arrow_back 原神 クエスト
風を捕まえる帰郷者・3
龍と自由の変奏
任務一覧
二日目も無事に終わり、楽しいパーティの後、ついに三日目を迎えた。それはつまり、物語の結末部分を確認することでもある…
パイモン:
よーし!出発するぞ…って、ええっ?
パイモン:
このシャボン玉、前はこんな色じゃなかったぞ。どうしたんだ?もしかしてこいつ、体調でも悪いのか?
ニコ:
あたしにも何が起きたのかわからないわ。今朝ここに来て、入場前の点検をしようとしたら、こんな状態になっていたの。
旅人:
アビス…
パイモン:
えっ、アビス!?そんな!アビスの力がどうやって入ってきたんだ?
ファルカ:
やっぱりお前はこういう力に敏感だな。一目見た時、俺もそうかと思ったが…どうも少し違うらしい。
ディルック:
どういうことだ?
ウェンティ:
「芽」だよ。まだ孵化していない鳥の卵とか、嵐の前の黒雲とか…災いの予兆みたいなものさ。
ニコ:
魔法のシャボン玉の中は架空の世界よ。そこに存在するならば、このアビスの力も架空…と考えて差し支えないわ。
パイモン:
アリス、この魔法はおまえが作ったんだよな?原因はわからないのか?
アリス:
新しい魔法にヘンな問題はつきものよ。今回のことも、そんなに大したことじゃないはず。
アリス:
でも、原因と解決策の確証を得るためには、もっと観察しないとね。
ジン:
ふむ…とにかく危険を孕んでいるのは間違いないようだな。一般モンド住民の娯楽施設として投入するのは厳しい。
ジン:
アリスさん、申し訳ない。クレーとの約束を破ることになりそうだ。
アリス:
……
パイモン:
ア、アリスのこんな真剣な顔、初めてだぞ…
旅人:
ドットーレの件より…
アリス:
前代未聞の危機ね。でも、まだあきらめるには早い——対策を考えましょう。
ファルカ:
それはクレーのことか、それともアビスのことか?
アリス:
両方よ!ある程度の予想はついてるけど、確実な証拠を得るにはシャボン玉の中に誰かを送り込まなくちゃ。
アリス:
アビスの原因を調べるにしても、脅威の芽を摘むにしてもよ。
ジン:
それについては私も同感だ。この現象を放っておくわけにはいかない。
アリス:
じゃあ、こうしましょ。クレーに言い聞かせて別の場所で遊ばせてくるから…
アリス:
ニコ、その間に外からの観察と記録をお願い。みんなと協力して、できるだけ早くこのシャボン玉の魔法を修復して。
ニコ:
それは約束できないわ。不確定要素が多すぎるし、みんなに無理に危険を冒してもらうわけにはいかない。天の使いはなんでも願いをかなえる不思議な存在じゃないんだから…
アリス:
違うの?
ニコ:
…できる限りのことはやってみるわ。できるだけ早く戻ってきてちょうだいね。これはあなたの魔法なんだから。
パイモン:
アリスの言う通りにするしかないみたいだな。オイラたちも見て見ぬふりなんてできないぞ!
旅人:
本当はどんな物語が始まるはずだったの?
ニコ:
みんなで手に入れた天空のライアーを使って、バルバトスがアビスの侵蝕を受けたトワリンを呼び寄せて…
ニコ:
心を一つに風龍廃墟でトワリンと戦って、アビスの力の影響を排除できましたとさ。めでたしめでたし…よ。
パイモン:
実際あったことと同じだな…
ディルック:
ちょうど当時のメンバーが揃っている。一緒に中に入って真相を確かめよう。
ファルカ:
俺も参加させてくれ。モンドで不穏な影を確認したからには、状況をはっきりさせておきたい。
ジン:
……
ウェンティ:
ジン、どうしたんだい?
