arrow_back 原神 クエスト
問題メリュジーヌと解決ロボ 第二幕
任務一覧
ロシェとケヴィンの犯行の可能性を排除した後、「エレガント食器商会」という名の団体があなたたちの視野に入った…
トゥローザ:
パイモン!旅人、今晩は。
パイモン:
トゥローザ!そ…その服、まさか仕事を辞めたわけじゃないよな?
トゥローザ:
まだ辞めてないわ。制服を脱いだほうが楽だからってだけ。どう?この服おかしいかしら。
旅人:
なかなかいいよ。
パイモン:
確かにトゥローザ、顔色もよくなったし、喋り方も優しくなったな。
トゥローザ:
このほうがあたしの生活に合っているみたい。何もできないなら、何もしないのが一番だもの。
パイモン:
そんな風に考えるなよ…今回はたまたま面倒な事件に遭遇しちゃっただけだろ。
トゥローザ:
この事件だけじゃないわ。フォンテーヌの巡水船のことは知っているかしら?
パイモン:
オイラたち、それに乗ってフォンテーヌに来たんだ!
トゥローザ:
じゃあきっと、アイベルがガイドをしてるクレメンタイン線ね?ナヴィア線のほうは、エルファネが担当しているわ。
トゥローザ:
実はね、あたしも昔、ガイドをしていたの…三本目のカーレス線。フォンテーヌ科学院行きだったけれど、事故で運行停止になっちゃったわ。
パイモン:
へえ、トゥローザはガイドもしてたんだな!すごいじゃないか!
トゥローザ:
ちっともすごくなんかないわ。ガイドはエリートじゃないもの…エージェントとして出来が悪かったから、ガイド担当に回されただけよ。
パイモン:
そうだったのか…じゃあ、その線が運行停止になったから、マレショーセ·ファントムに戻ったのか?
トゥローザ:
それも違うわ…お客さんから苦情があって、クビになったの。一緒にいる時はあたしを褒めてくれてたのに、帰ってから苦情の手紙を書く…そんなお客さんもいるのよね。あたしは「鴉みたいにかまびすしい」んですって…
トゥローザ:
あたし、耐えられなかった…苦情そのものじゃなくて、あたしに対して不満があるのに、顔を合わせてる時は褒められるなんて。
トゥローザ:
ここだけの話、あたしが鴉みたいだって苦情を入れた最初の人はユンカーさんだったの。裏表のある人だったわ。
パイモン:
それで最初から喧嘩してたんだな…その気持ち、ちょっとだけわかるぞ…
トゥローザ:
さ、いやな話はここまで。とにかく、美味しいものを楽しみましょう!
トゥローザ:
ホテル·ドゥボールは公式ガイドのお勧めにも入ってるわ。あたしは好きじゃないけれど、あなたたちは気に入るかもね。
旅人:
トゥローザ、ありがとう。
パイモン:
でもカーブを待たなくていいのか?まだ来てないよな。
トゥローザ:
大丈夫、カーブはこういうものは食べないのよ。カーブは今、ホテル·ドゥボールのデータを嘘学習モジュールに入力しようとしているわ…
パイモン:
嘘学習モジュール…カーブってすごく…特殊だな…
トゥローザ:
ええ、知り合えて嬉しいわ。でもコアの老朽化がひどくて、カーブはもうすぐ休眠状態になるの…はぁ、機械の体は取り換えられるけど、コアはそうはいかないから…
パイモン:
休眠!?まさか…
トゥローザ:
もう動かなくなるってことよ…ああ、あたしって本当に役立たず。エージェントとして事件を捜査することもできないくせに、ガイドをやれば苦情を言われ、朝食作りは言わずもがな。そして今は、物的証拠の管理ですら…
旅人:
カーブを修理するために抜け出してきたの?
トゥローザ:
カーブを修理できる人なんて、モッソ博士以外いないわ。あたしはただカーブに、人間がどんな嘘をつくのかってことをもっと見せて、「モッソ協定」を突破するのを手伝ってあげたいだけ。
パイモン:
「モッソ協定」を突破する?どうして?
トゥローザ:
突破出来たら、とてもスゴいことよ!カーブは本物の人間になれるかもしれないわ!
パイモン:
オイラ、なんかとんでもないことを聞いた気がするぞ!
トゥローザ:
モッソ博士の本当の目的は、嘘を理解し、人間を理解することで人間になれる——そんなロボットを作ることだったわ。それこそがカーブの最終形態なのよ!
トゥローザ:
数百年前、フォンテーヌにはアラン·ギヨタンという科学者がいて、素晴らしい「思考するロボット」を作ったと言われているの。モッソ博士はそれを超えたいと思っていたんでしょうね。
パイモン:
(アラン·ギヨタンの思考するロボット?もしかして…セイモアのことか?)
旅人:
嘘を理解したくらいで人間になれるのかな?
トゥローザ:
人間は様々な理由で嘘をつく。嘘の裏には様々な感情が隠されていて、その感情が人を人たらしめる…モッソ博士はそう考えていたわ。
トゥローザ:
だから博士は、絶対に嘘をつけない協定を作ったの。でもいつか、カーブが人間のように嘘をつくことを覚えたら…
トゥローザ:
それはカーブが機械の限界を超えて、人のような感情を持ったということを意味するわ。
トゥローザ:
だからあたしが事件捜査のために出てきたのは、人間がどんな嘘をつくのか、カーブにもっと見せてあげたくて…
パイモン:
じゃあおまえ、なおさらここで自暴自棄になってる場合じゃないんじゃないのか?オイラたち、カーブのためを思うなら、もうぐずぐずしてられないだろ?
トゥローザ:
ぐずぐずって…でも、モッソ博士はもういないもの…
旅人:
でも、博士の研究基地はまだあるよ。
パイモン:
そうだそうだ!きっとそこには修理の資料なんかもあると思うぞ。
トゥローザ:
あたし、昔の書類を隅々までめくってみたけど、基地の手がかりはどこにもなかったわ。
旅人:
新聞社が手がかりを持っていないかな?
パイモン:
そうだそうだ、あのファデュイもそんなこと言ってなかったか?
トゥローザ:
だって、あいつは外部人員よ…マレショーセ·ファントムにすら情報がないのに、新聞社になんて…
パイモン:
トゥローザ、おまえは失敗が怖くて言い訳をしてるんじゃないのか?
トゥローザ:
あたしは…
パイモン:
失敗し続ける人間なんていないんだぞ。どん底まで落ちたら、あとはどうしたって上がるだけなんだからさ。
トゥローザ:
あたし、どん底まで落ちたの?
旅人:
そうそう、制服まで脱いじゃったもんね。
トゥローザ:
だからこれ以上失敗しないって?
パイモン:
そうそう、もうこれ以上失敗なんかしないぞ!
「カーブ」:
私の分析によると、ミス·パイモンは嘘をついています。
パイモン:
待て待て待て待て!カーブ、もうちょっと後にしてくれよな!
「カーブ」:
…ですがこういった嘘は、現実を動かす可能性があります。
トゥローザ:
カーブ…何を言っているの?嘘が現実を動かす?
