arrow_back 原神 クエスト
盛典と慧業 第二幕
砂が舞い上がり落ちる
学院トーナメントが第二ラウンドを迎えた。今回の試合会場は砂漠にある。アアル村に行ってみよう…
カーヴェ:
ねえ…そのクマ、前回よりもひどくなってるみたいだけど、大丈夫かい?
レイラ:
カーヴェ先輩、ご心配ありがとうございます。ここ数日、ちょっと眠れなくて…
レイラ:
寝なきゃダメって自分を催促しても、頭の中には試合のことばっかり浮かんできちゃって…気がついたら朝になってました。
カーヴェ:
はあ…わかるよ。設計図に苦しめられているときの僕もそんな感じだ。
レイラ:
カーヴェ先輩はそういうとき、何かいい解決法がありますか?
カーヴェ:
正直、ないね。というか、物事の大半には、すぐ効くような解決法なんかないんだ。ただ我慢し続ける…それか、終わるまで何とか持ちこたえるしかない。
カーヴェ:
うーん…病気みたいなもの、かな?症状に合った薬を出せないときもあるから、そんなときは自然に治るまで待つしかない。
カーヴェ:
何に悩んでいるのかは知らないけど、あなたは強い焦燥感とプレッシャーに苛まれてるように感じる。でも…もうすぐ試合が始まるよ、元気出して。
レイラ:
はい…試合、お互い頑張りましょうね。
アルハイゼン:
全員集まったようだな。これから、第二ラウンドの試合内容を発表する。
アルハイゼン:
このアアル村付近のエリアに、地脈干渉器を3台埋めた。
アルハイゼン:
この機械は地脈の乱れをシミュレートできるもので、常にエリア一帯の環境に干渉する。君たちの目標はそれを停止させることだ。
アルハイゼン:
最初に試合目標を達成できた三人は、機械を止めるのが早かった順に、それぞれ4ポイント、3ポイント、2ポイントを獲得できる。
アルハイゼン:
強調しておきたいのは、一人が持っていける水と食糧の量は決まっているということだ。また、試合エリアから離れた場合、本ラウンドを棄権したとみなされる。
ファルザン:
後輩、どうじゃ?今回も協力せぬか?
ファルザン:
前のラウンドでの働きに免じて、先に点数を取らせてやってもよいぞ。
カーヴェ:
先輩、今回は必要ありません。この辺りには何度も来たことがあるし、機械は僕の得意分野ですから。地脈干渉器を見つけるなんて、僕にとっては造作もない。
ファルザン:
よかろう、若者が自信を持つのはよいことじゃ。ワシもここいらには詳しいからな、どちらが先に機械を見つけられるか見ものじゃな。
ファルザン:
じゃが、ワシら以外にも有力な優勝候補が一人いる。気をつけんと…
パイモン:
有力な優勝候補!誰だ?
ファルザン:
シーっ。ほれ、見えるじゃろう。ティナリのやつじゃよ。
ファルザン:
前回は、やつが一位を取ったじゃろう?もし今回もまたやつが最初に機械を止めるなどということがあれば、もう学院トーナメントは終了宣言を出してもいいくらいじゃろう。
ファルザン:
お前たちは少し前に、アビディアの森の地脈漏出問題を解決したと聞いておる。今回も機械が模擬した地脈の乱れなんじゃ、やつにとっては慣れたもんじゃろう。
パイモン:
そうだな!そう言われてみると、確かにティナリの優勝する可能性は高そうだぞ!
ファルザン:
あいつにはもう、コレイのようなよき弟子がいるのじゃ。その上優勝まで取られたら、後輩ばかりがいい所取りではないか?
ファルザン:
先輩として、このような不公平な状況は止めねばならん。ワシは先に行くぞ!
カーヴェ:
僕も行くよ。じゃあ、また。
セノ:
…平気か?
ティナリ:
今はまだ平気。まあ、やってみるしかないね。
レイラ:
水…これだけなの?
ニィロウ:
ごめんなさい。試合のルールなの。
ニィロウ:
このラウンド、機械を止めるスピードを競い合わせるように見せかけて、実は劣悪な環境での生存能力も見てるんだ。
レイラ:
やっぱり、私が予想してたのよりはるかに難しい。
レイラ:
速戦即決で機械を見つけるか、体力を温存してチャンスを待つしかないか…わかった。私も砂漠に行ってくるよ、ありがとう。
ニィロウ:
ううん、安全に気を付けてね。
パイモン:
よし…みんなもう出発したな。
パイモン:
今回はまず誰のところに行こうかな?うーん…
パイモン:
そうだ!ファルザンのやつ、ティナリが今回の優勝候補だって言ってたよな?まずはティナリを探しに行こうぜ!
パイモン:
ティナリ!おーい、ティナリ——
パイモン:
あれ、おかしいな。アラートデバイスによると、この近くのはずだぞ。
パイモン:
ティナリー!——聞こえるか——
旅人:
あそこ。
パイモン:
ほんとだ。あれ?あいつ、気を失ってないか…早く助けに行こうぜ!
パイモン:
ティナリ、大丈夫か?
ティナリ:
あ…暑い…
パイモン:
暑さのせいか!もしかして、ティナリは砂漠で動くのに慣れてないのか?
ティナリ:
そうなんだ…いつもなら砂漠に来るときは、こういう状況を避けるために、水を大量に用意するんだけど。
ティナリ:
今回の水はすぐに飲み切っちゃった上に、地脈の乱れのせいで頭がクラクラし始めて…
ティナリ:
そういえば、実は僕の祖先のワルカシュナは砂漠から来た種族なんだよ。でも、種族の移動というのは…往々にして元いた環境への適応能力を失わせてしまう…
パイモン:
今はそんなことを言ってる場合かよ。早く水を探さないと——
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
人というのは本当に脆くて弱いね。血肉でできた体は、外の環境の急激な変化にも対応できないんだから。
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
ほら、彼に飲ませなよ。
パイモン:
いいのか?この水は普通の水だよな…おい!もう行くのか?
旅人:
ちゃんと普通の水みたい。
パイモン:
あいつって、なに考えてるのか本当にわからないよな。とにかく、今はティナリに水をやらないと…
ティナリは水を飲んで、少しよくなったようだ…
ティナリ:
ありがとう、ちょっとマシになった気がする。
パイモン:
助けたのはオイラたちだけじゃないぞ、実はさっき——
セノ:
やっと見つけた。
パイモン:
セノ!おまえも来たのか!
セノ:
少し心配だったから、来てみたんだ。まだ続けられそうか?