ジン:
いや、なんでもない。ただ、少し懐かしくなったんだ…またこうして一緒に行動できる日が来るとは思わなかったから。
ディルック:
昨日も一緒だっただろう。
ジン:
ああ。だが、あの時は気楽に楽しんでいただけだった。今、私たちは一致団結して危機に立ち向かおうとしている…この瞬間のほうが、記憶と共鳴する気がする。
パイモン:
いちばん真面目なジン団長が、そんなこと言うなんてな、へへっ。
ジン:
私は…いつも、気張りすぎているのだろうか。
ファルカ:
そんなことはないぞ。だがな、俺は誰だって自分の考えを曝け出すべきだと思ってる。そうでなけりゃ、他人にはそいつのことがわからん。
ファルカ:
もっと普段からよく話してくれれば、パイモンに驚かれることもなくなるだろうさ。
ウェンティ:
パイモンはいつも思ったことをすぐ口にするでしょ?だから、ボクたちはそんなパイモンのことを素直で親しみやすい人だと思って、あまり彼女の発言は気にしないでおこうと思えるんだよ。
パイモン:
吟遊野郎もなかなかいいこと言うじゃないか…って、ん?それって褒めてるのか?
ニコ:
出発前に一つ警告させて。今、魔法のシャボン玉の中がどうなっているのかは、誰にも分からないわ。
ニコ:
これまでは、みんなが向こうの世界に入っても連絡を取れていたけれど…今は覗いても混沌しか見えないから、声を伝えるのも難しくなる可能性がある。
ニコ:
魔女による案内は受けられないものと思って、くれぐれも慎重に行動してちょうだい。
ディルック:
安心してくれ。危険な状況は、みんな何度も経験してきている——対処にも慣れている。
アリス:
最悪、私がセーフティネットになれるから。でも本当にそういう処理をしてしまったら、みんなのこれまでの苦労は水の泡になってしまう。
ウェンティ:
シャボン玉を丸ごと壊すってこと?
アリス:
緊急事態なら、そうするしかない。
ニコ:
わかったわ。あたしはここでシャボン玉の状況を観察しながら、外部から修復して、できる限りサポートするわ。
ファルカ:
よし。それぞれの役目を果たして、完璧に片付けよう。
ディルック:
行こう。
パイモン:
あっ、ジン団長だ!
パイモン:
わ、ここって…モンドの街の中か?
パイモン:
一緒に入ってきたはずなのに…みんな、どこにいったんだ?
旅人:
シャボン玉が不安定になってるみたいだね。
パイモン:
おい、あそこに吟遊野郎がいるぞ!魔物があんなに…!
旅人:
助けに行こう。
パイモン:
おう!
ウェンティ:
旅人とパイモンも近くに居たんだね。まずは魔物を片付けよう。
パイモン:
ディルックの旦那がいたぞ!
パイモン:
吟遊野郎、大丈夫か?
ウェンティ:
二人のおかげで助かったよ。でも街のほうは大丈夫じゃないみたいだね。
旅人:
物語が混乱してるみたい。
パイモン:
なんで街の中にこんなにアビスの魔物がいるんだ?まるで…モンド城が陥落したみたいだぞ。
ウェンティ:
ボクにもわからないけど、まずは一緒にこの世界に入ってきた仲間たちを探し出さないとね。今頃どこかで動けなくなってるかも。
パイモン:
そうだな、早く行こう。
トワリン:
——
パイモン:
おい見ろ、トワリンだぞ!でも、様子が…あの時よりずっと重症みたいだぞ?
ウェンティ:
うん、アビスの汚染が完全に広がっている。あの時モンドでトワリンが浄化されていなかったら、最後にはこんな姿になっていただろうね。
パイモン:
なにか落ちてきたぞ!
ウェンティ:
彼の涙だ…
パイモン:
涙!?あの時、オイラたちが浄化した涙のことか?
ウェンティ:
うん、でも今はもう、混沌としたアビスの力の結晶になっているみたいだ…
ウェンティ:
放っておけば、あちこちに散らばった涙がアビスの魔物を呼び寄せて、取り返しのつかないことになる。
ウェンティ:
それに、ボクたちにはこの涙が必要だ。
旅人:
俺が浄化してみるよ。
ウェンティ:
ううん、こんなに汚染されてしまったら、もう浄化はできないよ。それに、汚染された龍を呼び寄せるには、汚染された涙が必要だ。
ウェンティ:
今のトワリンにはもう、純粋なライアーの音色は届かないかもしれない…
パイモン:
だったら、やっぱり戦うことになりそうだな…
ウェンティ:
うん。トワリンが現れる前は確信が持てなかったけど、今はわかる…目の前で起きていることは、単なる物語の「混乱」じゃない。
ウェンティ:
物語の「もうひとつの可能性」みたいなものだよ。そして、どうしてこうなったかについては、なんとなく見当がついてる。
ウェンティ:
うん、どこもかしこも魔物が暴れ回っているけど…どっちに進むかは君に任せるよ。
パイモン:
どうしたんだ?