「カーブ」:
三十年前、モッソ博士は私をドゥボールレストランに連れて行き、最初の公開テストを行いました。
「カーブ」:
当時、そこには背の低いテーブルが四つと、椅子が八脚あるだけで、店員は一人きり。店長を兼ねていました。
「カーブ」:
その人はかつて言いました…「ドゥボールレストランはきっと誰もが知るホテルになる」と。それはミス·パイモンの言ったような、誠実な嘘だったのでしょう。
「カーブ」:
しかし今日、皆さんも目にしていらっしゃるように…ドゥボールレストランは美しい絨毯や高価な装飾品で埋め尽くされ、二階まである客席には次々とお客さんが訪れます。
「カーブ」:
ドゥボールレストランに関する嘘が現実になったのですから、エージェント·トゥローザはもう失敗しない、という嘘も同じだと思います。
「カーブ」:
嘘学習モジュール終了。
パイモン:
い…今突然、カーブが変になったよな?…なにを言ってたんだ?
トゥローザ:
嘘学習モジュールは…カーブのコアにあるの。起動するとカーブは辻褄が合わないこととか、わけのわからないことを言い出すのよ…
パイモン:
うーん…まあ実際、人間でもこういうおかしなことを言うやつは沢山いるよな…ってことは、これはある意味カーブの進歩か?
旅人:
確かに。
パイモン:
トゥローザ、カーブが進歩しようってときなんだぞ。本当に諦めるのか?
トゥローザ:
それは…その…ねえ、もう一度さっきの言葉を言ってくださらない?
パイモン:
どの言葉だ?
旅人:
もうどん底まで落ちた!
パイモン:
ああ!そうそう、だからこれ以上失敗することはないぞ!
トゥローザ:
わかった、もう一度頑張ってみるわ!カーブだって学習を続けてるんですもの…あたしも、助けてあげなくてはね!
パイモン:
わぁ、トゥローザって子供みたいだな、落ち込むのも突然…元気になるのも突然…
旅人:
パイモンも似たようなものだよ。
パイモン:
オイラ…まだそんなに子供かな?
旅人:
まだトゥローザほどの背丈もないしね。
トゥローザ:
ちょっと、ぺちゃくちゃうるさいわよ!さっそく行動しましょう。新聞社が何か知ってるかもしれないから、今は窃盗事件について引き続き捜査を進めるわよ!
トゥローザ:
ちょうどあたしたちも四人だから、それぞれ四人の容疑者を演じて、事件当日の夜を再現してみるのはどうかしら。新たな突破口が開けるかもしれないわ。
パイモン:
よしよし、トゥローザの頭が動き出したな!オイラもいいアイデアだと思うぞ!このまま新聞社の前に行ってみようぜ。
トゥローザ:
おはよう!おはようーっ!
旅人:
おはよう。
パイモン:
おはよう!トゥローザ…おまえたちのところって、どうして机がないんだ?
トゥローザ:
ないものはないの。別に珍しいことじゃないでしょ?あたしたちは机がなくたって、お仕事できるもの!それにこのベンチはすごいのよ。柔らかいクッションつきなの。
トゥローザ:
早く座ってちょうだい!あたしの用意した美味しい朝食を召し上がれ!
パイモン:
うわぁ!トゥローザ、ありがとう!でもこれ、なんなんだ…?おかしな臭いがするな…
トゥローザ:
あたし特製「ポワソンチャンティー·パイ」。普通のよりもずっと美味しいのよ。
トゥローザ:
匂いは独特だけどそれが特徴なの。
パイモン:
そうなのか、それならちょっと気になるぞ…旅人、食べてみるか?
旅人:
カーブ、君はどう思う?
「カーブ」:
成分の分析によると、屈強さが問われる試練です。
パイモン:
食べないのか?じゃあおまえの分もオイラがいただくぞ!無駄にしちゃいけないもんな、へへ!
パイモンはすぐに微妙な匂いを放つ「ポワソンチャンティー·パイ」をガツガツと1.5人前も平らげた。
三十分後…パイモンはお腹を抱えて外から戻ってきた。
トゥローザ:
どうしたの?突然いなくなったりして…足りなければここにまだまだあるわよ。沢山作ったの。
パイモン:
あ…ありがとな、トゥローザ!ちょっと休憩に行っただけで、本当に大丈夫だ!なあ旅人、まだ半分残ってるんだってさ…持って帰ろうぜ、また後で食べよう…
トゥローザ:
その表情、おいしくなかった?なかなか美味しいと思ったんだけどな…
旅人:
君の方が強いのかもしれないね。
パイモン:
…ポワソンチャンティー·パイってどういう意味なのかわかったぞ。魚たちが腹の中で歌うんだ。「パイモン、今から出るぞ!」ってさ。
トゥローザ:
ええ?相当ひどいことになってたみたいね…ごめんなさい!
パイモン:
気にするな、今はもう大丈夫だから…あったとしても好みの問題で、おまえの問題じゃないぞ!
旅人:
今はナイフについてわかったことを話そう。
パイモン:
そうだそうだ!今日は大事な仕事があるっていうのを忘れてたぞ!
トゥローザ:
そうそう、そのことならあたしたち、役に立ちそうな情報を手に入れたわ。ナイフの出処は「エレガント食器商会」よ。
パイモン:
それってロシェから金を取り立てようとしてたやつらか?
トゥローザ:
ええ。やつらはまともな商会のふりをして、「フォンテーヌの上流社会で人気の食器があって、高値で売れる」ってほらを吹いてたの。
トゥローザ:
ロシェおじさんみたいな人はいいカモよ。ガラクタ食器しかないのに、仕入れ値より高く売れることを期待して、入会金を払ってしまうの。
トゥローザ:
でも実際は、買い手のつかない不良品で…騙された人は仕方なく他のおバカさんを誘うというわけ。これを「子会員集め」って呼んでいたそうよ。
旅人:
どっかで聞いたことあるような…
トゥローザ:
ね?人間って嘘だらけの生き物でしょ。
パイモン:
でもロシェは子会員を集めてないみたいだったぞ…
「カーブ」:
倫理分析によれば、ミスター·ロシェの道徳性は平均水準を超えています。さらなる被害者を増やさなかったのですから。
パイモン:
おお…なら、あいつの奥さんもまったく見る目がなかったわけじゃないんだな…
トゥローザ:
でも、あいつの経済力は地平線以下よ!そのツケは結局、可哀想な奥さんにいったんだから。
パイモン:
まあ…確かにな…っていうか、そいつらの悪行って新聞社が明るみに出したんだろ?おまえら、金を取り戻してやれないのかよ?
トゥローザ:
とっくにあたしたちの同僚が介入してるし、大勢の逮捕者が出てるわ。でも彼らのトップはとても狡猾で、すぐに「やったのはみんな臨時で雇った人間だ」って声明を出したの。
トゥローザ:
何より、そいつは会社の帳簿を完全に分けてしまっていたから…損害を取り戻すのは難しいわ。
旅人:
泣き寝入りするしかないのかな?
