Story
キャラクター詳細
「シャーマン」は謎煙の主を起源とする神秘的な職だ。彼らは不思議な秘術を数多く身に付けており、知恵と力を持っている。ナタ人は、病気の時や難しい予言を理解したい時にシャーマンを探す。彼らは医者であり、予言者でもあるのだ。日常の些細なことから重要なことまで、その力が必要とされる場面は多い。つまり、シャーマンは人々から尊敬される仕事なのである。
シャーマンの中でも「大シャーマン」と呼ばれる存在がいる。秘術において卓越した技を持つシャーマンだけが、この称号を得られるという。ナタの歴史に大シャーマンは指で数えるほどしかいない。彼らの功績は、夜空で最も輝く星のように、シャーマンの神秘さをさらに強めている。
シトラリはまさに大シャーマンの一人だ。そして、今のナタに唯一いる大シャーマンでもある。
しかし人々の印象に反して、日常の些細なことであれ、重要なことであれ、彼女が姿を現すことはない。部族の祭祀のような大事にも、ほとんど関与したことがないのだ。外部の人がこの大シャーマンに助けを求めるとなれば、かなり険しい道のりになるだろう。
「黒曜石の老婆を探してるの?できれば邪魔しないほうがいいよ!どうしても行くなら、心の準備をしておいて——先に言っておくけど、私を巻き込まないでね…」謎煙の主の多くの人々は、シトラリを危険で強大な魔物のようだと答える。
「あの大シャーマンか…ヘッ、確かにお前はあいつに助けを求めるしかなさそうだ。何しろこの偉大なる聖龍には、お前みたいな雑魚の相手をするヒマなんてねぇからな。ま、お前のその殊勝な態度に免じて、オレの名前を出すことは許してやる。そうすりゃ、きっとちゃんと対応してくれるだろうぜ。」聖龍を自称する奇妙なヤツは、シトラリを簡単に扱える小者だと答える。
「シトラリおばあさまに手伝ってもらいたいの?だったら大正解だよ。おばあさまは物知りだからね!住所は分かる?あ、それよりあたしが連れてってあげるよ。そうだ、ドアをノックする時は、必ず叩き続けてね。おばあさまって人見知りだから、こっちが積極的になってあげるといいんだ!」流泉の衆のエースガイドは、シトラリを恥ずかしがり屋の女の子だと答える。
「シトラリに助けを求めるのか?ああ、それは賢い選択だ。ナタの多くの重要事は彼女の助けによって成し遂げられてきた。君の悩みもきっと彼女が解決してくれるだろう。」聖火を掌握する偉大な指導者は、シトラリを責任感が強く、親しみやすい年長者だと答える。
一通り評判を聞き終えた後、助けを必要とする人はどれが正しいか判断できず、結局、シトラリに相談しに行くのをやめてしまうのであった。
キャラクターストーリー1
好感度Lv.2後に解放
シトラリは、部族の人々が住む場所から距離を置いた山の片隅に一人で暮らしている。世間から離れており、隠居にはもってこいの場所だ。しかしその外観は、他の隠者の住処のように自然の景色に溶け込んでいるわけではなく、むしろかなり目立っている。
これは外壁にあるラクガキのせいだ。派手、大胆かつ挑発的で、まるで怒らせるためにわざと描いたもののようである。こうなったわけを知るには、謎煙の主のシャーマンの間に伝わる変わった伝統に触れる必要がある——彼らは知り合いの同輩の中から実力のある者を探し、偶然を装って弟子に因縁をつけさせ、その衝突を利用して弟子たちの成長を促すのだ。もしかすると、シャーマンの師弟関係には家族愛に似たものが混ざっているのかもしれない。自分の潜在意識から愛が混ざってしまうがゆえに、厳しい師匠という存在を借りて試練を受けさせているのだろう。昔、もう一人の大シャーマンであるウィツィリンが、シトラリをその相手として選んだ。そして挑戦状として、弟子たちにシトラリの家に挑発的なラクガキを残させたのである。
もちろんシトラリは「後進の成長を促す」という責務をきちんと果たした。ウィツィリンという大シャーマンを師匠に持ってすっかり自惚れていた弟子たちも、彼女の前ではひとたまりもない。試練を受けた後は謙虚さと勤勉さを皆が取り戻し、シャーマンという存在に対して尊敬の念を抱くようになった。
そしてウィツィリンが亡くなった後も、彼女の弟子や孫弟子たちはシトラリを因縁の相手として選び、それがウィツィリンの遺志だと主張している。
いくらか伝統に反しているものの、謎煙の主の民はそれに納得していた。歴史上のウィツィリンはシトラリと共に名を馳せた大シャーマンで、彼女はシトラリの実力を最も理解し、認めている人物であった。彼女によれば、シトラリに挑む勇気のある者だけが自分の跡を継げるという。そして、この大シャーマンの期待通り、シトラリに挑戦した弟子の多くは優れた成果を収めた。部族の要職に就いた者もいれば、秘術の研究において大きな貢献をした者もいる。その結果、ラクガキによるシトラリへの挑戦行為も受け継がれ、ある種の新たな伝統となった。
