさん買ったのか。えっと、欲しい物は出たのか?
オデット:
いいえ。
オデット:
まだ最後の一つが残っています…
旅人:
出ろ~!
オデット:
うぅ…
オデット:
…被りました。これでこのオルゴールは五つ目…
旅人:
か、悲しすぎる…
オデット:
もう十個買ってまいります。
パイモン:
ちょっと待て、オデット。ちょっと冷静になったほうがいいんじゃないか?
オデット:
至って冷静ですわ。冷静だからこそ、とりあえず十個なのです。
パイモン:
別に買うなって言いたいわけじゃない。でも…もう相当な数を買ってるんだろ?ムキになってるとかじゃなくて、本当に心からそのシークレットが欲しいのか?
オデット:
ええ…
オデット:
以前、バレエの練習をしていた時、転んでしまいましたの。母が助け起こしてくれたのですけれど、その時に母はうっかり、一番お気に入りだったオルゴールを落としてしまったのです…
オデット:
かなりの年代物でしたから、同じようなオルゴールは見つからず、修理するのも難しかったのですが…今回のシークレットが、ちょうどそれとよく似ていたのですわ。
パイモン:
そうだったのか…
オデット:
…ありがとうございます。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
ヴォジャニーツァ:
セラーガーデン・スモークソーセージを一つ、グルポフ黒パンを一つ、雪国スープを二つ、スネージナヤ串焼きを四つ。それからアイススグリのアイスクリームを人数分…
オデット:
私は結構ですわ。
ヴォジャニーツァ:
ウソでしょう?あなた、休みの日にもサラダ以外食べないの?
オデット:
ええ。
ヴォジャニーツァ:
じゃあ、アイススグリのアイスクリームは四つでお願い。
パイモン:
ごめんな!ちょっと遅くなっちゃったぜ。
アリョーシャ:
オレたちが早かっただけだ、気にするな。ちょうど今ヴォジャニーツァが料理を頼んでくれた。
パイモン:
へへっ、また美味しいものをたらふく食べられるな!
ヴォジャニーツァ:
さて、まずはオデットの公演の前祝いよ!明日の公演がうまく行くことを願って、乾杯!
パイモン:
乾杯!
旅人:
乾杯!
ヴォジャニーツァ:
乾杯!
アリョーシャ:
乾杯!
ヴォジャニーツァ:
あなたの前祝いでしょ?ほら!
オデット:
必要ありません。
ヴォジャニーツァ:
乾杯!
オデット:
…?
ヴォジャニーツァ:
空気が読めないあなたの代わりに言ってあげたのだわ。
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
礼はいらないわ。あたしもあなたのような同僚兼友人がいて嬉しいもの。
ヴォジャニーツァ:
マネージャーのほうはどう?二週間一緒に過ごしてみて、もう二度とやりたくないという気持ちにはならなかった?
ヴォジャニーツァ:
そうでしょうね。オデットと一緒なら、楽しいのは当たり前よ。
ヴォジャニーツァ:
具体的に何が楽しかったのか、聞かせてよ。
みんなで美味しい料理を楽しんだ… 食べながら、オデットの様子をうかがいつつ、いくつかの話題でヴォジャニーツァの好奇心を満たしてあげた…
ヴォジャニーツァ:
いいわねぇ…
ヴォジャニーツァ:
旅人、いっそこのまま、あたしのマネージャーにならない?その経験、無駄にするのはもったいないわよ。
オデット:
管理が必要なほど、大量に仕事があるとは思えませんけれど。
ヴォジャニーツァ:
なによ。仕事など、作ろうと思えばいくらでも作れるのだわ!