トゥローザ:
ふふ、今日は事態を動かすわよ。あたし、彼らが隠れていそうな拠点の位置をつかんだの。行ってみましょう。
パイモン:
わぁ!あいつらのアジトを見つけたんだな!
トゥローザ:
ふふん、マレショーセ·ファントムもただ飯食らいじゃないの。この事件のことも合わせて…あたし、サー·アーサーが「エレガント食器商会」に盗まれたって考えるだけの確証があってよ!
パイモン:
可能性は高そうだけど、そんなに断言しないほうがいいと思うぞ…
トゥローザ:
ふん、行ってみればわかるわ。行きましょう。
トゥローザ:
そろそろ着くわよ。
パイモン:
えーっと、大勢いるみたいだな…どうしよう?なだれ込んで一発食らわせて、自白させるか?
トゥローザ:
パイモン、暴力はよくないわ。今彼らは神経質になってるはずよ。これ以上刺激したら、手がかりを破壊しちゃうかもしれないわ!
パイモン:
うう…そうだな。じゃあまずはこっそり忍び込んで、手がかりを見つけて確保してから、攻撃を仕掛けるか?
パイモン:
うーん…ここは狭いし、どのみち戦闘にはなると思うけど…わかった、じゃあこいつらをどっかへやる方法はあるか?
トゥローザ:
何か使えるものが見つかりそうね…
トゥローザ:
カーブ、まずあっちに隠れてあたしたちを待ってて。あなたは体が大きすぎて、すぐに見付かってしまうでしょうから。あたしたちのほうが片付いたら来なさい。
「カーブ」:
おおせの通りに。
パイモン:
じゃあ今すぐどうにかしてこいつらを追っぱらおうぜ。
「カーブ」:
機体セルフチェック中…
「カーブ」:
マザーボードが水分の影響を受けています。警戒レベル以下。コア残量:19%。
パイモン:
うわっ、めちゃくちゃ効きそうだな!
トゥローザ:
ちょっと!どうしてそれを?あたしの料理の腕を侮辱してるのね!
パイモン:
怒るなよ、トゥローザ。おまえの料理がめちゃくちゃ役立つかもしれないぞ。あいつらはこの過酷な試練に耐えられないだろうからな。
トゥローザ:
本当に?じゃあ…いいわ、隠れて様子を見てみましょう。
「メシの時間だ!」という呼び声ともに、「エレガント食器商会」の面々は「隠し味」たっぷりの食べ物を口にした。
しかしたちまち、彼らの顔に微妙な表情が浮かび、次々にお腹を抱えて出口の方へと駆けていった。
パイモン:
ほらな?トゥローザ、言っただろ!あいつらに「ポワソンチャンティー·パイ」の力を思い知らせてやったぜ!
トゥローザ:
ふふ…あたしってスゴかったのね!カーブを呼んでくるわ。これから思う存分罪の証拠を暴いてやらなくちゃ!
パイモン:
この箱…オイラが中に隠れて、ガタガタやってあいつらの注意を引くから、おまえたちがその隙に手がかりを調べに行く…っていうのはどうだ?
パイモンは箱に入った。そしてこちらが隠れると、力いっぱい箱を揺すった。
パイモン:
箱のほうに誰かいるぞ!侵入者だ!
トゥローザ:
なんてバカバカしい方法なの…!
パイモン:
バブルオレンジだ…ここの人たちって、バブルオレンジが好きなのかな…もしかして、遠くに投げたら追いかけていくんじゃないか?
あなたたちは物陰に隠れ、バブルオレンジを遠くに投げた。
パイモン:
わぁ!バブルオレンジだ!じゃなくて…誰が投げたんだ?
パイモン:
警戒せよ!警戒せよ!侵入者だ!!
トゥローザ:
なんてバカバカしい方法なの…!
トゥローザ:
見た?あなたたちのNo.42は日記で認めているわよ!
親分:
ば…馬鹿者!しばらくは目立たないようにしていろと言っただろう!
「勇猛ヴァルベリー」:
だ…だって親分、あっちのほうからやってきたんです。やられっぱなしじゃダメでしょう?
親分:
…マレショーセ·ファントムのお役人様!こ…この馬鹿は臨時で雇っている者でして!試用期間中に犯罪を犯すとは…哀れには思いますが、我が正義心に従って、クビにいたします!
パイモン:
おい!いつまでそんな手が通用すると思ってるんだ?
「勇猛ヴァルベリー」:
クビ!?なんで!?親分…言ってくれたじゃないですか。「これほど忠誠心に篤いのはおまえだけだ」って!
親分:
お前は誰だ?何を言ってる?もうクビにしたんだ、これからは赤の他人だ!
親分:
お役人様、どうぞこいつを連れて行ってください。
「勇猛ヴァルベリー」:
親分!お…俺様を裏切ったな…
「勇猛ヴァルベリー」:
うわあああっ!古狸め、反旗を翻してやる!
親分:
痛っ…この阿呆が!反旗を翻すとはいい度胸だ!
「勇猛ヴァルベリー」:
古狸め、反旗を翻してやる!
旅人:
はいはい、もう少し平和に行こうよ。
トゥローザ:
そこの赤毛男、早く言いなさい。サー·アーサーをどこへやったの?
「勇猛ヴァルベリー」:
チビ、何を騒いでるんだ?俺様は別におまえの味方じゃないぞ?おまえが協力してくれるってんなら話は別だが…
「勇猛ヴァルベリー」:
この古狸を重罪にして、一生いい暮らしができないようにしてくれるんなら、協力してやらないこともないぜ。
トゥローザ:
ふん、マレショーセ·ファントムは犯罪者と条件を交渉したりしなくてよ。でも今つかんだ手がかりからすれば、こいつの今後の人生は、ほぼあなたのお望み通りね…
親分:
ええっ!?それだけは…!
トゥローザ:
どうかしら。これで口を割る気になった?
「勇猛ヴァルベリー」:
わかった、わかった!正直に言おう——俺様のサー·アーサー襲撃は未遂に終わった。
「勇猛ヴァルベリー」:
俺様よりも前に、誰かが持ち去ったらしい。わけがわからない…仕方ないから、そこにナイフをぶっ刺していったんだ。警告ってことでな。
トゥローザ:
え?また「なかった」?嘘でしょう?
パイモン:
ほらほら、カーブ!おまえの出番だぞ!
「カーブ」:
勇猛ヴァルベリーさんのデータに異常は認められませんでした。
トゥローザ:
え!?本当にこの赤毛男じゃないの?あたし…
旅人:
じゃあ君は現場で何を見たの?
「勇猛ヴァルベリー」:
とんでもない臭いの酔っ払いが道端に倒れていた。金を返さないロシェもそうだが、近寄りたくない相手だった。
パイモン:
それって正真正銘ロシェだろ?他の人間はいなかったか?
トゥローザ:
いなければどこかからひねり出してくるのよ!あたしたちの手がかりを断ち切った以上、ちゃんと責任をとってくれないと!