しかし、ウィツィリンからこれを受け継いだシャーマンたちにとっては大変な苦痛であった。彼らは見習いの段階からシトラリに惨敗するという経験をしなければならなかったからだ。その後、仕方なくウィツィリンの定めた基準が変更され、シトラリの前で十分な時間耐えられれば試練成功とみなされるようになった。黒曜石の老婆に関する様々な噂も、この敗北者たちの悲惨な状況から広まっていったものだ。
挑戦に失敗した者のラクガキは、シトラリが秘術を使って消していき、外壁には常に新しいラクガキが残される。はじめはうんざりしていたシトラリも次第に落ち着いて応じるようになった。彼女の実力と地位なら、このような厄介な行為を止めることは容易だったが、彼女は黙認した。その理由を、挑戦に失敗した者を利用して自分の名声を広めているのだろうと考える人もいれば、この何事にも無関心な大シャーマンでも後進を鍛える多少の責任感を残しているのだなと感じる人もいる。
壁に描かれたラクガキを見るたびに昔のライバルと切磋琢磨していた頃を思い出すのは、きっとシトラリだけが知っているのだろう。ラクガキが新しく描かれ続ける限り、その時間がまだ過去のものになってはいないと思えるのだ。
キャラクターストーリー2
好感度Lv.3後に解放
シトラリの最大の楽しみは何かと聞けば、彼女をよく知る人、恐れる人、さらには噂でしか知らない人でも皆同じように答える——娯楽小説。人々がシトラリを見かけるのは決まって、彼女が娯楽小説を読んでいる姿だった。
しかし、シトラリの一番好きな娯楽小説がどれなのか、彼女のことをよく知る人たちでさえ、その答えはバラバラだ。
ある説では『蜃気楼戦記』となっている。これは彼女が最もよく人に話す本で、もしかすると初めて読んだ娯楽小説なのかもしれない。噂によれば、この歴史の長い娯楽小説は作者が三回も変わっているのに、結末を迎えておらず、初期の読者たちはすでに亡くなっていて、二百年生きているシトラリだけがこの先の新刊を追えるという。これはシトラリの長い人生にとって特別な意味を与えた作品であり、彼女の一番のお気に入りである可能性が最も高い。
また『沈秋拾剣録』だという説もある。何しろ、ナタの人々の誰もが知る大ヒット作だ。しかし、他の人がこの作品の話をするとシトラリはいつも不機嫌になる。本の内容が気に入らないわけではない。ある時のサイン会がナタで開催されなかったことをずっと根に持っているのだ。
『雷電将軍に転生したら、天下無敵になった』と『お願いっ!私の仙狐宮司』の間で激しい議論を繰り広げる人たちもいる。前者を主張する人は、シトラリがかつて購入した『転生雷電』が初版ではなかったことで、腹を立てて大騒ぎをし、本屋を怯えさせたという一件があることを理由に挙げている。後者を主張する人は、押し寄せてきた挑戦者たちのせいで『狐仙宮司』の限定愛蔵版を買いそびれ、彼らをこっぴどく懲らしめているシトラリの姿を目撃したことを理由に挙げている。
シトラリはこの質問にはっきり答えたことはなく、本当の答えを知る者は誰もいない。しかし、恐れを知らない物好きがこんな噂をこっそり流した——シトラリが娯楽小説を置く本棚にはからくりがあり、それは巧妙に隠されているだけでなく、特殊な秘術で何重にも封印されていると。となれば、そこに入っているのが彼女の一番のお気に入りなのは明らかである。
——シトラリはすぐにその噂を流した人物が自分の家に忍び込んだ泥棒だと気付き、そいつを一通り殴ってから部族の守衛に引き渡した。それ以来、彼女の家には封印がさらに一つ増えた。
だが、彼女は泥棒の言うことを否定はしなかった。なぜなら本棚には確かにからくりがあるからだ。
中に入っているのは、今話題の大ヒット作でもなければ、コレクション価値のある絶版本でもない。それは稲妻でもあまり有名ではない娯楽小説——『新六狐伝』だ。
これがシトラリの一番好きな娯楽小説なのか?それはどうだろう。シトラリがこの本をここに保管している理由は、この本の冒頭に書かれている文章にあるのかもしれない。
「記憶にまつわる物語は、往々にして手に入れたはずのものを失う瞬間を描くものだ。」
キャラクターストーリー3
好感度Lv.4後に解放, シナリオ「燃ゆる運命の虹光」をクリア
シトラリの友人たちが彼女の誕生日を祝おうとすると、いつも厄介な問題に直面する——彼女は一体何歳なのか?