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
(…あと少し。急いで次の場所へ向かわなくては。)
「傀儡」:
ちょっと待ちなさい。
オデット:
…「傀儡」様。
「傀儡」:
ただ期限までに任務を終わらせるためだけに、雪の中をそんなに慌てて走るなんて…アナタらしくないわね、オデット。
オデット:
……
「傀儡」:
ワタシが今回の任務の審査を担当する執行官よ。で、審査の結果については、言うまでもないはずよ。
オデット:
申し訳ございません…「傀儡」様。
「傀儡」:
ええ、謝罪は受け取るわ。でも、アナタの事情も理解しているつもりよ。
「傀儡」:
『黒雪鳥』のポスターを見たわ。一週間後には開幕——時間がないぶん、稽古にかなりの労力を割いているようだけど。
「傀儡」:
任務を受ける時点で、自分のキャパシティをきちんと計算しておくべきだったわね。
オデット:
大変申し訳ございません、「傀儡」様…
「傀儡」:
もう謝らなくったっていいわよ。ワタシだって説教しに来たわけじゃないんだから。
「傀儡」:
……
「傀儡」:
アナタの努力は決して無駄じゃないわ。あのポスターの前を通り過ぎた時、観客たちがアナタのことを話題にしていたの。
「傀儡」:
アナタの能力とセンスを称賛し、過去の自分を超え続ける姿勢を高く評価していたわ。アナタがまた素晴らしい演技を見せてくれると、みんな固く信じているようね。
「傀儡」:
正直言って、ワタシもアナタの演技には期待しているわ。でも仕事のことは別問題よ。
オデット:
…承知しております。
「傀儡」:
なら、ワタシから言えることはもうないわ。次からはちゃんと気を付けることね。
オデット:
かしこまりました、「傀儡」様…
「傀儡」:
ああ。そうだわ、オデット。
オデット:
はい?
「傀儡」:
公演、頑張りなさい。ワタシもアルレッキーノも見に行くから。
オデット:
…はっ、はい!ありがとうございます。
パイモン:
今日って、ファデュイの任務の審査日だよな?
パイモン:
オデットはどの仕事もよくやってたし、きっと問題ないはずだぞ!
「傀儡」:
ごきげんよう、オデット。あら?アナタたちもいたのね。
オデット:
…「傀儡」様。
パイモン:
サンドローネ?なんでここにいるんだ?
「傀儡」:
それはこっちの台詞よ。ワタシは今回の任務の審査を担当する執行官なの。
オデット:
まさか「傀儡」様が直々に担当されるとは…
「傀儡」:
ちょうど時間が空いていただけよ。ほら、アナタたち二人は席を外しなさい。この審査はファデュイの内部のことよ。
パイモン:
お…おう…
オデット:
「傀儡」様。何かすべきことはありますでしょうか?
「傀儡」:
ないわ、審査はもう完了したもの。
オデット:
……
「傀儡」:
「魔物討伐任務」なのだから、目標地点の魔物の出没状況を視察すれば済むわ。
「傀儡」:
ここに来るまで見てきたけれど、よくやっていたわ。合格よ。これからも頑張りなさい。
オデット:
…ありがとうございます、「傀儡」様。
「傀儡」:
ワタシにお礼を言ってどうするの?頑張ったのはアナタでしょう。
「傀儡」:
そういえば、『黒雪鳥』のポスターを見たけれど、そっちの準備はどう?最近忙しかったけれど、体は大丈夫なの?
オデット:
問題ありません、「傀儡」様。お気遣いありがとうございます。
「傀儡」:
……
「傀儡」:
(あぁ!後輩とのコミュニケーションって本当に難しいわね。特にこの子の性格…当時のロザリンの気苦労が分かった気がするわ。)
オデット:
「傀儡」様、他にご用がないのでしたら…
「傀儡」:
ちょっと待ちなさい。
オデット:
はい…?
「傀儡」:
えっと…今回の担当エリアは、アナタが子供の頃によく行っていた場所だったそうね。
オデット:
…ロザリン様からお聞きになられたのですか?
「傀儡」:
そんなところよ。
「傀儡」:
その…ワタシが言いたいのは…つまり…
オデット:
…はい。
「傀儡」:
はぁ、はっきり言わせてもらうわ。ワタシもアナタも、自分の心と上手く付き合っていく方法を見つける必要があると思うの。
「傀儡」:
これは、ただのアドバイスよ——たまには自分の心の声にきちんと耳を傾けてみなさい。いつまでも心の中の「その子」を隠してばかりいないで。
オデット:
……
「傀儡」:
別に上官としての命令ってわけでもないし、指図するつもりもないわ。役に立たないと思うなら、独り言だとでも思って。
オデット:
「傀儡」様…少し、雰囲気が変わりましたね。
「傀儡」:
そうかしら?ふふっ…褒め言葉として受け取っておくわ。
オデット:
はい。ご助言、ありがとうございます。参考にさせていただきます。
「傀儡」:
ええ、それじゃあ。今度機会があったら、お茶会にいらっしゃい。アルレッキーノもいるわ。
「傀儡」:
もし緊張するなら、リネたちや旅人も呼びましょう。ティーカップをいくつか多めに用意すればいいわ。
オデット:
はい…「傀儡」様。ありがとうございます。
パイモン:
話は終わったか?どうだったんだ?