「勇猛ヴァルベリー」:
色々ひどくないか!?
パイモン:
おまえならできる!勇猛ヴァルベリー!反旗だって翻せたじゃないか!
「勇猛ヴァルベリー」:
おう、まあ確かにな…もう一回考えてみよう…
名も知らぬ子分:
あの…No.42さん…ちょっといいですか?
「勇猛ヴァルベリー」:
ああん!?
旅人:
何か知ってるの?
名も知らぬ子分:
…い、いいえ…
「勇猛ヴァルベリー」:
じゃあ後にしろ。俺様が必死になってるのがわからないか?
「勇猛ヴァルベリー」:
あ!そうだ…思い出した…
「勇猛ヴァルベリー」:
サーンドル河の鍵職人のところへ行ったんだ。夜中にこっそり新聞社へ忍び込んで、室内をメチャクチャにしてやるには、助けを借りないといけないからな。
「勇猛ヴァルベリー」:
だがその時、こっそり新聞社に忍び込む方法を聞いてるやつを見かけたんだ。
トゥローザ:
誰?何ていう名前?
「勇猛ヴァルベリー」:
さあな、だが黒いファデュイの服を着ていた。
パイモン:
ファデュイ?なんでまたあいつらが?
旅人:
正義の光が差さない場所にも彼らは現れる。
パイモン:
それから、そいつはなにをしたんだ?
「勇猛ヴァルベリー」:
俺様が知るわけないだろう?俺様は下水道のストーカーじゃないんだぞ!
トゥローザ:
とにかく、これではっきりしたわね、きっとそいつがサー·アーサーを盗んでいったんだわ!
パイモン:
うーん…でも今までおまえが断言したことって、どれも間違ってたよな…
トゥローザ:
今回は絶対に合ってるわ、覚えてる?
トゥローザ:
現場には四種類の異なる足跡があった——つまり、容疑者は最大四人しかいないの。そしてファデュイは第四者だわ!
旅人:
万が一間違ってたら?
トゥローザ:
もうーっ!見くびらないで!この制服に賭けてもいいわ。もしもまた間違いだったらあたし…仕事を辞めて、自宅警備員になるから!
パイモン:
まあまあ、落ち着けって。それはやりすぎだぞ…
トゥローザ:
ねえ、赤毛さん、そいつと連絡はつく?
「勇猛ヴァルベリー」:
自分たちでサーンドル河に行ってみりゃいいじゃねえか。あそこであいつを見かけたのは一回きりじゃねえよ。
パイモン:
サーンドル河にいるファデュイの服を着たやつか…もし本当にそこにいるなら、すぐ見つかりそうだな…
トゥローザ:
じゃあ、まずはここの人たちを連行して、その後サーンドル河に行きましょう。
「勇猛ヴァルベリー」:
俺様との約束を忘れるなよ。あいつをしっかり断罪してくれ!
トゥローザ:
安心して?あなたも親分も逃げられないから。え!?待って!あいつは?あの大ボスさんは?さっきまでそこにいたじゃない!
名も知らぬ子分:
あの…お役人様…親分はあなたたちの注意がそれた隙に、あそこからこっそり逃げていきましたよ…
「勇猛ヴァルベリー」:
ええ!?なぜ早く言わない!?
名も知らぬ子分:
さっき…言おうとしたけれど…言わせてもらえませんでした…よね?
「勇猛ヴァルベリー」:
あの古狸め…!クソ…一生いい暮らしができないって聞いて、ビビって逃げたな?おい!ひとまず俺様を解放しろ。それで、俺様があいつを捕まえてくるってのはどうだ?
トゥローザ:
あなたを解放するって?カーブ、どう思う?
「カーブ」:
ミスター·ヴァルベリーのデータを分析しました。これは彼の本音のようです。
トゥローザ:
じゃあ行きなさい、赤毛さん、あたしたちをがっかりさせないでね!
「勇猛ヴァルベリー」:
フン、安心しろ、男に二言はない。
パイモン:
…嘘だろ?本当にこいつをこのまま解放してやるのか?
トゥローザ:
どうして?騙された人間の復讐を応援してあげないの?
トゥローザ:
あの赤毛さんは騙されて、とても怒っているんだもの。あたしも他人事と思えなくて…そうそう、カーブ、あなたもよくよくこの感覚を味わってね。
「カーブ」:
仰せの通り、事件に関わった全員の言動と生理反応データを嘘学習モジュールに入力しました。
トゥローザ:
じゃあもう、ぐずぐずしていられないわ。他の人たちをマレショーセ·ファントムに連行したら、サーンドル河に出発しましょう。そっちのほうが大切でしょう。
犯人たちをマレショーセ·ファントムに連行した。
そして息つく間もなく、あなたたちは別の容疑者が現れそうなサーンドル河に向かった…
ボラール:
来たな。
旅人:
来たって?
ボラール:
ものは持ってきたか?
ボラール:
ん?合言葉が違うぞ!君たちは誰だ!?くそっ…とにかく逃げないと!
パイモン:
ん?今の、合言葉だったのか!?
トゥローザ:
それより追いかけて!逃がしちゃダメ!
パイモン:
やっと捕まえたぞ!なんで逃げるんだよ?オイラたち、疲れたぞ。
ボラール:
やめろ、やめろ!私は何もしていない!
トゥローザ:
あら、何もしていないならどうして逃げるの?
ボラール:
そ…それは言いがかりじゃないのか?そっちこそ、私が何をしたっていうんだ?
トゥローザ:
サー·アーサーを盗んだのはあなたでしょう!
ボラール:
おいおい!私が盗んだんじゃないぞ!
旅人:
誰かが盗んだことは知ってるみたいだね。
ボラール:
あ…まずい…
トゥローザ:
ふん!ごまかそうだなんて思わないことね!あなたが新聞社に潜入する方法を聞いていたってこと、知ってるんだから!
トゥローザ:
あたしの制服と、ご自分の制服をご覧になって?外交危機を起こすおつもり?自分の人生にさようならしたいのかしら?
パイモン:
言いすぎだろ!
ボラール:
や…やめろ!今回の任務を果たしたら早期退職できるんだ…やめてくれ…
トゥローザ:
ならば、なおさら大人しく協力なさい。邪魔しようっていうなら、こっちだって邪魔してやるんだから。
トゥローザ:
退職後の生活を想像してみて。食事の時はあたしが向かいに座って、デート中もあたしにつきまとわれて、旅行写真にはどれもあたしの姿がある…
ボラール:
や、やめてくれ!これ以上そんな恐ろしいことは言うな…わかった、告白するよ…別に隠すようなことでもないんだ…
ボラール:
私はボラール、末端の情報員だ。末端というのは、さほど重要じゃないという意味だ。
ボラール:
今回私が受けた任務は、ある研究基地を探すというものだった——モッソ·ランボロッソという科学者の基地だ。
パイモン:
モッソ·ランボロッソ?それってまさかあのモッソ博士か?