何歳にせよ見た目からは分からない。
シトラリがよく口にする言葉を信じるなら、二百歳が答えのようだが、謎煙の主の一部の年長者の話によると二百歳以上だという。なぜなら彼女は二百年前に起きたことをよく知っているからだ。
「もしかして幼い頃、竜に引き取られたことがあるんじゃないか?」とチャスカは推測した。彼女も幼い頃、クク竜に育てられていたため、自分の本当の年齢が分からないからだ。
「二百歳でも二百歳以上でも、ばあちゃんはばあちゃんだ。」オロルンに聞くとそう答える。幼い頃からシトラリに育てられてきたオロルンにとって、彼女の時間の流れは特段気にするものではないのだろう。
しかし、シロネンはその答えを気に入らない。何しろ、ケーキを予約するのに曖昧な数字では、お店に迷惑をかけてしまう。シロネンにとって、ニーズをはっきり伝えるのは客としての最も基本的なマナーなのだ。
「ハハッ!たった二百年ぽっちでこんなに悩むとはな。この偉大なる聖龍が生きてきた年数を知ったら…」空気を読めないアハウは、すぐさまキィニチによってどこかに飛ばされた。
「二百歳ってことにしようよ!シトラリおばあさまが自分のこといつも二百歳って言いたい気持ち分かるもん。だって綺麗なお姉さんたちも自分を永遠の十八歳って言ったりするでしょ?そのほうが若く見てもらえるわけだし!」ムアラニの提案に皆しばらく考え込んだが、結局は却下された。なんたって「永遠の二百歳」という表現で若さを表すのもおかしな話だろう。
皆が困っている間、行動力のあるイアンサはマーヴィカを呼んで、聖火から伝承された記憶に手がかりがないか探そうとした。しかし、マーヴィカであっても正確な答えは出せなかった。歴代の炎神の記憶にあったシトラリは、どれも人里離れたところで生活を送っており、そこから具体的な年齢を推測するのは難しかったからだ。
こうして皆、長く悩むことになった。何しろシトラリに直接聞くことはできない。あの鋭い大シャーマンはきっとすぐにその質問の意図を見抜いて、サプライズの意味をなさなくなってしまう。
最終的に、この厄介な問題はひとまず置いておき、年齢とは関係ないデザインのケーキを買うことになった。
誕生日当日の夜、ドアをノックしてシトラリを家から誘い出した後、皆で手際よくケーキとプレゼントを並べた。こうして長いこと準備してきた誕生日パーティーはついに成功するのであった。
皆の熱意が伝わり断りづらかったのか、シトラリはその夜、たくさんのお酒を飲んだ。彼女が酔っぱらっているのをチャンスと見て、好奇心旺盛な皆は、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「ワタシがいくつだって?ヒック!面白いコトを教えてあげる。このセカイで長生きしてるのはワタシだけじゃない…みんなきっと同じ。最初は年齢を数えてられるけど、歳を重ねるうちにメンドウになって、だんだん数字を気にしなくなって…ヒック!まあ、ワタシはちょっと変わってるからね…最初は年齢なんて気にしてなかったけど、あのコトがあってからどんどん歳を取ってるコトに気がついて…その時から年齢を数えるようになったの、今日でちょうど二百年なはず…ヒック!」
なぜ二百年と言ってきたのかその理由をようやく理解できたが、同時に新しい疑問も生まれた。二百年以上もこの若さを保っているシトラリに、歳月の流れを意識させた出来事とは一体なんだったのだろうか?