オデット:
合格でしたわ。それに…思いがけない収穫がありました。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
パイモン:
今日はいよいよ『黒雪鳥』の公演日だな。オデット、コンディションはどうだ?
オデット:
悪くありませんわ。稽古で怪我もしませんでしたし、身体もさほど疲れておりません。
オデット:
通し稽古の調子でいけば、高難易度動作も予定通りこなせそうです。それどころか予想以上に上手くいくかもしれませんわね。
オデット:
ただ…
オデット:
最近は劇団のことに集中しすぎて、ファデュイの仕事がおろそかになっておりました…
オデット:
いえ…私が自分のキャパシティを考えずに、任務を引き受けすぎてしまったのです。
オデット:
今さらこのようなことを考えても、演技の役には立たないと分かっておりますけれど…「召使」様と「傀儡」様が今日の公演を観にいらっしゃると聞いて、少し緊張しておりますの。
パイモン:
うぅ…おまえの気持ち、わかるぞ。
パイモン:
でも上下関係は抜きにして、あいつらはおまえの演技に期待してるからこそ、見に来てくれるわけだろ?
パイモン:
仕事のことは一旦忘れて、まずは公演に集中しようぜ!
オデット:
ええ、そのつもりです。
オデット:
早めに入れるように、チケットをお渡ししておきますわね。関係者側からご入場いただけますわ。お友達とおしゃべりでもなさって。
パイモン:
今日は誰が来るんだ?
オデット:
執行官様お二人の他には、ヴォジャニーツァ、アリョーシャ、ミティヤさん、バレリーさん…
旅人:
賑やかだね…
オデット:
私は会わないでおきますわ。
オデット:
開演まであと少しですけれど…心を落ち着かせて、『黒雪鳥』の物語について考えたいんですの。
オデット:
柔軟性とコントロール力、そして黒雪鳥の異質な雰囲気を表現できるだけの実力は持ち合わせていると自負しておりますけれど…
オデット:
彼女の心が変わった根本的な原因については、もっと深堀りできる気がしておりますの…
旅人:
原作をもう一回読んでみたら?
オデット:
もうずっと読んでおります。
オデット:
それに、参考にはなりますけれど、あくまで原作者の表現ですから。「私」たちの作りあげたものとはやはり少し異なる部分がありますわ。
オデット:
ですが、ご心配なく…お二人のおかげで、今日までにいろんな方の声を聞くことができました。観客の心の中にある黒雪鳥のイメージは、理解できています。
オデット:
最後の仕上げに、とても役立ちますわ。少なくとも、皆さまの期待には応えてみせます。
旅人:
いいね。
オデット:
それでは、また後ほど。
オデット:
あなたたちの拍手を待っていますわ。
オデット:
「技術的には完璧な公演でしたが、自分を見失ってしまいましたわ。」
パイモン:
いよいよ『黒雪鳥』の初日だな…
パイモン:
時間が過ぎるのは早すぎるぞ。やっとの思いで一つ終わらせたら、すぐ次が始まって…その繰り返しだ。
旅人:
マネージャーも楽じゃないね…
パイモン:
オデット、大丈夫か?もうすぐ公演だけど、調子はどうだ?
オデット:
ええ…最近はファデュイの任務に集中していて、舞台のほうが少しおろそかになっていましたわ。
オデット:
いえ…私が自分のキャパシティを考えずに、任務を引き受けすぎてしまったのです。
パイモン:
い、今から急いで練習すればまだ間に合うか?開演までまだちょっと時間があるだろ。
オデット:
バレエは毎日の積み重ね…付け焼き刃でどうにかなるものではありません。
パイモン:
それもそうだな…
オデット:
ですが、ご心配なく。何とかなりますわ。
パイモン:
本当か?何かいい案があるのかよ?