ボラール:
君たちも聞いたことがあったのかい?博士は三十年前に亡くなったが、その基地には貴重な研究資料が隠されているそうだ。だが、それがどこかは誰も知らない。
パイモン:
スチームバード新聞社となんの関係があるんだ?
ボラール:
モッソ博士の死は当時のスチームバード新聞社と関係しているからな。新聞社は何か知っているだろうと私は見ている。
パイモン:
新聞社と関係してる!?
ボラール:
そう、だから私はユンカーという新聞社の編集者に連絡をし、内部情報を聞き出してみようとしたのだ。
パイモン:
それってあの、トゥローザと喧嘩してたやつじゃないか。うーん、あいつが社内の内部情報を漏らすかな?
ボラール:
私はちょっとしたギフトを彼にくれてやった。新聞社が最近「エレガント食器商会」という詐欺集団について報じたのは知ってるかな?彼らの詳しい犯罪の情報を教えたのは私なんだ。
パイモン:
ええ、おまえの仕事だったのか!?おまえ、スゴいじゃないか!
ボラール:
ありがとう。末端人員の中では優秀な方だからね。
ボラール:
話を戻そう。編集者のユンカーはこの独占スクープによって相当な名声を得た。だが再び連絡してみると…私への返礼はないという…卑怯なやつだ!
パイモン:
それでこっそり忍び込むことにしたってわけか?
ボラール:
その通りだ。だがあの夜、新聞社に着いてみると、おかしなことに気付いた。玄関先の名物、スチームバードの姿がなかったんだ。
トゥローザ:
まさかまた、たどり着く前に姿を消していたっていうの!?
ボラール:
そうだ。おまけに台座に手紙が残されていた。情報員としてのプロ意識から手紙を開いてみると…なんと、それは脅迫状だった。
パイモン:
えっ…現場の封筒って!おまえ、他人の手紙を盗み見したのか?オイラたちにも見せろ。
ボラール:
ゴホン…ずっと持ち歩いていてよかった。さ、どうぞ…
ボラール:
読み終わったかな?この「鴉、それとも黒鶫?」と署名した人こそ、君たちの探す犯人だ。
パイモン:
でも…この内容…本当なのか?新聞社は本当にモッソ博士の死に関係してたのか?
ボラール:
間違いない。ここに記されている遺産とは、おそらくモッソ博士の研究基地だろう。新聞社は絶対に何かを知っている。
ボラール:
それから私はこの「鴉、それとも黒鶫?」が会いに来てくれることを願って、業界に情報を流した。彼女が同業者ならね。
ボラール:
運がよければ手を組めるかもしれない。もしダメでも、彼女には不用意な動きをしてほしくない。それは単に私への妨害だからね。
旅人:
でも結局、来たのは俺たちだけだった、と。
パイモン:
トゥローザ、またおまえの勘違いだったみたいだな…て、ええっ!?トゥローザ…どうしたんだ…
トゥローザ:
……
トゥローザ:
カーブ…早く教えて、こいつ、嘘をついてるんでしょう!
「カーブ」:
生理反応データは正常です。ミスター·ボラールの言うことは嘘ではありません。
トゥローザ:
この…っ、末端のくせに!どうしてあなたがやったんじゃないの!あなたのせいで、あたし、制服が着られなくなっちゃったわ!
パイモン:
トゥローザ、慌てるな…オイラたち、本気じゃないぞ。
旅人:
気にしなくていいよ。
トゥローザ:
あたしは気にするわ!自分が役立たずなんじゃないかって…!四人の中から犯人を特定しようって言ったのに、どれもあたしの勘違い!あたしって本当に、役立たずなんだわ。
トゥローザ:
ユーフラシア編集長があなたたちを頼んだのは正しかったわ。あたし、本当にこの制服を脱いで辞職するべきみたい。
「カーブ」:
関連情報が見つかりました。エージェント·トゥローザ、あなたは役に立ちます。あなたはスチームバード新聞社のファンタジー文学コラムの寄稿者になれます。ミスター·ユンカーがアドバイスしたように…
旅人:
慰めになってないよ。
パイモン:
うん…それならボラールさんが犯人だっていうほうが、まだトゥローザの機嫌が少しはよくなるかもって思うぞ。
ボラール:
コホンッ…
「カーブ」:
ミス·パイモンは私に嘘をつくよう推奨しているのですか?嘘が慰めになるのですか?
パイモン:
これは嘘なんかじゃないぞ…というか、誰かを慰める時…大切なのは誠実な心なんだ!
パイモン:
例えば、オイラが「スライムを食べすぎたら太る」って悩んでても、旅人はきっと「パイモンは太っても可愛い」って言ってくれるだろ。そういう言葉だ。
トゥローザ:
やめましょう。生理反応データの分析しかできないカーブに、こんなこと理解できないもの…いいわ、ボラール、もう行ってちょうだい。
ボラール:
ありがとう!
パイモン:
あれ?トゥローザ…おまえ…
トゥローザ:
パイモン、旅人、あたし知っててよ。あなたたちはスゴいし、心だって強いの。
トゥローザ:
だけどあたしはただのお馬鹿さん…いつまでも谷底に転がっているし、すぐに砕けてしまう。だからごめんなさい…後はあなたたちにお願いするわ。
トゥローザ:
今夜、最後にご馳走するわ。次はホテル·ドゥボール、高級店よ。あたしの作るマズイ料理は食べなくていいわ。
パイモン:
でもオイラ、お別れの食事会なんて嫌いだぞ…カーブ、おまえからもなにか言ってやれ!
「カーブ」:
エージェント·トゥローザ、繰り返しますがスチームバード新聞社のファンタジー文学を…
トゥローザ:
もういいわ!もう十分だから…あたし、本当に、真剣に考えてみるわ。とにかく…今夜ホテル·ドゥボールでね、忘れないでちょうだい!
パイモン:
トゥローザの性格が正直すぎるっていうのはそこそこ理解してたけど、なんか、唐突すぎる気がするぞ…今日のことがそんなにこたえたのか?
旅人:
今日だけじゃないのかも。
パイモン:
…夜には少しでも気を取り直してたらいいな。オイラたちも休もうぜ。ずっと事件を調査してたら、確かにちょっと疲れたぜ。
トゥローザ:
パイモン、あなたは一番小さいから、ケヴィンの役よ。汚らしいロシェおじさんはあたしね。
トゥローザ:
ボラールさんはモッソ博士のことで来たから、カーブにやってもらいましょう。それから最後のあの赤毛さんは…
旅人:
じゃあ俺に任せて。
トゥローザ:
よし、役は決まったわね。再現を始めましょう…サー·アーサーが消えた夜、この人たちは何をしていたのかしら?