ティナリ:
尻尾の毛がもうパサパサ。これ以上無理して続ける必要もないかな。
ティナリ:
やっぱりこのラウンドには向いてなかったみたいだ。それならアアル村に戻って、早めに休んだほうがいい。
パイモン:
えっ?ティナリは棄権するつもりなのか?
ティナリ:
うん。第一ラウンドの点数があるからね。第二ラウンドで全く収穫がなくても、次のラウンドで逆転できるチャンスはまだある。
ティナリ:
今諦めれば、次のラウンドのために体力を温存できるしね。このまま続けても意味ないよ。
旅人:
思い切りがいいね…
セノ:
賢明だ。俺たちが送ってやる。
ティナリ:
うぅ…いいよ、一人で戻れるから…
パイモン:
気にするなって!オイラたちに遠慮はなしだぞ——行くぞ!アアル村へ出発だ!
パイモン:
ティナリ、まだ体調が悪いのか?もう少し休んでいくか?
セノ:
ちょうど日陰がある、少し休めるな。
ティナリ:
うん、君たちの言う通りにするよ。
レイラ:
セノ先輩、ティナリ先輩。それに旅人とパイモン…
パイモン:
レイラもここにいたのか!
レイラ:
うん、陽射しが強すぎるから、ここでしばらく隠れてるの。
レイラ:
もしかして、先輩たちはもうすでに試合の目標をクリアしたんですか?
ティナリ:
そんなに僕はすごくないよ。棄権するつもりで、セノと旅人にアアル村まで送ってもらってるところなんだ。
レイラ:
き…棄権?そんなこともできるんですか?
ティナリ:
ルール上は問題なかったはずだよ。試合の範囲から離れれば棄権とみなすって、アルハイゼンも言ってたし。
セノ:
始まる前に大丈夫かと聞いただろう?その時に棄権していれば、こんな目に遭うこともなかっただろうに。
ティナリ:
とりあえずはやってみないと。やってみて、できないって分かった時に初めて諦めたって遅くはないだろ。
ティナリ:
戻ったら、絶対に日焼け止めオイルを何種類か作るよ。次に砂漠に来ることがあれば、やっぱりちゃんと事前準備しておかないと。
ティナリ:
そういえば、レイラ選手…だったよね。君もあまり体調が良くなさそうだけど、大丈夫?
レイラ:
砂漠に入ったばかりのときは、ちょっと目まいがしてたんですが、ここでちょっと休んで、だいぶ良くなりました。
パイモン:
無理するなよ!
レイラ:
心配しないで。私はただ…
セノ:
プレッシャーを感じるのか?
レイラ:
えっ…セノ先輩には分かるんですか?
セノ:
罪人が尋問されている途中、お前と似たような表情を見せることがある。
レイラ:
正直、今でもいったいぜんたい自分のどこに明論派の代表になる資格があるのか、分からないんです。
レイラ:
みんなが私に票を入れたのは、ほとんど噂が理由だと思います。でも私からしたら、噂なんてすごくふわっとしたものだし…むしろ、その期待に戸惑ってしまうんです。
レイラ:
今回は、普段からよく私を批判してる人までが、私に票を入れてくれました。だから、私も何とかして報いないとって思って…
ティナリ:
その「期待」が君にプレッシャーをかけたの?
レイラ:
はい…ティナリ先輩も投票で選ばれたって聞きました。先輩はどうやってそのプレッシャーに対抗してるんですか?
ティナリ:
正直、プレッシャーは特にないかな。
ティナリ:
まず、君にかけられた期待は必ずしも善意だとは限らない。本当に君のことを思ってる人は、君に無理なんてしてほしくないと思うよ。
ティナリ:
それから…僕たちは学者だ。学者の本分は知識と関わることであって、他人の期待に応えることじゃない。
ティナリ:
僕が試合に来たのも、来月ガンダルヴァー村で開催される生態学普及講座の宣伝のためなんだ。もちろん、試合では自分の全力を尽くすつもりだけど、目的以外のプレッシャーをあえて感じるつもりはないかな。
ティナリ:
君は何か、明確な目標を一つ見つけた方がいいと思うよ。それで少しはよくなるんじゃない?
レイラ:
なるほど…よくわかりました。ありがとうございます、ティナリ先輩。
ティナリ:
ふぅ…いっぱい喋って、喉がまたカラカラになっちゃった。
セノ:
俺の水筒にまだ少し残っている。
ティナリ:
いいって。もうアアル村までそう遠くないし、自分で歩いて行ける。君は限定カードが欲しいんだろ?早く戻って試合を続けて。
セノ:
安心しろ、俺はお前の意志を背負って戦い続けてやる。
ティナリ:
…僕が死んだみたいに言わないでくれる?
ティナリ:
旅人、パイモン、それとレイラ——先に行くよ。試合が終わったらまた会おう。
セノ:
俺も引き続き、地脈干渉器を探しに行ってくる。
パイモン:
レイラ、よくなったか?
レイラ:
うん。ティナリ先輩と話して、だいぶ良くなった。
レイラ:
故郷から教令院へ来て、けっこう経つ。ここでの毎日は本当に大切で…もちろん、ちょっと大変でもあるけど。
レイラ:
複雑で多彩な星象模型、数えきれないほどの小テスト、知恵を振り絞ってやっとの思いで終わらせる論文…巨大な石が一つ、また一つと転がってきて、ずっと、前に前に走るようにって急かしてくるみたいで。
レイラ:
学院代表に選ばれた時、後ろにある巨大な石がもう一つ増えた気がしたの。毎回、目を閉じると思っちゃうんだ。もし今回やらかしちゃったら、絶対たくさんの人を失望させちゃうんだろうなって。
レイラ:
うん…多分ティナリ先輩も私にそう言いたかったんだと思う。
レイラ:
あなたたちは棄権するティナリ先輩を止めたりしないし、私に失望したりもしない。だって、友達だから。
パイモン:
そうだぞ!だからレイラも憂欝になるなよ!
レイラ:
うん。ティナリ先輩はより明確な参加目標を持てって言ってくれた。今の私にはまだないけど…しっかり考えておくよ。
レイラ:
もうこれ以上、二人の時間を取らないでおくね。他の参加者のことも記録しないとでしょ?私たちがこうして話している間にもどこかで進展があったかもしれないし…
パイモン:
じゃあ、オイラたちは他の参加者のところへ行ってくるぜ。でも…誰を探しに行こうかな?ティナリはもう棄権しちゃったし、セノはさっき会ったばっかだろ…
レイラ:
ファルザン先輩のところに行ってみたら?ファルザン先輩は砂漠に結構詳しいって聞いたし、進捗も早そう…
パイモン:
よし、じゃあまずはファルザンを探しに行くぜ!