オデット:
方法、とまでは言えませんけれど…今回お見せする黒雪鳥は、いつもとは少し違ったものになるはずです。
パイモン:
どういうことだ?
オデット:
あのファデュイの任務中…あなたたちのおかげで、私はかつての自分と再び向き合い、本当の心に耳を傾けることができました。
旅人:
俺たちは別に何も…
オデット:
いいえ、あなたたちはいわば観客です。私…観客の視点に立って初めて、舞台上の自分をはっきりと見られましたの。
オデット:
光り輝く舞台の上で、ずっと外部からの評価を受けてきたからか…これまでは、こんな風に静かに自分自身を見つめ直せなかったのです。
オデット:
黒い雪鳥と同じですわ——雪鳥の群れの中に長く留まりすぎたせいで…自らの羽の色を忘れそうになっていました。
パイモン:
だから…かえってよかったって思うのか?
オデット:
少なくとも、私にとっては。今回は自分なりの解釈で、演じてみることにしました。
オデット:
観客にとっては…どうかしら。でもいずれにせよ、自分の心に従うと決めたんですの。
旅人:
いいと思う。
パイモン:
うんうん、がんばれよ!オイラたちにできることはあるか?
オデット:
ありがとう。けれど、もう十分ですわ。しばらく、一人にさせてください。
オデット:
私が何を求めているのか…観客の皆さまに何をお見せしたいのか、しっかりと考えたいのです。
パイモン:
おう。じゃあ、夜の公演を楽しみにしてるぞ!
オデット:
ええ、舞台の上から、あなたたちを探しますわ。
オデット:
「私は自分らしく生きることを決心しました…相応の代償を払って。」
ヴォジャニーツァ:
オデット、あなたは最近なにをしていたわけ?
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
聞きたくなくても、あなたの噂でもちきりよ。
ヴォジャニーツァ:
群舞の人たちが楽屋でずっと話していたわ。あなたが練習の時、上の空だったって。コールド
ヴォジャニーツァ:
それに、ファデュイの制服を着たあたしたちのファンが、あなたの近況を遠回しに探ってきたわよ。ファデュイの仕事すらまともにこなせていないようね?
ヴォジャニーツァ:
ちょっと!オデット!あたしの話を聞いているの?ちゃんと「目」を合わせなさい!
オデット:
申し訳ございません、反省しておりますわ。けれど今日はもう眠いので、お先に失礼します。
ヴォジャニーツァ:
この期に及んで眠いですって?この二週間いったいなにをしていたのよ!
ヴォジャニーツァ:
オデット!
オデット:
……
パイモン:
えっと、その…オデット。
オデット:
マネージャーは楽な仕事ではありませんし、あなたたちを責めるつもりはありません。
オデット:
ヴォジャニーツァが最初から言っていた通り…何もかも、私の自業自得です。同時にあんなに多くのことを引き受けるべきではなかったのです…
オデット:
自分を…過信しておりました。
オデット:
…先に戻ります。それではまた。
パイモン:
オデット…はぁ…
パイモン:
申し訳なさでいっぱいだけど、今無理についていったら、もっと辛い思いをさせちゃうかもな…しばらくしてから、様子を見に行こうぜ。
パイモン:
なんとかなるといいな…
パイモン:
なあ、オデットを見かけなかったか?
旅人:
見てない。
パイモン:
さっき舞台裏に行ってきたんだけど…スタッフのみんなが、オデットはカーテンコールが終わって着替えたあと、どこへ行くのかも言わずに、一人で出て行っちゃったって言ってたぞ。
パイモン:
本当は…本当はみんなで、ちょっとしたお祝いのパーティーをするはずだったのに…
パイモン:
あ…オデット!
オデット:
……
オデット:
ごめんなさい…
オデット:
少しの間、一人にしていただけませんか?