だが皆、自分の好奇心を抑えた。なぜなら、シトラリが夜空をぼうっと見つめていたからだ——つまり、彼女はもう眠ってしまったのだ。
キャラクターストーリー4
好感度Lv.5後に解放, シナリオ「流れゆく色の記憶」をクリア
シトラリの同窓にウィツィリンという少女がいる。そして、そのイクトミ竜の仲間はクローという名前であった。ウィツィリンが戦いの構えを取ると、クローはいつも隣りで力強くジャンプして威嚇する。
「大人たちが言ってた天才ってあなたのことだよね?さあ、勝負しましょ!」
「…頭のおかしなヤツ。」
二人の初めての対決はこうして唐突に始まり、結果はウィツィリンの惨敗で終わった。それからというものウィツィリンはしょっちゅうクローを連れてシトラリの家の前に現れるようになる。最初の数回、ウィツィリンが持ってきたのは熱のこもった挑戦状だった。その次は挑戦状と一緒にたくさんのお菓子が。さらにその次は大人から盗んだ酒を持ってきた。上質な酒に感動したのか、それとも彼女を諦めさせるのは無理だと悟ったのか、シトラリはもうウィツィリンを拒まなくなっていた。
こうして、瞬く間に二十年の時が流れた。
初めて引き分けになった日、シトラリはようやくウィツィリンの誘いを受け入れ、月明かりの下で酒とお菓子を分け合った。
「大シャーマンの称号を手に入れた日が同じ…これじゃ勝敗を決められないね。」
「引き分けで十分よ。ワタシのライバルとして、満足したでしょ?もうジャマしに来ないでもらえると…」
「もちろんこれからも行くよ!ライバルとか抜きにしても、もうあたしたちは二十年来の付き合いなんだから。」
ぼんやりと明るい夜の中、ほろ酔いのシトラリはウィツィリンを見つめて、ふと気づいた。かつての無鉄砲な少女は、今や気品のある大シャーマンになっていることに。あのクローも、自分たちより大きくなり、大人のイクトミ竜にしかない威厳を兼ね備えている。
「そうね、二十年来の付き合い…」
慌ただしい時間によって覆い隠されていた沢山の小さな思い出が、一気に脳裏に浮かび上がった。シトラリはその中から友情という数々の温もりを感じると同時に、言い表せない不安が心をよぎった。
月日が流れ、また二十年が足早に過ぎ去った。
ある日、シトラリはいつものように負けた挑戦者のラクガキを消していた。そんな彼女の手を止めたのは聞き慣れた足音だった。
「久しぶり、しばらく飲みに行ってないね。もしかして怒ってる?」
「ケンカしたければ自分で来ればいいのに、どうしてあんなボンクラどもでワタシを煩わせるワケ?」
「だって…あたしも、弟子を取らなきゃいけない歳になったからね。」
ふと、シトラリは何かを察したように振り返った。しばらく会っていなかった友の顔には、皺が増え、かつての輝きは失われていた。ウィツィリンもシトラリの複雑な感情を読み取ったようで、注意をそらすように、近くの野原を指差した。そこはまさに花盛りだった。
「ナタの野花がどんなに美しく咲こうと、乾季が来れば枯れてしまう。だけどそれで困る人はいない。だって、来年にはまたここに花の海ができるから。そうでしょう?」
「来年のその花の海に、イマ見てるのと同じ花は咲かない。結局はナニひとつ残らないの、そう思わない?」
「…でも残るものもあるはず。少し待っててくれる?あたしならその答えを見つけられると思うから。」
ウィツィリンは、シトラリの目に浮かぶ感情をなだめようとしたができなかった。シトラリはあの不安が何だったのかをようやく理解する。その夜、ある兆しを意味する星が夜空から流れ落ち、シトラリは一晩中眠ることができなかった。
草木が芽吹いては枯れ、ウィツィリンに次の二十年は訪れなかった。
……
数年後のある日、シトラリが壁のラクガキを消していると、かつてあの少女が幼いイクトミ竜を連れて自分に勝負を申し込んできた午後のことを思い出した。
突如無数の思い出がよみがえる。まるで昨日の出来事のようにだ。だがすぐに風と共に遠い過去へと散ってしまった。ウィツィリンがなだめられなかった感情も、長い時の流れを経て、ただ一声のため息と化した。
「そういえば、最後まで答えをもらえなかったんだけど。」
そう呟いたが、シトラリはウィツィリンを責めてはいない。あの問題には、最初から答えなどないと分かっていた。何度も花が咲いては枯れていくうちに、彼女の記憶に残った花もとっくに消えてしまっていた。どんなに鮮やかな花でも、歳月の砂丘に埋もれてしまうのだ。
キャラクターストーリー5
好感度Lv.6後に解放, シナリオ「流れゆく色の記憶」をクリア
「我らは時の中を羽ばたく鳥。記憶の花畑の中で、一緒に旅をしてくれる『色』を探す。」
大事を記録するための特殊なウォーベンを作るたびに、シトラリはウィツィリンのこの言葉を思い出す。ウィツィリンにウォーベンの秘術を教わった時、この言葉がシトラリを色鮮やかな記憶の空間へと連れていった。記憶を絵の具に巨大な絵を描く彼女はまるで熟練した画家のようだった。
この秘術を学んだシトラリは、ウィツィリンを真似して、戦士たちが高く掲げた松明からオレンジ色を摘み取って偉大な勝利を飾ったり、墓石前の花束から薄紫色を摘み取って英雄たちの死を弔ったりした。そうして歴史を記録するウォーベンが作られ、謎煙の主の伝統も続いていった。
シトラリは、この秘術の伝承者が背負う使命をとうに理解していた。そのため、金髪の旅人が訪ねてきた時、自分が拒めないことにも気づいていた。アビスを照らす光として、そしてこの戦いを終わらせるシンボルとして、彼女は旅人の「金色」を選んだ。丁寧にウォーベンを染める手の中で、あの記憶がよみがえってくるかのようだった。
「そうすれば、彼らは紙と文字の砂丘に埋もれずに済む。」
旅人の言葉を聞いて、時と共に薄れていた感情が、シトラリの胸に押し寄せてきた。彼女はウィツィリンの言葉を思い出し、ふとウィツィリンが約束を守っていたことに気付いた。
花が枯れ、すべてが砂丘に埋もれた時、一体何が残るのだろうか?