パイモン:
ファルザン、なにか進捗はあったか?
ファルザン:
ちょうどいいところに来てくれた。ここを下へ掘り進めようと思っておったところじゃ。
パイモン:
ええ?もう地脈干渉器を見つけたのか?
ファルザン:
この程度の問題で、ワシがつまづくはずなかろう?
ファルザン:
砂漠に入ってすぐ、あるプライマル構造体の行動軌跡がおかしいと気づいたんじゃ。それで後をつけてきた。
ファルザン:
じゃが、この辺りに着いたらいきなり消えおった。すなわち、ここに絶対問題があるということじゃろう?
パイモン:
さっすがファルザンだな!こんなに早く方法を思いつくなんて!
ファルザン:
まあ、ワシはみなよりも経験豊富じゃからな!それはさておき…誰か試合の目標を達成した者はおるのか?
パイモン:
まだいないぞ!
ファルザン:
では、ワシが一番乗りじゃな。ティナリのやつはどうしておった?
旅人:
ティナリは棄権した。
ファルザン:
はあ?なぜじゃ?
パイモン:
あいつ、砂漠で動くのが苦手なんだ…
ファルザン:
ふん、あやつにそんな弱点があったとはな。もっと鍛えてやらんと。
ファルザン:
他の者はどうなんじゃ?ルタワヒストのガキんちょはまだ悩んでおるのか?
パイモン:
ティナリがあいつに話をしたんだ。それでレイラは納得して、今はだいぶ良くなったみたいだぞ。セノはさっき出発して干渉器を探し始めたところだ。笠っちは…あいつが何を考えているのか、オイラたちも分からないぞ。
ファルザン:
カーヴェはまだ地脈干渉器を見つけておらぬのか?
パイモン:
まだだと思うぞ。見つけたらオイラたちのアラートデバイスが鳴るはずだからな。
ファルザン:
ふむ?何をあやつはもたもたしておるんじゃ…あやつの実力を思えば、これほど経っても何の知らせもないのは変じゃな。
ファルザン:
ワシのほうはもう、さほど懸念はない。あやつのところへ行ってくるといい。
カーヴェ:
だ!か!ら!僕についてくるなって!食糧はあれだけしかなかったんだ。もう全部やっただろ!?
コサックギツネ:
コン——
カーヴェ:
鳴いたって無駄だぞ!ないものはない!もう僕が持ってるのは残り半分になった水筒の水だけだ。これはあげられない。
カーヴェ:
水がなくちゃ砂漠では何もできない。これから僕は探し物をしに行かないといけないんだ。
カーヴェ:
メラック!こいつらを止めてくれ!
メラック:
ピッポ!
パイモン:
カーヴェ!ここにいたのか!
パイモン:
ファルザンがおまえを見て来いって言うから、それで来たんだ。なにしてるんだ?
カーヴェ:
はあ、説明するだけでイライラするよ。砂漠をまだいくらも進んでない頃から、こいつらに付きまとわれてるんだ。
カーヴェ:
何故だか知らないけど、こいつら試合エリアから離れなくて。その上、地脈干渉器のせいで混乱してるみたいなんだ。
カーヴェ:
僕を見るなり付きまとってきて、僕からなけなしの食糧を騙し取っていったんだ。
メラック:
ピッポ!
コサックギツネ:
コン——
カーヴェ:
あーっ!止めてくれって頼んだだろ?
パイモン:
カーヴェ、この空を飛んでるでっかい鉄の塊は、おまえのなのか?
カーヴェ:
ああ、これは僕の工具箱で、メラックって言うんだ。
パイモン:
工具箱…?なんか、先端技術っぽい見た目だけど…よう!オイラの言ってることは分かるか?
メラック:
ピポ?
旅人:
どこから連れて来たの?
カーヴェ:
ほら、僕って外出するとき、何かと持ち物が多いだろ?実用性のある、持ち運び可能な工具箱を持っておくに越したことはないからね。
パイモン:
でも、そいつ…普通の工具箱には見えないぞ。
カーヴェ:
話せば長くなる。前に砂漠で仕事をしてたとき、あるキャラバンに出会ったんだ。彼らが、墓から掘り出した機械のコアだっていう宝物を持っていてね。
カーヴェ:
そのコアはどう見てもキングデシェレト文明のものだった。キングデシェレトの技術の由来は未だに判明してないし、妙論派内部でも色んな説があるんだ。
カーヴェ:
僕たちの現在の理論では、まだそれらの謎を解明できていない。それで、こんなに完全なパーツを見られたのも何かの縁だと思って、あり金を全部はたいて買ったんだ。
カーヴェ:
少し前、手ぶらで持ち歩けるオート工具箱が欲しくなってさ。ちょうど手元にそのパーツがあったから、それをコアにメラックを作ったんだ。
カーヴェ:
複雑な命令は理解できないけど、僕の助手をしてくれる。僕の代わりに測量とかの仕事をしてくれたりとかね。
カーヴェ:
一番重要なのは、口がきけないこと。グダグダ言って僕を腹立たせることもない。
メラック:
ピッポ!
カーヴェ:
そういえば、こないだはアルハイゼンの家に住んでるってこと…隠すのを手伝ってくれてありがとう。
旅人:
元々口を滑らせたパイモンのせいだから。
パイモン:
へへっ、あのときは悪かったな…
カーヴェ:
はあ、こんな生活がさっさと終わればいいのに。そしたら、僕の人生だって正しい軌道に戻るはずだ。
カーヴェ:
いつからか、生活がどんどん悪くなっていったんだ。母さんがフォンテーヌで再婚しちゃった頃…それか、図書館でアルハイゼンに話しかけた頃から…
カーヴェ:
いや、それかアルカサルザライパレスのせいで僕の財布が空っぽになって、未だに借金の返済が終わらないせいかな。いつになったら終わるっていうんだ!
コサックギツネ:
コン——
カーヴェ:
よく考えてみたら、おまえたちも僕と一緒で運が悪かったよな。
カーヴェ:
地脈の乱れた場所に閉じ込められてしまったのもとんだ災難なわけだし…よし、まずおまえたちをここから送り出してやろう。
パイモン:
でも、カーヴェも地脈干渉器を探さないといけないだろ?