トゥローザ:
まずは、それぞれの到着順を再現すべきよね。
トゥローザ:
素晴らしいわ!旅人が推理した通り、最初に現場に到着したのはあたし…
トゥローザ:
オレはロシェ…妻に家を追い出された中年男。新聞社の仕事がほしくて、このあたりをうろついている。
トゥローザ:
事件の夜は、酒を少し飲んでいた。酔っぱらって倒れ込む寸前、サー·アーサーは確かにいつも通り、大切にしている台座の上にいた。それから、路上で眠りについた。しかしその後…
「カーブ」:
私はボラール、四人の容疑者のうち二番目に現場に着きました。到着早々、サー·アーサーの姿がすでに消えているのに気付きます…
「カーブ」:
つまり、真犯人はミスター·ロシェが確認してから私が確認するまでの時間にサー·アーサーを盗み取り、新聞社に対する脅迫状を残していったのですね…
「カーブ」:
情報員としてのプロ意識から、私は犯人の残した脅迫状を読み、それを持って現場を後にしました。そして…
旅人:
それから俺様!俺様は「勇猛ヴァルベリー」、犯罪集団のNo.42だ。
旅人:
新聞社に徹底的に復讐するため、サー·アーサーにぶすっとナイフを突き刺してやるつもりだった。
旅人:
だが俺様が到着した時、サー·アーサーはすでに姿が見えなくなっていた。ひどく腹が立ったが仕方なく、新聞社への脅迫としてナイフを台座に刺し、その場から立ち去った。そして…
パイモン:
ついにオイラの出番だな!おれはケヴィン、問題児だ!おれがここへ来たのは、サー·アーサーに「父さんはロクでなしだ」って罵ってもらうことで、みんなに知ってもらいたかったからだ。
パイモン:
でもサー·アーサーの姿は消えて、サー·アーサーが大好きだった台座にはナイフが刺さってた!探しても、いたのは酒臭いおじさんだけ…
パイモン:
おじさんはおれのせいで起きちゃったらしくて、おれは怖くなって護身用にナイフを抜いて、それから一目散に逃げたんだ!服のボタンがなにかに引っかかって落ちたのにも気付かないくらい、必死で…
トゥローザ:
その通り。その酒臭いおじさんはオレだ。オレはケヴィンの立てた物音で目を覚まし、何かを持って逃げていく彼を寝ぼけ眼で見た。
トゥローザ:
それから新聞社のほうを見て、サー·アーサーが消えているのにようやく気付いた。オレは自分が疑われるのではないかと心配になり、急いで埠頭のすみかへ戻った。
パイモン:
これで全部か?完璧な再現だったと思うぞ。まだ気付いてないことってあるか?
旅人:
脅迫状…
トゥローザ:
そうだわ!脅迫状のことを忘れていたわね…犯人は三十年前のことで、新聞社に難癖をつけてきたのよね。それなら…新聞社なら、犯人の身分について、多少目星をつけられるんじゃなくて?
パイモン:
そうだ、新聞社はまだなにが起きたか知らないんだ。今すぐ手紙を渡してあげようぜ!こんな大事なことに気付いてなかったなんてな…
トゥローザ:
あの時はみんな、あたしをどうにかして慰めようとしてくれてたものね…本当にごめんなさい。あたし、足手まといだったわ…
パイモン:
そんな風に考えるなよ、トゥローザ。おまえはモッソ博士の事件の書類を見たんじゃないのか?それって、おまえしか持ってない情報だぞ。
トゥローザ:
あら!そのことなら、言うのを忘れていたことがあるの…そうね…あちらで話しましょう。
トゥローザ:
モッソ博士の死は新聞社と深い関係があるの…でも、ここは新聞社の前なんだもの、こんな話をするのはよくないわ。
トゥローザ:
ここで話しましょう。あなたたち、モッソ博士がどうして裁判にかけられたのか、知りたがっていたでしょう?きっかけは世論だったの。
パイモン:
世論!?
トゥローザ:
ええ、モッソ博士の嘘発見器が公開されて間もない頃…スチームバード新聞社が次々と報じたそれに関するニュースは、すぐに世間の注目を浴びたわ。
「カーブ」:
関連情報が見つかりました。『モッソ博士インタビュー:嘘の中にあるもの』『モッソ協定:警戒を要する規則』『嘘発見器?権力のゲーム』…
トゥローザ:
こういった特集ニュースの中で、新聞社は多くの疑問を投げかけたの。人々は不安を抱き始めて…次第に、モッソ博士に対して批判的になっていったわ。
旅人:
不安ってどんな?
トゥローザ:
例えば嘘発見器の結果の信頼性をどうやって保証するのか。裁判のとき、容疑者が嘘をついていないのに、カーブが「嘘をついている」と言ったらどうなるのか?とか、そんなことよ。
パイモン:
…冤罪事件が起きるかもってことか?でもカーブの性能の信頼性が保証できるなら、そんな心配はしなくていいだろ?
「カーブ」:
関連情報が見つかりました。『嘘発見器?権力のゲーム』の中で——
「カーブ」:
「…機械による統治で権力による統治を制限する際に重要なのは嘘発見器の性能が信頼できるか否かではなく、それが権力から独立していなければならないということであり…」
トゥローザ:
今の文章でも述べられたように、カーブは機械なの。人々がカーブを信頼している状況で、カーブが誰かに操られて嘘をついたらどうなるかしら?
パイモン:
でも、「モッソ協定」があるじゃないか…
「カーブ」:
関連情報が見つかりました。『モッソ協定:警戒を要する規則』の中で——
「カーブ」:
「…注意しなければならないのは、人為的に制定されたモッソ協定は、人為的に書き換えられる可能性もあるということだ。それは潜在的な罠かもしれない…」
パイモン:
あ…モッソ博士が自分でこっそり書き換えることもできるって危険性を指摘してるのか…?
トゥローザ:
それは始まりに過ぎなかったわ。スチームバード新聞社が最初に書き立てて以来、どんどん沢山の人が議論に乱入してきた…
「カーブ」:
関連情報が見つかりました。七国四海ポスト刊行『水清ければ魚棲まず——透明な世界の拒絶』、ストーリーズ刊行『嘘発見器の驚くべき誤作動冤罪事件』…
パイモン:
『嘘発見器の驚くべき誤作動冤罪事件』?カーブが本当に冤罪を招いちゃったことがあったのか?
トゥローザ:
もちろんデマよ!カーブは事件の審理に関わったことなんてないわ。それなのに冤罪なんて…でも世論ってそんなものよね。モッソ博士はどんどん不利なほうへと追いやられていったわ。
トゥローザ:
そしてついには、博士を糾弾する人たちさえ現れた。「嘘発見器なんてそもそも嘘で、結果も全て人が操ったものだ」とね。
トゥローザ:
彼らは、博士は他人を裁く権力を手に入れたいがために社会を騙したんだと考えて、博士を厳罰に処し、嘘発見器を破壊することを求めたの。
パイモン:
ひ…ひどい糾弾だな?そんなの、本当に信じたやつがいたのか?
トゥローザ:
大勢の人が信じたわ。
トゥローザ:
みんな、真実と嘘を見分けられない普通の人たちだった。充分な情報に触れられないから、誰かに見せられるものをただそのまま信じてしまうのよ。
トゥローザ:
それにちょうどその頃、スチームバード新聞社は決定的報道をした——モッソ博士の偽造の証拠を暴露したの…博士を有罪とする決め手になったわ。
パイモン:
偽造!?モッソ博士は…本当に社会を騙してたってことか?