「記憶の中の色。」
これはウィツィリンがずっと昔に出していた答えであり、シトラリが旅人の問いに返す答えでもある。この答えが、長いこと向き合わなければならない約束に再び自分を巻き込むとシトラリは知っていた。だが、今度は前よりも随分と心強い。
彼女は事前に用意していた象徴物を旅人に渡し、この長い人生で初めて自分の願いを語った。
「…キミの記憶に、ワタシの色が残ってくれたらなって。」
ツィツィミメ
好感度Lv.4後に解放
「一つはシトラリン、北方より訪れし凶星!」
「もう一つはイツパパ、南方より訪れし悪曜!」
シトラリが「ツィツィミメ」と呼ぶ二つのぬいぐるみ——それについて誰かが話していると、謎煙の主の人々は呪いをかけられるから早く口を閉じるよう警告する。噂によれば、そのぬいぐるみの体には悪魔の意識が宿っており、黒曜石の老婆の怒りだけに服従するという。気付けば、その二つのぬいぐるみの名も黒曜石の老婆と共に、子供を泣き止ませる際の常套句に含まれるようになっていた。
しかし、この二つのぬいぐるみを間近で観察してみると、悪魔というよりかは可愛らしい小動物のように見える。シトラリはよくこのぬいぐるみを敵に投げつけるが、その威力は彼女の拳を下回るものだ。
事実として、この二つのぬいぐるみの体には確かに凶悪な星が封印されている。だが彼らの意識はそれとは関係ない。そのぬいぐるみはシトラリが自然死した小動物の遺骨を使って作った。遺骨に残った魂がぬいぐるみの体で活性化されて、意識が芽生えたのだ。この甘えん坊たちは呪うどころか、ペットのような癒しを与えてくれる。
シトラリはこのことをあまり他人に話さない。何しろ怖いほうが武器として効果があるからだ。
神の目
好感度Lv.6後に解放
シトラリは大シャーマンになっても、古名をもらえなかった。
名実ともに謎煙の主の大黒柱であり、ナタの多くの重要事も彼女の助けがないと進められないが、それでも共鳴する英雄名は出てこない。
人々は惜しんだが、どうすることもできなかった。七十歳を過ぎてからシトラリは出不精になる。この世界に対してもう何の情熱も湧かないようで、自分を必要とすることに顔を出すだけであった。もちろんこの無関心さを気に入る英雄もいるはずがない。
しかし誰も気付かないところで、シトラリはあることに対する熱意だけは残していた——歴史上の大事を記録する特殊なウォーベン製作だ。
これを作るたびに数十年が過ぎ去り、一つの世代が消えていく。それでもシトラリは続けた。友の遺志だからか、あるいは誰とも関わらなくていいからなのかもしれない。この使命が終わるのを期待したこともなければ、見返りを求めることもなかった。
「ただ時間を潰す方法の一つに過ぎない」と考えていた。
だからこそ、ある先祖が霧の中を漂う色とりどりの煙を使って呼びかけてきたあの夜、彼女は戸惑った。
「ワタシがキミの古名を継ぐって?」
「いずれ受け継ぐ。あなたはその理由をまだ知らないだけ。」
「私の言葉を受け取りなさい。将来抱く疑問は、これで解けるはず。」
煙は色を変えながら、シトラリにしか解読できない言葉を伝えた。
「我らは時の中を羽ばたく鳥。」
「青々とした密林を彷徨い、紺碧の波を渡り、赤いマグマを飛び越え、金の鉱石を拾い、桃色の柔らかな翼を追いかける。」
「日が暮れた夜空をラクガキで彩る。」
「描くものすべてが贈り物となり、死者の世界の手向けとなるのだ。」
「これはかつての私の名であり、これからはあなたの名になる。」
「ウクンボク——『記憶』。」
言葉が終わると、霧の中の煙は風と共にシトラリの背後に回る。先ほど色付けが済んだばかりのウォーベンに近づき、不思議な光彩を放ちながらその全体を照らした。
目の前のウォーベンを眺めながら、シトラリはふと、旧友が去った夜を思い出した。
「あの子がワタシに残した使命、かつてはキミのものだったんでしょう?」
「でもあなたにとっては、ただの使命じゃなかったようね。」
色に導かれるまま、シトラリが手を広げると、光輝く神の目がいつの間にか手のひらに現れていた。
「あなたの『願い』でもあるみたい。」
初めまして…
「謎煙の主」のシトラリが、迷煙の向こうにあるミライの道を見てあげる。悪曜はキミを傷つけず、景星はキミに寄り添う。キミは心強い「盟友」を得るコトになるでしょう。さ、ワタシも同行してあげる。——ハ?真面目なワタシがそんなに珍しい?そ、そんな目で見ないでちょうだい!