カーヴェ:
それはそうだけど、こいつらをほっとく訳にも行かないだろ…
カーヴェ:
とりあえず、そんなことを考えるのはやめにしよう。頭が痛くなってくる。まずこいつらを送り出してから、地脈干渉器を探しに行く。
カーヴェ:
世間話をする時間はもうない、先に行く!
パイモン:
カーヴェのやつって矛盾してるよな…あんなに優勝賞金を欲しがってるのに、助けたい相手は放っておけないんだな…
パイモン:
前に会ったときから思ってたんだけど、あいつって苦境に陥りやすいタチなんだよな。
パイモン:
オイラもこんなこと言いたくないけど、ああいう性格のやつって弱点が多すぎるから、人につけ狙われるんだ。
旅人:
事実を突いていくパイモン…ひどすぎる…
パイモン:
誰かが目標を達成したみたいだぞ!
旅人:
早いね。
パイモン:
そうだな!いったい誰なんだろうな?アルハイゼンのところに聞きに行こうぜ!
ニィロウ:
確認完了です。セノさん、おめでとうございます!一番最初に試合の目標を達成しました!
パイモン:
一番乗りはセノか!
セノ:
俺は素論派出身だ。地脈に関する知識なら熟知している。地脈干渉器を見つけることくらい、そう難しくもない。
ニィロウ:
旅人とパイモンも着いたことなので、セノさん、感想を聞かせてもらえますか?
セノ:
感想か?俺の友人が試合の途中で倒れてしまった…だからこそ、俺は絶対に負けられなかった。
セノ:
「過去の絆は新たな未来を作り出し、友情の証は俺たちを繋いでくれる。この瞬間の俺は、誰にも負けない。」
セノ:
…これは俺の大好きな作品「召喚王」の中の台詞だが、まさに俺の今の心境だ。
パイモン:
ティナリがこの場にいなくてよかったぞ。じゃなきゃ、あいつの頭を叩いてただろ…
旅人:
すっごくセノらしい。
ニィロウ:
気が付けば、もうじき夜だね。選手たちの水と食糧は底を尽きる頃…試合もだんだん厳しくなってきそう。
セノ:
似たようなシーンが「召喚王」にもあったな。王道の展開だ。
ニィロウ:
アルハイゼンさんは、何か感想はある?
アルハイゼン:
「召喚王」に対する感想なんかない。
パイモン:
どう考えたってニィロウはそんなこと聞いてないだろ!
アルハイゼン:
夜の砂漠は昼よりも危険だ。試合もそろそろ終盤だろう。もう、残っているのはファルザンとレイラ、カーヴェだけだ。
ニィロウ:
次は誰が地脈干渉器を見つけてくるかな…
パイモン:
あれ?もう三人しか残ってないのか?ティナリは棄権しただろ、セノはクリアしたし…そうだ!笠っちはどうしたんだ?
アルハイゼン:
少し前に棄権した。
パイモン:
あいつ、いったいなにを考えてるんだ…?
パイモン:
でもアルハイゼンの言う通り、試合もそろそろ終わりだよな。他の参加者がなにをしてるか、見に行こうぜ!
レイラ:
また会ったね。今思ったんだけど、あなたたちもかなりの距離を来てるでしょう?大変じゃない?
レイラ:
そうなの?すごいね…
レイラ:
夜の砂漠は冷えるね。風は砂交じりだし、顔に当たるとちょっと痛い。
レイラ:
誰か、試合の目標を達成した?
パイモン:
セノが一つ目の地脈干渉器を止めたぞ。おまえはなにか新しい発見はあったか?
レイラ:
試合エリアに沿って一周してきたけど、地脈干渉器は見つけられなかった。
レイラ:
だけど、とても大事なことが分かったの。
旅人:
どんなこと?
レイラ:
明論派の同級生は確かに色んな理由で私を学院代表に選んだと思う。私を笑いものにしようって人もいっぱいいるだろうしね。
レイラ:
けど、本当に私に期待を持ってくれてる人もいっぱいいると思うんだ。
レイラ:
みんなの期待に応えたいし、私の名前を書いたこと、後悔してもらいたくない。
パイモン:
あれ?もうプレッシャーには感じてないのか?
レイラ:
プレッシャーならもちろん感じてるよ。ただ、今の私にとって、それはもう「やらなきゃいけない事」じゃなくて、「私のしたい事」なの。
レイラ:
言葉にしちゃうと、そう大きく変わったようには聞こえないかもしれないけど、もうリラックスできてるから心配しないで。
パイモン:
そうだったのか、よかったな!
レイラ:
それで、やっとリラックスできたからか、なんだかとても眠くなってきた…
レイラ:
少し寝るね…少しだけ…
レイラ:
……
レイラ:
あれ?まだ試合は終わってなかったのね。この子ったら、緊張しすぎじゃない?
パイモン:
おまえは!
旅人:
「夢遊モードのレイラ」?
レイラ:
久しぶり。あたしも外の空気は久々なの。
レイラ:
出てきたからには、試合をクリアしてあげないとね。試合の目標はなんだっけ?地脈干渉器を探すこと?
レイラ:
どれどれ…もう情報はほとんど集められてるから、この子のために最後の締めをしてあげようかな。
レイラ:
旅人、パイモン、あたしについて来て。
レイラ:
これでしょう?今止めたから、ここ一帯の地脈は通常に戻ったはずよ。
パイモン:
すごい!
レイラ:
さっきも言ったでしょ。これはあたしの功績じゃない。あたしはただ最後の締めを担当しただけ。
レイラ:
もう少ししたらあの子も目覚めるはずよ。しばらく戸惑った末に、地脈干渉器を止めたって報告しに行くでしょうね。
レイラ:
君たちはもう少しここにいる?それとも他の参加者を見に行くの?
パイモン:
アラートデバイスを確認してみるか…あれ!カーヴェとファルザンが同じ場所に向かってるみたいだぞ!
レイラ:
多分、最後の一台を見つけたんでしょ。そういえばカーヴェ先輩って、本当に面白い人よね。
パイモン:
ええ?なんでそう思うんだ?