旅人:
オデット、君が心配なんだ。
パイモン:
ここ二週間、オイラたちはずっとおまえのそばにいたから、おまえが両方の仕事を同時にこなすためにどれだけ努力してきたか知ってるぞ…
オデット:
それでも、うまくできませんでしたわ。
パイモン:
でも、うまくやろうと頑張ったんだろ!ただ——
オデット:
パイモン、気遣ってくれてありがとう。けれど、慰めは不要です。
オデット:
難しい技をこなせず、観客の皆様の期待を裏切ってしまいました。
オデット:
そしてファデュイの任務もまっとうできず、自分自身を裏切ってしまった…
オデット:
こうした過ちが他の方の心ひとつで許されてしまうとしたら…余計に恥ずかしくて、誰にも顔向けできませんわ。
パイモン:
自分に厳しすぎるぞ…
旅人:
もしもう一度チャンスがあったなら…
オデット:
……
オデット:
良い質問ですわね——答えは「いいえ」ですわ。
オデット:
仰る通り、私は諦めきれないのです…
オデット:
理想の結果を得られずとも、心のどこかで期待してしまう…ほぼ不可能だと分かっていながらも、やはり成し遂げたいと思ってしまうのですわ。
オデット:
私は…こんな人間だったのですね…
パイモン:
悪いことみたいな言い方するなよ。それがオデットなんだろ?ちょっと意地っ張りだけど、強いんだ。
旅人:
まるで…羽ばたく前の黒雪鳥みたいに。
オデット:
…ありがとう。
オデット:
慰めは不要と言っておきながら…話して、だいぶ心が楽になりました。
パイモン:
えっ、そうか?
オデット:
ええ。一番大切なのは、自分自身を見つめられたことです。
オデット:
すでに終わってしまったことの取り返しは付きません。責任は背負いますわ…けれど、決してくじけたりしません。
オデット:
次の公演、次の任務では…必ず皆さまに、今日とは違う私をお見せいたします。黒雪鳥
パイモン:
ついに!『黒雪鳥』の公演日だぞ!
パイモン:
思い返せばこの二週間、オデットの予定をつめつめにしちゃったよな…まるであいつの得意なバレエの技みたいに、くるくる回りっぱなしだったぞ。
パイモン:
まあでも、ファデュイの任務はしっかりこなせたし、稽古とか劇場のイベントのほうも全部欠かさずに出れたし…完璧だったよな!
オデット:
お二人とも、おはようございます。
パイモン:
コホン、本人にインタビューしてみようぜ。オデットさん、今日の公演に自信は——?
オデット:
ええ。
パイモン:
あっさりしすぎだろ!トップバレリーナのオデットさん、なんと「ええ」の一言で全ての気持ちをまとめてしまいました…
パイモン:
——いくらプロの記者でも、これを材料にして面白い記事を書くのは無理だぞ!
オデット:
私からも一つ、あなたたちに質問がありますわ。
パイモン:
おっ?なんでも聞いてくれ!
オデット:
あなたたちは、黒雪鳥の心に変化が生じた根本的な原因は何だと思いますか?
パイモン:
ああ…なんで群れに溶け込もうとするのをやめたのかってことだよな?
オデット:
そうですか…この問題に模範解答はありませんし、私もあなたの答えが間違っているとは思いませんわ。
オデット:
けれど、私は…彼女は本当の自分を見つけることができたのだと思います。
パイモン:
へえ、オデットはなんでそう思ったんだ?