パイモン:
し、神像が壊れてるぞ!
ディルック:
ファルカさんもいるはずだ、急ごう。
ジン:
助けに来ました。
ファルカ:
おお、最高のタイミングだな。さぁ、やるぞ!
ファルカ:
やっと合流できたな。みんな、無事だったか?
ディルック:
ああ、「栄誉騎士」たちが来てくれたからな。
ウェンティ:
トワリンの涙の結晶を全部集めたからか、アビスの魔物の勢いも弱まってきたみたいだね。
ウェンティ:
ファルカも感じてるでしょ?この架空の世界では、街が空っぽになっちゃってるみたい。
ファルカ:
ああ、戦い続けて体力を消費しても無駄だな。とっととここから抜け出す機会を探ろう。
ジン:
——ここまで来れば、大丈夫だろう。この辺りは当分安全そうだし、魔物に襲われる心配もないはずだ。
ニコ:
もしもし?通信機能がまた故障してしまって…聞こえてるかしら?こちらニコ、アリスも今戻ってきたわ。
パイモン:
聞こえてるぞ!ニコ、アリス、一体なにがどうなってるんだ?
ニコ:
恐らく根本的な原因は、旅人がアビスの力を浄化するという部分を安直に削除したうえ、その穴を補完も修復もしなかったことよ。
ニコ:
あたしたちは、どれも独立したシーンだから、互いに干渉することはないと考えていたのだけれど…
ニコ:
魔法のベースが同じシャボン玉にあるから、ぜんぶ繋がっているものとして認識してしまったみたい。
ニコ:
その結果、「トワリンがどのように浄化されたのか」という事象の処理に不具合が生じてしまったの。
ウェンティ:
やっぱりそうか。
ウェンティ:
今の物語の流れは、まさに「栄誉騎士がモンドに現れなかった」場合の延長線上にあるんだよ。
パイモン:
なるほどな…でも、おまえがいるじゃないか?
ウェンティ:
アビスは世界の敵だけど、あの時のボクは目覚めたばかりで…対処はできたと思うけど、やっぱり被害は大きくなってたと思う。
ウェンティ:
ファルカは魔女たちの水占の盤で既に見たんじゃないかな?
ファルカ:
確かに見た…あれほどリアルな映像は、忘れられる気がしないぜ。
ファルカ:
最終的に…やっとのことでトワリンは再び封印された。お前の負傷を代償にな。
ディルック:
だが、それはつまり封印できたということじゃないのか?どうしてこんな事態になってしまったんだ?
アリス:
封印では根本的な解決にはならない。アビスの力は時を経るごとに強くなり…トワリンの心を完全に蝕んでしまったのよ。
パイモン:
じゃあ、今オイラたちが見てるのは…
アリス:
そう、トワリンが再び封印から解き放たれた時のことよ。もう、助からないぐらい侵蝕が進んでる…
アリス:
アビスの力は彼の肉体や骨と、完全に融合してる。今浄化すれば、彼の命はないでしょうね。
アリス:
……
ジン:
じゃあ、今のモンドを助けるには、もう…
ファルカ:
トワリンを倒すしかないってことだな。
ファルカ:
そう暗い顔をするな。これが仮想世界の出来事でよかったと思うべきじゃないか。現実の龍は元気いっぱいだぞ?ここまで激しく動き回っちゃいないがな。
ファルカ:
アビスの力をどうにかできる方法がせっかく見つかったんだ、さっさとやっちまおう。俺たちにとっちゃ、朝飯前だろう?