レイラ:
第二ラウンドの試合が始まる前、もう一人のあたしがカーヴェ先輩と話したの。そしたらね、悩みは病気みたいなもので、いつも症状に合った薬を出せるとは限らないから、時には自然に治るのを待つしかないって。
レイラ:
でもあたしからしてみたら、あの人の抱えてる問題の方がもう一人のあたしよりよっぽど深刻よ…あのとき、もう一人のあたしはただ自分のやりたいことが見つけられてなかったから、悩んで迷ってただけ。
レイラ:
でも、カーヴェ先輩にはやりたいことがある。賞金をゲットしなきゃって分かってるはずなのに、矛盾した行動をする…
レイラ:
二人目の人格なんてないはずなのに…自分自身との折り合いが全然つかないみたいにね。
レイラ:
…うーん、ああいう感じ、上手く説明できないけど…笑ってるように見えるのに、心は楽しんでなくて、むしろ悲しんでる、みたいな。
レイラ:
でも、ポジティブに考えてみれば、もしかしたら彼の方があたしよりも経験豊富だからこそ、こういう問題に対処できるかもしれないわよね。
レイラ:
あっ、直接現場に行って記録するのよね?君たちにとっては、それがこのラウンドの「締め」になるはずよ。
パイモン:
おう、じゃあオイラたちは先に行くな!おまえが言ったことも覚えておくぜ!
ファルザン:
この辺りにあるはずじゃ…
カーヴェ:
やっと見つけた…
ファルザン:
カーヴェ?お前、まさか…
カーヴェ:
ファルザン先輩!先輩はもう試合を達成できてると思ってた…
パイモン:
ファルザン、カーヴェ——
パイモン:
あっ、レイラが試合目標を達成したみたいだぞ。
カーヴェ:
まさか、ファルザン先輩と同時に地脈干渉器を見つけることになってしまうとは…ほかの参加者はどうしてる?
パイモン:
ティナリと笠っちは棄権して、セノとレイラはもう達成してる。あとはおまえら二人だけだぞ!
パイモン:
あれ、おかしいな。ファルザンはもうずいぶん前から掘ってなかったか?
ファルザン:
うむ。それが、ずっと掘り進んで行ったら、地脈干渉器を掘り当てるどころか、ある遺跡の中に入ってしまったのじゃ。
ファルザン:
結構深い場所に落ちてな。中は真っ暗で、ワシはだいぶ時間をかけてギミックを解いて地上に戻ってきたのじゃ。
パイモン:
なんだか…それはそれですごいような…
カーヴェ:
こんな短い時間で、他の人なら一週間もかかるような道を進みきるなんて、さすが先輩…
ファルザン:
お前は?何故これほど遅かったのじゃ?
カーヴェ:
途中でたくさんのコサックギツネに遭遇したんで、そいつらを試合エリアの外に送り届けてたんですよ…戻ったときには喉がカラカラで、急に目の前が真っ暗になって。多分熱さにあてられて気絶してしまったんでしょう。
カーヴェ:
目が覚めたらもう夜になってたので、最後の体力を振り絞ってここまで辿り着きました。
ファルザン:
本当に変な理由じゃな…お前、本当に大丈夫なのか?砂漠で一人倒れるなど、聞いているだけで危なっかしいぞ。
ファルザン:
砂漠に詳しいと豪語する割に、問題に遭ったときにはそのような解決法をとるなど…些かその天才の名に相応しくないのではないか?
カーヴェ:
あはは、確かに少し問題はあったかもしれません。でも天才かどうかなんて関係ない、僕自身の選択ですから。
カーヴェ:
…やり方は確かに妥当ではなかった。でもそうしないと、どうも気が晴れないんだ、心にうっすらと罪悪感を抱え込んでいるようで。だから…
ファルザン:
…ふん、最近の若者はそろいもそろって変なやつらじゃな。
ファルザン:
本題に戻ろう。どうやらワシらはどちらも、最後の地脈干渉器がここにあると確信しておるようじゃな。とりあえずそいつを掘り出そう。
力を合わせて最後の地脈干渉器を掘り出した。
ファルザン:
やはり、こいつじゃったな。ワシたちの考えていた通りじゃった。じゃが…今回はどうする?
カーヴェ:
ふぅ…
ファルザン:
後輩、どうした?ほっとした様子で?
カーヴェ:
あっ、いえ。ただこのラウンドがやっと終わったなと思って。
カーヴェ:
…これでもう、僕たちと無関係な動物が危険に巻き込まれずにすむはず…
カーヴェ:
ポイントは…あとでもう一回くじを引きましょう。他にいい方法もないし。
パイモン:
よし、じゃあとりあえずアアル村に戻ろうぜ。おまえら二人とも、まずは水と休憩がいりそうだからな。
ニィロウ:
第二ラウンドの試合が終わったみたい。ファルザンさんとカーヴェさん、どっちが早かったのかな?…あれ?ファルザンさんは?
カーヴェ:
ファルザン先輩は水を飲みに行った。すぐ戻ってくる。先輩とほぼ同時に見つけたから、またくじを引きたいんだ。
アルハイゼン:
君は物事にハマりやすいな。今回はくじ引きか。
カーヴェ:
ハマってなんかない!僕が好き好んで不運な目に合っているみたいに言うな!
アルハイゼン:
そうか?では言い方を変えよう。君はくじ引きと妙な縁があるな。
ニィロウ:
じゃあ、くじ引き用の箱と紙を用意してくるね。二人ともちょっと待ってて…
カーヴェ:
……
ファルザン:
うむ、またくじ引きか。ワシの運を見せてやろう。
束の間の緊張した空気の中で、カーヴェは見事に当たりくじを引き当てた…
カーヴェ:
当たったぞ!見たか?今回は僕の当たりだ!
ニィロウ:
おめでとう、カーヴェさん。
パイモン:
カーヴェも運が良くなったな!
カーヴェ:
本当に大変だった。うぅ…
ファルザン:
砂漠であれだけ苦労したのが報われたな。今回の点数はお前のものじゃ。
アルハイゼン:
……
ニィロウ:
今回、第二ラウンドの試合の目標を達成したのはセノさん、レイラさん、カーヴェさんの三人でした。
ニィロウ:
現在の順位を計算してみますね…
ニィロウ:
セノさんとレイラさんは4ポイントずつ所持しているので、同点で1位です。あとは順番に、ティナリさん、ファルザンさん、カーヴェさん、笠っちさんとなります。
ニィロウ:
次は最終ラウンドです。それまでに皆さん、しっかり休んでくださいね。
ニィロウ:
学院フェスのブースに新しい遊びが出てきたと聞いています。興味のある人はぜひ行ってみてください。じゃあみんな、次のラウンドでね!
ニィロウ:
第二ラウンドが始まりましたが、アルハイゼンさんは今回の試合で勝利を掴むのは誰だと思いますか?
アルハイゼン:
もちろん、この試合で勝利を掴むのは地脈干渉器を見つけた者だと思うが。
ニィロウ:
そうなんですね…ってあれ?それってただルールをもう一回言っただけじゃ…?