トゥローザ:
博士は当然認めなかった。だから自己弁護の決闘の中で死んだの。その後、やっと騒ぎは次第に収束へ向かったわ。
トゥローザ:
新聞社は多くの名声を得て、カーブは役立たずの「ニセモノ」として、すぐに人々から忘れ去られ、事件終結の物的証拠として、マレショーセ·ファントムが保管することになった…
旅人:
カーブの言うことは結局正しいの?嘘なの?
トゥローザ:
…あたしは本当だと信じてるわ…モッソ博士は何の罪も犯していなかったと…
パイモン:
じゃあ新聞社が出した証拠のほうが偽物だったとかか?新聞社が間違えたのかよ?
トゥローザ:
でも脅迫状を書いた人は…新聞社がわざと噂を捏造したと思っているみたいね。名声か、何か他の利益のために。
パイモン:
あ…そう考えると、書いたのはモッソ博士と親しかった人なのか?かたきを取ろうとしたとかか?
パイモン:
オイラだって、もしも旅人が無実の罪を着せられたら、きっと旅人のかたきを取るぞ!ふん!まあ、そんなこと考えたくないけど…
トゥローザ:
でもモッソ博士が亡くなってもう三十年も経つわ。博士と親しかった人なんて…ユーフラシア編集長なら、誰か心当たりはないかしら…
パイモン:
…ユーフラシア編集長のところにいってみるか?
トゥローザ:
大丈夫よ、当時の責任者は彼女じゃなかったの。それに、ユーフラシア編集長がそんなに悪い人だとは思えないわ…
パイモン:
なるほどな。とにかく、明日まとめて聞きに行ったほうがよさそうだな。今日は色々新情報がありすぎて、ちょっと頭を休めないとだぞ…
トゥローザ:
ええ!それなら、みんな戻ってよく休んでちょうだい。明日の朝、新聞社の前で会いましょう。
パイモン:
(この鍋…中にまだ鶏のもも肉が入ってるぞ…料理してたのか?)
トゥローザ:
(あいつらに「隠し味」を盛って、眠らせてしまうというのはどうかしら?それか、他の方法で追い払っても…)
パイモン:
(い…いい方法だな!旅人、早く探せ。カバンの中に使えそうな「隠し味」はないか?)
親分:
今日の料理人はうぷっ——誰だ!?そいつを——とっちめろ!!!
「勇猛ヴァルベリー」:
親分!俺がうぷ——今すぐうぷ——今すぐ料理人を探してきます!!!
トゥローザ:
ふん、調理人はエージェントであるこのあたしよ。誰がとっちめるですって?
親分:
マ…マレショーセ·ファントムの?お役人様…どうやってうぷ——入ってきたんです?
トゥローザ:
そんなことを気にしている場合かしら?もうあなたたちの犯罪の証拠はつかんでいてよ!
親分:
犯罪の証拠?いやあ、お役人様、どれも臨時雇いの人間がやったことでして…やつらはもう逮捕されたんじゃありませんでしたか?
トゥローザ:
今日は別件よ!あなたたちには、スチームバード新聞社への報復として、こっそりサー·アーサーを盗み出した容疑がかけられているの!
親分:
新聞社?ま…まさか、恨みなんて抱いたことは一度もありません…むしろ感謝してるぐらいですよ、うちの商会の過ちを指摘してくださったんですから…
トゥローザ:
よく臆面もなくペラペラと詭弁が言えるわね…だけどあたしたちにはこれがあるのよ。まだ反論するつもり?
トゥローザ:
これじゃない、これじゃないわ!
親分:
何を出してくるつもりだ?証拠はあるのか?
古びたクロックワークのロケットペンダント:
(古びたクロックワークのロケットペンダント。まずまずの年代物であるようだ。)
パイモン:
なんだ?まだ開くみたいだな。
トゥローザ:
写真があるわ…この女の子は誰かしら?
「カーブ」:
データベース反応中…データベース反応中…データベース反応中…
「カーブ」:
検索結果:失敗。
トゥローザ:
検索失敗?カーブ、関連情報がないと、あなたのデータベースは反応しないはずでしょう?さっき水でも入っちゃったの?
トゥローザ:
うーん…とりあえずしまいましょうか。戻ったらカーブを調べてあげましょう…
食器を並べたテーブル:
(テーブルの上にはものすごい数の食器が『ご自由にお取りください』と言わんばかりに散らばっている。)
パイモン:
ナイフだ!新聞社の前にあったのと同じやつがあったぞ!
トゥローザ:
絶対にこいつらね…
トゥローザ:
パイモン!旅人、今晩は。
パイモン:
トゥローザ!そ…その服、まさか仕事を辞めたわけじゃないよな?
トゥローザ:
まだ辞めてないわ。制服を脱いだほうが楽だからってだけ。どう?この服おかしいかしら。
旅人:
なかなかいいよ。
パイモン:
確かにトゥローザ、顔色もよくなったし、喋り方も優しくなったな。
トゥローザ:
このほうがあたしの生活に合っているみたい。何もできないなら、何もしないのが一番だもの。
パイモン:
そんな風に考えるなよ…今回はたまたま面倒な事件に遭遇しちゃっただけだろ。
トゥローザ:
この事件だけじゃないわ。フォンテーヌの巡水船のことは知っているかしら?
パイモン:
オイラたち、それに乗ってフォンテーヌに来たんだ!
トゥローザ:
じゃあきっと、アイベルがガイドをしてるクレメンタイン線ね?ナヴィア線のほうは、エルファネが担当しているわ。
トゥローザ:
実はね、あたしも昔、ガイドをしていたの…三本目のカーレス線。フォンテーヌ科学院行きだったけれど、事故で運行停止になっちゃったわ。
パイモン:
へえ、トゥローザはガイドもしてたんだな!すごいじゃないか!
トゥローザ:
ちっともすごくなんかないわ。ガイドはエリートじゃないもの…エージェントとして出来が悪かったから、ガイド担当に回されただけよ。
パイモン:
そうだったのか…じゃあ、その線が運行停止になったから、マレショーセ·ファントムに戻ったのか?
トゥローザ:
それも違うわ…お客さんから苦情があって、クビになったの。一緒にいる時はあたしを褒めてくれてたのに、帰ってから苦情の手紙を書く…そんなお客さんもいるのよね。あたしは「鴉みたいにかまびすしい」んですって…
トゥローザ:
あたし、耐えられなかった…苦情そのものじゃなくて、あたしに対して不満があるのに、顔を合わせてる時は褒められるなんて。
トゥローザ:
ここだけの話、あたしが鴉みたいだって苦情を入れた最初の人はユンカーさんだったの。裏表のある人だったわ。
パイモン:
それで最初から喧嘩してたんだな…その気持ち、ちょっとだけわかるぞ…
トゥローザ:
さ、いやな話はここまで。とにかく、美味しいものを楽しみましょう!