世間話・小説
八重堂から出てる小説は一応全部読んでるの。ベ、ベツにおかしくなんてないでしょ!
世間話・お酒
善き日々は 酒を手にして 流れゆく
モラを貸すなら トゴでブルジョワ
世間話・脱魂
「脱魂の儀」は一般人にとってちょっと危ないものなの。だから、あんまり興味を持たないようにね。
砂漠にいる時…
ペッ…ペッ——あっ、ベツに痰を吐いたワケじゃないから。そんなコトするワケないでしょ?砂ぼこりが口に入っちゃっただけ!ホントだからね!
おはよう…
ふわぁ——おはよ。こんなに早く起きたのって一人前になってから初めてね。イマは自然と目が覚めるまで寝るようにしてるの。で、用件は?
こんにちは…
こんにちは。こう見えてワタシ、自己管理はパーペキなの。朝起きてもお昼までお酒を飲まないようにしてるし…ま、徹夜で儀式をした場合はベツだけど…
こんばんは…
こんばんは。ナタの郊外はところどころ夜になると気温がぐんと下がるの。だからカゼを引かないようにね。燃素が活発な場所なら昼も夜も同じだけど。…えっ、そんなコト聞いてないって?ちゃんと聞いておいたほうが身のためよ!
おやすみ…
おやすみ。今夜は悪曜が見えないし、大地の霊と迷煙もうたた寝してる。ステキな夜ね。ん?どうしてマクラが落ちたのかしら…
シトラリ自身について・蜃気楼戦記
へえ、キョウミがあるの?『蜃気楼戦記』は稲妻の八重堂の中島純先生が書いたファンタジー小説で、殿堂入りを果たした古いシリーズよ。「葦の原」っていう架空の島国を舞台に、ほとんどの章が東の国から来たネコの顔をした道士「東の山君」を中心に展開されるの。その正体はなんと、超古代の諸侯「東の王父」。とても長いシリーズだから、三回も作者が変わっててね。けど今になっても、まだ「方壺」のショウタイが分かってないのよ…
シトラリ自身について・終末
「反魂の詩」によって息を吹き返すコトはできるけど、星や太陽だっていつか終わりを迎える。イノチもまた同じ。ん?死とはナニかって?それはまるで、竜に乗って大草原を駆ける悠久の午後に、空の彼方にぼんやりと映る顔みたいなものよ——どんなに速く駆けても、その顔には近づけない。でもその顔はトツゼン動き出し、恐ろしい速度でこちらに衝突する。避けるコトもできないまま、顔が鮮明になった瞬間にはすべてが終わってるの。
手助けについて…
ハァ、ナタでキミのチカラになれるコトって、「年長者」っていう身分くらいしかないかも。キミの「盟友」は強く、未来は明るい…それに対してワタシにできるコトはナニもない。こんなおばあちゃん、家で安楽椅子に座ってるのがお似合いでしょ?ワタシの身分を使って誰かを黙らせたいっていうならハナシはベツだけど…キミはそういうの必要としてないだろうし…
あたふたすること…
キミへの態度は他のヒトと同じよ。ベ、ベツにトクベツ扱いなんてしてないから。…まあ、ワタシに対する誤解は何世代も続いてきたものだし、とっくに諦めてるけど。でもキミは他のヒトと違ってワタシに偏見を持ってない。だから、キミにはホントの姿を見せてるの。誰に対しても遠慮なく、尊大に接するワタシは、みんなのイメージに合わせて作ったキャラよ…キミの前でアタフタしちゃうワタシこそ、本当のワタシ。キミにウソをついたコトはないし、これがワタシの本心——こんなコト言うのはこれっきりだからね。
「神の目」について…
神の目を手に入れたってコトは、あるイミで強い「盟友」を得たってコトよ。そして、その「盟友」が強いというコトは、当人もまた常人を超えるチカラを持っているコトをイミする。だって「盟友」がいくら強くても、それはあくまで支援に過ぎないからね。折れない意志を持っていてはじめて、「盟友」も本領を発揮できるの。
シェアしたいこと…
どうしてかは分からないけど、稲妻の連載小説がナタに届くのは掲載から二週間後で、単行本は丸々一年も遅れるの。その二週間のうちに、妙な内部情報やネタバレが飛び交うのよね。どれがデマで、どれがホンモノか全然分からなくって。
興味のあること…
ある伝説によると、ナタには変わったサボテンがあるらしいの。センセーはそれを「メスカリート」って呼んでた。フツーのヒトがそのサボテンを口にすると、もう一つのセカイを見てしまうんだとか。ま、そうは言っても「メスカリート」がイマも存在してるかどうかは分からないけど。もし見つけてもゼッタイ食べないでね。
ムアラニについて…
ムアラニとの間には、清算しきれてないコトが数多くあるの。もらうべき報酬、うちのドアを壊したときの弁償代、実際にもらった報酬、つまみ食いされたお菓子、持ってきてくれたスナック…とにかく一つひとつ挙げたらキリがないほどにね。彼女にその気があるなら、キレイさっぱり片付けておきたいんだけど…ある週末の昼十一時に寝ていたら…あ、ええと…とにかくその時、急にあの子にドアをドンドン叩かれて起こされたの。ホント、心臓が止まるかと思った!