ファルカ:
クレーも俺たちを待ってるぞ。
アリス:
クレーには別のところで遊んでもらってるから、そこまで時間がないわけじゃないけどね。早く何とかしたほうがいいのは確かよ。
ウェンティ:
…うん、君たちの言う通りだね。
ファルカ:
やりづらいなら、俺たちに任せてくれ。この世界はただのゲームだ——誰も嫌な思い出を残すことはない。
ウェンティ:
大丈夫だよ。あの時…ボクもこうする覚悟はできてたからね。
ウェンティ:
それじゃあ、風龍廃墟に向かおう。
ウェンティ:
さあ、みんな。準備はいい?
ディルック:
僕はいつでも。
ジン:
以前戦ったときの記憶…体が覚えているといいのだが。
ファルカ:
初めましては俺だけか?ははっ、問題ない、すぐに追いついてやるさ。
パイモン:
準備はいいか?旅人、テイワットで初めて戦った強敵だぞ。あの時は緊張してたんじゃないか?今はどうだ?
旅人:
緊張なんてしてないよ。一緒に成長してきたんだから。
旅人:
あの時、乗り越えられたんだから…今回もきっと大丈夫だ。
パイモン:
おう、おまえを信じてるぞ!
ウェンティ:
それじゃあ、この穢れたライアーの音で、変わり果ててしまった眷属を呼び寄せようか。
ウェンティ:
うぅ…
ファルカ:
大丈夫か、バルバトス?
ウェンティ:
荒れ狂うアビスの力を音符に変換するのは、決して楽じゃないからね…
ウェンティ:
でも、ボクは最高の吟遊詩人を自負しているんだよ。こんな時に失態を晒すわけにはいかないよね?
トワリン:
■■■■■■、■■■■■、もうたくさんだ!
トワリン:
我を呼ぶとは!■■■■■■■、■■■■■■■!
ディルック:
ありがとう、僕は大丈夫だ。
ディルック:
街は完全に落とされてしまったようだ…途中で西風騎士や一般市民を見かけなかったか?
旅人:
見てない…
ディルック:
それなら、僕の推理も成り立ちそうだ——この架空の世界では、モンドの街は西風騎士団に見捨てられ、住民たちは全員別の場所へ避難させられている。
パイモン:
み、見捨てた…?
ディルック:
僕たちにはアビスに抵抗する力などないからね。騎士団の決断もやむを得なかったのかもしれない…何にせよ、理由を詮索している暇はない。
ディルック:
むしろ街の中に人がいないのは都合がいい。戦いに集中できる。
ディルック:
それに…この風龍の涙を放っておくわけにはいかない。
ウェンティ:
ボクたちはそれを回収しに来たんだ。
パイモン:
そうだ、ファルカはどうした?なあ、あいつを見かけなかったか?
ディルック:
僕も見ていない…探すしかないな。
魔法のシャボン玉の中で起きたアビスの脅威はなんとか無事に片付けられ、アリスとニコは魔法の不備を緊急修正し、問題の再発を防止した。
クレーは異常に気付かないまま、母親とニコと一緒に楽しい冒険の旅を満喫できたようだった。
騎士団に残された唯一の痕跡は…トワリンが割った窓だけ、というわけだ。
パイモン:
なんとか上手く収まったな。
パイモン:
「びゅんびゅん爆速車」に乗った時の気持ちに似てるぞ。すごくヒヤヒヤして、ハラハラもしたけど、最後には楽しい気持ちで終われただろ。
ウェンティ:
窓のこと、ごめんね!またジンに後始末を任せちゃって。
ジン:
気にしないでくれ。建物の構造に被害が及んでいなくて幸いだった…後で窓枠とガラスの交換を手配しておく。
ジン:
トワリンが助けに来てくれて本当に良かった。我々は結局、飛んでいる悪龍に対して手も足も出なかったからな。
ウェンティ:
そう言ってもらえてよかったよ。ボクの風でも君たちを運べないことはなかったけど、風の翼が耐えられるかどうか、怪しかったんだよね。
ディルック:
しかし、アリスさんは本当に肝が据わってるな。僕たちが中で散々な目に遭ったのを知っていながら、そんなところに娘を連れて行くなんて…
ディルック:
まだ他の危険が潜んでいるかもしれないのに。
ジン:
それだけ魔女たちは魔法の制御に自信を持っているということなのかもしれないな。
ファルカ:
むしろアリスさえいれば、シャボン玉が粉々に爆ぜたとしても、クレーは一切無傷で済むんじゃないか?