オデット:
まず…第一幕で——
オデット:
黒雪鳥は物語の主人公として、スポットライトの下に照らし出されます。そして彼女は理不尽な運命に直面し、それに最後まで抗うことを決意する…
オデット:
彼女は誰よりも努力し、何にも屈することなく、それで十分だと思い込みました…
オデット:
けれど、光の中では自分自身の姿をはっきりと見ることはかないません。
パイモン:
それって…
オデット:
生活を支配する力に「対抗」すること…それが、彼女の唯一の生き方でした。
オデット:
だから彼女は雪鳥の群れと対立し、自然と対立し、運命と対立した…
オデット:
要するに、彼女は敵を作りすぎてしまったのですわ。本来彼女の敵ではないものまでを巻き込んで…真の敵が「変わろうとしない自分」であることに気づけなかったのです。
オデット:
だから彼女はずっと、あるところから次のところへ、一つの瞬間からもう一つの瞬間へと飛び回り続けるしかなかったのですわ…
パイモン:
オデット…
オデット:
あなたたちのおかげで…あなたたちと共に過ごし、言葉を交わしたことで…
オデット:
私はこの作品についてより深く考えることができました。立ち止まって、自分自身にさまざまな問いを投げかけることができたのです。
オデット:
何のために踊るのか、なぜファデュイの仕事を諦めたくないのか…
オデット:
今回、私は受け身な姿勢の奥底に埋もれていた、自分自身の「欲」に気づきました。
オデット:
私は強欲にも、周囲にも自分にも認められたいと思っていた…そのうえ、少し認められただけでは満足できませんの。
オデット:
あまり意識したことはありませんでしたけれど、結局のところ、この貪欲さが私を形作り、私を駆り立て…前へ進ませてくれるのですわ。
オデット:
必死に手あたりしだい抗って、疲弊する必要などどこにもなかったのですわ。黒い雪鳥が、自らの羽の色を変える方法を求めてはいけないのと同じで…私は自身の「欲」に従うべきだったのです。私には、それができるのですから。
旅人:
その通りだと思う。
パイモン:
おう、そのほうが、オデットは輝いてると思うぜ!
オデット:
ありがとうございます。
オデット:
そういえば…この作品の最後の一節を、あなたたちにお聞かせしたかったのですわ。ええと…読み上げますわね。
オデット:
「舞う必要のない朝、黒い雪鳥は湖面に映る自らの影を静かに眺めていた。」
オデット:
「朝日の傍らに浮かぶ雲は、すぐ目の前にある——翼を伸ばせば届きそうなほどだ。」
オデット:
「『私の命が、残り最後のひとときとなったら』黒雪鳥は考えた。『一番高い場所まで飛んで行って、この世界を見てみたい。』」
オデット:
「『雪鳥が為したことのないことを為し遂げ、雪鳥が見たことのない夢を見るのだ。』」
旅人:
それが、彼女の本当の願い…
オデット:
先ほど申した通り、正しい答えなどありません。けれど今回、私はこう解釈したいのですわ。
オデット:
母がよく言っておりました…バレエとは技巧と技術であり、感じ、表現することだと。
オデット:
答えを見つけることができた今なら、きっと私なりのやり方で、この作品を演じきれると思いますの。
オデット:
やっと…幼い頃の願いが叶いますわ。

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
ヴォジャニーツァ:
オデット~♪雪だるま作りましょ~♪
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
列車に飛び乗って…雪国を一周~♪
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
お魚と歌うわ~♪あなたがいないから~♪
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
舞台は満席でも…あたしはひとりぼっち~♪時計を見つめるだけ~♪
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
チクタク、チクタク、チクタク~♪
オデット:
……
ヴォジャニーツァ:
「ああっ、いやよ!あたしはあなたを水の中に引きずり込みたくなんかないのだわ。伝説の水の精じゃあるまいし!」
オデット:
…稽古は十分のようですわね。セリフも完璧です。
ヴォジャニーツァ:
違ーう!そこは「もう大丈夫ですわ、ヴォジャニーツァ。」って言うところでしょ!
オデット:
…最初から、「大丈夫」なように見えますけれど。
ヴォジャニーツァ:
ふん、もういいわよ——それなら…
オデット:
……

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
応援、ありがとうございます。
オデット:
応援、ありがとうございます。
オデット:
応援、ありがとうございます。
オデット:
ふぅ…
アリョーシャ:
オデット。会場にペンを忘れてたから、持ってきたぞ。
オデット:
応援、ありがとうございます。
アリョーシャ:
えっ?

白と黒のヴァリエーション・スケジュール
現在、オデットのスケジュールが進行中…
オデット:
まさかここでお会いするとは。ちょうど、最近の業務報告を終えたところですの。
旅人:
順調だった?
オデット:
ええ…思い返せば…順調だったと思いますわ。お気遣い、感謝いたします。
オデット:
最近あまり寝れていなくて、少々思考が鈍くなっていますの。
オデット:
幸い、普段からあまり喋るほうではありませんから、明らかなミスをせずに済みました。危ないところでしたわ。
旅人:
休める時はしっかり休んでね!
オデット:
ええ。