トゥローザ:
ホテル·ドゥボールは公式ガイドのお勧めにも入ってるわ。あたしは好きじゃないけれど、あなたたちは気に入るかもね。
旅人:
トゥローザ、ありがとう。
パイモン:
でもカーブを待たなくていいのか?まだ来てないよな。
トゥローザ:
大丈夫、カーブはこういうものは食べないのよ。カーブは今、ホテル·ドゥボールのデータを嘘学習モジュールに入力しようとしているわ…
パイモン:
嘘学習モジュール…カーブってすごく…特殊だな…
トゥローザ:
ええ、知り合えて嬉しいわ。でもコアの老朽化がひどくて、カーブはもうすぐ休眠状態になるの…はぁ、機械の体は取り換えられるけど、コアはそうはいかないから…
パイモン:
休眠!?まさか…
トゥローザ:
もう動かなくなるってことよ…ああ、あたしって本当に役立たず。エージェントとして事件を捜査することもできないくせに、ガイドをやれば苦情を言われ、朝食作りは言わずもがな。そして今は、物的証拠の管理ですら…
旅人:
カーブを修理するために抜け出してきたの?
トゥローザ:
カーブを修理できる人なんて、モッソ博士以外いないわ。あたしはただカーブに、人間がどんな嘘をつくのかってことをもっと見せて、「モッソ協定」を突破するのを手伝ってあげたいだけ。
パイモン:
「モッソ協定」を突破する?どうして?
トゥローザ:
突破出来たら、とてもスゴいことよ!カーブは本物の人間になれるかもしれないわ!
パイモン:
オイラ、なんかとんでもないことを聞いた気がするぞ!
トゥローザ:
モッソ博士の本当の目的は、嘘を理解し、人間を理解することで人間になれる——そんなロボットを作ることだったわ。それこそがカーブの最終形態なのよ!
トゥローザ:
数百年前、フォンテーヌにはアラン·ギヨタンという科学者がいて、素晴らしい「思考するロボット」を作ったと言われているの。モッソ博士はそれを超えたいと思っていたんでしょうね。
旅人:
嘘を理解したくらいで人間になれるのかな?
トゥローザ:
人間は様々な理由で嘘をつく。嘘の裏には様々な感情が隠されていて、その感情が人を人たらしめる…モッソ博士はそう考えていたわ。
トゥローザ:
だから博士は、絶対に嘘をつけない協定を作ったの。でもいつか、カーブが人間のように嘘をつくことを覚えたら…
トゥローザ:
それはカーブが機械の限界を超えて、人のような感情を持ったということを意味するわ。
トゥローザ:
だからあたしが事件捜査のために出てきたのは、人間がどんな嘘をつくのか、カーブにもっと見せてあげたくて…
パイモン:
じゃあおまえ、なおさらここで自暴自棄になってる場合じゃないんじゃないのか?オイラたち、カーブのためを思うなら、もうぐずぐずしてられないだろ?
トゥローザ:
ぐずぐずって…でも、モッソ博士はもういないもの…
旅人:
でも、博士の研究基地はまだあるよ。
パイモン:
そうだそうだ!きっとそこには修理の資料なんかもあると思うぞ。
トゥローザ:
あたし、昔の書類を隅々までめくってみたけど、基地の手がかりはどこにもなかったわ。
旅人:
新聞社が手がかりを持っていないかな?
パイモン:
そうだそうだ、あのファデュイもそんなこと言ってなかったか?
トゥローザ:
だって、あいつは外部人員よ…マレショーセ·ファントムにすら情報がないのに、新聞社になんて…
パイモン:
トゥローザ、おまえは失敗が怖くて言い訳をしてるんじゃないのか?
トゥローザ:
あたしは…
パイモン:
失敗し続ける人間なんていないんだぞ。どん底まで落ちたら、あとはどうしたって上がるだけなんだからさ。
トゥローザ:
あたし、どん底まで落ちたの?
旅人:
そうそう、制服まで脱いじゃったもんね。
トゥローザ:
だからこれ以上失敗しないって?
パイモン:
そうそう、もうこれ以上失敗なんかしないぞ!
「カーブ」:
私の分析によると、ミス·パイモンは嘘をついています。
パイモン:
待て待て待て待て!カーブ、もうちょっと後にしてくれよな!
「カーブ」:
…ですがこういった嘘は、現実を動かす可能性があります。
トゥローザ:
カーブ…何を言っているの?嘘が現実を動かす?
「カーブ」:
三十年前、モッソ博士は私をドゥボールレストランに連れて行き、最初の公開テストを行いました。
「カーブ」:
当時、そこには背の低いテーブルが四つと、椅子が八脚あるだけで、店員は一人きり。店長を兼ねていました。
「カーブ」:
その人はかつて言いました…「ドゥボールレストランはきっと誰もが知るホテルになる」と。それはミス·パイモンの言ったような、誠実な嘘だったのでしょう。
「カーブ」:
しかし今日、皆さんも目にしていらっしゃるように…ドゥボールレストランは美しい絨毯や高価な装飾品で埋め尽くされ、二階まである客席には次々とお客さんが訪れます。
「カーブ」:
ドゥボールレストランに関する嘘が現実になったのですから、エージェント·トゥローザはもう失敗しない、という嘘も同じだと思います。
「カーブ」:
嘘学習モジュール終了。
パイモン:
い…今突然、カーブが変になったよな?…なにを言ってたんだ?
トゥローザ:
嘘学習モジュールは…カーブのコアにあるの。起動するとカーブは辻褄が合わないこととか、わけのわからないことを言い出すのよ…
パイモン:
うーん…まあ実際、人間でもこういうおかしなことを言うやつは沢山いるよな…ってことは、これはある意味カーブの進歩か?
旅人:
確かに。
パイモン:
トゥローザ、カーブが進歩しようってときなんだぞ。本当に諦めるのか?
トゥローザ:
それは…その…ねえ、もう一度さっきの言葉を言ってくださらない?
パイモン:
どの言葉だ?
旅人:
もうどん底まで落ちた!
パイモン:
ああ!そうそう、だからこれ以上失敗することはないぞ!
トゥローザ:
わかった、もう一度頑張ってみるわ!カーブだって学習を続けてるんですもの…あたしも、助けてあげなくてはね!
パイモン:
わぁ、トゥローザって子供みたいだな、落ち込むのも突然…元気になるのも突然…
旅人:
パイモンも似たようなものだよ。
パイモン:
オイラ…まだそんなに子供かな?
旅人:
まだトゥローザほどの背丈もないしね。
トゥローザ:
ちょっと、ぺちゃくちゃうるさいわよ!さっそく行動しましょう。新聞社が何か知ってるかもしれないから、今は窃盗事件について引き続き捜査を進めるわよ!
トゥローザ:
ちょうどあたしたちも四人だから、それぞれ四人の容疑者を演じて、事件当日の夜を再現してみるのはどうかしら。新たな突破口が開けるかもしれないわ。
パイモン:
よしよし、トゥローザの頭が動き出したな!オイラもいいアイデアだと思うぞ!このまま新聞社の前に行ってみようぜ。
親分:
何を出してくるつもりだ?証拠はあるのか?