ディルック:
確かに…彼女の実力なら、そうかもしれない。
ファルカ:
さて、みんなこれからどうするんだ?また飲みに行くってのはどうだ?俺がおごるぞ。
ディルック:
嬉しいが、奢りはまた次の機会にお願いしたい。遠征隊を労うための良い酒を仕入れたんだ。
ファルカ:
はっはっは、それはありがたい。遠慮なくいただくぞ。
ウェンティ:
えっ、お酒があるの?ボクも行く!
ディルック:
じゃあ、僕の別邸に向かおう。ジンも来るか?
ジン:
いや、私はいい。まだ処理しなければならない仕事が山ほどあるんだ。
ファルカ:
おいおい、めったにないチャンスなんだぞ。一日くらいサボったっていいだろ?ほら、行こう。
ジン:
では、パーティーの後は大団長も一緒に仕事をしてくださるんですか?
ファルカ:
ぐっ…じゃあ、仕事が終わったあと、よかったら来てくれ!
ファルカ:
栄誉騎士はどうだ?
ファルカ:
よし、じゃあ一旦お別れだな。いろいろ丸く収まって、よかったよかった。
アリス:
あら、待っててくれたの?
アリス:
ありがとう。おかげで娘との約束を破らずにすんじゃった。今日は本当に楽しんでくれたみたい。
アリス:
ニコもあの後、私たちと一緒に中に入って、同じようなことが二度と起きないように、魔法に他の問題がないか徹底的に調べてたのよ。
アリス:
はぁ、これも教訓ね。大魔王のみっともない姿、見せちゃった。
パイモン:
それじゃ、問題は解決したのか?
アリス:
ええ、もう完全に修復できたし、録画も全部終わった。あとはその都度再生するだけよ。
アリス:
一番不安定だった部分はもう終わったから、元々の計画通り、普通の人も中の世界を自由に探検できちゃう!
アリス:
もちろん、ニコが引き続き見張ってるから、安心してね。
アリス:
うーん…私はそうは思わないかも。正確に言えば、シャボン玉は「起こり得なかった運命」を映し出してたと思うの。
パイモン:
んん?それってどう違うんだ?
アリス:
シャボン玉の中の物語に登場した「龍殺しの勇者さん」は、実際はナド・クライに遠征に行っちゃってたでしょ?
アリス:
でも、だからといってトワリンが死の運命から逃れられるわけじゃない。別の英雄が立ち上がって、大きな代償と引き換えに勝利を手にしたはずよ。
パイモン:
けど、あれはもっと後——トワリンの封印が解かれた時に起きる災いだってみんなが言ってたぞ。その時にはファルカが戻ってきてたかもしれないだろ?
アリス:
ふふ…パイモン、そういう疑問については、自分で答えを見つけなくっちゃね。
アリス:
一つ忠告しておくと…「起こり得なかった運命」を知ったからといって、嘆いたり、気をもんだりしないことよ。
アリス:
運命が見えたら、きっと素晴らしいことも、すっごく酷いことも目にすることになる。
アリス:
でもね、そんなことは起こりえないし、私たちが生きてるこの世界では、「もしも」なんて意味ないでしょ?
パイモン:
お、おう…
旅人:
もう一つ聞きたいことがあるんだけど…
アリス:
偽物に見えなかったから、シャボン玉自体がアビスに汚染されたみたいだった、って言いたいのかしら?
アリス:
毎日「境界」を行き来するうち、私の持ち物に「汚れ」が付着してしまって、それがうっかり魔法に紛れ込んでしまった——
アリス:
なーんて、そんな恥ずかしいミスするわけないでしょ。うふふっ。
アリス:
でも、あなたの感覚は正しいのよ。あれはアビスの力の「芽」——あのまま放っておけば、本物のアビスの力へと進化してたはず。
パイモン:
えっ?つまり、アビスの力は外から来たんじゃなくて…なんにもないところから生まれた、ってことか?