シロネンについて…
彼女みたいに、ワタシのウワサを気にせず、熱くなりすぎないヒトと付き合うのがイチバン楽チンね。あ…モチロン、キミの前でも気を張らずにいられるけど。むしろ、気を抜き過ぎて素のワタシが出ちゃうっていうか。
マーヴィカについて…
マーヴィカが…コホンッ、シツレイ。炎神さまが先日、急にうちに来ていろいろとハナシをしていったの。彼女が帰った後、夜食を食べようとしたときにようやくナニを自慢しに来たのか分かってね。ベツの国にこんな古いコトバがあるけど、彼女がまさにそれね。「聖人は常に謙虚でいるが、自分の責任を語るときだけ、誇らしげに『自慢話じゃないが…』と言う」のよ。
神里綾華について…
…ねぇ、お嬢さん、その服をよく見せてくれる?…ふむふむ、なるへそ。それって『オルツィ嬢事件簿』よね。『ハーロック』シリーズのサブヒロインと勘違いしちゃった。ワタシ、フォンテーヌの服ってどれも同じに見えて。もうダイジョーブよ、呼び止めちゃってゴメンなさい。
キィニチについて…
あの隣にいるやつ、ちょっとウルサイのよね。キミのトモダチなの?フーン、じゃあ他の印象も思い出すから、ちょっと待ってて…キィニチ本人は結構頼りになるかな…うん。
イアンサについて…
彼女のコトはあまりよく知らないの。でも八重堂の小説でよく見るお決まりパターンで言うと、強くて背のちっちゃな彼女には、いざって時に二メートルくらいになる200%形態があるんじゃない?
シトラリを知る・1
えっ?急にどうしたの?もしかして、あのウワサを耳にしたとか?ハァ…はいはい、ワタシはシャーマンの妖怪よ。信じたければ勝手になさい。もうセツメイする気にもなれないの。
シトラリを知る・2
えっ、そのセツメイを聞きたい?ハァ…「謎煙の主」にはこういう暗黙のルールがあるの——師匠は、弟子を成長させるために自分のトモダチと競い合わせるようにするって。師匠のトモダチに負けないよう、弟子たちは必死に腕を磨く。今の「謎煙の主」の大半はワタシのトモダチが作った流派に属しててね。みんなワタシをこわーい魔女に仕立て上げようとするのよ。どうしようもないでしょ?ベツにその弟子たちを困らせるつもりなんて毛頭ないけど、誰一人としてワタシに勝ったコトがないの。ハァ…——で、恐ろしくて気性の荒いやつっていうウワサが広まったのよ。
シトラリを知る・3
そうよ。普段、人前で見せてる振る舞いは演技なの。ありのままのワタシはこんな感じ。分かるでしょ?訛りや死語を使うと思われてるときに、上品で端正なコトバを口にすると誰もが意表を突かれる。——ええ、キミの言う通り、それは一種の「愚」よ。でも、固定観念はそうカンタンに覆らない。だってワタシも最初は、キミが他のヒトと同じだと思ってたもの、フフッ。
シトラリを知る・4
「謎煙の主」の若者たちがどうやってその師匠にハメられ、因縁をつけに来るコトになるか知りたいの?ド定番なやつは、師匠が「騙されたから、仕返しにペテン師の家の壁にラクガキしてこい」って言うものね。弟子たちは仇討ちのためにラクガキしに来るのよ。ヒドいでしょ?でも最近、そこがワタシの家だってみんな知るようになって、通用しなくなったけど。
シトラリを知る・5
それは龍の遺物研究会が回収した酒瓶で…ええと、その、そう!オロルンが飲み終わって放置したものよ、ワタシとは無関係。そうでしょ、オロルン?ほら、早く出てきてゴメンなさいしなさい!ワタシはお酒に強いから酔っ払うなんてコトないし、ゴミをその辺に放置するなんてコトもゼッタイしないから。ましてや、もともと研究会はそれを外で見つけたものだって言ってたし、ベツに誰にも迷惑かけてないワケで…あ、いやそもそもワタシの出したゴミじゃなくって…うっ、上手く言えないけど!とにかく、信じてちょうだい!