ニィロウ:
ティナリ選手が棄権することになるなんて…
アルハイゼン:
自身の弱点をはっきり認識できる上、それを認められるのは稀にみる資質だ。
ニィロウ:
試合もハラハラな展開になってきました。アルハイゼンさんも選手たちの情熱を感じませんか?
アルハイゼン:
選手たちの情熱よりも、ひしひしと感じられるのは砂漠の灼熱のほうだろう。ティナリの辞退は極めて賢明な判断だったと言える。
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
前のよりも面倒くさそうだね。まあ、焦る必要もない。座れる場所でも探して彼らが足掻いてるところを眺めようかな。
セノ:
今日の陽射しは一段と強いな…眩しすぎる。ティナリのやつ、何ともないといいんだが。
セノ:
はあ、何の問題もないなんて可能性はなさそうだな。様子を見に行っておかないと。
レイラ:
ふぅ…ちょ、ちょっとクラクラするね…
ファルザン:
さて、地脈干渉器をどこに置いたんじゃ?
カーヴェ:
コサックギツネ?…どうしてこんなところに?うわぁ、僕の服に噛みつくな!こらっ!
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
僕のところに来る暇なんてあるのかい?
カーヴェ:
何でまたもう一匹増えるんだよ…
レイラ:
心配しないで、私は平気だよ。
パイモン:
おまえ、なんかのんびりしてるな!
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
僕が今のんびりしていることを喜んだ方がいい。じゃないと、また誰かが痛い目に遭うことになるんだからね。
パイモン:
でもこのラウンドでまたポイントを取れなかったら、もう優勝できる可能性なんてないよな?
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
本気でチャンピオンになりたいわけでもあるまいし、そんな称号どうだっていいよ。それに、こんなに多くの人が使いどころもないものを奪い合ってるところを見てるだけで、もう十分面白い。
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
ああ、君たちのおかげで思い出したよ。もうこれ以降は想定外の状況なんて起こりそうもないから、早く移動しないと。
セノ:
「俺は絶対に諦めない…」
セノ:
ん?こうだったはずだよな。コホンッ!「俺は絶対に諦めない。意志こそが、俺の最高の武器だ…」
レイラ:
まず、試合エリアに沿って一周しようと思うの…
ファルザン:
おほん!来たぞ来たぞ、予感がするんじゃ。もうすぐよいものを掘り当てられるというな。
レイラ:
どうしても何となく合ってないような気がするんだ。ちょっと考えをもう一度整理してみる…
{REALNAME[ID(1)|HOSTONLY(true)]}:
ふーん。なるほど…二十年前ね…
セノ:
大丈夫か?
ティナリ:
だいぶ良くなった。さっきはアアル村の親切さを身に沁みて感じたよ…水をまるまる二本分もいただいちゃった。
セノ:
…必要なら、ダジャレでも言ってやろうか?それで体温を下げてやるよ。
ティナリ:
そ、それは間に合ってる!気持ちだけ受け取っとくよ。
カーヴェ:
シーッ、静かに。外に繋がる道を探してるんだ。
コサックギツネ:
コン——
第二ラウンドの試合が終わった。しかし、心に引っかかっていることがある…
パイモン:
おまえ、なにか考えごとか?
キャンディス:
旅人さん、パイモンさん、やっと会えました。
パイモン:
あれ、なんかあったのか?
ディシア:
今回の学院祭…何か変だと思わないか?
ディシア:
さっきまでキャンディスと一緒にカフェにいたんだけど、いかにも用があってここに来たって風な傭兵を見かけたんだ。あいつら、わざわざ変装までして、買い物に来ただけの観光客を装ってた。
ディシア:
でもどう変装したって、あいつらの体に染みついた血の生臭さは隠せやしない。あのコソコソした様子を見るに、きっとまた拉致とか暗殺みたいなゲスい仕事だろうな。
キャンディス:
少し聞き耳を立てていたのですが、彼らの目標はどうやら「サーチェン」という人のようです。
パイモン:
サーチェン?開幕式のとき、カリーナが言ってた人のことか?
パイモン:
「才識の冠」と、試合の賞金も全部そいつが提供してくれたって言ってたよな。けど、そいつ自身はずっと顔を見せてないような…
ディシア:
ふーん、聞いた限りじゃ金持ちみたいだな。それだったらおかしくはない。
ディシア:
ここんとこ、エルマイト旅団のやつらも生計が苦しいからな。傭兵たちの大半は「副業」をしてる。狙いは全部、金や権力を持ってる大物たちだ。
ディシア:
あいつらの言葉を借りれば、一度成功しさえすれば、身代金でしばらく楽な生活ができる、だそうだぜ。
キャンディス:
ちょうど学院祭の時期ですからね。スメールシティから一気にたくさんの観光客が押し寄せてきたのに乗じて、紛れ込んできたというところでしょう。
キャンディス:
ディシアと一緒に彼らを捕まえようと思ったのですが、相手の警戒が強くて…理由をつけて逃げられてしまいました。
ディシア:
シティ内で戦いなんかしたくないだろ。そうじゃなきゃ、すぐにでもやつらを縛り付けてたんだが。
ディシア:
こういうのは誰が管轄する決まりなんだ?マハマトラ…?それとも三十人団か?
パイモン:
うーん…セノならなんとかしてくれるだろ。とりあえず教令院に戻って、情報をマハマトラに伝えようぜ。
パイモン:
ディシア、キャンディス!ありがとうな!
キャンディス:
いいえ、私たちもたまたま耳にしただけですので。
ディシア:
ああ、気にするな。本当にやつらにやられてしまった日には、エルマイト旅団の名がもっと汚れるだけだ。
ディシア:
それにここはスメールシティだからな、あたしとキャンディスは手を出しにくいんだ。あんたらに任せたぜ。
キャンディス:
もし私たちの助けが必要になったら、いつでもカフェまで探しにいらしてください。
パイモン:
さっきなにか考えごとをしてたみたいだったけど、もしかしておまえも学院祭について考えてたのか?ディシアとキャンディスの話を聞いて、オイラも裏になにかあるんじゃないかって気がしてきたぞ…
パイモン:
うーん…こうして考えてたってどうしようもないよな。よし、教令院に行ってマハマトラを探しに行こうぜ!
アーラヴ:
お二方、これはお久しぶりですね。私に何か御用ですか?