アリス:
アビスは謎多き存在だからね…あなたたちも、何度も関わってきたでしょ?あれは本当に複雑な性質を持ってるの——危険で、狡猾で、邪悪で、偏執的な性質をね。
アリス:
魔女会はずっとこの力を観察してきた。中でも、バーベロスの解釈はとっても正確よ。
アリス:
——アビスの本質は、全ての「起こり得なかった運命」の憎悪である。
旅人:
運命の恨み…
アリス:
この世界には相反することがたくさんある…ある物事が起こる裏では、別の可能性が消えてるのよ。
アリス:
ほんの小さな例を挙げれば…今日の昼食に鳥肉のスイートフラワー漬け焼きを食べた私は、午後のパンケーキを選んだかもしれない私を消しちゃったってこと。
アリス:
もちろん、大きく世界を変えてしまうようなことだってあり得るの。例えば私の親友、レインドットがアビスに手を染めた時、純粋だった彼女の未来の物語は、あの瞬間に消えてしまった。
アリス:
——どうしてよりにもよって「あの子たち」が消えなければいけなかったのかしら…
パイモン:
なるほど、大体わかったぞ。選ばれなかった恨みってやつだな。
アリス:
そうね。今回は過去を再現する魔法を利用して、そこに変数を加えたせいで、「起こり得なかった運命」を現実にすごく近づけちゃったのよ。
アリス:
それで、アビスの力が牙を剥き出した…それは生まれることを望まず、ただ全てを破壊することだけを望むもの。
アリス:
ま、大したことじゃないけど。「境界」ではこういうことが日常茶飯事なのよ…はぁ。
旅人:
そうだったんだ。
アリス:
自分が奪われた被害者だと思い込んでるんでしょうね。
アリス:
アビスは執念に満ちていて、手段を選ばずこの世界にやってくる。だから、私たちは大切な生活と友達を守らなくちゃいけないのよ。
アリス:
そして、現実っていうのは、無数の可能性の中から生まれた、唯一の幸運なの。
旅人:
アビスと戦って…
ジン:
アリスさん、ここにいたのか。
ジン:
申し訳ないが、騎士団の規則に従って、反省室に行ってもらわなければならない。
アリス:
あら?どうして?魔法のシャボン玉のことなら、ちゃんと解決したでしょ。
アリス:
あれは私だけの落ち度じゃないはずよ?私を反省室送りにするなら…ニコも一緒じゃなきゃ不公平よ。
ジン:
そうじゃない…偵察騎士から、星落としの湖の近くで爆弾の被害を受けた魚の群れが大量に見つかったとの情報が入った。
ジン:
——これは明確に禁止されている行為だ。アリスさんもよくわかっているはずだろう。
アリス:
ええっと…
アリス:
クレー、早く逃げて!
ジン:
クレーはもう中だ。
アリス:
……
パイモン:
へへっ、まさか大魔王がこんな目に遭うなんてな。
アリス:
…うぅ、旅人。さようなら…
ジン:
支援、感謝する。
ジン:
架空とはいっても、この世界では現実のアビスの力と何ら変わりない…これは少々厄介だな。
ウェンティ:
それは、ボクたちがこの力を利用することもできるってことさ。ボクたちがやってきたのも、トワリンの涙を回収するためなんだ。
ジン:
なるほど…では引き続き行動しよう。無駄にできる時間は無いからな。
パイモン:
ファルカには会ったか?探してるんだけど…
ジン:
いや、会ってないな…上にいるのかもしれない。一緒に探そう。
アリス:
さあ、できた。ほら見て、ぜーんぶこの人のせい。この人が邪魔をしたせいで、パパは今回帰ってこられなかったの。
クレー:
この大悪党めー!ドッカンしちゃうんだから!
アリス:
そうそう、大悪党!でも、その大悪党を栄誉騎士のお兄ちゃんと仲間たちがやっつけてくれたんだよ。
クレー:
やったー!さすが栄誉騎士のお兄ちゃん!
スクロース:
トワリンが川に落ちたなんて…あの大きな音はそれだったんだね。
アルベド:
トワリンほどの巨体が飛び出したのに、壁じゃなく窓を取り替えるだけで済んだのは、魔法のおかげだね。
ジン:
二人とも、部屋の修理と掃除を手伝ってくれて本当にありがとう。おかげですっかり元通りだ。
パイモン:
へへっ、元に戻ったのは錬金術のおかげだな。