シトラリの趣味…
ワタシの人生ってつまらないの。お酒を嗜み、小説を読んで妄想して、あとは寝るだけだから。
シトラリの悩み…
まだ分からないの?ナニも気にしてないように見えるのは一種のカモフラージュ。実際はあれこれ考えてるのよ。
好きな食べ物…
祭祀で使われるようなありのままの味に近いから、ミディアムのステーキが好きよ。それと小説を読みながら片手で食べられるものも好き。あと…キミのオススメなら何でも好き!
嫌いな食べ物…
ええと…酸っぱいものを食べたいって気持ちがよく分からないのよね。お腹が空いたら食べて、眠くなったら寝て、ノドが渇いたらお水を飲む、これが自然。酸っぱいものでわざわざ食欲を増進させるなんて、そもそもお腹が空いてないってコトでしょ?
贈り物を受け取る・1
んん、おいしい~!「謎煙の主」の近くで食べられる料理は全部口にしたけど、どれもキミの作ったものほどじゃなかった。ホントにホントよ。
贈り物を受け取る・2
いつもはあんまりこういうのを食べないの。あ、ううん、おいしくないってイミじゃなくって!ええと…特別な味わいというか。ほ、ほめコトバだから!
贈り物を受け取る・3
お、おいしくなくもないかな。あは、ははっ…
誕生日…
お誕生日おめでとう!その、ナニを贈ったらいいか分からないの…だから、祈らせてちょうだい、キミ相手にミクトラン式の祝福じゃ効果が薄いかもしれないけど——キミの未来に悪曜が降りかからず、恋愛、健康、武功に恵まれんことを。…最初は布教用の『フィッシュル皇女物語』をプレゼントしようと思ったんだけど、キミってば八重堂の本をたくさん持ってるみたいだから…こっちが羨ましいくらいよ…う~ん、どんなプレゼントがいいかしら?
突破した感想・起
テイワットの外の世界の占術と違って、ワタシ——というかワタシの流派は天じゃなく、地を頼りにしてるの。空にある偽りの凶星や悪曜があらわになったとき、ワタシは迷煙や大地の霊、動物のホネを駆使してそれを縛るの。
突破した感想・承
まるでマリオネットのように、ヒトは運命に操られてるの。悪曜には自我がないけど、ヌイグルミに封じ込められた瞬間、動物のホネに根付いた想いによって意識を持つようになる。こいつらを…コホン…このコたちをワタシは「ツィツィミメ」と呼んでる。凶星や悪曜が具現化したものとでも言えばいいかしら。
突破した感想・転
ヌイグルミに動物のホネが入ってるのって、よくよく考えたらブキミよね。こんな秘術を使うんだもの、他人から怖がられるのも仕方ないか。うん、十分の一くらいはワタシに原因があるかな。ちなみに、使用してるホネは郊外を旅したときに拾ったものよ。動物を傷つけるようなコトはしてないから、そこんとこ誤解しないでちょうだいね!
突破した感想・結
これからもずっとキミのそばにいてあげる。すべての星が消え、すべての炎が燃え尽き、すべての迷煙が霧散するその時まで。
宝箱を開ける・1
なかなかいいじゃない。さ、受け取って。
宝箱を開ける・2
はい、これ。星々への感謝の祈りは代わりにしといてあげる。
宝箱を開ける・3
両手で抱えきれないなら、手伝ってあげるけど?
チーム加入・2
ちょっと、ナニ——えっ…あっ、うん、準備万端よ!
ヴァレサについて…
仮面を被った戦士は「英雄」、「自然」、「神」の化身と考えられてる。ある時、そんな英雄が酒に酔いつぶれたシャーマンを背負って、深夜に百軒の家を訪ね回ったの。みんな、それを面白おかしく話してたそうよ。ベツに、ワタシにはこれといっていい評判なんてないし気にしてないけど。うん、気にしてない…健康的な食生活を送れるよう、十日間キノコしか食べられないノロイを…じゃなくて、シュクフクを贈ってあげるつもり!