ディシアとキャンディスから聞いた状況をアーラヴに教えた。
アーラヴ:
サーチェン様の拉致ですか…そんなことを計画している者がいるとは。でもよくよく考えてみれば、意外なことでもありません。
アーラヴ:
学院祭の影響力はどんどん広がってきていますからね。サーチェン様も協賛したということで、沢山の人が彼の名を耳にし、彼を大富豪として見ています。
パイモン:
あいつが狙われてるかもって分かってたんなら、人手を増やしてあいつを守ったほうがよかったんじゃないのか?
アーラヴ:
実を言いますと、我々にもそのような考えがありました。ただ、サーチェン様はもともと外での調査研究がお好きで、ほとんどスメールシティ内にいないので、誰も彼と連絡を取れなかったのです。
アーラヴ:
たった一つの手がかりは、彼が「学院トーナメントが開催されたら、私は毎回一番近い所で観察するつもりだ。私の資産を継ぐにふさわしい者を選び出す」と仰っていたことでしょうか。
アーラヴ:
サーチェン様がご自分の仰ったことを守っているなら、彼は今スメールシティ内にいるはずです。エルマイト旅団の者たちもそれを耳にしたからこそ、スメールシティに来たのでしょう。
パイモン:
じゃあ、あの悪いやつらもサーチェンがどこにいるかまではわかってないんだな?
アーラヴ:
そのはずです。セノ様はまだ休暇中ですので、この件は私が対処しましょう。
アーラヴ:
安心してください。今のスメールシティで、拉致犯たちによる波風を立たせることなどありません。私には、彼らを探し出す方法があります。
アーラヴ:
でも、サーチェン様のことが気になるようでしたら、彼を探してみていただけますか?
アーラヴ:
彼の居場所が早く分かるほど、それだけ早く彼の身の安全を保障できます。マハマトラや三十人団がどれほどすごくても、自分から姿を見せたくない、という人間は守りにくいですからね。
パイモン:
わかった、探してみるぜ。けどどこから探せばいいんだ?
旅人:
そっちにサーチェンの資料はないの?
アーラヴ:
ないですね。サーチェン様は法律や規範に違反するようなことは何一つしていませんので、マハマトラのほうには、彼の情報はあまりありません。
アーラヴ:
アルハイゼン様はすでに代理賢者を辞め、書記官の仕事に戻られたと聞いています。彼に聞いてみてはどうでしょう?
パイモン:
確かにそうだな。じゃあ、いったん会場に戻ってアルハイゼンを探しに行こうぜ!
パイモン:
ふぅ…ニィロウ、アルハイゼンを見なかったか?
ニィロウ:
アルハイゼンさん?
パイモン:
今ちょっと、ある人の調査中なんだけど、あいつに資料を探してもらいたいんだ。
ニィロウ:
そうなんだ…ごめんね、私もどこに行ったかまでは知らないんだ。
ニィロウ:
試合が終わった後、いつも一番に会場から離れるの。それにアルハイゼンさんは、他人に自分のスケジュールを教えない主義みたいで…
パイモン:
そっか。まあ、あいつは普段からそういう感じだしな…
ニィロウ:
うーん…アルハイゼンさんは学院祭にもあまり興味なさそうだったし、この近くには残ってないかもね。
ニィロウ:
あの人にとって、特別評論員はどっちかと言うと割り当てられた仕事、って感じなんだよね。普段、仕事が終わったらどこに行くか知ってる?
ニィロウ:
うーん…でもまだ試合が一ラウンド残ってるのに、アルハイゼンさんはそんなときにお酒を飲みに行くような人かな?
パイモン:
あっ!分かったぞ!家に帰ったんじゃないのか?
パイモン:
アルハイゼンの家はここからそんなに遠くなかったはずだぞ。あいつん家に行ってみようぜ!
パイモン:
とりあえずノックしてみようぜ…
旅人:
(コンコン)
パイモン:
反応がないな…留守か?
旅人:
(コンコン)
パイモン:
アルハイゼン、聞こえるか?家にいるのか?ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ!
カーヴェ:
あなたたちだったのか。
パイモン:
カーヴェ!家にいたんだな!
カーヴェ:
…とにかく入ってよ。今ドアを開ける。
パイモン:
ノックしても返事がなかったから、家に誰もいないのかと思ったぞ!
カーヴェ:
仕方ないんだ。もし僕がノコノコとドアを開けたりして、来たのがアルハイゼンを探しに来た教令院の人だったら、ここに住んでるってことがバレてしまうだろう?
パイモン:
このことになるとやけに慎重だな…
パイモン:
じゃあ、もしアルハイゼンを探しに来た人がいて、おまえもたまたま家にいたらどうするんだ?
カーヴェ:
自分の部屋にいるだけさ。それに、家に来てまでアルハイゼンを探すやつなんかいない。そんな無駄なことをする人はそういないからな。
パイモン:
そっか。アルハイゼンがどこに行ったか知らないか?
カーヴェ:
あいつがか?知るか、好きなところに行ってればいいさ!
旅人:
喧嘩したの?
カーヴェ:
喧嘩なんかじゃない。あいつ、口が過ぎるんだ!
カーヴェ:
第二ラウンドで起きたことについてあいつと話してたんだ。最後、僕がくじを引き当てただろう?いい人間にはいい運が回ってくるって証明だ。今の僕は絶好調についているのさ。
カーヴェ:
そしたら、あいつ…これを聞いたときのあいつの反応を、あなたたちはきっと想像もできないだろうね!
カーヴェ:
あいつはこう言ったんだ——いつも自分のほうが先輩だと強調するくせに、問題の対処をする際には先輩としてあるべき姿勢が見受けられない。なら、その先輩というプライドにはなんの意味がある?——先輩のあるべき姿勢ってなんだよ!先輩は先輩だろ!
カーヴェ:
それに!あいつはこんなことも言った!
カーヴェ:
——君はもう少しよく考えたほうがいい。なぜどのラウンドでも運試しをする?その歳まで生きて、自分の最大のピンチに見向きもしないとは、信じられないな。だってさ!
パイモン:
はは…確かにアルハイゼンの言いそうなことだな…
カーヴェ:
もう我慢できない!今回だけじゃないんだ。前回も、前々回もこんな調子だった。あいつとの会話は本当に苛々するよ!
カーヴェ:
どうせ僕たち、互いのことが気に食わないんだ。なるべく早くここから出ていくよ。今、荷造りしてるところなんだ。あいつのためにものを片付けたり、掃除したりする人なんてもういない!
カーヴェ:
壁の絵も持って行く!今後、アルハイゼンは感性なんてものとはまったく無縁な場所で住むことだな、ハッ。
パイモン:
ちょっと待てよ、引っ越すのか?試合ってまだ終わってないんじゃないのか?どこにそんな金あったんだよ?
カーヴェ:
今はもちろんないさ。だから、とりあえず荷物を片付けて、前もって準備をするだけだ。
カーヴェ:
新居の目星はついている。賞金を手に入れたら、すぐにそれを買うんだ。それで片付けた荷物を運び込んだら、せいぜい三日あればここを離れられる。
カーヴェ:
この目標を実現するために、僕は決めた!例え第三ラウンドで何が起こっても、全力を尽くして優勝を手にするから、見ていてくれ!
パイモン:
おう、応援してるぞ。けど…本当に大丈夫なのか?
カーヴェ:
ん?僕の何が?
パイモン:
レイラがオイラたちに、おまえは時々「自己矛盾」に陥ってるって言ったんだ。
カーヴェ:
どういう意味だ?あなたたちも僕の性格に問題があるって思ってるってことかい?
パイモン:
そうは言ってないぞ!でも考えてみろ、賞金を手に入れるって言ったのはおまえだし、ファルザンからのポイントをやるって提案を断ったのもおまえ、コサックギツネを放っておけなかったのもおまえだった…
カーヴェ:
待てよ、そんなのは全部普通のことじゃないか。理由だって前に言ったはずだろう?そうしないと負い目を感じるんだって…どこが矛盾してるって言うんだ?
旅人:
なんで負い目を感じるの?
カーヴェ:
……
カーヴェ:
突然そう聞かれると…そうだな、なんでだろう?多分僕の性格なのかもしれない。そうしないで、万が一悪い結果を呼ぶはめになったら、僕も責任逃れはできないし。
パイモン:
でも、そんなことばっか考えてると生きるのが大変だぞ。それにおまえがしたことって全部、危険がないわけでもないだろ…例えば砂漠で気絶したりとか…本当にそれでいいのか?
カーヴェ:
…簡単には説明できないんだ。いや、僕のことはとりあえずいったん置いとこう。アルハイゼンに何の用だ?
旅人:
サーチェンに関する資料を探してほしくて。
カーヴェ:
サーチェン?最近、あいつがそんな名前を口にしたのを聞いた気がするな。
カーヴェ:
その時、あいつは資料を一部持って帰ってきてたんだ。ブツブツ言いながら、紙に何か書いたりしてた、僕に暇だったら目を通すように言ってきたけど、読まなかったんだよな。ちょっと待ってくれ、どこにあるか探してみる…
カーヴェ:
…これだ。どうぞ。
パイモン:
うぅ…本当にいいのか?
カーヴェ:
何が?あいつが僕のところからビールを持っていくときはずいぶん慣れてる様子だったけどね。遠慮なんてものは全くなかったよ。
カーヴェ:
それに、あいつから見ないかって聞いてきたくらいだ。僕はあのとき必要ないと思ったけど、あいつはそのまま横に置いてった。
カーヴェ:
あいつの習慣からすると、片付けてない資料は読んでいいっていうことさ。気にする必要はない。
パイモン:
そうか、だったら安心だな。サーチェンの資料に何が書いてあるか、見てみようぜ…
パイモン:
字がいっぱいで、目が回ってきたぞ…
パイモン:
とにかく…サーチェンは自分の事業を教令院に預けて、研究に出かけたってことか?
パイモン:
もし特別に認められる参加者がいたら、賞金だけじゃなくて、自分の事業をあげるとも書いてあるぞ…それって、めちゃくちゃ大金になるじゃないか!
カーヴェ:
何だって!?そんなうまい話があるのか?
カーヴェ:
サーチェンの資産、か…一生かけても使いきれないだろうな。もし手にすることができたら…借金を返して、新居を買って…それでも数え切れないほどお釣りがくるぞ?
カーヴェ:
そうなれば、アルカサルザライパレスをもう一つ作れる。いや、あれの十倍は大きい宮殿だって——
カーヴェ:
待てよ…オルモス港の新プロジェクト、あれも橋の改装だったな。最高の効果を出すためには、おそらく…
パイモン:
おい、目を覚ませ!それを考えるにはまだ早いぞ!
カーヴェ:
…それもそうだ。当面の急務は優勝して、さっさとここから引っ越すことだからな…
パイモン:
んん?待てよ、資料にメモが挟んであるみたいだぞ。
パイモン:
アルハイゼンが書いたのか?あいつの考えを書き留めたものみたいだな…どれどれ。二つの文章に丸が付けられてるぞ——
パイモン:
ひとつは「サーチェン、生死不明」、もうひとつは…「才識の冠」?
パイモン:
それと…よくわかんない言葉だな。これ、他のところの言葉か?
カーヴェ:
どれどれ…うん?この文字は…そうだな、ちょっと考えさせてくれないか…
カーヴェ:
「大いなる理想では虚無に対抗できないかもしれないが、小さき選択ならそれに対抗できる」。百パーセント正しい保証はないけど、大体そんな意味だね。
カーヴェ:
…ん?下にまだ小さな文字があるな…うん…あいつは何が言いたいんだ?
パイモン:
この変な文字が読めるなんて、すごいな!
カーヴェ:
学生時代、僕たちは共同で課題をやっていたことがあるんだ。テーマは「キングデシェレト文明の古代遺跡における古代文字と建築デザインの方向性についての解読」だった。古代文字については、その時にちょっと勉強してたんだ。
パイモン:
なるほどな!でも…アルハイゼンが書いたこれは、どういう意味なんだ?
カーヴェ:
さあね。あの男の考えることは、普通の人間には分からない。
パイモン:
…まあ、ここにはもう手がかりはないみたいだな。
旅人:
アーラヴのほうで進捗があるといいけど。
パイモン:
そうだな。早くあの悪いやつらを捕まえてほしいぜ。それまでは…えっと…とりあえず、他を回ってみようぜ!
ディシア:
まさか、学院祭の期間中に手を出そうとするやつがいるとはな。サーチェンの財産というのは、ずいぶん魅力的らしい。
ディシア:
もしいきなり大金が手に入ったら、あんたは何をする?
キャンディス:
わかりません…考えたことがありませんから。
ディシア:
じゃあ、いま考えてみろよ?
キャンディス:
えっと…食べ物を買って、水源を探す…とかでしょうか?
アーラヴ:
ご安心ください。なるべく早く犯人を捕まえますから。
カーヴェ:
資料を持ってきたんだ。良かったら読まない?
ニィロウ:
アルハイゼンさん…どこに行ったんだろう?